Dark Phoenix


X-Men: ダーク・フェニックス  (2019年6月)

正直言って「X-メン」を見るなら、「アベンジャーズ」だって見ていいと思う。どっちもSFだしスーパーヒーロー多数出演ものだし、およそ信じ難い展開や秘密兵器や超能力が五万とある。「アベンジャーズ」が風呂敷広げ過ぎて嘘くさいなら、「X-メン」だってそんなに変わらないだろう。とは頭では思うのだが、しかしなぜだか「アベンジャーズ」にはあまり惹かれない。 

 

一方、「X-メン」だって、一時、なんだかなと思わせられた時期はあった。2006年の「ファイナル・ディシジョン (The Last Stand)」を見た時に、もう、「X-メン」、いいや、と思ったのだが、2011年の「ファースト・ジェネレーション (First Class)」で復活、また付き合うことになった。 

 

考えるに、私が今一つ「アベンジャーズ」に惹かれないのは、その後付けの成り立ちが気に入らないことに関係あると思う。元々一人立ちできないB級スーパーヒーローたちが、なんとかせねばと由来生い立ちを気にせずに一蓮托生的に連携しようとしているのが、どうしても気に食わない。元々は違う世界で生きてきたものを無理やり一緒くたにしたものだから、全員揃ってもどうしても絵にならない。歪なのだ。そもそもの「アベンジャーズ」で、グランド・セントラル・ステイション跡地で揃ったアベンジャーズを見て、様にならない、全然格好よくない、と思った印象が未だに根強く残って支配している。その印象が時間が経っても薄れていかない。しかもその風呂敷を畳むどころがますます広げていったために、よけい付き合いきれなくなった。 

 

一方で、「アベンジャーズ」が人気があるのは、そのごった煮加減にあるのだということも、なんとなく理解できる。なんでもありなのだ。その絵にならなさ加減が、逆にある種のツボを刺激する。はまる人ははまるだろうなと思う。 

 

いずれにしても、たぶん現行シリーズとしてはこれが最後の作品になる「アベンジャーズ/エンドゲーム (Avengers: Endgame)」は、ロングラン公開しているし、興味なくはなく、ずっとどうしようか、見ようかと迷っていて、さすがにそろそろ公開も終わりそうだし、見てみるかと決心した。 

 

とはいえ、前後編公開の後編である今回の「エンドゲーム」は、マーヴェル・ユニヴァースの一作品というだけでなく、前編の「インフィニティ・ウォー (Infinity War)」を見てないと話についていけない。それでストーリーをおさらいしたのだが、こういうのって、やっぱり、文章でストーリーを読むと、つい大人の常識が顔を出して、こんなバカな話ってあるか、と思ってしまう。もちろんこれは「アベンジャーズ」だけの責任ではなく、「X-メン」だって、あらすじを文章で読んだりすると、そりゃあり得ないだろ、という展開でしかないが、しかし、映像としてではなく先に筋を文章で読んでしまうと、噴飯ものでしかない。一応大まかなストーリーだけでも抑えておくかと考えたのは、失敗だった。 

 

その上、上映時間が3時間だ。180分だ。マジかよ、と思った。前後編の後編だけで3時間か。通しで見ると5時間半だ。いくらなんでもこれでは付き合いきれん。一方、「ダーク・フェニックス」は、基本的に数多いるX-メンの中から、今回はフェニックスことジーン一人に焦点を当てており、間口は狭く、上映時間も115分と、心暖まる時間だ。エンド・ロールに5分かかるとして、110分で済むだろう。というわけで、やっぱり「アベンジャーズ」は諦め、「ダーク・フェニックス」一本に絞る。 

 

X-メンでは、ジーンの力は、印象としてはゼイヴィア/プロフェッサーXとタメを張るか、それをも凌ぐ。サイコキネシスとテレパシーとどちらが力が上か。本当のことを言うと、私自身は最強のX-メンは相手の力を倍返しできるマリー/ローグと思っていたのだが、それだと本当にそれで終わってしまうことがわかったからか、彼女はいつの間にかいなくなった。調べてみると、実際マリーは「フューチャー&パスト (Days of Future Past)」で大きな役を与えられていたが、ポスト段階で大きくカットされたらしい。つまり、X-メンの世界でも出る杭は打たれてしまったようで、あまり大きな力を持ち過ぎると、周囲が持て余す。可哀想なマリー。 

 

それで後日、マリーの活躍をフィーチャーした、「フューチャー&パスト: ローグ・エディション (Days of Future Past The Rogue Cut)」という、外伝みたいなものができた。それにしても「ローグ・エディション」というと、どうしても「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー (Rogue One: A Star Wars Story)」を思い出さざるを得ず、しかもこちらも本編「スター・ウォーズ」の外伝だ。これらを考慮するに、マリーが今後再び活躍する機会は、今の段階ではなさそうだ。 

 

いずれにしても、「X-メン」で力が上位の者は、ゼイヴィアにせよジーンにせよマリーにせよエリック/マグニトにせよ、実際問題としてほとんど動かない。念じるだけですべてが事足りるからだ。アクションは彼ら自身ではなく、もっぱら彼らの力を受ける対象によって表現される。


X-メンにおける能動的なアクションは、レイヴン/ミスティークやハンク/ビースト、今シリーズでは客演的だったローガン/ウルヴァリンが担当している。そのローガンが去り、レイヴンもいなくなった。そしてローガンの衣鉢を継ぐものと思われたハンクが、学園の経営陣に収まってしまう。アクションとしては視覚的に最も楽しませてくれるピーター/クイックシルヴァーが残っているのが救いといえば救いだが、そのピーターだって、今回は前回ほど活躍していない。ピーターを使わずしてどうやってアクションで魅せるというのか。どうやら「X-メン」は、再度曲がり角の時期に来ているようだ。 

 











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1992年。幼い時に力を制御できずにクルマで事故を起こし両親を死傷させたジーンは、ゼイヴィア (ジェイムズ・マカヴォイ) の要請でX-メンの一人、フェニックスとして活動していた。折りしも宇宙空間でスペース・シャトルの事故があり、大統領の要請で出動したX-メンは無事乗組員を救助するが、しかしその時、ジーン (ソフィア・ターナー) は巨大な宇宙空間のエネルギーを自分自身の内面に吸収してしまう。無尽蔵の力の制御ができなくなったジーンは、自分がかつて殺したと思っていた父が生きていることを知り、NYに向かう。X-メンもジーンの後を追うが、諍いになり、ジーンはレイヴン (ジェニファー・ロウレンス) を過って殺してしまう。ジーンは、ゼイヴィアと袂を分かち、仲間たちと慎ましやかに隠遁していたエリック (マイケル・ファスベンダー) を頼るが断られる。そこを軍部に急襲され、かつての僚友レイヴンと仲間を殺されたエリックは、ジーンの抹殺を決意する‥‥  


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