Wipeout  ワイプアウト

放送局: ABC

プレミア放送日: 6/24/2008 (Tue) 20:00-21:00

製作: エンデモルUSA

製作総指揮: マット・クニツ

ホスト: ジョン・アンダーソン、ジョン・ヘンソン、ジル・ワグナー


内容: 勝ち抜き体力勝負リアリティ。


I Survived a Japanese Game Show  アイ・サヴァイヴド・ア・ジャパニーズ・ゲーム・ショウ

放送局: ABC

プレミア放送日: 6/24/2008 (Tue) 21:00-22:00

製作: グリーングラス・プロダクションズ

製作総指揮: アーサー・スミス、ケント・ウィード、デイヴィッド・サイドボサム、カーステン・バーソリン

ホスト: トニー・サノ

「本気で」ホスト: ロム・カンダ


内容: 10人のアメリカ人を日本に送り込んで勝ち抜きゲーム・リアリティ・ショウに参加させる。


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現在、日本のリアリティ・ショウの面白さに疑問を挟む者はもはやアメリカには存在しない。この路線としては「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」転じてABCの「アメリカズ・ファニイスト・ホーム・ヴィデオス (America’s Funniest Home Videos: AFHV)」に端を発する日本製リアリティ・ショウは、その後、フード・ネットワークの「料理の鉄人 (アイアン・シェフ (Iron Chef))」、スパイクTVの「風雲! たけし城 (MXC: Most Extreme Elimination Challenge)」等を経て、G4の「SASUKE (ニンジャ・ウォリアー (Ninja Warrior))」で完全にアメリカの視聴者に根づいた感がある。


そして今、ABCが「AFHV」に続いて送り込む日本製リアリティ・ショウを換骨奪胎した新番組が、「ワイプアウト」と「アイ・サヴァイヴド・ア・ジャパニーズ・ゲーム・ショウ」の2本だ。「ワイプアウト」の方は、「たけし城」と「SASUKE」を足して割ったような体力勝負番組であり、一方の「アイ・サヴァイヴド‥‥」は、アメリカ人参加者を日本に送り込んで日本の勝ち抜き体力勝負系のリアリティ・ショウに参加させるという体裁をとっている。


まず「ワイプアウト」だが、毎回24人の参加者を集め、ラウンド制で参加者を絞り、最後まで勝ち残った者がその回の優勝賞金5万ドルを手にする。最初の競技は水の上の浮きを渡って向こう岸に達し、壁から突き出るパンチの嵐をくぐり抜け、巨大4連バルーンの上を跳び歩き、最後はターザンよろしくロープを使って出島に着地するまでのタイムを競い、これでまず参加者を半分の12人まで篩いにかける。


もちろん時間勝負なのだが、見ているとこれが結構恣意的だ。例えばパンチング・グローブのコーナーでパンチを食らって泥沼に落とされると、そこから、あるいは最初からやり直すのではなく、参加者はそのまま泥プールから這い上がってすぐに次のバルーン・ジャンプ (ビッグ・ボールズ) まで進んでいるように見える。それだと、すぐにパンチを食らって落とされ、這い上がって次に進む方が、最後までパンチを食らわないようにゆっくり着実に向こう側にたどり着く者より速い。失敗した者の方がいいタイムが出るのだ。


同様のことは次のバルーン・ジャンプにも言える。実は弾む巨大バルーンの上を跳ね歩くこの競技が視覚的には最も面白い。まず全員あっちに跳ね返り、こっちに跳ね返りして結局水の上に落ちてしまうからだ。印象で言うとこの競技が最も似ているのは、「たけし城」の「ローラーゲーム」で、共に参加者がどうやって落ちるのかこそが醍醐味だ。ただこの競技も、見ていると落ちた参加者はそのまま次の競技のターザン・ロープまで進んでいるようで、これまで見た限りでは、バルーン・ジャンプを最後まで成功させた参加者は一人だけだった。これでタイムを競う意味はあるのか。


しかも第1ラウンド最後のターザン・ロープは、プール中央の浮島に無事着地しないといけないはずだと思うのだが、これも半数以上は途中で水の上に落ちる。バルーン・ジャンプとターザン・ロープなんて、競技自体よりも泳ぎがうまい方がタイムを縮められるなと思ってしまう。いずれにしてもこれらの競技は見てくれよりもかなりスタミナを消費するようで、参加者の半数以上はターザン・ロープにたどり着くまでにへろへろだった。結局こういう恣意的なタイム測定に因っているせいだろう、第2ラウンドに進む12人を発表する段階になっても、参加者のタイムは発表にならない。タイム順とはいっても実際にはほとんど番組プロデューサーの胸先三寸で次ラウンドに進む者が決められるという感じだ。


