Evening News with Katie Couric   イヴニング・ニューズ・ウィズ・ケイティ・コーリック

放送局: CBS

コーリックの最終エピソード放送日: 5/19/2011 (Thu) 18:30-19:00

アンカー: ケイティ・コーリック


Evening News with Scott Pelley   イヴニング・ニューズ・ウィズ・スコット・ペリー

放送局: CBS

ペリーの第1回ピソード放送日: 6/6/2011 (Mon) 18:30-19:00

アンカー: スコット・ペリー


The Today Show   ザ・トゥデイ・ショウ

放送局:  NBC

ヴィエイラの最終エピソード放送日: 6/8/2011 (Wed) 7:00-9:00

ホスト: メレディス・ヴィエイラ、マット・ロウアー、アン・カリー


内容: 女性がアンカー/ホストを務めた番組の最終回。


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5年前、ABC、CBS、NBCの3大ネットワークの夕方のワールド・ニューズは、揃ってアンカーが交代するという大きな過渡期を迎えた。最もスムースに行ったのがトム・ブロコウからブライアン・ウィリアムズに引き継がれたNBCの「ナイトリー・ニューズ (Nightly News)」で、ABCの「ワールド・ニューズ (World News)」は二転三転した後、現在はダイアン・ソウヤーのアンカーで安定している。


そのソウヤーに先立って、最も権威あるネットワークのワールド・ニューズにTV史上初めて単独の女性アンカーとして就任したのが、ケイティ・コーリックだ。ただしコーリックの「イヴニング・ニューズ」は、始まった当初こそ注目度は高かったものの、結局常に視聴率争いで3大ネットワークで3番手という指定席から抜け出すことはできなかった。


「トゥデイ」ではその愛嬌で番組を押しも押されぬナンバー・ワンの地位に導いたコーリックだったが、権威がまず第一に求められるワールド・ニューズでは、「トゥデイ」のようににこにこしながら番組を進行させていくことはできない。コーリックの最大のチャーム・ポイントが最初から封印された状態では成功は覚束なかっただろうとは、今だからこそ言える。


いずれにしてもそのため、5年契約の切れる今年、コーリックはCBSを去るのではないかという噂が昨年からちらほらと聞かれるようになった。また、初の女性アンカーという肩書きに対して、CBSニューズ部門が特に親切というわけでもなかったらしい。コーリックはニューズ・アンカーとして以外にも、CBSの老舗ニューズ・マガジン「60ミニッツ (60 Minutes)」でもレポートしたかったそうだが、それはかなえられなかったそうだ。それでも、望むならたぶんまだ続けられたんじゃないかと思うが、コーリックは今春、「イヴニング・ニューズ」を去ると発表、先頃その最後のエピソードが放送された。


最後の回の最初のニューズは、ツール・ド・フランス7連覇のランス・アームストロングのステロイド疑惑で、この話、いっかな終わる気配がない。当然アームストロングは疑惑を否定するし、新たに当時のチームメイトが証言してまた疑惑をぶり返すというイタチごっこがずっと続いている。しかし、何もドラッグを使わないでただの人間があのスーパーハードなツール・ド・フランスを7連覇できるわけがないというコメントは、確かに説得力あるな。


他には脊髄麻痺で車椅子の人のための新しい治療法、時の人ドミニク・ストロス-カーン関連のニューズ、オバマ大統領とアラブ諸国、ヒラリー・クリントン国務長官へのインタヴュウ、ビジネスマンのためのソーシャル・ネットワーク、リンクト・イン、撃たれたガブリエル・ギフォーズ議員の現況の後、最後の5分を使って、コーリックのこれまでの5年間を振り返ってヴィデオ・クリップを見せた。


これがなかなか気が利いていて、ホワイトハウスを去るジョージ・ブッシュ前大統領に心残りはと訊いて、ブッシュがアブ・グレイブがなければと言うのは、いかにも本音という感じで笑えた。民主党議員と共和党議員に最も影響を受けた人を挙げさせると、オバマ大統領、バイデン副大統領、クリントン国務長官等の民主党議員は全員ネルソン・マンデラの名を挙げたのに対し、共和党のジョン・マッケイン、ルドルフ・ジュリアーニ、マイク・ハッカビーといった面々が全員一斉にロナルド・レーガンと言ったのには吹き出してしまった。レーガンが最も影響力のある政治家ですか。


