放送局: CBS

プレミア放送日: 9/22/2003 (Mon) 21:30-22:00

「CSI」クロスオーヴァー・エピソード放送日: 5/5/2008 (Mon) 21:00-21:30

製作: チャック・ローレ・プロダクションズ、タネンバウム・カンパニー、ワーナー・ブラザースTV

製作総指揮: チャック・ローレ、エリック・タネンバウム、キム・タネンバウム、リー・アロンソーン、マーク・バーグ、オレン・コウルズ

クリエイター/脚本: チャック・ローレ、リー・アロンソーン

音楽: デニス・ブラウン、グラント・ゲイスマン

美術: ジョン・シャフナー

出演: チャーリー・シーン (チャーリー・ハーパー)、ジョン・クライアー (アラン・ハーパー)、アンガス・ジョーンズ (ジェイク・ハーパー)、ホランド・テイラー (イヴリン・ハーパー)、マリン・ヒンクル (ジュディス)、メラニー・リンスキー (ローズ)


物語: プレイボーイでシングルのチャーリー、その弟でバツ一のアラン、その息子のジェイクは、3人でマリブの一軒家に住んでいる。チャーリーとアランには押しが強くてわがままの母イヴリンがおり、そのイヴリンが何度目かの結婚を新しいパートナーのテディと挙げることになった。それまでのイヴリンの夫は、なぜだか皆早死にしてしまうのだった。ついでにチャーリーまでテディの娘コートニーといい仲になってしまい、イヴリンとテディの結婚式の当日、パーティの最中に二人でちょっと抜け出していいことしようとしけこんだ2階の部屋で、二人はテディがパンツを下ろしたまま、ベッドの上で息絶えているのを発見する‥‥


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CBSの「トゥ・アンド・ア・ハーフ・メン (TAAHM)」は、現在、アメリカTV界で最も高い人気を持つシットコムだ。もっとも、「フレンズ」や「サインフェルド」、「ウィル&グレイス」や「フレイジャー」といった一時無敵を誇ったNBCのシットコム群は今はなく、そのため「TAAHM」は、現在30分コメディで視聴率1位といえども、小粒という印象は拭いがたい。


シットコム製作から撤退したNBCが現在なにをしているかというと、たとえ数字は稼げなくても若い視聴者に受けのいい、シットコムではなく「ジ・オフィス (The Office)」「30ロック (30 Rock)」等のシングル・カメラ撮影のコメディの方に注力している。そのため従来通りのシットコムは、現在ではFOXとCWに僅かに散見される他は、ネットワークではCBSがほぼ一人で最後の牙城を守っているという印象が強い。


そのCBSでも、集中してシットコムが編成されているのが月曜夜だ。8時の「ザ・ビッグ・バン・セオリー (The Big Bang Theory)」に始まって、8時半「ハウ・アイ・メット・ユア・マザー (How I Met Your Mother: HIMYM)」、9時「TAAHM」、そして9時半「ルールズ・オブ・エンゲージメント (Rules of Engagement)」と続くシットコム群は、現在シットコムがこれだけ続く時間帯はネットワークどころかケーブルを含む全チャンネルを見渡してもどこにもないため、今となってはひどく貴重なもののようにも思える。


この中でも「HIMYM」は、つい最近、問題を起こしてばかりの渦中の人ブリトニー・スピアーズがゲスト出演して話題になるなど、基本的にCBSシットコム群の視聴者は中高齢者が主体ではあるが、それなりの話題は提供している。そして今、今度は「TAAHM」が、同じCBSの、こちらは人気ドラマ番組の「CSI」と話をリンクさせるクロスオーヴァー・エピソードを企画してまた話題を集めた。


こういう異なる番組同士で話や主要登場人物をクロスさせるクロスオーヴァー・エピソードは、話題集めとして、頻繁というほどではないがわりと行われている。例えば「CSI」なら、姉妹番組の「CSI: NY」、「CSI: マイアミ」と話をリンクさせるのは難しい話ではないし、実際にそういうエピソードが製作されている。元々番組の中味がかなり似ているし、なによりもジェリー・ブラッカイマーという番組プロデューサーがそれらの番組を仕切っているから連絡をつけやすい。


それが極まったのがNBCの「ロウ&オーダー (Law & Order)」フランチャイズで、この場合、ラスヴェガスやマイアミ、NYと一応舞台は異なる「CSI」とは異なり、基幹番組の「ロウ&オーダー」を中心に、「ロウ&オーダー: スペシャル・ヴィクティムス・ユニット (SVU)」、「クリミナル・インテント (CI)」、そして短命に終わったが「トライアル・バイ・ジューリー (TBJ)」と、すべて舞台はニューヨークだ。そのためわざわざクロスオーヴァー・エピソードと銘打たなくても、(準) レギュラーのマンチ刑事に扮するリチャード・ベルザーなんて、最初からそれらの番組にかけもちで顔を出していたりする。


