放送局: ABC

プレミア放送日: 11/26/2003 (Wed) 21:00-22:00 (3 weeks)

製作: ネクスト・エンタテインメント、テレピクチュアズ

製作総指揮: マイク・フレイス

出演: トリスタ・レーン、ライアン・サターおよびその近親者


内容: 今春のABCの勝ち抜き恋人獲得リアリティ・ショウ「ザ・バチェロレッテ (The Bachelorette)」で成立したカップル、トリスタ・レーンとライアン・サターが結婚式を挙げるまでを収録。


_______________________________________________________________


基本的に私は現在流行りの勝ち抜き恋人獲得リアリティ・ショウは信用していない。なんとなれば、いきなり目の前に現れた男 (女) 性に対して、集まった十何人もの異性が全員一致して恋心を抱く、あるいはせめて好感を持つなんてシチュエイションを嘘くさいと感じているからだ。


たとえどれほど美男美女が主人公として選ばれていようと、参加者の中には自分の趣味じゃないと感じているやつは絶対いるはずであり、そういう少数派を無視して、さも現前の男/女が唯一無二の異性であり、そのハートを射止めるのが至上命令みたいな設定は、バカらしくてついていけない。


したがって、番組の最終回にでき上がるカップルに関しても、はっきり言ってまるで興味はない。どうせすぐ別れるだろうと思っているし、実際、この手の番組で成立したカップルは、すべてせいぜい数か月で破局を迎えたことが発表になっている。番組自体としては、どうせやるならFOXの「ジョー・ミリオネア」並みに参加者を騙すとかしてくれるなら、それはそれで面白そうだと思うのでチャンネルを合わせるのに吝かではないが、それ以外の、ごく普通の恋人獲得系は、まるで見る気がしない。


それがなんと、この手の番組としては草分けの部に入るABCの「ザ・バチェラー (The Bachelor)」の第3シーズン、今度は女性主人公の恋人の座を男性が争った「ザ・バチェロレッテ (The Bachelorette)」で成立したトリスタ・レーンとライアン・サターのカップルが、ついに結婚するという電撃発表があった。もちろんこの種の番組でできたカップルが結婚までこぎ着けたのは、史上最大の冗談番組「フー・ウォンツ・トゥ・メアリ・ア・マルチミリオネア」を別にすれば、これが史上初である。最初で最後になるんじゃないかと思うが、とにかく、本当に結婚までしてしまうカップルが出るとは思ってもみなかった。


だいたい、この種の番組に主人公として登場する男/女は、ゆくゆくは芸能界デビューを考えている者がほとんどで、既に何らかの番組に出た経験を持つという者が多い。「バチェラー」、「バチェロレッテ」フランチャイズは、これらの既参加者をうまく有効に使っている、というか、リサイクルしており、今回の「バチェラー」に参加して落ちた女性が、次の「バチェロレッテ」で今度は主役として起用されるというふうに使い回しを定着させ、有効に人材バンクを活用できる体制を整えている。というわけで、私はそういう金太郎飴番組を何度も何度も見ようという気には到底ならないが、いまだにそれなりの人気を維持しているところを見ると、「バチェラー」は、あともう数シーズンは続きそうだ。


さて、いずれにしても、この種の番組でできたカップルが結婚までしてしまうというのは、やはり快挙と言えるだろう。彼らは本気だったのだ。私はどう見ても出たがりの男女による芸能界デビューを意識した参加だとばかり思っていたのだが、本気で彼氏彼女を探しに番組に出ていた者もいたことが、これで明らかになった。いや、もう、そこまで本気だったなら別に言うことはありません。末長くお幸せにお過ごしください。


なんて殊勝な考えを、もちろんTV局が持っているわけがない。彼らの番組でできたカップルが、史上初の結婚までしてしまうのだ。これはどう見ても劇的なTVイヴェントになる! と考えたのは確実で、当然、その結婚式を全米に中継することになった。もちろん結婚式だけでなく、そこに至るまでの様々な打ち合わせや衣装合わせ、バチェラー/バチェロレッテ・パーティも含め、すべて局持ちで大盤振る舞い、しかしその一部始終を中継させていただきますよ、ということでできあがったのが、この、まんまずばりの「トリスタ・アンド・ライアンズ・ウェディング」だ。1回限りの特番ではなく3週連続で、最初の2回は1時間、最後の1回は2時間の挙式中継特番という、とにかく、話題のカップルの結婚式中継で稼げるだけの視聴率を、ここぞとばかりに稼いでおこうという腹だ。