その後、今年の東日本大地震やエジプト政変、ビン・ラディン殺害、ロイヤル・ウェディング等までをざっと流した後、簡潔に挨拶して5年間を締めくくった。アメリカではストレスがかかると逆に食べる方に走って太る者が結構いるが、コーリックもたぶん激務だろうに、むしろ「トゥデイ」時代よりも気持ち目方が増え、そして顔がややきつくなった。色々と言われたが、しかし史上初の女性ワールド・ニューズ・アンカーというタイトルは、今後何があろうとコーリックのものだ。コーリックは来年から、シンジケーションでホストを担当するトーク・ショウを持つことが既に発表になっている。


一方、そのコーリックが「トゥデイ」から「イヴニング・ニューズ」に移った時、ABCの「ザ・ヴュウ (The View)」から引き抜かれて「トゥデイ」でコーリックの後釜に収まったメレディス・ヴィエイラも、今回時を同じくして番組を去った。ヴィエイラの場合はまだまだやれるし周囲もサポートしていたようだが、旦那さんが重い病気だそうで、そばにいてやりたいという意向が尊重された。皆色々ある。


ヴィエイラの最後の回は、マット・ロウアー、アン・カリーを含む同僚たちが全員別れを惜しんだ。コーリックが「トゥデイ」を去った時も盛大に盛り上げていたが、今回のヴィエイラはほとんど最初から最後まで泣きっぱなしだった。泣きじわができたんじゃないの。ヴィエイラのよさはそういう感情が見ている者にストレートに伝わるところにある。ホスティングの技術や経験もさることながら、まず何よりも人柄だ。


ダイアン・ソウヤーが「グッド・モーニング・アメリカ (GMA)」を辞めた時はスタッフ全員でザ・ファウンデーションズの「ビルド・ミー・アップ・バターカップ (Build Me Up Buttercup)」を歌っていたが、今回のクライマックスはジャーニーの「ドント・ストップ・ビリーヴィング (Don’t Stop Believing)」で、○○○ Loves Meredith (○○○には着ている人の名が入る) と大書されたオレンジ色のTシャツを着たスタッフの面々が、曲に合わせてヴィエイラをスタジオ内部から外のロックフェラー・プラザ全体まで引きずり回す。


外に出ると一般市民までが曲に合わせて振りをつけてのフラッシュ・モブ・ダンスでヴィエイラを迎える。フラッシュ・モブとは現在アメリカで大流行りのムーヴメントで、事前に打ち合わせといて、ある瞬間が来ると、大勢の人間が一斉にダンスや歌で場を盛り上げるというものだ。今回は「トゥデイ」を見に来ている番組ファンや観光客を即席モブに仕立て上げて踊らせる。そして深夜トークの「レイト・ナイト・ウィズ・ジミー・ファロン (Late Night with Jimmy Fallon)」のジミー・ファロンもエア・ギターでサポート。いや、派手だ。


コーリックが「トゥデイ」を辞めた時やソウヤーが「GMA」を辞めた時は、公的な「事件」という感じがしたが、ヴィエイラの場合は、去る仲間のために友人たちが一生懸命盛り立てて、大掛かりだがプライヴェイトなパーティを開いているという感じが濃厚にする。本当に彼女は皆から好かれてたんだな。こうやって見ると、ヴィエイラがいなくなることは業界の損失だと思う。


ただしヴィエイラは、「トゥデイ」は去ってもシンジケーションの「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア (Who Wants to Be a Millionaire?)」のホストは続けていくようだ。こちらは基本的に30分番組であり、「トゥデイ」のように日も明けないうちからスタジオ入りを強いられたり、事前の時事問題の予習が欠かせないといったような負担が軽くて済むからだろう。


