放送局: ブラヴォー

プレミア放送日: 1/31/2007 (Wed) 23:00-0:00

製作総指揮: スコット・ストーン、クレイ・ニュービル、マーク・ペレス

ジャッジ: ジョナサン・アドラー、ケリー・ウェアストラー、マーガレット・ラッセル

ホスト: トッド・オールドハム


内容: インテリア・デザイナーの勝ち抜きリアリティ・ショウ。


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NBC系列のケーブル・チャンネル、ブラヴォーは、近年では何はともあれ勝ち抜きリアリティ・ショウの「プロジェクト・ランウェイ」で知られている。それまではオリジナル番組では「インサイド・ジ・アクターズ・ステュディオ (Inside the Actor's Studio)」くらいしか思い浮かぶ番組はなく、どちらかというとそれよりもNBC番組の再放送先、特に「ロウ&オーダーシリーズの再放送をしているところという印象が強かったりしたが、最近ではオリジナル番組の比率がかなり高まってきた。


その代表と言えるのが「プロジェクト・ランウェイ」であり、この成功に気をよくしたブラヴォーは、今度はそのシェフ版、あるいは端的にFOXの「ヘルズ・キッチン」、もしくはフード・ネットワークの「ザ・ネクスト・フード・ネットワーク・スター」のパクりである、「トップ・シェフ」を製作した。これもほどほどの人気となり、現在第2シーズンまで放送が終わっている。


もちろんやっとヒット番組を手中にしたブラヴォーがそれで打ち止めにするはずもなく、今回、またまた新たに同様の番組フォーマットで番組を製作した。それが、今度は勝ち抜きでインテリア・デザイナーを競わせるという、「トップ・デザイン」だ。とはいえ、これがオリジナル番組かというと、実は大いに疑問ではある。確かに近年の「プロジェクト・ランウェイ」-「トップ・シェフ」の流れを汲む勝ち抜きリアリティ・ショウであり、番組進行もそっくりなのだが、それよりも瓜二つな番組がある。つまり、昨年HGTVが製作したインテリア・デザイナーの勝ち抜きリアリティである、「HGTVデザイン・スター」がそれだ。


一方、ある技術の優劣を決める勝ち抜きリアリティになると、誰が製作しようと番組の構造や進行が似てくるのは当然だ。別にどのネットワークが歌の勝ち抜きリアリティ・ショウを作っても、「アメリカン・アイドル」を放送しているFOXから訴えられることがないのは、この種の番組というのは、結局、既に番組のそもそものフォーマットの大半ができ上がっているからだ。しかしもちろん物真似だけではオリジナルにおよぶわけはなく、とはいえそこにオリジナリティを組み入れる余地は僅かしかない。そこに成功した一握りの番組だけが、「アメリカン・アイドル」的大成功を達成することができるわけだが、まあ、大半は夢破れることになる。


だから、まあ、いくら「トップ・デザイン」が「デザイン・スター」そっくりだとはいえ、100%パクりとは言えない。第一、参加者を集めて毎回テーマを決め、それに沿ってデザインさせ、毎週一人ずつ脱落させていくというほぼ完成された勝ち抜きリアリティ・ショウのそもそもの番組フォーマットには、手の入れようがあるまい。実際の話、「デザイン・スター」自体も、参加者を競わせ、優勝者には自分がホストのTV番組を持たせてあげるという体裁は、実は上記「ネクスト・フード・ネットワーク・スター」を真似ている。フード・ネットワークはHGTVの姉妹チャンネルなのだ。


そんなわけで誰の目から見ても「デザイン・スター」のパクりにしか見えない「トップ・デザイン」の放送が堂々と始まったのであった。ブラヴォーは、ネットワークの兄貴分チャンネルであるNBCに較べると小粒であるが、それでも、さらにケーブルTVの中でも弱小チャンネルに過ぎないHGTVと較べると、まだ規模は大きい。そのため、両番組において一見して気づく最も異なる点は、番組製作規模ということになるかと思う。


「デザイン・スター」では、優勝者は自分の番組が持てるとはいえ、優勝賞金は、あったかもしれないが、あっても雀の涙ほどの金額でしかなかったはずだ。それが「トップ・デザイン」では、優勝賞金は10万ドル、それに新車のGMCアーケイディアがつく。私としては、長い目で見ればたとえ弱小チャンネルでも自分がホストの番組を持つというメリットは、今後のキャリアのことを考えると決して小さくはないと思うが、しかし、賞金10万ドルと新車というのも決して悪くない、どころかかなりおいしい。「トップ・デザイン」のいかにも現世的な現ナマの方に惹かれる者も多いだろう。


