タイニー・ハウス・ネイション   Tiny House Nation 

放送局: FYI 

プレミア放送日: 7/9/2014 (Wed) 22:00-23:00 

 

タイニー・ハウス・ビルダーズ   Tiny House Builders 

放送局: HGTV 

プレミア放送日: 12/14/2014 (Sun) 13:00-13:30  

 

タイニー・ハウス・ハンターズ   Tiny House Hunters 

放送局: HGTV 

プレミア放送日: 12/15/2014 (Mon) 22:00-22:30  

 

タイニー・ハウス、ビッグ・リヴィングTiny House, Big Living 

放送局: HGTV 

プレミア放送日: 12/15/2014 (Mon) 23:00-23:30-0:00 

 

タイニー・ハウス・ハンティング   Tiny House Hunting 

放送局: FYI 

プレミア放送日: 12/22/2014 (Mon) 22:00-22:30 

 

内容: タイニー・ハウス、いわゆる狭小住宅の設計建設や紹介リアリティ。 


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Tiny House Shows


タイニー・ハウス番組  

私たち夫婦は昔から和洋を問わず家ものリアリティが大好きで、家のリノヴェイション系のリアリティ新番組が始まると、何はともあれ目を通す。日本のDVDショップに行くと、まず「ビフォー・アフター」の新しいのが入ってないかチェックする。 

 

一方うちの女房の弟は正反対で、自分ちでもない人んちのリノヴェイションなんか見て、何が面白いのかよくわからんと言う。その意見もわからんではない。私自身はセレブのゴシップばかりを集めた番組や、例えばブラヴォーの「ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ‥‥ (The Real Housewives of…)」フランチャイズ、あるいはABCの「ザ・バチェラー (The Bachelor)」のように、どうでもいい人のプライヴァシーを覗き込むような番組にまったく興味が持てないのだが、同じように人の家を紹介する番組に興味が持てないという者がいてもおかしくはない。でも、うちらは家ものはなぜだか黙って素通りできないのだ。 

 

その上、今回のテーマである小さな家、タイニー・ハウスともなると、さらに他人事とも思えない。現実にうちのコンドも60平方メートルくらいの、はっきり言って狭小住宅だ。二人しかいないからいいものの、子供でもいたらすぐに住めなくなると思う。因みにあれこれ読んだところからすると、アメリカでは500平方フィート以内の住居をタイニー・ハウスと呼ぶのが一般的らしい。おおざっぱに言って50平方メートル弱くらいか。300平方フィートというのもある。その上トレイラー型になるとさらに狭い。さすがにそれは本気で狭そうだ。それでも、すべてにおいて大きなものを選ぶ傾向の強いアメリカで、今、タイニー・ハウスを選ぶ、まだマイナーだが明らかに確固とした志向を持つ人々が増えている。 

 

実際の話、アメリカでもマンハッタンのような都会では、既に人はまず大きな家には住めない。一軒家なんて夢のまた夢で、60平方メートルの1ベッドルーム、バルコニーなし築30年のコンドミニアムもしくはコ・オプ物件で、ゆうに50万ドルを超えるのだ。さらに毎月のモーゲッジの支払いの上に管理費が月1,000ドルを超えたりする。これでは普通に働いている人間ではマンハッタンにはもう住めない。どうしてもマンハッタンに住もうと思うならば、古くてまともな設備のないエレヴェイタなしの6階か、30平方メートル一と間のステュディオくらいしかない。 

 

実際、人は環境に育てられるというか、選択肢が他にないというか、そういう物件に住む人が、徐々にではあるが確実に増えている。ニューヨーク近辺のアイケア に行くと、どれだけ狭い部屋に人が住めるかといった間取りで家具を置いたディスプレイがあり、人々が熱心に確かめたりしている。元々北欧の家は、暖房効率 を最大限に保つために、あれだけ人はでかいくせに、部屋はかなり狭かったりする。狭小住宅に対する心理的閾値は、思ったよりも早く低くなっていたのかもし れない。一方で身体の大きな欧米人がタイニー・ハウスの中にいると、狭さが際立つ。暑苦しいから部屋の中を立って歩かないでくれと言いたくなったりもする。 

 

そんなこんなで最近、タイニー・ハウスというマーケットが確立しつつある‥‥あるいはすでに確立している。ただし一つだけ明らかに日本やマンハッタン的視点と異なるのは、多くの場合、タイニー・ハウスを求める者は、それをセカンド・ハウスとして欲しい者がほとんどという点にある。 

 

つまり広い本宅は既にあるから、なるべく小さくて維持費のかからない別荘を持ちたいと思っているのだ。ある者は週末や休暇を過ごすための場所として、ある者は気分転換のために裏庭や私有する山林や土地に隠れ家的な場所が欲しい。そこでタイニー・ハウスの出番となる。 

