トゥデイ/トゥナイトのホスト交替
The Today Show    ザ・トゥデイ・ショウ   ★★1/2
The Tonight Show with Jay Leno    ザ・トゥナイト・ショウ・ウィズ・ジェイ・レノ   ★★1/2

Today

放送局: NBC

放送日: 5/12/2003 (Mon) 7:00-10:00

製作総指揮: トム・トゥーシェット

出演: ジェイ・レノ、マット・ロウアー、アン・カリー、アル・ローカー


Tonight

放送局: NBC

放送日: 5/12/2003 (Mon) 23:35-0:35

製作総指揮: デビー・ヴィッカーズ

出演: ケイティ・コーリック、ケヴィン・ユーバンクス


内容: NBCを代表する朝のトーク/ヴァラエティ・ショウと深夜トーク・ショウがホストを交替する。


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朝のトーク/ヴァラエティ番組「トゥデイ」と深夜の「トゥナイト」は、NBCが誇る二大長寿番組だ。「トゥデイ」は「ザ・トゥデイ・ショウ」、「トゥナイト」は現在のホストであるジェイ・レノの名を後ろに冠した「ザ・トゥナイト・ショウ・ウィズ・ジェイ・レノ」というのが正式の番組名であるが、誰もそう呼ぶ者はいない。「トゥデイ」は「トゥデイ」であり、「トゥナイト」は「トゥナイト」なのだ。あるいは「トゥナイト」の場合、「ジェイ・レノ」見た? なんてホスト名が番組名と同義に扱われることもあるが、要するに、それほど視聴者から親しまれている番組と言える。


「トゥデイ」は「トゥナイト」より若干早く、1952年に番組がスタートした。昨年、放送開始50周年を迎えた長寿番組だ。もちろんその間に何度もホスト/パーソナリティは様変わりしており、現在のメイン・ホストはケイティ・コーリックとマット・ロウアー、ニュース・アンカーにアン・カリー、お天気おじさんのアル・ローカーという布陣でここ数年安定している。


「トゥデイ」以外のアメリカのネットワークの朝のトーク/ヴァラエティ番組には、ABCの「グッド・モーニング・アメリカ」とCBSの「ジ・アーリー・ショウ」があるが、「トゥデイ」はその中で最も高い視聴率を稼ぐ。そのメイン・ホストのコーリックは、年俸1,300万ドルというアメリカの女性ニュース・アンカーとしては最高のギャラを獲得する、文句なしにアメリカの朝を代表する顔だ。


一方の「トゥナイト」は番組放送開始が1954年、番組ホストは初代スティーヴン・アレンからジャック・パー、ジョニー・カーソンと数え、現在のジェイ・レノが第4代目 (ピンチ・ヒッター的なホストは他に何人もいるが)、レノに代わってから既に10年以上が経つ、こちらも長寿番組だ。特に62年から92年まで、30年にわたってホストを担当したカーソンが「トゥナイト」の代名詞ともなっており、いくら現在レノが頑張っているとはいえども、「トゥナイト」といえば反射的にカーソンの顔を思い浮かべるファンはまだまだ多い。しかし、カーソンがホストをしていた時の正式番組名が「ザ・トゥナイト・ショウ・スターリング・ジョニー・カーソン」であるのに、現在の番組が「ザ・トゥナイト・ショウ・ウィズ・ジェイ・レノ」と違いがあるのには何か意味があるのだろうか。


その二大長寿番組に、このほどホストを交換してみようかという話が持ち上がった。この企画が持ち上がった5月は、アメリカでは全米で一斉に視聴率を測定するスイープ月間という特殊な時期であり、この時の視聴率がその後のスポンサー獲得やコマーシャル料金に直結する。そのため、どの放送局も少しでも高い視聴率を獲得しようと、時にウルトラC的な、ただ話題性獲得のためだけの派手な番組を投入したり、意表をつくギミックを採用することが多い。今回のホスト交換もその一部であり、もちろん今後もホストを交代するかもしれないというような、将来を考えてのことではなく、今回一発限りのスタントである。


