放送局: FOX

プレミア放送日: 12/25/2003 (Thu) 20:00-22:00、1/1/2004 (Thu) 21:00-22:00

製作: 19エンタテインメント

製作総指揮: サイモン・フラー、リチャード・ホロウェイ、ナイジェル・リスゴー、マーサ・ブラス

製作: コンラッド・グリーン、ケン・ワーウィック

クリエイター: サイモン・フラー

監督: ジョナサン・ブリン

ホスト: アンソニー・マクパートリン、デクラン・ドネリー


内容: 世界中で行われた「アイドル」コンテストの優勝者から、世界一のアイドルを選出する「ワールド・アイドル」コンテスト中継。


各国代表:

カナダ: ライアン・マルコム「Canadian Idol」優勝

ノルウェイ: カート・ニルセン「Idol」優勝

オランダ: ジャメイ・ローマン「Dutch Idols 2003」優勝

イングランド: ウィル・ヤング「Pop Idol」優勝

ポーランド: アレックス「Idol」優勝

アメリカ: ケリー・クラークソン「American Idol」優勝

ベルギー: ピーター・エヴラード「Idool」優勝

ドイツ: アレクサンダー・クロウス「Deutschland Sucht Den Superstar」優勝

汎アラブ: ディアナ・カルゾン「Super Star」優勝

南アフリカ: ハインツ・ウィンクラー「Idols」優勝

オーストラリア: ガイ・セバスチャン「Australian Idol」優勝


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今年第2シーズンを迎えた「アメリカン・アイドル」は、「ジョー・ミリオネア」と共に、FOXのみならず、今年のアメリカTV界全体を代表する人気番組となった。事実、今年前半は、この2番組だけでFOXのほとんどの視聴者を稼いでいたと言ってもいいくらいの人気があった。


ところでその「アイドル」、実はアメリカ版がオリジナルではない。元々は英国で放送され、人気を博した「ポップ・アイドル (Pop Idol)」をアメリカ風に焼き直した‥‥というか、ほとんどそのままの番組である。アメリカで昨年放送されたこの第1弾がかなり話題となり、今年放送された第2弾が前回を上回る人気を獲得したことで、人気番組として定着したものだ。


だいたい、リアリティ・ショウというものはある国でブレイクすると、遠からず他の国でもその国のテイストに合わせてマイナー・チェンジが施されて放送される運命にある。もちろん「ポップ・アイドル」も例外ではなく、これまでに世界各国で同様の番組が製作され、そして新しいアイドルが生まれてきた。その、世界各地で生まれたアイドルを一堂に集め、世界一決定戦を行ってみたらどうなるかという企画を実現させてしまったのが、この「ワールド・アイドル」だ。


「アイドル」はこれまで、世界11か国でご当地版が製作されている。つまり、これまでに11人のご当地版アイドルがいる。もちろん、既に第2シーズンも終わっているアメリカのように、ある国ではもう何人もアイドルが生まれている場合もあるが、それは置いといて、「ワールド・アイドル」では、一国一人代表を建て前にワールド・コンペティションを開催している。基本的にその国の初代アイドルが代表として選ばれており、アメリカ代表はもちろん、第2シーズン・アイドルのルーベン・スタッダードではなく、初代アイドルのケリー・クラークソンだ。


その「ワールド・アイドル」、従来のような勝ち抜きスタイルではなく、2部構成の特別編成で、最初の週ですべてのアイドルが歌い、翌週その結果を発表するという構成をとっている。ジャッジもそれぞれの国の「アイドル」のジャッジが顔を揃え、できるだけ評価に偏りがないようにしている。もちろんアメリカ代表のジャッジとしては、番組の功労者、サイモン・コーウェルが参加している。サイモンは英国人であり、元々はオリジナルの「ポップ・アイドル」のジャッジでもあり、本当は英国代表ジャッジとして出るべきところなんだろうが、しかし、「アメリカン・アイドル」の顔になっちまったからな。


番組ホストは「ポップ・アイドル」の二人組みの英国ホストで、よく息の合った、かけ合い漫才みたいなホストぶりを発揮している。なるほど、第1シーズンの「アメリカン・アイドル」で、ホストがライアン・シークレストとブライアン・ダンクルマンの二人いたわけは、このペアを模していたわけだな。「アメリカン・アイドル」では、この二人の仲が悪かったのか、第2シーズンからはホストはシークレスト一人だけになってしまったが。


「ワールド・アイドル」、番組前篇は、なんとクリスマス当日の12月25日に2時間、優勝者を決める後篇は、今度は翌週の2004年1月1日に1時間の放送である。基本的にアメリカでは、大きなホリデイ当日は、人々はTVを見ない。アメリカにおいて人々が最もTVを見ない二大特異日が11月の感謝祭と12月のクリスマス・イヴであり、歴史的に家族の集まりであるこの両日には、人々は食卓を囲み、家族の団欒の一時を過ごすことになっている。であるから、TV局も普通、この両日は再放送のオン・パレードであり、わざわざドラマの新エピソードを持ってきたりしない。どうせ誰も見ないのがわかりきっているからだ。


「ワールド・アイドル」はクリスマス・イヴではなく、クリスマス当日に編成されたわけだが、もちろんあまり変わりはない。いずれにしても、この日もやはり人々はあまりTVを見ないからだ。別の意味でニュー・イヤーズ・デイも似たようなものだ。ただしこちらは、人々はニュー・イヤーズ・イヴから外で乱痴気騒ぎをしたり、遊び歩いたりすることが多いのでTV視聴者が減るという点が、感謝祭やクリスマスとは異なっている。