さて、今回結婚する二人であるが、新婦のトリスタは、元NBAのマイアミ・ヒートのチア・リーダーだったということもあって、小柄ながらバランスのとれたプロポーションをしている。「バチェロレッテ」では、自分で男性陣を選別して落としておきながら可哀想と涙を見せる場面もあったりして、性格も悪くなさそう。しかし、「バチェロレッテ」放送中は、そのトリスタよりも、結局最後まで残って無事トリスタのハートを射止めたライアンが、何かと話題となっていた。


ライアンの職業は消防士 - ファイアファイターで、アメリカではファイアファイターという職業は、かなり人気がある。就職先として人気があるのではなく、ガタイのいい男が多いということで、女性からボーイ・フレンド候補として人気があるのだ。各地から選りすぐったファイアファイターを集めたカレンダーなんかがよく売れてたりしている。


実際ライアンもガタイはよく、その上わりとハンサム。さらにライアンの場合、詩を嗜んだりして、「バチェロレッテ」では、トリスタに自作の詩をプレゼントしていたりした。ああいう、見かけはいいけれども、無骨でただ逞しいだけとしか思えなかった男が、実は心優しく、じっと目を見て相手を称える自作の詩なんて朗読しちゃったもんだから、トリスタは一発で落ちた。でも、トリスタの気持ちもわからんではない。実は何を隠そう私もそん時はライアンを応援していたのだ。この種の勝ち抜き恋愛リアリティで、その後、雨後の竹の子のように詩を読む参加者が増えたのは、ひとえにこのライアン効果であるのは間違いない。


「トリスタ・アンド・ライアンズ・ウェディング」の第一回は、式の日取りも決まり、ウェディング・コーディネイターを交え、当日までの様々な細かな点を詰める様を追う。ロマンチスト、というか、ちょっと少女趣味が入っているトリスタは、会場をピンクで統一しようと考え、その隣りでライアンは絶句する。結局これ限りということで、色んな局面でライアンは譲歩を強いられるのだが、もしかしたらこのカップル、この先、思いやられるかも。


前述したように、この式の費用は全部ABC持ちである。とはいえトリスタとライアンは、こういうプライヴェイトなところまでTVに侵食されることに関して、あまり乗り気ではなかったようだ。しかし、このカップル、そもそもの成り立ちからしてTV番組に負っており、その点でABCには借りがある。そのため、結婚式中継までは譲歩しようということになったようだ。それから後は我々にもプライヴェイトな生活があり、そっとしといてくれということで話はまとまったらしい。


番組の第2回は、これから結婚するカップルにとっての儀式とも言えるバチェラー/バチェロレッテ・パーティの模様をとらえる。要するに結婚前の最後の羽目を外す、気のあった男だけ、あるいは女だけのパーティだ。どこぞの南の島のリゾートで行われたこのパーティも、もちろん費用は全部ABC持ちだ。通常、この手のパーティにはヌード・ダンサーがつきものである。結婚したらこういうバカ騒ぎとはもう縁を切らないといけなくなるわけだし (もちろん結局結婚してもこういう生活から足を洗えないやつもいはするが)、最後の独身の日を謳歌するというわけで、バチェラー・パーティには当然女性のヌード・ダンサー、バチェロレッテ・パーティには男性ヌード・ダンサーが呼ばれる。そのダンサーを囲み、チップをパンティに挟んだり、ラップ・ダンスをして楽しむというのが基本であるわけだが、本当にワイルドな集団だと、実際にそういうダンサーと寝たりするということもままある。向こうも商売だから、金を積めばだいたいのことはやってくれる。


トリスタとライアンのパーティは、同じ島の離れた場所で同時にやっているわけだが、一応ABCがわざわざ金を出してパーティまで開いてくれるという引け目があるため、ライアンは、根は真面目で別にヌード・ダンサーにそれほど興味があるわけでもないのに、仲間をけしかけたり、嫌々ながらも一応ホスト的な所作を示す。しかし、そのライアンの仲間というのは、やはり似たり寄ったりの真面目派が多かったようで、この種のバカ騒ぎについていけず、シラッとした反応しか返ってこない。これはまずい、撮影だってしているというのに、というわけでライアンはますますドツボにはまる。結局、なんで自分の結婚式で、こんなくだらないことに付き合わなければいけないんだと、ほとんど切れたライアンは、やってらんなくなっていきなり怒り出し、装着していたマイクを投げ捨てると、一人波打ち際に姿を消してしまうのであった。


