放送局: TLC

プレミア放送日: 7/6/2002 (Sat) 12:00-13:00

製作: BBC、TLC

製作総指揮: アンディ・バッテン-フォスター、スティーヴン・シュワーツ

製作: アビゲイル・ハーヴィ

監督: スザンヌ・バラバン

編集: ラース・フュークス

音楽: ウォルト・マシューズ

ホスト: アナ・ボッチ

デザイナー: チェイス・ダコダ、ローレン・レイク、スティーヴン・セント-オンギ

カーペンター: アンドリュウ・ダン-ジャンボ、トロイ・ダン、ジェニファー・アン・ヘルパーン、ジャキ・ジェイミソン、レスリー・セグレット


内容: 配偶者を2日間旅行に行かせるなどして家から遠ざけ、その間に家の改装をして、帰ってきた配偶者が驚く顔を見て楽しむリアリティ・ショウ。


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TLCとは、TV界においては、すなわち、ザ・ラーニング・チャンネル (The Learning Channel) のことを指す。女性黒人ミュージシャン3人 (今は二人か) から成るポップ・グループの名でもなければ、ましてやペット・フードのブランドでもない。読んで字の如く、生涯教育を専門としているチャンネルである。しかし、NHK教育ほどお堅いわけではなく、わりとエンタテイニングな、柔らかめの番組も多い。先週紹介した「モンスター・ガレージ」を放送しているディスカバリー・チャンネルとは、姉妹チャンネルの間柄にある。TLCの姉妹チャンネルにはさらに、旅行番組専門のトラヴェル・チャンネル、および動物番組専門のアニマル・プラネットがあり、つまり、親会社のディスカバリー・コミュニケーションズは、わりとその手の、ドキュメンタリーに近い番組を専門にしている。


特にTLCとディスカバリーは、この手のチャンネルとしては最も早くから放送を始めた老舗チャンネルということもあり、似たような印象を受ける番組が多い (とはいっても、TLCはまだ放送開始10年ちょいにしかならないが)。しかし、TLCは、そのチャンネル名のために、どうしても堅い印象を視聴者に与えやすい。ディスカバリーに較べてそれほど堅い番組が特に多いというわけではないのだが、それでも視聴率や知名度の点でどうしてもディスカバリーに見劣りがしてしまうのは、多分にそのチャンネル名が視聴者に与える印象のせいも大いにあるだろう。


私は数年前、夜中にたまたまチャンネル・サーフしていて、TLCの「オペレイション (Operation)」という医学番組を見つけて、非常に驚かされたことがある。オペレイションとは、読んで字の如く、要するに手術のことであるが、「オペレイション」は、延々と実際に医者が手術を行なう様子をとらえるのだ。これが驚いたのなんのって、なんか面白いチャンネルはないかなと色々とチャンネルを切り換えていて、いきなり頭蓋を開いた患者と、本物の脳みそが画面いっぱいに現れた瞬間を考えてみてもらいたい。まがい物ではない、本物の臓器がこれでもかとばかり画面に留まり続けるのだ。私は呆気にとられ、それから非常に興味をそそられた。なんとなれば、私は写真やハリウッド特撮以外で本当に人間の皮膚にメスを入れ、切り裂く瞬間というものを見たことがなかったのだ。食用の肉に包丁を入れるのとはわけが違う、本物の臓器、本物の骨、本物の血が、医学的教育番組という名目上、ノー・カットで放送されている。こりゃすげえや。わたしはそれからしばらくの間、ずっと画面上に展開する人体の不思議に見入ったのであった。


それからというもの、こういってはなんだが、「オペレイション」は私のギルティー・プレジャーとして定着した。夜中に、人間の臓器を大写しにしているのを見ながら仕事をするのって、ぞくぞくとする、えも言われぬ不思議な感覚があった。自分の身体の中にもああいうのがあるのだ、しかしその持ち主である私自身はそれを知らないのだという感覚は、まったく未知の体験だった。「オペレイション」を見て以来、デイヴィッド・クローネンバーグの作り物の臓器なんて、まるでこけおどしにしか見えなくなった (なんてことはなく、あれはあれでまた別の意味でのおどろおどろしさはあるが)。深夜、「オペレイション」を見るのを密かに楽しみにしていたのは、決して私だけではなかったと思う。しかし、最近「オペレイション」は所期の目的を達したのか、編成から消えた。非常に残念である。


