放送局: NBC

プレミア放送日: 6/18/2007 (Mon) 21:00-22:00

製作: 3ボール・プロダクションズ

製作総指揮: J.D. ロス、トッド・ネルソン、アダム・グリーナー、クレイグ・アームストロング

ホスト: マーク・コンスエロス

出演: マーク・フィルポウシス


内容: 元テニス・スター、マーク・フィルポウシスの恋人の座を巡って20代の女性と40代の女性が勝ち抜きで争うリアリティ・ショウ。


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実は私は高校時代、硬式庭球部だった。というわけで今でもテニスをTVでよく見ている。どちらかというと今ではテニスよりゴルフという風になっちまって、専らPGAツアーの方をよく見るが、それでもテニスでもマイナーなサーキット・ツアーはともかく、グランド・スラムは欠かさず見ている。ニューヨークで開催されるUSオープンは、地元開催ということもあって毎年欠かさず少なくとも一度は会場まで足を運ぶし、もちろん「エイジ・オブ・ラヴ」にフィーチャーされているマーク・フィルポウシスだって、生の試合を何度も見ている。


まだアーサー・アッシュ・スタジアムが完成しておらず、ルイ・アームストロング・スタジアムがメイン・スタジアムだった時代、USオープンの悪名高いナイト・ゲームは、だいたい午後10時以降になると無料で会場内に人を入れてくれた。どんなビッグ・ブレイヤーの試合でも、ゲームが長引けば全部タダで見れた。そういう風にして無料で見た深夜まで及ぶナイト・ゲームは数知れない。9/11以降、鬼のようにセキュリティが厳しくなった今からでは考えることもできない。そのようにして見たフィルポウシスのゲームは、いったい何回くらいあっただろうか。


彼が頭角を現してきた10代の頃は、今ほど顔が濃くなく、あのでかい図体で若気の至り的にぶんぶんラケットを振り回し、ボールめがけて飛んでいく、みたいないかにもありあまるエネルギーをもてあますようなテニスで、かつてのボリス・ベッカーを彷彿とさせた。特に出てきたばかりの頃は、はっきり言って顔も可愛かった。それが元気いっぱいのテニスをするので、うちの女房なんかはいたく母性を刺激されたらしく、ころっと参ってしまい、なんか自分の息子のような気がする、マーク、マークと結構気を入れて応援していた。いくらなんでも我々の息子になるくらい歳が離れているわけでもないんだが、しかし、無茶なテニスをやるので構ってやりたくなる、という感じはわからないでもない。要するに、スマートなテニスではなかった。


そういう無鉄砲なプレイ・スタイルもあって、フィルポウシスは怪我、特に膝の怪我に悩まされるなど今ひとつ波に乗れず、結局、一流のプレイヤーと見なされるまでには至らなかった。これまでで最大の戦績がUSオープンとウィンブルドンの決勝に共に一度ずつ出たことがある (結局前者はパトリック・ラフターに、後者ではロジャー・フェデラーにストレートで完敗した) ということくらいでは、人は覚えてくれないだろう。また、当時はオーストラリア出身のプレイヤーというと、普通のファンはお行儀のいいラフターを応援していて、わがままでそのラフターと仲が悪かったと評判のフィルポウシスは、どちらかというと継子的扱いだったという印象がある。


それが今夏、彼の恋人の座をめぐって女性たちがしのぎを削るという、NBC版「バチェラー」とでも言うべきリアリティ・ショウの番宣を見た時には、唖然としてしまった。よりにもよって、あんた、「バチェラー」かよ、しかもどう見てもABCの二番煎じにしか見えない番組で。さすがにテニス界では浮いていたというだけのことはある。いわば今ではほとんど半分芸能人のアナ・クルニコワの男性版とでも言うべき存在であったか。しかし知名度という点では、どう見てもフィルポウシスはクルニコワにはおよばないと思うのだが。


私はこの手の恋人獲得系のリアリティ・ショウは、よほどのことがない限りまず見ない。まず第一に、まったく相手が気に入らないこともありうると思われる状況で、集められた女性 (男性) が全員、その対象となる異性の恋人になろうと奮闘するという状況が、まったくうそ臭くて見る気にならない。番組に出ているやつらは皆、ただTVに出たいだけなんでしょ、としか思えないようなやつらばかりだし、視聴者側は、もてないやつがファンタジーとして見て楽しんでいるんだろうとしか思えない。ま、それはそれでいいんだが、しかし何十本となく編成され、何百組も生まれたこの手の番組ででき上がったカップルで、いまだに現在まで継続しているのは、たぶん「バチェロレット」のトリスタ・レーンとライアン・サターのカップルただ一組だけであろうことを考えると、この種の番組を見る意義はほとんどないとしか思えない (因みにサター夫妻はこのほどめでたく第一子が誕生したそうだ。)


