放送局: ABC

プレミア放送日: 3/30/2000 (Wed) 22:00-23:00

製作: タッチストーンTV、イマジンTV

製作総指揮: ピーター・バーグ、ロン・ハワード、ブライアン・グレイザー、トニー・クランツ

共同製作総指揮: ジョン・デイヴィッド・コールス

監督: ピーター・バーグ

脚本: ピーター・バーグ

撮影: ロン・フォーチュナト

編集: ダン・リーベンタール

音楽: クレイグ・ウェドレン

出演: テッド・レヴァイン(ロバート・バンガー)、マーティン・ドノヴァン(ニール・ハリソン)、ミシェル・フォーブス(ライラ・ガリティ)、ビリー・バーク (エイブ・マシューズ)、マイケル・ジェイ・ホワイト (デリク・ハッチャー)、ジョエル・カーター(ヘザー・マイルス)、パトリシア・クラークソン(タミー・バンガー)


物語: ニューヨークの精神病院に勤務するバンガー医師は最近妻と別れ、子供の養育権で争っているなど、仕事でも家庭でも難問を抱えている。ハリソン医師の妻ライラは妊娠中で、同じ病院の緊急ユニットで働いている。ハッチャー医師もプライヴェートではシングル・パパという生活を強いられていた。ある時マンハッタンのど真ん中である男が銃を乱射、彼と怪我人が病院に運ばれてくる。緊急ユニットで働いているライラはベッドに縛りつけられている男を診療しようとして、いきなり暴れ出した男のために妊娠中の腹部に注射針を突き立てられてしまう‥‥


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本当はこの番組について書こうかどうか迷ったのである。というのもこの番組、たった2回放送されただけでキャンセルされてしまったからだ。今後日本どころかアメリカに住んでいても二度と見る機会のない番組のことを書いてもなあ。しかし番組評とかは概してよく、視聴率もとりたてて悪いというわけでもなかった。裏番組に「ER」を控えて、最近これほど健闘した番組はなかったくらいである。


実際、見てみると結構面白い。精神病院を舞台とした人間ドラマなんてそうそうないだろう。しかも製作はロン・ハワード主宰のイマジンTVである。番組の質は保証されているようなものだ。それなのにキャンセルされてしまったというその経緯がいかにもアメリカのTV番組らしい理由なので、そのことを書いてみたい。


まず、事の起こりは精神に障害を持っている者たちの権利を擁護する団体、全国精神障害者連合 (National Alliance for the Mentally Ill) が番組に対して文句をつけたことから始まった。番組が精神障害者に対してネガティヴな印象を人々に与えかねないというものだった。特に番組内の暴力描写に対し懸念を表明していた。これに対し、番組にコマーシャルを流しているスポンサーの1社、スコッツ社が即座にスポンサーを下りると発表した。この辺り、機を見るに敏なアメリカの企業の体質を見事に反映している。対応が早ければ早いほどマスコミや人々から好感されることを充分承知した上での判断である。抑鬱剤とかを製造している同じく番組スポンサーのアストラゼネカ製薬も、すぐにこれに倣った。


こういうものはいったん拍子がつくとあとは雪崩現象である。他の番組スポンサー、ジョンソン&ジョンソンやワーナー-ランバート社も番組に懸念を持っていることが伝えられただけでなく、地方のABC系列局までが、うちはこの番組を放送しないと言い出した。まったく、ABC系列局はABCから補助金を貰って経営している地方局である。それなのに飼い主の手を噛むような行動に出たのだ。ABC首脳陣のはらわたは煮え繰り返ったであろうというのは想像に難くない。まあ、どこの国でもそうだろうが、アメリカでも地方へ行けば行くほど保守的になる。地方のABC系列局が世論に敏感に反応したのもわからないではないが。


ABCは最初、番組は題材に対して徹底的なリサーチを事前に行なっており、誰に対してもオフェンシヴな表現はとっていないと番組を擁護していた。しかし、この期に及んでこれ以上番組の弁明をするとよけい自分で自分の首を締めることになりかねないと思ったらしく、番組を2回放送した後、突如キャンセルを発表したのである。


普通、アメリカの新番組は放送前にだいたい6話前後製作を終えている。それから放送局は放送後の評判や視聴率との兼ね合いを見ながら、番組製作会社に対し小出しに追加エピソードをオーダーしていく。どんなに製作者の名前が売れている場合でも、まだ評価の定まらない新番組を最初から1年分22-24話オーダーするというのは、余程のことがない限りまずあり得ない。いずれにしても「ワンダーランド」も既に8話は製作済みである。製作費を回収するという意味でも製作した分は放送したらと思うのだが、そこが素人の浅薄さだ。


例えば、番組を放送した段階で既に2社はスポンサーを下りると発表している。問題を起こしてスポンサーが下りた経歴のある番組が、次のスポンサーを見つけることのできる可能性は小さい。たとえ見つけることができたとしても、大きなディスカウントを余儀なくされるであろう。そういう番組をかばって放送したことで、世論から攻撃を食らう場合もある。あれやこれやで、たとえあと6回分を未放送のままお蔵入りさせても、TV局としては次の新番組を編成した方が得だと判断するのだ(実際に今回ABCがとった方策は、他番組の再放送を編成するというものだったが。)


また、最近はネットワークが姉妹チャンネルをケーブルTVに持っている例も多く、中途キャンセルされた番組をケーブル・チャンネルで放送したりもする。例えば、昨年やはり数回放送された後キャンセルされたFOXのSFシリーズ「ハーシュ・レルム (Harsh Realm)」は、製作が「X-ファイル」のクリス・カーターであることもあって、視聴率は悪かったが一部の熱心な「X-ファイル」ファンはこちらも真面目に見ていた。FOXはそれを知っていたから、地上派ネットワークのFOXからはキャンセルしたが、すぐにケーブルの姉妹チャンネルFXで続きを放送し始めた。最近はこういう編成の仕方もあるのである。しかし、「ワンダーランド」はなあ。そういうのとも違うからなあ。ABCだってライフタイム・チャンネル等の姉妹チャンネルがケーブルにあるのだが、そういうところでも放送される可能性はほとんどないだろう。


製作総指揮、脚本、監督と3足の草鞋を履いているピーター・バーグは「シカゴホープ」出身。「シカゴホープ」でこの番組のアイディアを得たんだろうなということは容易に想像できる。何でも実際にニューヨークの有名なベルヴュー精神病院に何か月もほとんど入院状態で取材を敢行したらしい。因みに「ワンダーランド」という番組タイトルが正式に決まるまでは、番組の仮タイトルは「ベルヴュー (Bellview)」だった。番組の主演の一人、マーティン・ドノヴァンはハル・ハートリーの映画でお馴染みであり、私は彼がついにスターになる機会を得たかと注目していたんだが。どちらも残念。






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Wonderland

ワンダーランド   ★★★

 
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