アンダーグラウンド   Underground

放送局: WGNアメリカ

プレミア放送日: 3/9/2016 (Wed) 22:00-23:00

製作: アファミ、ゲット・リフティド・フィルム、ウィード・ロード・ピクチャーズ

製作総指揮: ジョン・レジェンド、マイク・ジャクソン、アキヴァ・ゴールズマン

出演: ジャーニー・スモレット-ベル (ロザリー)、オルディス・ホッジ (ノア)、ジェシカ・デ・ゴウ (エリザベス・ホウクス)、アラノ・マイラー (ケイト)、クリストファー・メローニ (オーガスト・プルマン)


物語: 1857年ジョージア。メコン・プランテイションでは多くの黒人奴隷たちが働いていた。奴隷解放を訴える白人もいたが数は多くなく、黒人は奴隷が嫌なら脱走するしかなかったが、ほとんどはすぐに捕まり、前よりもひどい仕打ちが待っていた。しかしそれでも、秘密裏に南部から奴隷を北部に逃がすルートが存在していた。ある者はその存在に疑惑を持ちつつも、一縷の望みを抱いて脱走を計画する‥‥


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Underground


アンダーグラウンド  ★★★

「アンダーグラウンド」を放送するWGNアメリカは、元々は地方局だったのがベイシック・ケーブルとして展開してきたチャンネルで、例えばテッド・ターナーによるアトランタの地方局TBSが全米展開するようになったのと同じ轍を踏んでいる。


そのWGNアメリカは、近年、オリジナル番組に力を入れるようになって俄かに注目されるようになった。一昨年、17世紀の魔女裁判を描いた「セイラム (Salem)」、および第二次大戦初期の原爆開発を描いた「マンハッタン (Manhattan)」の2本のドラマが注目され、今春、人知れず山間部で独自の行動規範で生きる者たちを描く「アウトサイダーズ (Outsiders)」もそこそこ話題になった。そして今回編成された最新のドラマが、この「アンダーグラウンド」だ。


アンダーグラウンド、もしくはアンダーグラウンド・レイルロードとは、19世紀、南部の黒人奴隷たちが逃げ出して北部やカナダに新天地を求めた、そのルート、地下ネットワークのことを言う。「それでも夜は明ける (12 Years a Slave)」を例に挙げるまでもなく、当時の奴隷の生活環境は劣悪なもので、人権などなく、人間として認められていなかった。奴隷は個人の所有物だから、生殺与奪の権はすべて白人の主人が持っていた。当然脱走などもってのほかで、捕まったら殺されても文句は言えなかった。しかしこのまま奴隷として生きるくらいなら死んだほうがましと意を決して脱走を試みる者もいた。そういう者たち、彼らを助ける者たちを描くのが、「アンダーグラウンド」だ。


冒頭流れる音楽はラップで、19世紀が舞台のドラマのBGMとしては強過ぎそうにも思うが、それがなかなかいい。今、ブロードウェイで、建国の父の一人アレグザンダー・ハミルトンをミュージカル化した「ハミルトン (Hamilton)」が大ブレイクしている。白人のハミルトンを含め、演じるのは全員有色人キャストで、しかも音楽はラップという前代未聞のミュージカルが、トニー賞最多ノミネートの記録を塗り替えているのだ。


とはいえ「アンダーグラウンド」は、製作は昨年から始まっているはずで、「ハミルトン」の成功にあやかってラップを使用しているのとは違いそうだ。「アンダーグラウンド」にせよ「ハミルトン」にせよ、そういう音楽の使い方が時代にマッチしてきているということだろう。一方、歌詞に大きな意味があるラップは、前面に出過ぎると話の展開に支障をきたす。この辺が歌詞がストーリーの一部であるブロードウェイの「ハミルトン」と、TVドラマの「アンダーグラウンド」では異なるとは言える。また、そのためもあって「アンダーグラウンド」でラップが使われるとはいえ、それにも増して使われるのは、やはりゴスペルだ。


「アンダーグラウンド」で冒頭登場する広大なプランテイションと屋敷は、まさしく「それでも夜は明ける」で見たのと同じような豪邸だ。さらに屋敷そのものよりも庭に生えている木が、「それでも夜は明ける」で主演のキウェテル・イジョフォーが罰として縊られようとしていたあの歪つな形の木そっくりで、本当に同じ場所でロケしているんじゃないのかと思ってしまう。


番組はそのイジョフォーのように辛酸を舐めている黒人奴隷の一人が、アンダーグラウンド・レイルロードの情報を得る。本当の話かもしれないしそうでないかもしれない。いずれにしてもここから永遠に出られないのは嫌だ。そう思う何人かの奴隷たちも同調する。一方、白人の中にも黒人を奴隷としてしか見ない南部の豪農に与しない者たちもいた。彼らもまた、脱走を企てる奴隷たちを支援しようとする‥‥


製作総指揮の一人に名を連ねているのはジョン・レジェンド。レジェンドは昨年、マーティン・ルーサー・キングを描いた映画「グローリー/明日への行進

(Selma)」で、主題歌の「グローリー (Glory)」をラッパーのコモンと一緒に作ってアカデミー賞を受賞している。「アンダーグラウンド」において、特に必要以上に使われるわけでもないのに音楽が印象に残るのは、レジェンドが噛んでいるからでもありそうだ。









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