それでも、もちろん話題になれば私も見る。最初のシーズンの「バチェラー」はちゃんと見たし、その女性版の「バチェロレット」も見たし、FOXの物真似「ジョー・ミリオネア」「ミスター・パーソナリティ」も見たし、近いところでは「アイ・ラヴ・ニューヨーク」なんてのもちゃんと押さえてはいるのだが、しかし正直に言って、恋人獲得系は、数多あるリアリティ・ショウの中でも最もくだらないと思っている。くだらないとは思ってはいても話題になっているから見るのだが、見た後でやっぱりくだらなかったと頭に来ることの繰り返しなのだ。むろん「エイジ・オブ・ラヴ」のその一種だからして、たぶんやはり見て損したと思うのはまず間違いないと思うのだが、そこはそれ、一時、生で毎年のようにプレイを見ていたテニス・プレイヤーが主人公の勝ち抜きリアリティというと、やはり興味は惹かれるのだった。


この手の恋人獲得系の勝ち抜きリアリティ・ショウは、何度もやるとさすがに人は飽きてくるので、新番組を立ち上げようとすると、そこになんらかの新機軸を持ち込むのが普通だ。「バチェラー」の男女をチェンジすることで「バチェロレット」になり、相手に仮面を被せて顔を見せないことで「ミスター・パーソナリティ」になり、金持ちと思っていた相手が実は貧乏人だったということで「ジョー・ミリオネア」になり、出演者を超強力にすることで「フレイヴァー・オブ・ラヴ」や「アイ・ラヴ・ニューヨーク」になる。そして今回の「エイジ・オブ・ラヴ」の新機軸は、主人公フィルポウシスの恋人の座に立候補した女性陣が、20代と40代の二手のグループに分かれてしのぎを削ることにある。


フィルポウシスは現在30歳、テニス界からは引退したかもしれないが、一人の男性としては適齢期と言える。その彼に対して20代の女性6人と40代の女性7人 (正確には30代後半の女性もいる) が、互いに牽制しながらフィルポウシスのハートを射止める競争にしのぎを削る。女性は若い方がもてはやされがちだが、本当にそうなのか、経験を積んで酸いも甘いも噛み分けた女性のよさを見過ごしてはいないか、もし両方の女性と均等につき合う機会があるのなら、中年女性のすばらしさというものは、ただ若いだけの女性よりももっと男性にアピールするかもしれない。そのことを、そのちょうど中間の年齢であるフィルポウシスに判断してもらおうというのだ。


番組の第1回では、まず40代の女性7人がフィルポウシスに紹介される。だいたい、アメリカの女性は、もちろん例外もいるが、特に中年以降は実年齢より老けて見えがちである。そういう印象を持っていたからということもあるが、彼女たちはわざわざ自分から自信をもってTVに出ようと考える人たちであるからにして、結構美人だったりするし、若くも見える。もちろんカメラが寄ると、目じりの小じわとかがなるほど歳を感じさせはするが、人によってはうまく化粧してごまかせば、充分30代前半くらいでは通るんじゃないかとすら思える。


ふと考えると、その女性たち、夫や子供たちがいるんじゃないのと思えるが、もちろん既にティーンエイジャーの息子や娘がいる者もいるが、基本的に現時点では、別れたかなんかでシングルだ。さもなければいくらアメリカといえども、旦那が妻を恋人獲得リアリティ・ショウに、じゃあ頑張ってこいといって送り出したりなんかはしまい。


番組第1回はその40代の女性たちとフィルポウシスが仲よくやっているまま1時間が過ぎ、あれ、で、20代はどこに行ったの、今週は40代で来週は20代を集め、交互にやっていこうと筋書き? それだとあまりドラマがなくて面白くなさそうだが、と思っていたら、この日最大の意外なドラマは最後にやってきた。第1回の最後になり、40代女性の中から最初の追放する女性を決めた後で初めて、ホストのマーク・コンスエロスはフィルポウシスと、まだ40代女性たちもいる場で、20代女性を登場させるのだ。どうやら、実は40代女性たちは、自分たちだけでフィルポウシスと求愛ごっことをするものと思い込んでいて、あとで20代女性がその場に加わってくることを知らなかったらしい。なるほど、そういう筋書きだったのか。それで20代女性を煽り、40代女性を焦らせてドラマを演出しようと考えていたものと見える。


そういう風にして番組第2回は、今度は20代女性人とフィルポウシスを中心に進む。番組の基本構成は、色々なアクティヴィティを用意して、それを20代と40代で争わせるというもので、プロのアスリートじゃないんだから、一般人の体力なんて、実は20代も40代もそれほど変わらない。ほとんど五分にしか見えないし、実際、かなり40代が20代を凌駕していたりする。それで40代だってそれなりに美人だとするなら、フィルポウシスだって両方気になるのだった。とはいえ、やはり気の持ちようとしては、40代の立場としては若い者に負けるか、という感じで、一方の20代の方は、40代に対し、私のママと同じ年齢、とほとんど歯牙にもかけていないという感じだった。まあ、一般的にはそういうことになるんだろう。


