今年の全米の開催コースであるトリー・パインズでは、現在タイガー・ウッズがビュイック招待で4連勝中と、コースと圧倒的に相性がいい。膝の手術後初のトーナメントとはいえ、2002年以来の全米制覇に期待がかかる。


なんて思っていたら、ウッズはいきなり初日1番パー4でダブル・ボギー。目眩がした。いつぞやの確か全英でもそんなことがあった。それでもその後なんとか持ち直し、ウッズはこの日1オーヴァー72で回る。初日、2日目はウッズと同組はフィル・ミッケルソンとアダム・スコットで、TVは彼らがプレイしている時はほとんどつきっきりだった。


2日目はこのパーティはバック・ナイン・スタートで、ウッズはやはりボギー先行。それでも後半またまた持ち直してバーディ・ラッシュを見せ、この日3アンダー68、2日目を終わった時点で2アンダー、3アンダーで首位のスチュアート・アップルビーに1打差2位につけているというのはさすが。ミッケルソンは4オーヴァー35位。特にスコットは2日目、この日9ホール目となった18番パー5で、2オンしておきながら4パットのボギーはこたえたろう。1フィートのパットをミスしたら、それはがっくり来るだろうと思う。


ウッズの2日目バック・ナインのバーディ・ラッシュもすごかったが、しかし本当にすごかったのは3日目だ。ウッズはこの日、またしても1番をいきなりダブル・ボギーでがっくりさせる。それからなんとか我慢のゴルフで、最初の劇的な展開は13番パー5でやってきた。下り左フック60フィートの難しいイーグル・パットは、今年のデュバイ、あるいはアーノルド・パーマーで優勝を決めた72ホール目のバーディ・パット、はたまたあるいはJ. B. ホームズ相手のマッチ・プレイで勝利を決めたイーグル・パットを彷彿とさせる完璧なパットでカップに吸い込まれた。


さらに17番パー4ではラフからの25フィートのチップ・ショットがワン・バウンドしてフラッグに当たり、そのまま真下のカップの中に消えた。18番パー5も右曲がりのパットを完璧に読み切り、イーグル。基本的にこの3つのホールでスコアを縮め、この日1アンダー70、通算3アンダーで、終わってみたらリー・ウエストウッドに1打差でトップに立った。13番と17番ではおおおおーっと叫び、18番ではハリウッド映画もかくやという大逆転劇に声もなかった。これが最終日だったら!


1アンダー3位はロッコ・メディエイトで、アンダー・パーはここまで。1オーヴァー4位はジオフ・オグルヴィとD. J. トレイハン、2オーヴァー6位にミゲル-エンゲル・ヒムネス、ロバート・カールソン、ロバート・アレンビー、カミーロ・ヴィジェイガス、ハンター・メイハンの5人が並ぶ。ウッズの膝はしかし回復しきってないようで、最終日がどうなるかまだ予断を許さない。むろんそう思わせるところがまた劇的な勝負を演出するウッズらしいとも言える。それにしてもギャラリーの沸くこと!


最終日は案の定というかなんというか、ウッズはまたまた1番のティ・ショットを左に引っ掛け、第2打、第3打と連続して木に当たり、またしてもダブル・ボギー。このホール、4日中3日ダブル・ボギーだ。バック・ナイン・スタートになった2日目だけはバーディを奪っているが、その日最初のティ・オフとなった10番ではやはりボギーを叩いているから、とにかく最初の一打を引っ掛ける。ウッズは続く2番パー4もボギーで、いきなり首位から滑り落ちる。


ウッズは中盤持ち直し、一時はウッズ、ウエストウッド、メディエイトの3人が1アンダーで並ぶ。その下は2オーヴァーだから、勝者はこの3人の誰かと断言してしまってもいいだろう。しかしウッズは昨日はギャラリーを沸かしに沸かした13番で、第2打をまたまた引っ掛けてOB、まさかのボギー。15番パー4でもボギーを叩き、18番を迎える。


