ツリートップ・キャット・レスキュー   Treetop Cat Rescue

放送局: アニマル・プラネット (AP)

プレミア放送日: 5/30/2015 (Sat) 21:00-21:30-22:00

製作: ピルグリム・ステュディオス

製作総指揮: キース・ホフマン、クレイグ・ピリジアン、スコット・ポジェス

ホスト: ショーン・シアーズ、トム・オットー


内容: 木に登ったまま降りられなくなったネコを救出する。


_______________________________________________________________

Treetop Cat Rescue


ツリートップ・キャット・レスキュー  ★★1/2

私と女房はマンハッタンからハドソン・リヴァーを渡ってすぐのニュージャージーに住んでいる。マンハッタンほど高いビルが建ち並ぶ都会ではないが、そこそこ人口密集地だ。そんなところにも、のらネコはいる。のらイヌはとんと目にしないが、のらネコは結構いるのだ。


「インサイド・ルーウィン・デイヴィス (Inside Llewyn Davis)」の項でも書いたが、見てると結構色んな人から餌をもらっており、のらネコというよりは、実態は地域ネコに近い。アメリカでは完全に野生化してもう人になつかないのらをWild cat、人にすり寄ってはこないまでも地域に根付いているネコをFeral Catと呼んで区別しており、フィーラル・キャットはできるだけ捕まえて不妊治療をしてからまた放すという活動をしている団体が至るところにある。


実はうちもネコを一匹飼っており、ネコ好きの女房はさらにほとんど毎晩、仕事から帰るといそいそと楽しそうに外の地域ネコに餌をあげに出て行く。ネコの方でも時間になるとそろそろと思っているようで、女房が合図のスプーンを落としてちゃりんと鳴らすと、待ってましたとばかりに近くの根城にしている駐車場から一目散に走ってくるそうだ。それが可愛くて仕方がないらしい。ただし最近は日が長くなってきて、夜の8時過ぎまで外がまだ明るい。それで近くのガキどもが遅くまで外で遊んでいるため、ネコたちは彼らを怖れて駐車場の隠れたところから外に出てこない。ガキどもが家に帰らないとネコに餌をあげられないため、どんどん時間が遅くなる。うちの女房はそれが不満なのだが、しかしそういってもねえ。


とまあ、地域ネコはアメリカの至るところにいる。イヌのように野生化しても人を噛む怖れはほとんどないし、見てて可愛いのは事実だし。アメリカでは木があると多くの場合リスも棲みついていて可愛らしい姿を見せるが、ネコもそれくらいにしか思われてないのだろう。


一方、ちょっと郊外に行くとアメリカの一軒家は広い庭と高い木というのはセットになっており、これはもう、ほとんど例外はない。どの家も裏庭に10mから20mくらい、それ以上の高さの木がある家もざらにある。その木にネコが登って降りられなくなるという事件が結構よくあるらしいのだ。ネコは木に登ることはできるのだが、あまり高いところに登り過ぎると、一人では降りれないらしい。なかには裏庭からネコの鳴き声が聞こえるのだが、まさか木の高いところとは思わず見つけられず、何日間も木上で鳴き続けていたという例もいくつもあるそうだ。


そういえばMTVの「リディキュラスネス (Ridiculousness)」やABCの「アメリカズ・ファニイスト・ホーム・ヴィデオス (Americas Funniest Home Videos: AFHV)」でも、何度か木に登って降りられなくなったネコのヴィデオを見たことがある。だいたいそれで降りるのに失敗して落ちるのだが、元来柔軟性に富むネコは、下が芝や土だったりすると、わりと落ちても平気で、走ってどこかに逃げていく。とはいえ怪我をするネコもいるだろう。


「ツリートップ・キャット・レスキュー」は、ワシントン州でそういう木に登って自分一人では降りられなくなったネコを救出する活動をしているショーン・シアーズとトム・オットー、彼らが経営するキャノピー・キャット・レスキュー (Canopy Cat Rescue) に密着するリアリティ・ショウだ。


そういう事業所を持っているとはいっても、基本的に連絡をとってくるのはネコとは縁も所縁もない、単に木に登って降りられなくなったネコを発見したご近所の人たちで、自分の飼いネコでもないネコの救出のために金を払ってくれるわけでもない。その人たちは、エマージェンシーで警察に電話するような感覚でキャノピーに連絡してくるのだ。つまりキャノピーの経営は寄付金と、自分たちの持ち出しで成り立っている。ほとんどフルタイム・ジョブなのだが、それを支えているのは実はほとんどが奥さんが働いて得た給料のようだ。まあ奥さんがそれを納得しているなら、外部の口出しすることではない。


そのキャノピー、過去2年間で延べ500匹の木から降りられなくなったネコを救出したそうで、需要はとにかくある。特にワシントンみたいなところは、それこそ高い針葉樹がいっぱいありそうだ。というわけで金にはならないが、仕事は後から後から入ってくる。


キャノピーのやり方は、だいたいショーンが木に登り、下からトムがネコの位置を確認しながらショーンに指示を出す。高いところから落ちたらむしろ人間の方こそ大怪我する確率は高い。ネコとはいえ暴れられると厄介なので、ショーンはヘルメットを被って分厚いグローヴをはめ、大きな昆虫網のようなものを携え、それで捕らえたネコを入れて下に降りるための袋を持っている。


もし飼いネコだったらいいが、それほど人に慣れてない地域ネコの場合、人が登ってくると危険を感じてさらに上へと登って行ってしまうことが多いそうで、そのためネコを捕まえるコツは、最初にできるだけこちらの方がネコより高い位置に到達して、上から下に追うような形にすることだそうだ。とはいえ多くの場合、既にネコはかなり高い位置に登ってしまっているため、言うは易く行うは難しではある。


ただでさえ脅えているネコをさらに追い詰めるようにして捕まえようとすると、枝の先で逃げようがなくてパニックに陥ったネコは、1割くらいの確率で後先も考えなくジャンプするそうだ。それらのネコは無事だったのだろうか。ショーンも言ってなかったしディレクターも怖くて訊けなかったのかもしれない。あるいは怖いこと言って後でカットされたか。


実際、番組第1回でもジャンプするネコが登場する。ショーンが繰り出す捕ネコ網にびびって、一瞬網に入りかけたが、そこからジャンプしたのだ。見ているこちらもびっくりで、思わずTV見ながら、女房共々ああっ、と声を上げてしまった。20mの高さから、ネコがまるで本能的にムササビのように手足を広げて空中を滑空するように、しかし実際は翼があるわけじゃないので、ただただ落ちて行く。見てて一瞬息が止まる。


ネコはそのまま枝の繁みの中を落ちて見えなくなった。地上のスタッフがカメラを持って追うと、そこには金網フェンスに串刺しになったネコが‥‥と思いきや、ただフェンスの上で動きにくそうにもがいているだけだ。どうやら鬱蒼とした枝がクッションになって、うまい具合に怪我もせずにフェンスに着地できたものらしい。すかさずトムが有無を言わさず首根っこを押さえて捕まえ、かごの中に入れる。無事でよかったーっ。


等々、単純に木から降りれなくなったネコを助けるだけのリアリティ・ショウなのだが、なかなかどうして、これが結構スリルがあって見飽きない。通報してくる者はだいたいがネコ好きなため、ネコが大丈夫かどうか心配でうるうるしてたりして、こっちはこっちでまた見ていて別の意味で面白い。なかなか楽しませてくれるのだ。











< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system