Transformers: Revenge of the Fallen


トランスフォーマー/リベンジ  (2009年7月)

サム (シャイア・ラブーフ) は大学に進学することになるが、ミケーラ (ミーガン・フォックス) との遠距離恋愛、および家においていくことになるオートボッツの一人ビーに不安がないこともなかった。案の定、引っ越しのどさくさにサムは地球の危機にかかわる重大な視覚情報を知らずに記憶の中に埋め込んでしまうし、ビーは勝手にサムの後をついてきてしまう。一方、スタースクリームはメガトロンのボディを盗み出して復活させ、虎視眈々と復讐の機会を狙っていた‥‥


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2年前大ヒットした前作「トランスフォーマー (Transformers)」の第2弾、「リベンジ」が公開だ。実はこれでもかというくらいの宣伝攻勢に半分うんざりという気分だったりもするが、確かにあのCGは一見の価値があるからなと劇場に足を運ぶ。


ヤフーで上映時間をチェックすると、ほとんど30分刻みくらいでマルチプレックス上映しているので、適当な時間に合わせて車を出す。窓口で大人2枚と言って金を払おうとすると、ちょうど3時から始まる時間にぴったしのはずが、その次の3時40分かと訊かれる。なんでと思って、3時の回があるが売り切れなのかと訊き返すと、いや、そうじゃなくて3時の回はスペイン語字幕がついているのだが、それでもいいのかと言う。


びっくりした。ニューヨークはスパニッシュ人口が多く、確かにスペイン語字幕で上映されている映画というのは時々見かけるのだが、それでも特に注意を払ってはいなかった。そういうのにたまたま当たってしまったらしい。それでも、ヤフーの上映時間表にはその回がスペイン語字幕つきという但し書きは特にはなかったはずだが。そういうのもちゃんと表示して欲しい。


いずれにしても、窓口の女の子の、セリフは全部英語のままだし、中身はまったく一緒だからという説明に、ま、たまにはいいかと、英語作品をスペイン語字幕で見ることにする。こんなことがあるのもニューヨーク (正確にはニュージャージーだが) ならではだな。しかしふと考えると、もし登場人物がわりと簡単なスペイン語なんてしゃべったりすると (大いにあり得る話だ)、そこは当然スペイン語字幕どころか英語字幕も出ないってことになるんじゃないか、それだと、見ているこちらには何言っているかさっぱりわからないという話になっていまうんではないかとふと気づいたのだが、時既に遅しだ。まいったな、やっぱり出直せばよかったかもしれない。


マルチプレックスの中に入ると、特にスパニッシュ系とも見えない、白人黒人が雑多に席を占めている。私たちと同じように知らないでたまたま来たらスペイン語字幕つきだったが、特に気にしないという感じだ。ガキ連れもいるが、完全に英語をしゃべっている。もしかしたら親が違法移民のメキシコ人だが、ガキはここで生まれたので英語の方が得意なのかもしれない、などと勝手に人の人生を想像で捏造して楽しむ。


しかしメキシコや南米ではそうなのかと思ったのだが、本編直前に配給のロゴが入り、さあこれから本編と思ったところで、さらに予告編が入る。それまでは英語版の予告編が入っていたものが、スペイン語の本編になった途端スペイン語の予告編が入ったので、要するにあちらではこういう上映の仕方が普通なのだと思う。しかしこちらは配給のロゴが入ったらもう本編という気持ちでいたので、そこからさらに数本予告編が入ったことに驚いた。


しかもその予告編、当然のようにアクション系の予告編ばかりだったのだが、その「G.I. ジョー」でも「ノストラダムス2012」でも、予告編の中でエッフェル塔が倒壊する。一時期、こういう災害ものでは世界で真っ先に被害を受けるのは自由の女神かエンパイア・ステイト・ビル、世界貿易センタービルだったものが、その貿易センタービルがなくなってしまったことが、特にニューヨークが大型災害のメッカとして選ばれにくくなったことのまず第一の理由として挙げられると思う。