その次の競技はスイーパーと呼ばれるもので、これまた「たけし城」にあった、回転するサーフ・ボードの上に乗り、障害物を跳んだりしながらクリアする競技を連想させる。スイーパーは要するにそれを逆にしたもので、競技者は全員、プール上に上から見て円を描くように立てられた棒状の上に立ち、時計の針のように周回してくるバーをジャンプしてやり過ごす。もちろん足がひっかかったりして失敗して落ちると失格。最後まで残った6人が次のラウンドに進む。脱落者が出るまでスイーパーのバーの回転が速く、高くなっていくので、見ているとかなりスリリングだ。時々バーを飛び越えられなかった参加者がバーにひっかかったままもっていかれると、次にジャンプする者の邪魔になり、連続して落ちたりする。


プレミア・エピソードの第3ラウンドは、回転ジムに参加者を乗せて派手に回転させて三半規管を麻痺させた後、プール上の浮島を落ちないように向こう岸に到達するというもの。いったん高速回転ジムに乗ると、止まるまで降りることは許されない。一度なんかこらえ切れなくて回されながら吐いた者がいて、それが隣りで身動きできない女の子に降りかかっていた。おえーっ。


これらの競技を終えた段階で残る4人が最終ラウンドに進む。最終競技は滑り台からプールに滑り落ちた後、転がり落ちてくるドラム缶を乗り越え (「たけし城」の岩石落としに近い)、壁を横伝いに這って、回転するスピナーの上にジャンプ、さらにそこから向こう側にもう一度ジャンプ、最後は連続トランポリンでゴールに到達する。実は実際にタイムが画面に表示されるのはこの最終ラウンドだけだ。


それぞれの競技の内容は毎回同じではなく、回によって少しずつ違う。視聴者が面白く感じるよう、マイナー・チェンジを施しながらグレード・アップを図っている。例えばプレミア・エピソードの回転ジムは、第2回ではテニス・ボールを流すベルト・コンベア上を逆走させる (「SASUKE」の逆走コンベアだ) というのに替わっていた。スイーパーでは、第2回では参加者は頭陀袋の中に足を突っ込んだままジャンプさせられていたし、その後では周回するバーに巨大な輪っかがつけられ、ジャンプする時にそれも潜り抜けなければならないという風になっていたり、さらにバーの上に鳥のオブジェを設置してその上を飛ばさせたりしていた。あれは難しそうだ。むろんだからこそ見ている分には面白い。個人的にはこのスイーパーとバルーン・ジャンプが視覚的に最も面白いと思う。


最終ラウンドは視覚的に派手にしたいんだろう、回が進むと競技中の参加者の頭上から泡やら滝やらがざんざんと降りそそぐようになった。それはいいんだが、プール上に融けない泡がてんこ盛りになったせいで、参加者がプールに落ちるとほとんど姿を隠してしまう。顔もほとんど泡の中に埋まってしまい、あれじゃあ呼吸も大変そうだ。事故が起きないか本気で心配してしまう。


一方「アイ・サヴァイヴド・ア・ジャパニーズ・ゲーム・ショウ」は、参加者を本当に日本に連れてきて、日本製勝ち抜きリアリティ・ショウ「本気で (マジで)」に出演させて競わせるというものだ。もちろん「マジで」なんて番組が実際にあるわけではなく、番組内番組であるわけだが、ちゃんとホストもいればスタジオ内に観客もいる。観客は、見ているとどこぞの大学短大のマスコミ研究会のようなサークルから有志を募ってきた、というか、金出して観客のバイトさせているという感じがありありとする。彼らが参加者を指差して笑っているショットとかがよく挟まるのだが、自発的に笑っているというよりも、ディレクターのキューに合わせて笑う演技をしているという雰囲気が濃厚だ。


番組第1回ではLAに集まってきた10人の参加者がその場で日本行きを告げられ、機上の人になる。次のシーンはもう渋谷のスクランブル交差点近くでの結団式で、「ワイルド・スピードX3」「ジャンパー」に続いて「アイ・サヴァイヴド‥‥」と、ハチ公前はいまや世界名所だ。参加者にカメラを向ける通行人もいるが、別に彼らは少なくとも今のとこ有名人じゃありません。


その後参加者は下町あたりのホテル、というよりも旅館に連れてこられ、小さなベッド (布団?) や日本製のおつまみや飲み物、リモートつきのトイレにいちいち驚いたりしている。その旅館、表にかかっている看板には「本気寺」と書かれているが、テロップには「Kasai House」と出る。どうやら番組のために一時的に改名したというか、別の看板を掲げているものと思われる。ママさんと呼ばれる女将さんは当然俳優だろう。