とはいえ、それはそれで大いに興味をそそられるスタントではある。アメリカの朝と深夜を代表するパーソナリティがその椅子をとりかえっこしてみるというのは、さて、どういうふうになるのか、大いに好奇心をそそられる。というわけで、頻繁に見ている「トゥナイト」はともかく、いくらアメリカの朝を代表する番組といえども、平日働いている人間がはまずTVの前に座ってずっと見ていることはないだろう「トゥデイ」を、考えてみたら初めて、最初から最後まで見たのだった。


まず、レノがロウアーと共に共同ホストを務めた「トゥデイ」であるが、さすがに場所が変わると同じ司会業でも緊張すると見えて、いつもと違い、レノの顔はちょい引き攣り気味で、あまり余裕がない。わりと最初の方でレノが国務長官のコリン・パウエルに衛星インタヴュウを行うというコーナーがあったのだが、パウエルは確か何度も「トゥナイト」にゲスト出演しており、レノはその時は冗談を交えながら話していたりするはずなのに、今回に限り、真面目くさった顔で、いかにも鹿爪らしく緊張の面持ちである。もうちょっと気を楽にしたらと思うのだが、朝っぱらから相好崩して冗談に徹するというわけにはいかないことも、まあわかる。それでも所々にジョークを交え、一応無難にインタヴュウを終えたというところか。


「トゥデイ」はニューヨークのロックフェラー・センターからの生中継であり、一階に据えられているスタジオのガラス窓越しに、番組ファンがスタジオを取り囲んで、銘々「誰々さん見てる?」とか、「Hi, Mam」なんてプラカードなんかを持ってTVカメラに映ろうとしていたりする。レノやその他のホストの面々は、番組中に外に出て、それらのファンと会話したり握手を交わしたりするのだが、今回は、たまたま近日公開のハリウッド映画「The Italian Job」に併せ、48丁目と49丁目を結ぶ短い道路に、「The Italian Job」で活躍するミニクーパーを2台用意し、そこでカー・マニアとして名高いレノに、運転技術を披露してもらうという趣向があった。ミニクーパーは小さいために運転はしやすかろうというのはあるが、さすがにレノはあの狭い空間で何度もタイヤから白煙を上げながらサイド・ターンを決め、観客の喝采を浴びていた。


まあ、全般的に、レノはちょっと固かったけれども無難にこなしたというところか。ジョークを挟むタイミングが、勝手が違って最初は戸惑ったという感じはしたが、雰囲気に慣れてしまえば、人とお喋りをするのはお手の物であるわけだし、それほど難しいことではなかっただろう。また、レノとは関係ないところで、この日は番組ゲストとして、「マトリックス リローデッド」のキャリー-アン・モスが出ていた。やがて臨月を迎えるためゆったりとしたマタニティ・ドレス姿で、しかも髪を撫でつけずに軽く肩の上に垂らしているところなんか、まったく「マトリックス」のトリニティとは異なるイメージで、へえ、本当は結構フェミニンな女優なんだと思ってしまった。


ところで、「トゥデイ」のアル・ローカーは、NBCきっての名物お天気おじさんである。はっきり言って横綱級のでぶで、私は一度ロックフェラー・センターの紀伊国屋に行く時にたまたまローカーとすれ違ったことがあるのだが、とにかく他を圧倒するでぶだった。そのローカーが、現在減量中というのが結構話題になっている。一時は400パウンド (約180kg) は下らなかったと思われるローカーが、現在、見るたびに痩せていくのだ。あれでは毎週新しいスーツを設える必要があるに違いないと思うくらい、ばんばん痩せていく。なんでも痩せるために胃の大半を切りとったそうで、今では既に130パウンド (約60kg) の私とそれほど変わらないくらいになっている。以前はぷよぷよの顔に贅肉がなくなってくると、彼の場合、あまりに急激なので、引き締まったというよりも肉がこそげ落ちたという感じで、見てて結構怖いくらいだ。逆に病気にならないでいいだろうか。


さて、一方の「トゥナイト」のホストに挑戦したケイティ・コーリックの方であるが、こちらの方は、最大の難関は番組オープニングのモノローグにあるというのは関係者が口を揃えるところである。当然だろう。インタヴュアー、あるいは時事評論家としてならコーリックは人に勝るとも劣らないが、人の前に立ってジョークを聞かせるということはこれまでにやったことはあるまい。この、番組の最初の3分間を無事やり過ごすことができるならば、番組の後半はコーリックが最も得意とするところのゲストを招いてのお喋りになるわけだし、そうなればもう怖いものはない。つまり、最初の3分が番組を成功させるか失敗させるかの最初の鍵となる。


