Venom


ヴェノム  (2018年10月)

基本的に気持ちはもうマーヴェルから離れている。もう「アベンジャーズ (Avengers)」を見る気もほとんどなくなってしまったし、単体としての「スパイダーマン (Spider-Man)」や「アイアンマン (Iron Man)」も今後見るかはわからない。「X-メン (X-Men)」もどうだか、と、DCコミックスも含め、近年大判振る舞いのスーパーヒーローものには正直言ってうんざりし始めている。 

 

一方で、「ヴェノム」のような新規参入ヒーローには、まだ興味を惹かれるのも事実なのだった。「ペパーミント (Peppermint)」も正直マーヴェルのスーパーヒーローものと思いながらわざわざ見に出かけたわけだし。ただし「ヴェノム」が単体のスーパーヒーローではなく、「スパイダーマン3 (Spider-Man 3)」で既に登場済みの、しかも実は悪役だったことを改めて知ったのは、映画を見終わってしばらくしてからだった。 

 

ヴェノムをすぐに思い出さなかったのは、むろん「スパイダーマン3」を見たのが既に10年以上も前で記憶が薄れていたというのもあるが、何よりもまず、宇宙生命体で地球上の生命に寄宿するヴェノムというキャラクターに、これとわかる姿形がなかったことが挙げられる。そのため明確なイメージとして思い出せない。ヴェノムが取り憑いた、微妙に嫌らしいエディやスパイダーマンとしてのイメージしかない。今回のようにアンチヒーローっぽい素のヴェノムとしてのイメージは、「スパイダーマン3」では登場しない。 

 

次に、「スパイダーマン3」でそのヴェノムが寄生してその結果モンスターとなったジャーナリストのエディに扮するのがトファー・グレイスで、今回エディに扮するのがトム・ハーディだったことから来る印象の差も、私がヴェノムに思い至らなかった理由の一つだ。というか、これが最も大きな理由だったと言える。グレイス演じるいけ好かない坊っちゃん的なエディと、ハーディによるよれよれ正義漢的なエディとでは印象が月とスッポンで、まったく同じキャラクターとは気づかない。 

 

それにしてもハーディだ。ハーディと言えば、近年では昨年のクリストファー・ノーランの「ダンケルク (Dunkirk)」と、アレハンドロ・イニャリトゥの「レヴェナント: 蘇えりし者 (The Revenant)」がある。善人も悪人もこなす懐の深さが持ち味で、要するにそれが、モラルとか関係ない宇宙生命体のヴェノム、およびやはり犯罪に片足突っ込んだような取材をこなすエディのキャラクターに合っていると言える。最初マーヴェルの映像化にハーディが主演? と驚いたが、考えたらまったく合わないということもない。グレイスのちょこざいなエディもなかなか似合っていると思ったが、ハーディはハーディでこちらも悪くない。 

 

一つ気になるのは、マーヴェルのこういうアンチヒーローには、既に「デッドプール (Deadpool)」という先例があることだ。たぶんシリアスなハーディ/ヴェノムに対し、おちゃらけたライアン・レイノルズ/デッドプールという差別化で住み分けを図るものと思われる。 

 

また、ハーディは意外だったが、それよりも実際驚いたのが、恋人のアンに扮するミシェル・ウィリアムズで、最初、あまりにも意外でウィリアムズと気づかなかった。それにしてもウィリアムズに印象が似ているなと思っていたくらいだ。あまりにも似過ぎているので、途中から、これ、もしかして本当にウィリアムズかと思い始めた。ウィリアムズがマーヴェルのスーパーヒーローものに出演か。ウィリアムズもハーディ同様、というか、彼女こそ孤高のヒロイン的な役をこれまでに多く演じている。つい最近の作品でも、「ゲティ家の身代金 (All the Money in the World)」「グレイテスト・ショーマン (The Greatest Showman)」等、見かけは小柄でおとなしそうでも、芯のある女性を演じさせたら一級。それにしても売れっ子だ。いずれ彼女自身がなんらかのスーパーヒーローに扮することもあるかもしれない。 

 

ところでマーヴェルの生みの親と言えるスタン・リーが先頃亡くなった。95歳だったそうだ。リーは基本的に映像化されたほぼすべての作品で一瞬だけ顔を出すカメオ出演をし続けてきた。もちろん「ヴェノム」でも登場し、通りすがりのイヌの散歩途中の老人として、アンから愛想を尽かされそうなエディに対し、彼女を手放したらいかんとアドヴァイスする。 

 

実はリーは近年認知の症候が出てきて、それを利用して近親者か関係者がマーヴェルの利益を独占しようと画策して訴訟沙汰になっているのがニューズになっていた。スーパーヒーローの生みの親が、結局は金に目のくらんだ周りの心ない人によって搾取される。スーパーヒーローはいったいなんのためにいるんだろう。それともだからこそアンチヒーローのヴェノムやデッドプールが必要なのか。 











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サンフランシスコ。カールトン・ドレイク (リズ・アーメッド) が経営するライフ財団は、宇宙を飛来する彗星に生命体が付着していることを発見し、それを地球に持ち帰り、密かにホームレスを狩り集めて人体実験を施していた。フォトグラファー/ジャーナリストのエディ (トム・ハーディ) は、ライフ財団の弁護士として働く恋人のアン (ミシェル・ウィリアムズ) のファイルを盗み見てきな臭いものを感知し、取材を試みるが、カールトンの手回しにより、自分だけでなくアンまで職をクビになってしまう。しばらくしてカールトンの人体実験についていけなくなったライフ財団のドーラの手引きによって研究施設に潜入したエディは、そこで自分も宇宙生命体と接触して寄生されてしまう。生命体ヴェノムは、エディの身体とうまく共生することができ、凶暴な力を持っていた。ヴェノムは、エディに取り引きを持ちかける‥‥ 


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