とはいえ、アメリカの視聴スタイルも変わってきており、現在では感謝祭やクリスマスでも、家族の団欒とやらにも飽きがきたティーンエイジャーや、都会の一人暮らしをしている若者、若いカップルは、もし外を遊び歩かないならば、通常通り、家でTVを見たりして余暇を過ごすという者が多い。「ワールド・アイドル」のクリスマス/正月放送は、逆に、そういう視聴者を見込んでのカウンター・プログラミング的編成だと言うことができるだろう。


さて、本題の「ワールド・アイドル」であるが、各自が歌い終わった前篇を見終わったところで、私と女房の意見では、最も才能が感じられたのがオーストラリア代表のガイ・セバスチャン、現時点で実力と才能とが最も高い次元でまとまっているのがアメリカ代表のケリー・クラークソン、しかし、最も気に入ったのはイングランド代表のウィル・ヤングということで、二人の意見がぴたりと一致した。特にヤングは、歌がうまいというよりも声と雰囲気で聴かせるタイプで、彼はゲイだな。なぜだか我々夫婦はゲイのシンガーに弱いところがあり、一時二人してルーファス・ウェインライトにはまっていたが、ヤングもタイプとしては似ている。既に本国では人気者のようだ。


英語圏での開催ということで、多分、日頃英語を使い慣れていない者も多かったのだろう、英語圏外からの出演者による英語の歌は、ちょっと歌い込んでいないという印象をかなり強く受けた。これが母国語での歌ならまだ歌えたんだろうが、そういうハンディキャップが最初からあったせいか、わりとできふできに差があったように感じた。とはいえ英語で歌わなければならないというルールなぞはなかったようで、事実、他の全員がとにかく慣れないなりにも英語で歌う中、汎アラブ代表のディアナ・カルゾンは、ただ一人英語ではなく、アラビア語で歌っていた。しかし、全世界から投票を受けるのに、やはり、ただ一人アラビア語というのは、ハンデになりこそすれ、メリットはないなあとしか思えないというのは確かにあったが。


全員が歌い終わってからの各国における電話投票は、ポイント制で換算する (要するに、この番組、出演者の国全部で放送したんだな。) まず、アメリカなら、アメリカ代表のクラークソンに自動的に12ポイントが入る。以下10人は、獲得投票の多かった順に、10ポイントから1ポイントまでが与えられる。イングランドならまず同国代表のヤングに12ポイント与えた上で、成績のよかった順に10ポイントから順々にポイントを獲得していくわけだ。もちろん、最終的に獲得ポイントが最も高かった者が、初代ワールド・アイドルだ。


正月に放送された番組のその開票では、最初になぜだかゲストのパフォーマンス・コーナーがあって、いきなり歌い出したのは、誰あろう元スパイス・ガールズの一人、現ベッカムの奥さんのヴィクトリア・ベッカム。それだけでなく、彼女の後にはなんとエルトン・ジョンまで登場して歌い出したのにはびっくりした。なんというか、二人共こういう番組向きではなく、完全に浮いていた。いくら英国で収録しているからとはいえ、これは完全に人選ミスとしか思えない。特にヴィクトリアは口パクの上、カイリー・ミノーグの下手な物真似をしているようにしか見えず、これを「アイドル」で歌ったら、一発でサイモンから酷評されてアウトだな。


さて、そしてついに開票、まず、地元イングランドからの発表で、ヤングはまず、自動的に12ポイントを獲得。あとは10位から1位まで順にカウント・ダウンしていく。セバスチャンとクラークソンの争いになるかと思いきや、セバスチャンは5位 (6ポイント) で、クラークソンも2位 (9ポイント) 止まり。1位10ポイントを獲得したのは、なんとノルウェイ代表のカート・ニルセンだった。


ニルセンは、にこにこ顔の坊や面した、それほど背の高くない、どちらかというとやや体重過多の気味がある青年で、私は彼を見た途端、なんか、帽子を被らせたら絵に描いたような北欧の郵便配達夫になりそうだと思った。ニルセンはコンペティションの最後の最後でU2の「ビューティフル・デイ」を歌ったのだが、その声質が実際にボノと似ており、まるでU2のCDを聴いているような感じで歌ったのが受けたのだと思われる。


しかし、それではただのうまいカラオケで、こんな感じで歌える者なら、世界中どこにでもいるぞと私は思うのだが。また、ニルセンは前歯の間に隙間があり、それがげっ歯類のような愛嬌を醸し出している。オーストラリアのジャッジからもまるでホビット・アイドルだねと評され、私も言い得て妙と思っていたのだが、その辺のキャラクターも買われたに違いない。しかし、それでは、普通、アイドルというのとは違うんじゃないかあ。


開票はその後も、どの国も似たような感じで進んでいく。圧倒的にどこの国でもニルセンが強く、そのすぐ下にクラークソン、やや離れてヤングとセバスチャンといった感じで、我々夫婦のお薦めのヤングは、はっきり言ってちょっと人を選ぶだろうとは思っていたが、やはり無理なようだ。実際、ヤングはロックやパンク、プログレを生んだ国だからこそ勝てたのだろうが、そうでない国で彼がアイドルとして売り出せるかというと、正直言ってやはり疑問ではある。


結局、ほとんどの国でニルセンがクラークソンを僅差で抑えるといった感じで開票は進み、それは最後の南アフリカでも変わらない。ここではクラークソンは3位、ヤングが2位、ニルセンが1位で、最終得票数はニルセン106ポイント、クラークソン97ポイントで、ニルセンが初代ワールド・アイドルとなったのであった。ヤングは72ポイントで5位、セバスチャンは少なくともTVの画面上では最終得票数は出ず、惜しくも圏外ということになった。ヤングは意外に健闘したなというのが正直なところである。さてと、これを書き終わったらまた、ヤングのCDでも聴こう。







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World Idol

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