「オペレイション」が編成から消えるのとほとんど時を同じくして、TLCの大掛かりなエンタテインメント化が始まった。「オペレイション」のようなハードな番組は消え、代わって、「ベイビー・ストーリー (A Baby Story)」、「デイティング・ストーリー (A Dating Story)」、「メイクオーヴァー・ストーリー (A Makeover Story)」、「ウェディング・ストーリー (A Wedding Story)」といった、軽めの、どこが教育番組なんだかよくわからないリアリティ・ショウが日中に大挙して編成されるようになった。これらは、もう、番組タイトルがその内容をすべて表している。つまり、「ベイビー・ストーリー」は子供自慢の番組であり、「デイティング・ストーリー」はデート中のカップルを、「メイクオーヴァー・ストーリー」、喧嘩したカップルが仲直りする模様を追いかけ、当然「ウェディング・ストーリー」は、様々なウェディングの紹介で、これらの番組がほぼ毎日、日中に編成されるようになった。


まあ、TLCに限らず、どのチャンネルも日中TVを見ているのは暇している主婦層がほとんどなので、それをターゲットにした番組を編成するのは、当然といえば当然といえる。主婦層にアピールしなければ、日中視聴率なんか稼げないのだ。だから、柔らかめの、はっきりいって何がドキュメンタリーだ、何が教育番組だとしか思えない番組でも編成せざるを得ないのは、いくらTLCとはいえしょうがないだろう。教育チャンネルだとはいえ、コマーシャル料金で成り立っている民放では、とにかく視聴率を稼げなければ番組は存続できない。


そのTLCで現在最も人気のある番組が、やはり教育番組というよりはリアリティ・ショウの、「ジャンクヤード・ウォーズ (Junkyard Wars)」と、「トレイディング・スペイシズ (Trading Spaces)」である。「ジャンクヤード・ウォーズ」は、がらくたの山から発見してきた部品を使ってロボットを作り、それを壊れるまで戦わせてみるという番組で、「トレイディング・スペイシズ」の方は、二組のカップルがお互いの家の一間の模様替えを行うという番組だ。両番組とも、機械が動く仕組みを教えたり、大工仕事のやり方を教えたりというような教育番組的要素はないとは言えないが、本質はやはり娯楽性を重視したリアリティ・ショウだ。


アメリカのリアリティ・ショウは、実は物真似が多く、現在放送されていて人気のあるリアリティ・ショウの大半は、外国で放送されて人気の出たものの焼き直しである。それは「ジャンクヤード・ウォーズ」も「トレイディング・スペイシズ」も同じで、両方とも原産は英国というのも一緒だ。というか、「ジャンクヤード・ウォーズ」の方は、英国で放送されている「スクラップヒープ・チャレンジ (Scrapheap Challenge)」という番組を、アメリカでは別タイトルで放送しているだけだったりする。自家製のロボットを戦わせるというアイディアだけを流用した同様の番組も続々とアメリカで製作されており、TLC自身の「ロボティカ (Robotica)」、コメディ・セントラルの「バトルボッツ」や、TNNの「ロボット・ウォーズ (Robot Wars)」等、同工異曲の番組は跡を絶たない。このジャンルは立派に市民権を得たと言えるだろう。


一方の「トレイディング・スペイシズ」の方は、「チェンジング・ルームス (Changing Rooms)」というのがオリジナルだ。これにはニュージーランド版もあり、そこでは「トレイディング・プレイシズ (Trading Places)」という番組名だそうだ。「チェンジング・ルームス」は30分番組だが、アメリカ版の「トレイディング・スペイシズ」は1時間番組である。


さて、問題は、この「トレイディング・スペイシズ」の方である。カップルがお互いの家をとりかえっこして模様替えを行うという、換言すればただそれだけの番組なのであるが、この番組が、なぜだか非常に人気が出てしまったのだ。現在のTLCのドル箱番組だと言い切ってしまっていいだろう。今流行りの裏切りやパワー・ゲームで盛り上げる「サバイバー」系統のリアリティ・ショウとは対極にあるリアリティ・ショウで、出演する二組のカップルはお互いに顔見知りだし、相手をへこまそうとか意地悪してやろうとかいうことではなく、善意の発露によって相手の家のキッチンなりリヴィングなりを模様替えしてやろうというのだ。