さらに毎回毎回判で捺したように同じビルばかり倒すことのマンネリを避ける意味もあるだろう。その上現在、貿易センタービルの目と鼻の先にある自由の女神を破壊するのは、シャレになんないというセンシビリティの問題もあるかと思う。いくら世界崩壊ものとはいえ、やはりこれは娯楽作品なのであって、本気で観客に不安を与えようとしているのではない。そうういうことでか最近この種のパニック・ムーヴィでは、だいたいエッフェル塔が標的になることが多い。フランス人も大変だ。


そしてやっとのことで本編が始まると、最初こそスペイン語字幕、うざいと思うがすぐに慣れる。元々洋画は字幕で見ることに慣れているわけだし、アメリカ人が外国語映画を見るのよりは違和感なく見れているのではないか。かといって途中登場人物のセリフが聞き取れなくてなんと言っているか参考にしようと字幕を見ても、結局何書いてあるのかはさっぱりわからないのではあるが。


それに、あっ、まずったと思ったのが、作品ではシーンが変わると、そこで地名が表示される。それもちゃんとスペイン語になっているのだ。たった1行の地名なのだが、それとて場所を理解しているかいないかでは、ストーリー展開の把握に差が出てくる。Nueva JerseyくらいならNew Jerseyを意味していることくらいわかるが、ちょっと知らない単語が二つ続くともうダメだ。やっぱりスペイン語字幕版を見るのは今回限りにしよう。


さて、その本題の本編だが、晴れて大学生となったサムが、復活して復讐の機会を狙うメガトロンたちをオートボッツたちと共に迎え撃つ様を描く。どうやら今回は宇宙支配を巡る争いというよりも、メガトロンたちの復讐譚に焦点が合っているようだ。 今回もそのCG描写には舌を巻くというか感嘆してしまうのだが、やはり前回同様突っ込みどころも満載だ。第一、これを持っていたら宇宙を支配することのできるというキューブはどうなったんだ。前回はどうだったんだっけ。もう忘れてしまった。たぶん作り手もキューブの存在は忘れてしまったものと見える。


大学入学が決まって引っ越そうとするサムにビーがついていこうと、いきなりポインター・シスターズの「アイム・ソー・エキサイテッド」に合わせて踊り出すシーンなんか、確かに場内は受けていたが、しかしそれはあるまいと思ってしまう。私の場合はむしろ受け狙いの作り手の姿勢が後ろに見えて笑えない。特に今回は既に一度見てだいたいの話の輪郭がつかめているために、ストーリーを追うことに汲々にならず、そういった点が目に入りやすい。子供たちは喜んで見ると思うが、やはり大人向けの作品ではないなと思ってしまう。


後半のてんこ盛りアクションは、もうほとんど常軌を逸しているというか、エキサイティングというよりもこんなのありかとほとんど唖然とさせられる。オートボッツがトランスポーテーションしてしまうのだ。「スター・トレック (Star Trek)」とはわけが違う。意外っちゃあ意外で観客を驚かせるには充分だが、この、ややもするとお笑いの世界に片足突っ込んでいる展開を四の五の言わせず乗り切るパワーとスピードこそが、「トランスフォーマー」の真骨頂なのだなと思ってしまう。


それで結局、最後はピラミッドの上で大バトルだ。しかもオートボッツとメガトロン以下は、遠目では実は誰が誰だかよくわからない。ロボット同士の潰し合いにしか見えない。元々特に見た目に大きな差があるわけでもないのにバトルになると動きが速くどっちがどっちかほとんどわからないため、どちらを応援すべきかなんてまったくわからなくなってしまうのだ。サムが喜んでいるのでたぶんオプティマス・プライムが勝ったのだなと思うが、しかし、結局見終わって後の本当の心証を述べると、狐につままれたようだというのが本当のところだ。正義は勝ったのか?


実は「リベンジ」を見ていて、そのCGや最新特撮技術、さらにはそのストーリー展開をも含めて強烈に印象に残ったのは、今後のこういうヒーローもの、アクション大作の可能性ではなく、この種の作品の限界という点だったりする。「リベンジ」は記録的な興行成績を獲得しているようだからパート3も製作されるのはまず間違いないと思うが、しかしこの奇想天外さにリアリティを与えるCG描写も、ほとんど極める点に近づいてしまったという気がする。今後、「トランスフォーマー」が単に子供のためだけのアクション大作になるのではなく、やはり大人も楽しめる作品として展開していって欲しいと思うのだが、ハードルはかなり高そうだ。








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