とはいえこれもディック・ウルフという単一のプロデューサーがそれらの番組を仕切っているからこそできることで、プロデューサーが異なるまったく関係のない番組同士、しかもそれが一方は60分のドラマ、もう一方は30分のシットコムというまったくジャンルの異なる番組だったりすると、話は大きく違ってくる。どうやって話をリンクさせたらいいのかまず頭を悩ませるだろうし、シリアスなドラマ俳優をシットコムに出して笑いをとったり、あるいはその逆なんて、下手すれば俳優のイメージをぶち壊しただけで終わる自殺行為になりかねない。だからこそ今回の「TAAHM」と「CSI」のクロスオーヴァーがわりと注目を集めたわけだ。


で、私も興味を持ったわけだが、実はこのクロスオーヴァー、クロスオーヴァーといっても従来のような内容や登場人物がクロスオーヴァーするわけではない。では何がクロスオーヴァーなのかというと、それらを書いている脚本家がクロスオーヴァーしているのであった。つまり、普段「CSI」を書いている脚本家が今回に限って「TAAHM」の脚本を書き、「TAAHM」の脚本家が「CSI」の脚本を書いているのだ。そしてそのことがいったい両番組にどういう効果をもたらしたのか。


「TAAHM」は、チャーリー・シーン演じるシングルのプレイボーイ、チャーリーとその弟アラン、さらにその息子ジェイクの3人を主人公とするシットコムだ。成長した大人二人と、その半分の大きさのまだ子供の男の子を合わせて、トゥ・アンド・ア・ハーフ・メンになる。そのチャーリーとアランの仕切りたがりの母イヴリンを足した4人が主要登場人物だ。今回のクロスオーヴァー・エピソードでは、そのイヴリンが何度目かの結婚をする。しかし結婚式当日のパーティの最中、その相手が2階でパンツを下ろしたまま死体となって見つかったというのが発端だ。そして捜査のためにCSIの面々が呼ばれてくるという筋書きになっている。


とはいえクロスオーヴァーとはいっても登場人物がクロスオーヴァーしているわけではないから、ハーパー家にやってくるCSIの面々は「CSI」の登場人物ではない。一瞬、場を仕切る女性調査官がマージ・ヘルゲンバーガーそっくりなので、え、本当にヘルゲンバーガー出てんのと目を疑ったが、似てはいるものの別人だった。しかしまったく誰も出ていないのではなく、冒頭のパーティのシーンでアランがつばをつけようとした女性に声をかけたのは、「CSI」でストークスを演じているジョージ・イーズだ。


その他、まず冒頭のテーマ音楽では「CSI」のテーマの「Who are you, who, who, who, who?」というメロディに合わせて「Men, men, men, men」と歌う。パーパー家の面々が尋問を受けるシーンでは、画調が「CSI」的な、まるでシットコムらしくないダークな画面になる。ジェイクがケーキからイチゴをとって口に入れようとしてイヴリンからたしなめられ、慌てて落としてシャツを汚してしまうシーンでは、その瞬間にカメラがジェイクに寄って寄ってスロウ・モーションのマクロ描写になり、イチゴの汁がシャツの繊維に広がっていくという意味のない「CSI」パクリ描写になっているなど、爆笑するわけではないが、たしかににやりとはさせてくれる。「CSI」得意のこの種の接写ギャグはほぼジェイクが担当しており、エピソードの最後にはジェイクの腸の中に溜まったガスをカメラが追い、それが外に出て (つまり屁をこいて) チャーリーとアランが鼻をつまむという描写で終わりになっている。


一方、この回の「CSI」は横暴な女性シットコム・スターが殺されるという殺人事件の話で、CSIのグリッソムとブラスがハリウッドのステュディオを訪れるという展開になっていた。その時、一瞬画面に映るトレイラーの外でスーツを着てたむろっているのが、「TAAHM」のシーン、クライアー、ジョーンズの3人で、むろん話にはまったく関係しない。しかしまだティーンエイジャーのジョーンズが手にしていたのは、どう見ても葉巻だったんだが‥‥ それともただのプロップか。


正直言うと今回のスタントが両番組にとって新たな可能性を見出したかというと、ほとんど話題集め以上のものではなかったような気がする。「TAAHM」がいつも以上に笑いを提供したかというと、特にそうとは思えないが、一方、元々ひねったブラック・ユーモアが随所に散りばめられていた「CSI」において、かなりこの舞台設定が有効に用いられていたという印象を受けた。いつもとは違うよくわからない世界に足を踏み込んだグリッソムの反応がなかなかよかった。つまり、このクロスオーヴァー、意外にも「CSI」の方が効果的だったように思う。次回はやはり、是非とも主要登場人物を絡ませた話を作ってもらいたい。







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Two and a Half Men


チャーリー・シーンのハーパー★ボーイズ (トゥ・アンド・ア・ハーフ・メン)   ★★1/2

 
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