White Collar Brawlers   ホワイト・カラー・ブロウラーズ

放送局 : エスクワイア

プレミア放送日 : 11/19/2013 (Tue) 22:00-23:00

製作 : オーセンティック・エンタテインメント

製作総指揮 : ジーン・バグリー


内容 : お互いに気に入らない企業従業員同士をボクシング・マッチによる殴り合いをさせる。


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White Collar Brawlers


ホワイト・カラー・ブロウラーズ  ★★1/2

世の中にはどうしても波長の合わない虫の好かない相手という者がいたりする。別に特に非常識なことをするとか許せないことをするというのではなく、ただ単純にそいつのすることやることがすべて気に食わない。屁理屈をつけてそいつがどんなに嫌なヤツかと説明することもできなくはないが、しかしそれに説得力のないことは自分が一番よく知っている。要するに合わないのだ。顔を見るとムカつく。


学生時代とかまでなら、それでもそれはそれでなんとかやっていける。会わないようにすることもできる。しかしそれが同じ会社の人間だったりするとアウトだ。 上から命じられた仕事をこなさなければならない場合、強制的にチームになったメンバーの一人が気に入らないからといって、それでチームワークを乱すことはご法度だ。ここは自分の気持ちはぐっとこらえて、嫌いな相手を立てなければならないという場面もあろう。それが大人社会というものだ。


とはいっても、やはり嫌いなものはどうしても嫌いでしかなく、どんなに我慢して一緒に仕事しようにも、そういう気分や感情は隠そうとしてもいくらかは表に出てしまうし、酒の席では不満を他の同僚にぶちまけてしまう。また、こちらが嫌いな相手は、ほとんどの場合、向こうもこちらを嫌っている。そうやって結局誰それさんと誰それさんは仲が悪いという状態は、会社の人間すべての周知するところとなる。


まあある程度大きな会社となれば、多かれ少なかれ派閥はあるものだったりする。しかし、やはり特定のある一人だけどうしても気に入らないという場合、それはもう派閥とは関係がない。どうしてもあいつだけは我慢できない、やることなすことすべてが癇に障る、虫が好かん、腹が立つという場合、どうすればいいか。


こういう膠着状態を一気に解決させてやろうじゃないかというのが、エスクワイアの「ホワイト・カラー・ブロウラーズ」だ。どうするかというと、簡単至極、最も単純かつ直接的な方法、つまりそこまで相手のことが気に食わないなら、思う存分殴り合いさせてやろうじゃないかという企画だ。とはいっても、ルール無用の喧嘩になってしまうと、大怪我になったりそれこそ武器持ってきて相手を刺したりということになりかねない。それでスポーツとして、つまりボクシングとして殴り合い、どつき合いをさせる。素人にボクシングをさせるというと、思い出すのはかつてFOXが編成した愚劣リアリティ・ショウの代表と言える「セレブリティ・ボクシング (Celebrity Boxing)」だが、こちらは基本的にシリアス路線であり、見世物ボクシングとは違う。


プレミア・エピソードで登場するのは、ニューヨークのとある企業で働くライアンとアンドリュウという二人の男性だ。この二人は同僚というだけでなく元々ルームメイトなのだが、部屋のリースが切れる時に金で揉めて、以来犬猿の仲らしい。お互いに思うところがあり言い分があるが、結局周りから見るとどっちもどっちみたいなところがある。しかし当人にとっては怒り沸騰というのは、洋の東西を問わずどこにでもあることなのだった。


二人はブルックリンの名門ジム、グリーソンズ・ジム (Gleason’s Gym) の門戸を叩く。そこで一と月以上、みっちり訓練を受ける。最初は二人ともわりと軽い気持ちだったようだが、ジムに一歩入った途端、そこは黙々とシリアスにトレーニングに励む男たちが汗を流す、泥臭く、汗臭い場所だった。そこにサンドバッグを殴る音が聞こえてくると、ホワイト・カラーのサラリーマンとしては、 結構ビビる。


二人には専属のコーチがつくが、最初は二人ともまったく様にならない。そういうもんだろう。ファイティング・ポーズをとった瞬間から、二人ともほとんど殴り合いをしたことはないだろうと知れる。ライアンに至っては縄跳びすらしたことがないんじゃないかというぎこちなさで、これで果たしてボクシングできるんだろうかと、他人事ながら気になる。


考えたら人を殴るという本当の喧嘩は、私の場合中学の時以来経験がない。当時朝の新聞配達をしていた私は、その途中で因縁吹っかけてきたおっさん、というかほとんどジジィにぷっつんして思わず手が出てしまい、その時お互いに 2、3 発殴りあったというのが、最後のフィジカルな喧嘩だ。やられるというだけなら、 NYに来てガラの悪いカリブ系のティーンエイジャーに一方的にパンチ入れられて囲まれ金を要求されたこともあるが、この時は多勢に無勢で反撃に至らなかったため、こちらもパンチを出したのは、かれこれ40年近くも前の話になる。それでもかなりよく覚えているのは、やはり普通の人間にとっては、殴り合いというのはそうそう経験するものではないからだろう。


さて番組では二人は特訓を受けてなんとか少しは様になるようになり、ついに決戦の時を迎える。ジムに親類知人関係者を呼び、二人はリングに上がる。勝負は1ラウンド2 分間の3ラウンド制だ。二人とも最初の時よりはそこそこボクサーっぽくなってはいるが、そこはやはり初心者、接近戦になるとつい首根っこに腕引っかけて倒そうとしたりする。特に鋭いパンチが当たったようには見えなかったが、第1ラウンドで既にライアンは鼻血で血塗れだ。1ラウンドが2分間というプロの3分という時間の3分の2の時間でしかないが、それでも既に第1ラウンドの後半は二人ともパンチが寄れて足がふらつく。


高校の時、ボクシング部のクラスメイトが言っていたが、初心者の場合、勝負に勝つにはまず根性、気合いだそうだ。インタハイかなんかで途中までは自分の印象では優勢に試合を進めていた試合が後半ひっくり返されたのは、相手が必死の形相で、死ね、死ねと言いながら闇雲にパンチを繰り出してきたため、ついビビって守勢に回ってしまったからだそうだ。特にこういう格闘技系スポーツでは、気持ちで相手に押されたら、勝てるものも勝てなくなる。


第2ラウンドでは、アンドリュウの左をダックしてよけたライアンが、カウンター気味の右をアンドリュウの顔面にヒットするという、ほとんどまぐれ的なクリーン・ヒットもあったりして、素人とはいえそれはそれで結構興奮させる。両者譲らず第3ラウンドの後半は、パンチというよりもただお互いに手を前に出している的な展開もあったりする。鍛え直せよというよりも、時に13ラウンド戦うプロって本当にすごいんだなと改めて感心する。結局KO劇にはならず勝負は判定にもつれ込み、スプリット・デシジョンでライアンに軍配が上がった。勝っても負けても二人とも感極まって泣いていた。やはり身体を動かすことは、生きる上での基本だよなと思うのであった。











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