W.I.T.C.H.

放送局: ABC

プレミア放送日: 12/18/2004 (Sat) 12:00-12:30

製作総指揮: オリヴィエ・デュモン、ジャクリーン・トージマン、アンドリュウ・ニコルズ、ダレル・ヴィッカーズ

声: ケリー・ステイブルス (ウィル)、カンディ・マイロ (イルマ)、キティ (テラニー)、ライザ・デル・ムンド (ヘイ・リン)、クリスティル・カリル (コーネリア)、ミッチェル・ホワイトフィールド (フォボス)


物語: ヘザーフィールドに引っ越してきたウィルは、すぐにイルマ、テラニー、ヘイ・リン、コーネリアといった面々と仲よくなる。それと時を同じくして、彼女らの身の回りに不思議なことが起こり始める。実は魔界からの魔の侵入を防ぐ境界ヴェイルの力が弱くなっており、彼女らは魔界の王フォボスから人類を守るためにそれぞれ特別の力を与えられていたのだ‥‥



アヴァター: ザ・ラスト・エアーベンダー

放送局: ニコロデオン

プレミア放送日: 2/21/2005 (Mon) 19:00-20:00

製作総指揮: マイケル・ディマーティノ、ブライアン・コニーツコ

声: ミッチェル・ムッソ (アン)、メイ・ホイットマン (カタラ)、ジャック・デシーナ (ソッカ)、ディー・ブラッドリー・ベイカー (アッパ)


物語: 火の帝国の猛攻により、世界は息も絶え絶えに陥っていた。彼らの侵略を止めることができるのは自然界を操ることのできるアヴァターたちしかいなかったが、彼らは100年も前からその消息を絶っていた。南極に住む部族のソッカとカタラの兄妹は、偶然にも氷の中で眠っていた最後のアヴァター、アンを発見する。アンは空を飛ぶバイソンの家来アッパと共に、世界を救うために火の帝国の王子ズーコと戦うのだった‥‥


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近年、日本のアニメはアメリカのアニメーション界に大きな影響を与えている。いや、アメリカだけではなく、アニメは世界中に影響を与えていると言っていい。例えばベネズエラ出身の私の女房の元同僚の女性は、幼い時に地元で放映していたという「キャンディ・キャンディ」の主題歌を「日本語で」歌える。たぶん放送局がケチって主題歌は吹き替えなかったんだろう。


こうやって南米でアニメの味を覚えた女性がアメリカに移住してきて自分の子供に違和感なくアニメを見せている。ただでさえ現在のアメリカにおけるアニメ番組は飽和気味ですらあるのだ。番組に不自由はしない。そしてまたアメリカでアニメの味を覚えた人々が、今度は世界中に散ってアニメを広めていく。実際、ディズニー映画の主力がアニメーションよりもCG作品で占められている現在、日本のアニメは、この世界ではもはやかつてのディズニーに匹敵する勢力を誇っているように見える。


そして、アメリカよりもハードルが高いように思われていたヨーロッパにも、アニメは侵食を始めている。オリヴィエ・アサヤスの仏映画「デーモンラヴァー (Demonlover)」は、和製ロリコン・ポルノ・アニメの配給権をめぐってヨーロッパとアメリカの企業が争うという内容をなんの違和感もなく展開していた。特にパリのような文化都市であればあるほど、実はアニメやマンガの洗礼を受けやすいようだ。


そして今「W.I.T.C.H.」だ。実はこの番組、元々はヨーロッパで発売され、人気の出たコミックが原作だ。それがいわゆるノヴェライズされてそちらも人気が出たらしい。そのため、昨年からディズニー (番組を放送しているABCの親会社だ) が版元となってアメリカでも出版されている。こちらの方はコミックとノヴェルを一緒くたにした体裁で、本のはじめと終わりに10ページ程度ずつのカラー・コミックのページがある。現時点ではシリーズ第13冊目が出版されているそうだ。コミックの方はほとんどTV番組の絵柄と一緒だが、TVの絵柄の方がさらにアニメに近いという印象を受ける。コミックの方のコマの割り方は、アメコミとマンガの中間くらいといった感じか。


ディズニーがアメリカの版元というのは、最初から当然アニメーション化を意識していたものと思われるが、それが昨年暮れから放送を開始した。でき上がったものは、背景となる主要舞台は一見ヨーロッパの都市を思わせ、実際に主要なプロデューサーはヨーロッパ出身である一方、声優はアメリカ人声優を揃え、しかし登場人物はアニメ調 (微妙に完全にアニメとは言い切れない部分もあるが) と、ますます世界の文化は融合というか、混迷というか、そういうごった煮になっていくんだろうなあと思わせるものになった。