一方、トリスタ側のパーティはつつがなく進み、無事終わって、島の向こう側のライアンのパーティを襲っちゃえ、ということになった。しかし、その会場に来てみると、肝心のライアンがいない。しかもなんか、ヌード・ダンサーとともにあらぬところに消えてしまった、なんて心休まらぬ情報が飛びかってたりしている。いきなり動揺したトリスタ、涙をぼろぼろこぼしながら、一人トイレに閉じこもってしまう。


しばらくしてから帰ってきたライアンは、ちょっと頭を冷やすために、一人で波打ち際を散歩してきたと告白、そして実はトリスタがライアンがいないために取り乱してどっかに行ってしまったことを聞く。慌ててトリスタを探しに行くライアンは、やっとのことでトイレの個室から出てきたトリスタと遭遇する。二人共お互いに言いたいことは山ほどあったろうが、目と目を合わせた途端、二人共するすると引き寄せられるように抱き合ってキスを交わす。相手の顔を見た途端、もうすべてがどうでもよく許せてしまったという二人のヴォイス・オーヴァーが重なり、めでたしめでたし。やらせかできすぎのようにも見えるこのエンディング、確かにこの二人、かなり相性はいいようだ。


そして3回目の最終回は、いよいよ結婚式。南カルフォルニアのリゾート、ランチョ・ミラージュで行われた結婚式は、屋外の会場を3万本のピンクとアイヴォリーのバラが飾る。今ではトップ・セレブリティとなった二人の結婚式ということで、パパラッチたちをシャットアウトするため、関係者には緘口令が布かれ、式は秘密裏に行われるはずだった。しかし、やはり情報は漏れ、なんと頭上をパパラッチやその手の新聞/情報誌/TV番組がチャーターしたヘリコプタがぶんぶんうるさいほど飛びかうという、なんともかまびすしい雰囲気の中で式は進んだ。


式自体は、まあ、ごく普通の、どこででもやっているような式次第だったのだが、気になったのが、ヘンにマスコミ慣れしているというか、受け狙いのスピーチ/説教や発言を連発したり、白々しい儀式的なセレモニーを演出しようとする牧師で、こいつ、やたら軽々しい上にまったく威厳がなく、この男を起用したのは間違いだったとしか私には思えなかったのだが。それでも全体として見れば滞りなく式は進み、ついにトリスタとライアンは誓いを述べ、指輪を交換し、二人は晴れて夫婦となったのであった。


さて、その費用であるが、ドレスは真珠やクリスタルをあしらったバッジリー・ミシュカで$70,000。ダイアモンドをあしらったスチュワート・ワイツマンの靴は$50,000、7段のウェディング・ケーキは$15,000。トリスタが着用したダイアのネックレスは$1,000,000 (これはいくらなんでも借り物だろう) で、ダイア/プラチナのリングは$25,000だそうだ。総費用しめて400万ドルだそうで、さすが天下のネットワーク、これをすべて肩代わりしたとは、太っ腹ー。さらに出演料? として、トリスタとライアンにも100万ドルが支払われたそうだ。


因みにふと気が向いて二人が結婚式を挙げたランチョ・ミラージュのウェブ・サイトを覗いてみたら、当然、この機会を有効利用すべく、新しく「トリスタ&ライアン・パッケージ」なるプランが堂々と組み込まれていた。それによると、ジャグアかメルセデスでどこへでもお迎えお届けの他、至れり尽くせりの豪華スイート2泊プランが$2,450だった。トリスタ&ライアン・フォト・アルバムなんてのもついてくるが、普通、こんなの嫌だと思う方が多いんでないの。第一、たった2泊で$2,450かよ、暴利じゃないのとぶったまげたのだが、どうも経営者は、一般市民がセレブリティが泊まった同じリゾートに挙って押しかけてくることに自信があるようだ。


これでトリスタとライアンは、一般市民に戻ってこれからの新婚生活をエンジョイするということになるのだが、さて、そう簡単に問屋は卸すだろうか。私は、来年の今頃、「トリスタ・アンド・ライアンズ・ファースト・ベイビー」なる番組が現れるような気がしてしょうがないのだが。もしかして「トリスタ・アンド・ライアンズ・ブレイクアップ」の可能性もあるかもしれない。







< previous                                    HOME

 

Trista and Ryan's Wedding

トリスタ・アンド・ライアンズ・ウェディング   ★★1/2

 
inserted by FC2 system