さて10人の参加者は翌日から東宝スタジオの第10スタジオで収録の「マジで」に出演、勝ち抜き競技に挑む。ホストはRomu Kandaで、神田瀧夢と字幕が出た。要するにカンダ・ロムだ。ところがABCの番組サイトでは、彼の名前はRome Kandaと表記されている。だから番組が始まるまでは、私はてっきりローマ・カンダと発音するものと思っていた。明らかにABCのサイトのミスである。カンダはほとんどのMCを日本語でこなし、英語字幕が出るが、参加者に相対する時はちゃんと英語を喋っている。しかし参加者に番組名「マジで」の意味を説明するのに、「マジで」の英意を「You got to be crazy」と言っていたが、やっぱりどっちかっつうと「You got to be serious」っつうのがより正しいのではと思わないでもない。


その後参加者は全員カタカナと英語で自分の名前が書かれたゼッケンを渡され、イエロー・ペンギン・チームとグリーン・モンキー・チームに分けられ、2チーム対抗で競技に挑む。最初の競技、「コンベ屋食堂 (Conveyer Restaurant)」は、頭上におもち入りの皿が乗っかったヘルメットを被った参加者が、ベルト・コンベアの上を走る。と、高台で待っているもう一人の相方は手を使わずにその頭の上からもちを口だけを使ってつまみ食うというものだ。当然相方がより多くのもちを食ったチームが勝つ。ベルト・コンベアのスピードに負けて流されると、そこは白い粉で埋め尽くされており、そこに落ちた競技者は真っ白の粉まみれになるというのがいかにも日本のリアリティ・ショウっぽい。


「コンベ屋食堂」で買ったのはグリーン・モンキー・チームで、負けたイエロー・ペンギン・チームはバツ・ゲームとして浅草で人力車を引く修行をさせられる。勝ったグリーン・モンキーはヘリコプターで東京上空遊覧観光だ。イエロー・ペンギンはその中から最も貢献しなかった二人を選び、そのどちらかを追放する敗者決定戦を行う。その二人は黒人のベリンダと白人のダーシーで、二人共女性だ。二人は虫の格好をさせられて「虫人間コンテスト (Big Bugs Splat on Windshield)」で勝負、トランポリンでジャンプして的に磁石版を貼りつけて得点を競う。結局勝ったのはベリンダで、ダーシーが最初の追放者になった。


ただしこれにはひねりがついていて、番組第2回ではベンの体調が悪くなって入院、結局いったんは追放されたダーシーが帰ってきた。この回の競技はゲーセンでぬいぐるみをクレーンでつかむやつを巨大化した人間クレーンで、負けたグリーン・モンキー・チームにいたダーシーはまた敗者決定戦に出されたが、結局そこで負けて追放されたのはオルガだった。


番組の中味そのものよりも最も気になるのが、コマーシャルのたびに現れる日本語のタイトル・ロゴで、「I Survived a Japanese Game Show」の「Japanese…」以降の部分が途中で反転して日本語になるのだが、それが「ム番組を生還したぞ」になる。つまり「I Survived a ム番組を生還したぞ」となるのだが、その「ム番組」ってなんだ「ム番組」ってのは、と、そこが非常に気になるのだった。単語の途中で文章を切らないでくれ。


番組は現在第6回の放送を終え、残りはドネル、ベリンダ、ジャスティン、ミーガンの4人になったところだが、いきなり第7回は2時間の番組最終回ということになっている。実は直前に放送されている「ワイプアウト」の方が圧倒的に視聴率がよく、「アイ・サヴァイヴド‥‥」の方は詰め込んで端折られたという印象が濃厚だ。私も実は放送が始まるまでは「アイ・サヴァイヴド‥‥」の方を期待していたんだが、いざ見てみると、「ワイプアウト」の方が面白いかなという気がしないでもない。それでも恒例で優勝者を予測すると、うーん、最も勝ちたいという意志が前面に強く出るドネルかなあ。彼はなんかNBCの「トゥナイト」でバンド・リーダーを務めているケヴィン・ユーバンクスをなんとなく思い起こさせるものがあって、なんか親近感を持ってしまうのであった。それにしてもベンはいったいどうなったのだろう。



追記 (2008年8月)

2時間枠の「アイ・サヴァイヴド...」最終回、屋外に出て言葉の通じない日本人と名刺交換して一緒にウェイヴさせる最初のゲームで落ちたのはベリンダ。次はスポンジでできた相撲着ぐるみに水分を含ませ、それを絞って得た水分の量を競い、ミーガンが落ちる。これは体力的にきつそうで、最も体格的にハンデのあるミーガンが最初から不利だった。ジャスティンとドネルの男同士の争いとなった決勝の種目は、これまでやってきた競技から7-8種繋ぎ合わせたもので、結局僅差でジャスティンが勝ち、優勝賞金の25万ドルを獲得した。皆頑張って番組を面白くしようとしてるのはよくわかるんだが、しかし番組に第2シーズンのある可能性はあまりなさそうだ。







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Wipeout

ワイプアウト   ★★1/2
I Survived a Japanese Game Show

アイ・サヴァイヴド・ア・ジャパニーズ・ゲーム・ショウ   ★★

 
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