「イヴニング・ニューズ」も「トゥデイ」も、もちろん後任によって番組は続いている。「イヴニング・ニューズ」は、コーリックが辞めた後、臨時アンカーを経て6月第1週から「60ミニッツ」のヴェテラン、スコット・ペリーが新アンカーに就いた。

この時はアフガン問題から始まり、新ガン治療法、NY選出議員のアンソニー・ウィーナーのスキャンダル、ノルマンディ上陸67周年等が主なニューズで、ペリーはまったく淡々という感じで番組を進めた。結局、ワールド・ニューズに求められているのは、こういう安定性なのだろう。


最も驚かされたのは、アフガン問題の解説で、D.C.から中継でララ・ローガンが姿を見せたことだ。ローガンは今春のエジプト政変で現地入りしてレポートしている最中、暴徒化した群衆に襲われて大怪我しており、集団レイプされただけでなく、一時は生命の危険も伝えられた。本人ももうダメだと覚悟したそうだ。それが回復してまたニューズ解説するまでになった。並みの男性よりタフだ。


「イヴニング・ニューズ」は一時期、後任候補に昨年まで「ジ・アーリー・ショウ (The Early Show)」のホストを担当していたハリー・スミスの名前も挙げられていた。しかし結局、大方の予想通りペリーで落ち着くと、ハリーはNBCへの移籍を発表した。たぶん、本人も「イヴニング・ニューズ」を考えていたんだろうが、それがダメだったので新天地を求めたという感触が濃厚だ。スミスほどのキャリアの持ち主でも、思い通りに事が運ぶとは限らない。


「トゥデイ」の場合は、ヴィエイラの去った6月8日水曜の翌9日木曜から、それまではニューズ担当だったアン・カリーが正式にホストに就任した。カリーはNBCのニューズ・マガジン「デイトライン (Dateline)」でもホストを担当しており、東日本大地震の時は日本まで出向いていた。正ホストとなって最初の「トゥデイ」では、自分をシンデレラになぞらえていた。これからますます忙しくなるだろう。


ところで「トゥデイ」は、現在は朝7時から11時までの4時間番組なのだが、メイン・ホストのロウアーやカリーがいるのは9時までで、特に最後の1時間はホーダ・コッブとキャシー・リー・ギフォードの二人がメイン・ホストの女性向け情報/ファッション番組になる。しかもなんだかいつも見る度に朝っぱらからアルコールを嗜みながらホスティング、というかおしゃべりしてたりして、こうなるとほとんど男性視聴者はお呼びでない。


NBCはこの他にも平日の日中番組は12時台の「ザ・ランダウン (The Rundown)」と「デイリー・コネクション (Daily Connection)」、5時台の「ニューヨーク・ライヴ (New York Live)」と、3大ネットワークなら他がニューズをやっている時に、自分たちだけ女性中心の情報番組を放送している。ケーブルの姉妹チャンネルのブラヴォーの「リアル・ハウスワイヴズ・オブ‥‥ (Real Housewives of...)」シリーズも交互に放送していたりして、要するにソフトな番組を揃えた完全な女性向けチャンネルと化す。これで3時台の「ネイト (Nate)」、そして特に4時台の「ジ・エレン・デジェネレス・ショウ (The Ellen DeGeneres Show)」がなければ、本当に男性はチャンネルを合わせようとは思わないだろう。というか、「ネイト」も「エレン」も、基本的に女性向け番組だったりする。


私としては、ソフト路線を試みるのは結構だが、せめて「リアル・ハウスワイヴズ・オブ‥‥」だけはネットワークで放送するのは止めてくれ、しかも再放送を、としか思えない。チャンネルを合わせ損ねてたまたま昼日中から下らない「ハウスワイヴズ」を目にする度に、NBCのバカたれ、とケチをつけてみたりしているのだった。









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Evening News with Katie Couric

イヴニング・ニューズ・ウィズ・ケイティ・コーリック   ★★1/2

The Today Show  

ザ・トゥデイ・ショウ   ★★1/2

 
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