Weekend


ウィークエンド  (2022年9月)

ジャン-リュック・ゴダールが死んだ。91歳だった。晩年は健康を害し、身体がままならなくなっていたようで、最終的な死因は自ら求めた尊厳死だったということだ。意外な気もするしゴダールらしいような気もする。 

 

特にゴダールがお気に入りだったわけではないが、彼が映画史に一時代を画したのは確かでもあり、敬意を表明する意味でもなんかゴダール作品を見ようかと思う。 

 

未見のゴダール作品として、前々から気になっていたアンナ・カリーナがとても可愛いという「はなればなれに (Bande a Part/Band of Outsiders)」が見れないかと思って探してみたが、ストリーミングでは提供されていない。 

 

初期の代表作である「勝手にしやがれ (A Bout de Souffle/Breathless)」か「気狂いピエロ (Pierrot le Fou)」なら見れるようで、これをもう一度見ようかと思うが、迷った上、1シーン1ショットの交通渋滞のシーンの長回しが非常に印象的で、このシーンだけいまだによく覚えている「ウィークエンド」に決める。 

 

このシーン以外は、面白いシーンもあるがよくわけのわからないところもある、という漠然とした記憶が、今見てもやはりそのまま当てはまる。こういう不条理で不親切な作品は、ハマる人にはハマりまくるが、そうでもない人にとってはなかなか苦しいものがある。面白いは面白いんだが、やはりこれ、ちょっと不親切という印象は今回見ても覆し難い。ゴダールは映画文法の中の一つを発明したかもしれないが、それは誰でも理解できる国際語ではなかったと思ってしまう。 

 

それでも、理解可能不能はともかく、少なからず見る者を興奮させる作品を作ってしまうということに関しては、納得せざるを得ない。今回、女房と一緒に「ウィークエンド」を見たのだが、二人してその夜、悪夢を見た。私の場合はほとんど覚えてないがとにかく怖い夢だったという肌触りだけ覚えていて、女房の場合は何かに追いかけられる夢だったそうだ。私はほとんど夢を見ないので、これが「ウィークエンド」のせいだったのだけは確実だ。寝る前に見るべきじゃなかった。 

 

考えると、「ウィークエンド」に描かれているような突発する暴力、人々の理不尽な振る舞いは、公開された当時よりもむしろ現在の方がよほど当てはまる。そういう空気が世の中に蔓延しているからこそ、映画と現実がシンクロして夢にまで出てきて影響する。ゴダールおそるべし。 

 

ところで、ネットでゴダール追悼関連の記事をいくつか読んでいたら、ゴダールの映画についてではなく、ゴダール本人をグーグルのストリート・ヴューで見られるという情報を見つけた。グーグル・マップで Rue du Temple & Rue du Nord, Rolle, Switzerland で検索し、ストリート・ヴューにして Rue du Temple をレマン湖方向に少し降りていくと、右側の歩道で立ち話をしている3人のおっさんがいる。その中の真ん中で、こちら側に顔を向けているジャケットを着たおっさんがゴダールなのだそうだ。顔にぼかしがかかっているため第三者的にはなんとも言えないが、見る者が見れば確からしい。 

 

クレジットを見ると撮ったのは2013年6月となっており、健康を害する前だろう。考えるとゴダールは映像作家であって、実は特にフィルムの肌触りにこだわっていたわけではなく、ヴィデオだってよく撮っている。そういう人物がネット上に登場するのは、実は当たり前の話なのかもしれない。カメラ目線だし。また別のヴューでは、パートナーのアンヌ-マリー・ミエヴィルと同じ通りを一緒に歩いているのもあるそうだ。グーグルのストリート・ヴューに複数回登場するゴダールって‥‥ 


 









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コリンヌ (ミレーユ・ダルク) とロラン (ジャン・ヤンヌ) の夫婦は愛情は冷めきっており、お互いに不倫していた。コリンヌの父が危篤状態ということもあり、二人は週末に見舞いと休暇がてら、田舎にクルマで出かける。その途中、二人は渋滞や事故、ヴァイオレンス、レイプ、殺人等、様々な事件に遭遇するのだった‥‥ 


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