そのコーリック、最初で最後の晴れ舞台? ということで、クラッシーな黒いドレスで登場、まずは会場の喝采を受ける。やはりレノ同様、勝手が違うということで緊張の色は隠せないが、それでもなんとか無事最初の数分間のジョークを切り抜ける。一応、これで勝負の半分は既に済んだようなものだ。コーリックが現在アメリカで最も人気のある女性キャスターというのは、もちろんインタヴュウの技術や頭の回転によるところも多いが、やはり最大の理由はあのキュートな顔立ちと愛嬌にある。インタヴュウの技術なんて、ある一定のレヴェルに達しさえすれば、あとは誰も五十歩百歩なのだ。そのあとの差をつけるのは、やはり容姿、愛嬌、カリスマ、その辺になってくる。特に女性の場合は顔だ。そここそがコーリックの最大のセールス・ポイントなのであり、今でははっきり言ってお肌の曲がり角時代を大昔に通り過ぎてしまったABCの大御所、バーバラ・ウォルターズやダイアン・ソウヤーが逆立ちしても、この点だけはコーリックに遠く及ばない。


コーリックはバンド・マスターのケヴィン・ユーバンクスのうまい合いの手にも救われたが、ただし、やはり難を言うと、レノほどジョークはうまくない。まあ、しょうがないだろう。レノだってコーリックのように「トゥデイ」に溶け込んでいたわけではなかった (そりゃまあ、他人の番組なんだから当然だが)。そういう、まあ、普通のジョークを言って中くらいの笑いをとった後に、自分も笑顔を見せることで、観客も釣られて笑い、あるいは観客に、別にとても面白いというわけでもないが、まあいいか、と思わせることができることこそが、コーリックの最大の武器であり、魅力であり、強みである。もちろん、これを一週間続けたらマスコミからけちょんけちょんに叩かれるに決まっているが、一日だけなら彼女の愛嬌がすべてを許してしまう。レノや「レイト・ショウ」のデイヴィッド・レターマンが自分のジョークに自分で笑ってごまかしてなんかしていたら、翌日には彼らは路頭に迷うことになるはずだが。


また、この日の最初のインタヴュウ・ゲストは、コーリックが端役出演した「オースティン・パワーズ: ゴールドメンバー」のマイク・マイヤーズで、これは気の知れた仲間内のゲストを呼んでおいたものだ。もしうまく笑いがとれなくて大変なことになったとしても、その時はマイヤーズが大いにコーリックを助けることになっていたのだろう。その次のゲストは、現在アメリカで最も高い視聴率をとるFOXの番組「アメリカン・アイドル」で、参加者をこき下ろす辛口ジャッジで知られるサイモン・コーウェル。そのサイモンと共に、コーリックが「アメリカン・アイドル」でいつも甘い採点をするポーラ・アブドゥルの真似をして、ステージで歌う素人に対し、「グッド」、「グレイト」、「ナイス」なんてバカの一つ覚えみたいに同じことを何度も繰り返すギャグが、この日で最も面白かった。因みに音楽ゲストは、イギリスでは非常に人気があるそうだが、なぜだかアメリカではほとんど受けないロビー・ウィリアムス。なぜなんでしょうねえ。


今回のこのスタント、NBCの思惑は見事に当たり、「トゥデイ」も「トゥナイト」も数年ぶりの非常に高い視聴率を獲得したそうだ。私も普段はまともに見ることもない「トゥデイ」を最初から最後まで見てしまったからなあ。この週はこの「トゥデイ」と「トゥナイト」のホスト・チェンジだけでなく、「トゥデイ」のマット・ロウアーが悪名高いニューヨークのイエロー・キャブのドライヴァーに扮したり、アン・カリーのニュース・アンカーの役をWUSA (アメリカの女子プロ・サッカー・リーグだ) のスター・プレイヤー、ミア・ハムが務めたり、アル・ローカーが番組内のクッキング・コーナーを担当したりと、色々と役柄交代が演じられた。さすがにホスト交代以外はどうでもいいような気もしますが。







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