そのため、基本的に番組の最後は、わあ、よくこんなのできたね、ありがとう、いや、あんたたちのも素晴らしい、みたいな、内輪同士で誉め合う、ちょっと見てて恥ずかしいくらいの展開となって終わりやすい。「サバイバー」に慣れた視聴者の目から見ると呆気ないくらいなのだが、これが、「サバイバー」のような番組はやり過ぎで気に入らないと思っていた、保守的な階層の視聴者には受けた。そういう視聴者が実は結構多かったのだ。

Sorority Life

そこで、この番組の成功に味を占めたTLCが、「トレイディング・スペイシズ」にあやかろうと製作したスピンオフ番組が、この「ホワイル・ユー・ワー・アウト (あなたがいない間に)」である。「トレイディング・スペイシズ」では基本的に番組の出演者は両者合意の上、部屋の改装に取り組んだわけだが、「ホワイル・ユー・ワー・アウト」の場合、その改装を持ち主の承諾なしに、本人のいない間にやってしまおうという、いかにもアメリカ的なエンタテインメント性を付け加えたのが、この番組の最大の特徴である。


もちろん本当に家主のいない間に家に忍び込んで改装なんかしちまったら犯罪である。それで「ホワイル・ユー・ワー・アウト」の場合、例えば、だんなさんが週末の出張やゴルフ旅行やらでいない時を見越して、奥さんが改装チームを呼んで模様替えに取り組んだりする。遠出から帰ってきただんなさんに、すっかり変わってしまった自分の部屋なり趣味の部屋なりを見せて驚かせてしまおうという寸法だ。もちろんその逆に、夫が妻を驚かす、あるいは喜ばせようとする場合もある。時には家族や親戚総ぐるみで、引っ掛けようとする相手を騙して48時間どこかへ連れ回すなんてこともある。サプライズ・パーティの好きなお国柄なのだ。


番組の第1回では、警察官の若い夫ウェインを趣味の釣り旅行に送り出した直後、妻のジェニファーが待ち受ける家に、待ってましたとばかりにてぐすねを引いていた改装チームが到着、よく友達が集まるという、ほとんどウェイン専用の部屋となっている裏庭に面したポーチの改装に着手する。男ばかりが集まるこの部屋は、見るからに整っているとは言い難いが、それでもTVカメラが入るから多少なりとも片付けたという感じがする。さて、ウェインは2日後に帰ってくるのだが、それまでにすべての仕事を終えることができるのか。


基本的にこの改装は、プロのカーペンターやペインターにまかせるのだが、この限られた時間と、1,500ドルという決められた予算のために、それほど大掛かりな改装が行えるわけではない。それでもあの手この手を尽くし、色々と知恵を絞って、より綺麗に、より格好よく見えるように改装するわけだ。今回の改装のポイントは、小型のボートを仕舞い、ふたを閉めたら長椅子になるという格納庫、それに、やっぱり壁や天井に手を入れたり塗り替えたりすると、部屋の印象ががらりと変わる。


さて、何とかぎりぎりで改装を間に合わせ、ウェインが家に帰ってくると、全然知らない者たちがTVカメラを構えて待ち構えている。いったいなんだなんだと疑惑を持ちつつもジェニファーに引きずられるようにポーチに行くと、タラーン、そこにはまったく新しい空間ができ上がっているのであった。ウェインは呆気にとられ、それからジェニファーの心遣いに感謝していたりしたのだが、実は私は、正直言ってこの改装が上出来だとはほとんど思わなかった。改装前の方が、汚くはあったが、いかにも仲間同士が集う部屋らしい、ちょっと薄汚れてはいるけれども居心地のいい部屋、という雰囲気を濃厚に持っていたという風に感じた。


改装後は、それは綺麗に、明るく、清潔にはなったけれども、正直言って、私がこの部屋の持ち主なら気に入らないなあと思った。何でこんな風にしちゃったんだとかんかんになるかもしれない。この奥さん、男心をまったくわかっちゃいないよなあ。きっと、なんで男がいつも薄汚れたバーなんかに集うのかまったく理解なんかしちゃいないタイプだろう。だんなさんの方も、一応建て前上は喜んでいたようだが、本当に本心から喜んでいたかは疑問だと、私は思う。そこで夫が怒り狂えば、多分番組プロデューサーが意図していたのとはまるで違うだろうが面白い番組になっただろうにと、ふと「サバイバー」に毒された私なんかは思うのであった。







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While You Were Out

ホワイル・ユー・ワー・アウト   ★★1/2

 
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