先週に引き続きタイガー・ウッズが優勝し、2週連続で今期7勝目。最近のウッズを見ていると、全然負ける気がしない。彼のファンを自認する私としてはもちろん異議があるわけはないのだが、しかしもうちょっと競ると、俄然勝負が白熱するんだけどな、と思ってしまう。欲張りな悩みだ。1シーズン7勝は、74年にジョニー・ミラーが1シーズン8勝して以来25年ぶり。しかし、当時に較べてさらに層の厚くなったゴルフ界での1シーズン7勝は、もっと価値があると言って差し支えあるまい。大した男である。


ところで、ペイン・スチュワートの飛行機事故による死亡の悲報は、今週の一大ニュースだった。おかげでツアー・チャンピオンシップも金曜はスチュワートの葬儀に参列するゴルファーのために日程取り止めで、代わりに木曜と土曜に27ホールずつプレイするという変則スケジュールを組んだ。これも賞金ランキングの上位30位までしか出場せず、カットの足切りのないこの大会だからこそなせる技。デイヴィス・ラヴ3世などは、大会に出場する気が全然なかったと言っていたが、多分そのせいでまるっきり何の欲もなしにスイングしていたからか、初日27ホール終わった時点でトップに立っていた。最終的にウッズに次いで2位だったが、初日終わった時点では嬉しいのか悲しいのかわからなかっただろう。


スチュワートに敬意と弔意を表し、最終日はほとんどのゴルファーがスチュワートのトレード・マークであったニッカー・ボッカーをはいてプレイ。それはそれでいいのだが、あまり皆があのような大時代的な服を一斉に着ると、私などは違和感を抱いてしまう。元々ニッカー・ボッカーが好きではないということももちろんあるのだが、何も皆が皆、同じ服を着ることもないではないかと思ってしまうのだ。弔意の表わし方は人それぞれだろう。第一、だれがレナードの、ラヴの、プライスの、レーマンのニッカー・ボッカー姿を見たいと思うだろうか。だいたい似合ってなんかないよ。まあ、そういう問題ではないのだろうし、ラヴとかレナードがスチュワートと近しい間だったのはわかるから、それはそれでいいとして、あんまり仲がよかったとも思えないゴルファーまで大挙してニッカー・ボッカーになっているのを見ると、なんかうんざりしてしまう。


それに、スチュワートのニッカー・ボッカーはウェア・メーカーからスポンサー契約で金を貰っているからやっているだけであって、そうでもなければ本人だってやるわけない。それともタイガー・ウッズが死んだら、皆ナイキでウェアを統一してプレイするのか。その点、葬儀には参列しても、自分のスタイルまでは崩さなかったウッズやデイヴィッド・デュヴォール、ブレント・ガイバーガーは偉い。彼らのニッカー・ボッカー姿を見ずに済んで、ほっとしたのは私だけではあるまい。それとも彼らは明日、ニッカー・ボッカーを穿かなかったためにマスコミから叩かれるのだろうか。


話は飛ぶが、先日、ワールド・シリーズをスイープ(4連勝)で制したMLBのニューヨーク・ヤンキースのパレードがマンハッタンであった。この時、ジュリアーニ市長が子供たちは学校を休んでパレード見物に行くのもよいと発言するのを聞いて、私はアメリカの最良の部分はこういうところにあると思ったものだ。しかし、私が話したいのはヤンキースのことではない。ヤンキースに負けたアトランタ・ブレーブスとニューヨーク・メッツとのリーグ優勝戦のことである。このシリーズは無茶苦茶面白かった。メッツは最初3連敗したのだが、全部1点か多くて2点差で、すべて競っていた。メッツはそれから2連勝したのが、それも2試合ともサヨナラ試合で、これまた偉くエキサイティングな試合だった。3連敗の後の4連勝は史上なく、やはり皆、心の奥底ではいくらなんでももう駄目だろうとうすうすとは感じていたとは思うのだが、そこはミラクル・メッツである。何が起こるかわからないのがこのチームの凄いところである。ペナント・レースだって、楽勝でプレイオフに進むと見られていたのが、最後の1勝が勝てなくて連敗を続け、残り2試合を連勝してその上他のチームが負けないと次に進めないという崖っ淵に立たされ、そこからワイルド・カードでプレイオフ進出を決めたのだ。


そして再度敵地に乗り込んでの運命の第6戦、TVをつけた私は3回で6対0でリードされているのを見て、即座にスイッチをオフにしたのであった。そうだよな、そうそう都合よく事は運ばないよな。しかし虫の知らせか (いや、単に気になっていただけだが)、しばらくしてまたTVをつけたら、2点差まで追い上げている!そしてピアッツァの同点2ラン!そして逆転!メッツ・ファン狂喜乱舞!しかしアトランタも屈せず、同点になってまたまた試合は延長へ、その後もメッツが表に1点取ればアトランタもその裏1点取り返し、延々15回裏、満塁策をとったのが仇となって、サヨナラ四球で勝負はあっけなく幕を引いたのであった。


しかし延々5時間、選手も疲れたろうが見ている方もはらはらどきどき手に汗握り、終わった時は疲労困憊であった。ダグアウトには両チームともほとんど控え選手が残っていないという総力戦、TV解説者もこんなシリーズは多分もう2度と見られまいと言っていたが、とにかくやっためたらエキサイティングなゲームだった。吉井も第1戦と4戦に先発したが、途中で降板して勝ち星負け星共になしだった。しかし第1試合で吉井がスクイズ・バントをミスしなければなあ、とせんないことを考えるのだった。それに較べるとヤンキースの試合なんて面白くないよなあ。断トツで強いから負ける気しないし。おかげでエキサイトもしない。それでも、もしワールド・シリーズがヤンキースとメッツという組み合わせになったら凄かっただろうなあと思わずにいられない。何たって史上初の同地域同士でのワールド・シリーズである。ヤンキース・スタジアムにもメッツのシェイ・スタジアムにも地下鉄で行けるため、サブウェイ・シリーズの実現かと地元マスコミで騒がれていたが、もし実現したらニューヨークでは暴動が勃発したに違いない。







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全米プロ・ツアー選手権

1999年10月   ★★1/2

テキサス州ヒューストン、チャンピオンス・ゴルフ・クラブ、サイプレス・コース

 
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