とはいえその中間のフィルポウシスくらいの年齢だと、どちらにもそれなりに魅力を感じると思う。そういうもんだろう。たぶんどちらも自分にないものを持っているからだ。だからフィルポウシスがどちらを選ぶかについては気にならないこともないが、自分がフィルポウシスの立場に置かれていることを考えると、ほとんど私なら考えるまでもなく40代の方から誰か選ぶ。そちらが私の実年齢と同じであり、話が合うだろうと思えるのでこれまた当然だ。正直言って20代の女性なんて、映画やTV上で見るならともかく、現実につき合おうなんて気にはまったくならない。世の中の男性すべてが若い子を好むなんてイメージはまったく嘘っぱちであることを、自分が中年という年齢になると実感する。こういうイメージは、マスコミが若い子のセールス・ヴァリュウを高めるために流している流言に他ならない。


つまり、「エイジ・オブ・ラヴ」は、私にとっては、フィルポウシスの立場と自分を置き換えてみてどちらを選ぶかを妄想して楽しむ、という風にはまったくならない。その上、こういうジャンル自体が元々好きじゃないため、すぐに飽きた。さらに、フィルポウシス自身が、あまりしゃべりがうまくない。ぼそぼそと口ごもるように小さな声でしゃべる。元々彼はテニス・プレイヤーであって、タレントじゃないし。しかしフェデラーとかの優勝インタヴュウを見ていると、結構しゃべるのも上手という気がするんだが、やはりこういうのはもって生まれたものか。


あるいはフィルポウシスは、フェデラーのようにトーナメントで何度も勝ったことがあるわけじゃないから、その点でも鍛えられていないということか。いずれにしても、機転の利いた主人公のおしゃべりという点でも楽しめないとなれば、まあ、女性同士の小競り合いや、特に40代陣の、歳を忘れてはしゃぎ回る様子を見て苦笑したりして楽しむということができないわけではないが、それでも、特に面白いとは言い難い。


なんだが、しかし、実はうちの女房は、毎週喜んで見ているのだった。なんてったって、かつてマーク、マークって言って応援していた人物であるし、彼女の場合は、自分を40代女性の誰かと重ね合わせて応援する楽しみもあるからだろう。とはいえ、で、誰が最終的に勝つかとなると、冷静に20代のアマンダだと指摘していた。はたから見ても彼女とフィルポウシスが最も仲がよさそうに見えるらしい。私は結局一人も参加者の名前を覚えることもなく、いつの間にやら来週は最終回だ。これが自分の興味あるリアリティ・ショウならひいきの参加者が出て応援にも身が入るんだが。どうせフィルポウシスが最終的に誰を選んだとしても、結局数か月後には別れるんだろうし。なんて思いながら、私はかなり熱中している女房のそばで、細々とした用事を片しながら、時折思い出したようにTV画面を見て状況を確認していたりするのだった。



追記 (2007年8月)

結局最後は40代女性と20代女性が一人ずつ残った最終回、20代女性は予想通りアマンダだ。実は最終回の一つ前の回ではもう一人20代女性が残っており、たぶん最終回は3人の中から一人を選ぶ手筈だったと思う。しかし最終回は西海岸からフィルポウシスの故郷オーストラリアに飛び、そこで残された女性たちはフィルポウシスの家族と対面することになっていた。そしたら、もう一人の20代女性は飛行機恐怖症で、どうしても乗れないという。そこをなだめすかしてなんとか空港までは連れてきたのだが、やはりどうしてもイヤなものはイヤだ。これには製作者側もフィルポウシスも困ったと思うが、でどうしたかというと、彼女は予定の場所に行けないということで、その場でタクシーに乗せられ、家に帰された。


私は最初、で、ここからまた一ひねりあるんだろう、と単純に思っていたら、最終回ではその女性はいないものとして話は進んでしまった。どうやら本当にタクシーに乗せられた時点で彼女は失格ということだったらしい。しかし、それはないんではないかという気は大いにする。その女性にも失礼だろう。とはいえ、製作スケジュールはたぶんタイトに決められていたのだとは思うし、今さら彼女一人を船に乗せるというわけにもフィルポウシスの家族を逆に西海岸に呼ぶというのも無理だったのだろうというのはわからないではない。わからないではないが、しかし、そのスケジュール自体は当初から決められていたはずで、飛行機に乗る可能性があるなら最初からそれがイヤな参加者は除外しておくのが筋というものだと思うのだが。あるいは、知っていてわざとそのことが後でドラマを提供するものと考えてほっておいたとか。


結局最終回はその女性なしで進み、当然のようにフィルポウシスはアマンダを選んだ。本気でつき合って子供が欲しいとか考えていたら、48歳の女性と20代のアマンダとではその選択はどこから見ても当然で、考えるまでもないだろう。まったくひどいアンチ・クライマックスだと思わせられた。ま、公平を期するために一言言い添えると、うちの女房は見終わって面白かったーと言っていたから、ある一定層にアピールしたことだけは間違いない。とはいえ、番組の第2シーズンを作ろうとは間違っても考えないでもらいたい。あの視聴率ではあり得ないとは思うけど。   






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Age of Love


エイジ・オブ・ラヴ   ★★

 
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