一方、「アヴァター」も一見アニメに見えるが、それが一際異彩を放っているのは、番組がニコロデオンで放送されていることにある。ニコロデオンというと人がすぐ思い出すのは、まず、実写なら「アンファビュラス」「ゾーイ101」といった番組だろうが、それよりも「ラグラッツ」や「スポンジボブ・スクエアパンツ」等のアニメーションこそが、チャンネルの看板番組と言える。いかにもデフォルメを利かした絵柄や教育にも配慮した内容こそが、ディズニーと並んで、子供たちだけでなくお母さんたちにも人気のある理由となっている。


そういう他チャンネルとの差別化という理由もあってだろう、これまではニコロデオンはアニメーションを放送しても、いわゆるアニメ的なものとはほとんど無縁だった。ところが「アヴァター」は、図柄としてはまったくのアニメであり、これは日本製の番組だと言われてもまったく疑いもしないだろう。アメリカのアニメーションの牙城であるABC/ディズニーやニコロデオンがいかにも日本のアニメ的な番組を製作し、放送し始めたことが、アニメがアメリカのカルチャーの中にしっかりと根づいたんだなと思わせる。


しかも面白いことに、この「W.I.T.C.H.」と「アヴァター」という2本の番組は、その構造もだいぶよく似ている。まず「W.I.T.C.H.」とは、もちろん魔女を意味する「Witch」のことでもあるが、同時に主人公の5人の少女の頭文字でもある。ウィル (Will) のW、イルマ (Irma) のI、テラニー (Taranee) のT、コーネリア (Cornelia) のC、そしてヘイ・リン (Hay Lin) のHを合わせてW.I.T.C.H.だ。イルマは水を制御する力を持ち、テラニーは火、コーネリアは地、ヘイ・リンは気をそれぞれ司り、ウィルはそれらを束ねるという使命を帯びている。つまりこの番組は、それぞれ特別な力を持つ5人の少女の活躍を描くものとなっている。


一方「アヴァター」の方は、世界は、火、地、水、気というエレメントから成っており、それぞれのエレメントを曲げて (Bend) 操ることのできる部族が存在する。火を司ることのできる者はファイアベンダーと呼ばれ、地を司る者はアースベンダー、水を司る者はウォーターベンダー、気を司る者はエアーベンダーと呼ばれる。そしてそれらをすべて束ねる者がアヴァターと呼ばれていたが、彼らがいなくなってしまったことが、世の中の空気が乱れてしまったことの原因となっていた。そして今、氷の中の100年の眠りから甦った最後のエアーベンダー、アンが、再び世界に秩序をもたらすために活躍するという物語だ。


こういう、世界がいくつかのエレメントによって構成されているというものの考え方は、別に東洋独自のものではないだろう。とはいえ、それでも特に中国的なものの影響を感じずにいることはできないし、実際、「W.I.T.C.H.」で登場人物に知恵を与えるのは中国系のヘイ・リンの祖母であり、彼らの経営するチャイナ・レストランが何かと画面に登場する。番組自体が場所を特定しているわけではない、どこか、たぶんヨーロッパの架空の国という設定だろうに、このチャイニーズ・レストランだけが、番組の中で中国という特定の国を現している。


「アヴァター」では、主人公アン (Aang) は、名前、姿形からして明らかに東洋、それも中国系だ。今のところ登場人物はほとんどが東洋的な顔立ちをしているし、ファイアベンダーのズーコは、これまた明らかに中国系である。ついでに言うと、アンは空飛ぶバイソンのアッパという大型の相棒がおり、またアンやカタラたちはペンギンスレッドというペンギン滑りを楽しんだりするのだが、これらの動物のヘンに愛嬌のある造型は、明らかに宮崎駿の影響を受けている。


つまり、近年のアメリカのアニメーションは、日本のアニメの技法と中国の思想に大きく影響を受けており、ディズニーやニコロデオンといえども、もうそれを無視できないところまで来ているのだ。一時期「ポケモン」こと「ポケットモンスター」が、子供たちには圧倒的な人気があったけれども、ほとんどの親は顔を顰めていたのはほんの数年前のことなのに、既にその親すらも満足させる、あるいは無視できないアニメ番組 (もどき) が登場してきた。時代の変遷のスピードは速い。






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W.I.T.C.H.   

ウィッチ   ★★1/2

Avatar: The Last Airbender   

アヴァター: ザ・ラスト・エアーベンダー   ★★1/2

アヴァター

W.I.T.C.H.

 
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