この時首位は1アンダーのメディエイト。ウッズとウエストウッドは共にイーヴンで、プレイオフに持ち込むにはバーディ、勝つにはイーグルが必要だ。しかし二人ともティ・ショットはフェアウェイをとらえきれず、刻んでいく。ウッズの第3打はピン・ハイ15フィート、ウエストウッドは20フィートにつける。まずウエストウッドがバーディ・パットを外し、これを入れなきゃ負けのウッズのパットは、弾かれたかと思った瞬間、外周を一周しながらカップに吸い込まれた。念力で入れたな、お前。またまたデュバイ、アーノルド・パーマーを思い出させる72ホール目のミラクル・パットで、こいつ、絶対後ろに何かとてつもないものが憑いている。TVでこれを見ていたメディエイトの、「入れると思ってたよ (I knew it)」というコメントがなにやらおかしい。でも実際の話、世界中のゴルフ・ファンの99%はウッズが入れてくることを確信していたと思う。


月曜のプレイオフは、1番でメディエイトがフェアウェイを外したのとは裏腹にやっとウッズがフェアウェイをキープ。メディエイトがわざわざ途中で待っててウッズを祝福してやってたのが笑えた。メディエイトがこのホール、ボギーとなったためいきなり1打差がつくが、メディエイトは3番パー3であわやエースと思える絶妙のショットでバーディ。一方のウッズがバンカー入り後のアップ&ダウンに失敗してボギーとなったため、これでメディエイト、イーヴン、ウッズが1オーヴァーと逆転する。


その後今度はウッズが挽回し、10番を終わった時点でウッズ、イーヴン、メディエイト、3オーヴァーと3打差つく。これは勝負あったかと思わせといて、メディエイトはそこから反撃、13番14番15番と連続バーディ、イーヴンまでスコアを戻し、その時1オーヴァーのウッズに再度逆転。メディエイト1打リードしたまま18番を迎える。あとがないウッズはここで少なくともバーディをとらなければまずチャンスはない。ウッズは見事に2オン、メディエイトは3オンで、先に打ったウッズの50フィートのイーグル・パットは5フィート、オーヴァー。なんか、これって実は外し頃の距離ではないか。


一方、メディエイトも20フィートのバーディ・パットを4フィート外す。ウッズは何度もトレースし直して慎重にバーディ・パットを決める。これで一気にプレッシャーはメディエイトへ。メディエイトも慎重にこれを入れ、私としては初めて見るUSオープン、18ホールのプレイオフでも決着のつかないサドン・デスへと勝負はもつれ込んだ。それにしても、バーディをとらないと負けという時点で必ずバーディをとるウッズの勝負強さっていったいなんなんだ。


トリー・パインズのサドン・デスは、7番パー4、8番パー3、18番パー5の3ホールを勝負がつくまで永遠に続けるそうだ。その最初のサドン・デス・ホールの7番で、メディエイトのティ・ショットはフェアウェイ左のバンカーへ。4分の1ほど埋まっており、これは難しそうだ。その第2打は引っ掛けてグリーンから20ヤードほど手前に落ちてギャラリー席に当たって跳ね返る。フリー・ドロップ後の第3打はカップを20フィート、オーヴァー。一方のウッズは第2打をグリーン上、カップまで25フィートにつけている。


メディエイトのパー・パットを待たずに自力優勝を決めたかったウッズのバーディ・パットは、しかしわずかにカップまで届かない。ウッズ、タップ・イン・パーの後、メディエイトのパー・パットは上側に逸れ、この瞬間、ウッズのメイジャー14勝目が決まった。レギュレイションでの3位はイーヴン・パーのウエストレイク、4位2オーヴァーにカールソンとトレイハン、6位3オーヴァーにヒムネス、ジョン・メリック、カール・ピーターソンが入ったが、あとしばらくして人がウッズとメディエイト以外覚えていないことは賭けてもいい。







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108回全米オープン

2008年6月12日-6月16日   ★★★★

カリフォルニア州ラ・ホヤ、トリー・パインズ・ゴルフ・コース

 
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