次いで気づくのが、競争ということに対する番組の姿勢だ。「デザイン・スター」の場合、HGTVというマイナーなチャンネルが企画製作したからということもあろう、勝ち抜きリアリティとはいっても全体的に雰囲気はかなりアット・ホームで、そこに、他の者を蹴散らして裏切っても生き残ってやる、みたいな参加者のぎらぎらした欲望の発露はない。一方、「プロジェクト・ランウェイ」でも「トップ・シェフ」でも「トップ・デザイン」でも、ブラヴォー製作の勝ち抜きリアリティ・ショウの参加者はかなり勝つことにこだわっており、平気で他の参加者の悪口を言ったり、ミスを他人のせいにしたりする。つまり、ノリはCBSの「サバイバー」なのであり、番組は参加者のデザインを見る楽しみだけではなく、参加者同士の諍い、感情の発露を見る楽しさ面白さも追求しようとしている。


特にこの姿勢が大きく前面に出てくるのが、「トップ・デザイン」においては、参加者一人一人の個人デザインではなく、何グループかに分かれてのチーム・コンペティションにする傾向が強いという点にある。もちろんインテリア・デザインの場合、デザインするだけではなく実際の工程も入ってくると一人の手には余る仕事量であり、特に力仕事である大工仕事になったりすると、女性デザイナー一人では手に負えない。そのため、回によってはデザイナー一人一人にカーペンターがつくこともあるが、それよりもデザイナー同士をチーム分けし、チーム内でチーフ・デザイナー役やカーペンター役を振り分けさせ、エゴをぶつけ合わせるパワー・ゲームにした方がより面白いドラマが生まれる。


「トップ・デザイン」の番組プロデューサーがそう思ったのは明らかであり、実際、「トップ・デザイン」では各々のデザイナーのアイディアもそうだが、そういうリアリティ・ショウとしての個々の軋轢を見る部分が強調され、実際に面白くなっている。「トップ・デザイン」は、インテリア・デザインの番組というよりも、やはりリアリティ・ショウといった方がしっくりくるのだ。


例えば、前半で最も強烈な印象を残した参加者の一人であるジョンは完全な仕切り魔で、なんでも自分の思うようにしないと気が済まない。結局第一回でタッグを組まされたマイケルと衝突した挙げ句、第2回では自分はHIVポジティヴだと爆弾発言、皆を驚かせた後、その回で最下位となって脱落していった。とにかく人騒がせなやつだった。むろん彼が落ちたのは彼がHIVポジティヴだからではなく、私の目から見ても彼のデザインが一番劣っていたからだったのだが、こういう強力なやつが一人いるだけで、周りの者は全員振り回される。


ジョンがいなくなってもその手のエゴの強いやつばかりで、女性でも結局終盤まで残っているやつは、カリッサにしてもヘザーにしても、かなり強力なキャラクターで、まず自分の意見を曲げない。というか、やはりクリエイティヴな仕事は多少は自意識が強くないとやっていけないということはあろう。ライアンなんてジャッジの審判を受ける段になると、毎回一言言っていいかといって一席ぶちかます。その段階で誰が何を言おうとも大勢に影響しないのはわかりきっているのに、とにかく何か言わないと気が済まないのだ。おかげで毎回誰かが問題を起こし、そのことが番組を面白くしているというのは言える。チームを組んでいるから誰かがごねると他のメンバーにも影響し、その余波をもろに食らう。それは避けたいからしょうがないからこっちもあれこれ画策したりと、好むと好むまいとにかかわらずパワー・ゲームに加わざるを得ないのだ。


私に言わせてもらえれば、番組の面白さも限界もそのことに由来していると思う。もちろんそういう生の感情を見る面白さはリアリティ・ショウ特有のものであり、その点では番組はよくできているし面白い。しかしデザイン・ショウとして見た場合、チームを組まされるので、ある参加者はある回ではまるで自分の才能や技術、経験を発揮するチャンスがなく、裏方に回されたりし、その挙げ句仕事をしなかったと仲間からボロクソ言われたりする。番組としてはこれは本末転倒だろう。インテリア・デザイナーの才能を秤にかけるリアリティ・ショウなのだから、やはりここは全員にデザインを担当させるのが本筋のような気もする。しかしそうするとリアリティ・ショウとしての面白さは薄れ、また、全員に大がかりなデザインを毎回させていたら、番組としての製作費もバカになるまい。痛し痒しだ。その辺のバランスのとり具合が、番組プロデューサーが最も頭を悩ませるポイントだろう。


これまでの番組エピソードでは、デザイナーは子供部屋、ガレージ内のファミリー・ルーム、浜辺のカバナ、シェフが客をもてなしながら食事もできるダイニング・キッチン等のテーマを与えられ、ガレージ・セールで見つけた材料だけを利用する、等の制約下で、毎回苦闘しながらデザインをしていた。因みにカバナというのは海の家の小型版のような簡易小屋のことで、ヴィスコンティの「ベニスに死す」を思い出してもらえればいい。実は私もああいうのをカバナというのかと初めて知ったのだが、タイ移民のゴイルも同様にカバナという単語が初耳だったようで、カバナ、何、それと唖然としていた。


ついでに言うと、その回ではカラーの使い方を貶されてエリザベスが落ちたのだが、本人はまったく納得せず、ジャッジをくさしていた。実は、これには私も同感である。微妙な色使いをする場合、現実に自分の目じゃなくTVを通して見ているというネックははあるが、あの色使いのバランスは悪くないと私も思った。「プロジェクト・ランウェイ」の場合も、ジャッジとは意見が異なる場合がままあるし、「トップ・シェフ」では実際に味見できないからTVで見ている分にはまったく判断のしようがないのだが、あの裁定は私も本気で承服しがたく感じた。実は「トップ・デザイン」では、その回だけでなく、ジャッジの判断に疑義を挟みたくなるような場合が何度もある。結構参加者を貶すのだが、「アメリカン・アイドル」のサイモンのような説得力に欠ける。実は番組が最も失敗しているのが、その、ジャッジの人選にあるんじゃないかと私は思う。


番組は既に中盤戦に入り、12人いた参加者もあと5人を残すのみとなった。私の予想では優勝は、それまではあまり目立たず騒がず、いつもしこしこと自分の仕事をこなすことのみに専念しているように見えるマットかゴイルが、ここで一気に浮上してくるのではという気がする。二人ともセンスは悪くないが、これまではその他の我の強い連中に挟まれて実力を発揮できていないという感じがするのだ。ただ、そういう性格なんだろう、彼らのデザインは一見すると地味な感じがするのも確かだ。大口に腕がついていっている感じのしないカリッサやアンドレアを応援しようという気にはあまりなれない。


蛇足だが、上述したHGTVの「デザイン・スター」で優勝したデイヴィッド・ブロムスタッドがホストを務める、新番組の「カラー・スプラッシュ (Color Splash)」もこのほどHGTVで放送が始まった。この種の番組では、番組ホストの補佐として起用されたイケメン・カーペンターが人気が出たりする場合があるが、最近ではホストが男性の場合、カーペンターが女性の場合もよくある。「カラー・スプラッシュ」もそうで、元々結構イケメンでガタイもいいデイヴィッドという存在があり、さらにデイヴィッドがTVという分野ではほとんど素人というせいもあるだろう、女性カーペンターのダニエル・ハーシュがほとんど共同ホストに近い役割を担っている。いずれにしても、元々人好きのしそうなデイヴィッドのホストぶりは悪くないと思った。やはりこの種の番組で優勝した場合、一瞬大金を得るよりも、こういう風にキャリアを続けていけることの方が最終的には利になると思わせられた。



追記 (2007年4月)

その後番組はマット、ゴイル、カリッサ、アンドレアの4人に絞られ、しかも意外なことに段々プレッシャーに耐えきれなくなってきたか、ゴイルがあちこちで切れて自滅する傾向を見せ始めた。そのため、案の定その回ではゴイルが落ち、さらに次の回ではアンドレアが落ちて、マットとカリッサで最終決戦となった。最後の回のテーマは自分が住む家の内装のデザインで、実は二人とも悪くなく、どちらが勝っても納得と思われた。


マットは彼らしく今回もシィークな内装でまとめ、マリー・アントワネットをイメージしたという自分の娘のためのピンクの部屋は嫌らしくなくゴージャスで、この辺のまとめ方はさすがと思わせられたし、一方のカリッサも、ベッドルームを一段高めて中央に掘り炬燵的なベッドを配したアイディアは、それが機能的かということはともかく、斬新で感心させられた。結局勝ったのはマットで、私の予想通りと言えば言えるが、きっとカリッサとは僅差だったろう。一応面白かったから、この番組はきっと第2シーズンもあるな。  







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トップ・デザイン   ★★1/2

 
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