 

あるいはある者は、若い時に色んな場所を見ておきたいと、トレイラー・ハウスならぬそれこそオーダーメイドのタイニー・ハウスを牽引しながら町から町へと旅する者もいる。それだと確かにトレイラーより住み心地はよかろう。そうか、タイニー・ハウスにはこういう使い方もあったか。 

 

またある一家は、広い家に住んでいながらわざわざタイニー・ハウスへの引っ越しを決意する。ロウ・ティーンの娘が二人いるが、今の家では広過ぎて家族が顔を揃える時間があまりない。娘が大きくなる前に、できるだけ家族が一緒の時間を多く持とうというわけだ。 

 

さらにボート・ハウスもタイニー・ハウスになり得る。アメリカではヨット・ハーバーに繋いだボートの上で暮らしているという者が少なからずいる。「ブラッド・ワーク (Blood Work)」におけるクリント・イーストウッド演じる主人公もそうだった。つまり、タイニー・ハウスの需要はそこそこある。 

 

そこに目をつけたのが、今夏編成されたFYI (For Your Info) の「タイニー・ハウス・ネイション (Tiny House Nation)」だ。「タイニー・ハウス・ネイション」は明らかにそういうニッチ・マーケットのツボをとらえ、そこそこのヒットとなった。FYIは、A&E、ライフタイム、ヒストリー・チャンネル等を擁するA&Eネットワークス傘下のチャンネルで、今夏衣替えして以前のドキュメンタリー主体のバイオグラフィ・チャンネルから、ライフスタイル系総合チャンネルのFYIと名称を変えて再出発した。出自が出自だから元々こういう家探しやリノヴェイション関連番組に強かったわけではないが、それでいきなり注目される番組を当てた。 

 

これはこういう家ものを専門としている老舗のHGTV (Home and Garden TV) チャンネルに とってはあまり面白くない。プロが素人にトンビに油げさらわれたような気になったのは間違いないだろう。それですぐさま反撃とばかりに、矢継ぎ早にタイ ニー・ハウス系番組をいくつも製作編成した。それらが「タイニー・ハウス・ビルダーズ」であり、「タイニー・ハウス・ハンターズ」であり、「タイニー・ハ ウス、ビッグ・リヴィング」だ。 

 

「タイニー・ハウス・ハンターズ」は、読んで字の如くHGTVの看板番組である「ハウス・ハンターズ (House Hunters)」フランチャイズの最新スピンオフで、番組構成はまったく「ハウス・ハンターズ」と同じ、ただ新居探しをタイニー・ハウスに絞っただけだ。とはいえ、ほう、アメリカにもこんなにでき合いでタイニー・ハウスがあったのかという驚きはある。また、一方のFYIも負けじとさらに「タイニー・ハウス・ハンティング」を投入、こちらはHGTVからうちらの「ハウス・ハンターズ」の商標を侵害していると訴えられかねない微妙なネイミングだ。そんなこんなで、いきなりたった2チャンネルとはいえ、プチ・タイニー・ハウス番組ブームが到来したのだった。 

 

これらの番組は、ホストもしくはアーキテクト/カーペンター/デザイナーがいるものもあれば、ナレーターによる紹介進行だけの場合もある。いずれにしても番組の面白さは家を一から作り上げるにせよ既にある物件を見せるにせよ、登場する物件如何と言える。それでも、やたらとハイパーなホストが登場する「タイニー・ハウス・ビルダーズ」とか記憶に残ったりするが、いくつか物件を見せて引っ越し先を決めさせる「タイニー・ハウス・ハンターズ」と「タイニー・ハウス・ハンティング」は、何度見てもどっちがどっちかをすぐ当てることは難しい。 

 

私がこれまで見た中で最も印象に残ったのは、やはりマンハッタンとブルックリンの狭小住宅を紹介した「タイニー・ハウス・ハンティング」の1エピソードと、タイニー・ハウスをトレイラーに繋いで西海岸からやはりマンハッタンまでやってきたカップルをとらえた「タイニー・ハウス、ビッグ・リヴィン グ」のエピソードだ。他のクルマのことなんかまるで気にしないバスやイエロー・キャブが、マンハッタンのアヴェニュウを走るカップルのタイニー・ハウスをすれすれで抜き去っていく。助手席の彼女の方は、ぶつかる、事故ると心臓ばくばくものだ。 

 

ところで充分予想できることではあるが、構造材を選んだりペイントの色を選ぶことにも増して、タイニー・ハウスの極意は収納にある。特にセカンド・ハウスとしてではなくそこに当分住むつもりでいる場合、これはもう当然だ。元々物を置く場所が限られているのだ。特にこのことは、狭いながらもここをたぶん終の住み処として捉えているだろうマンハッタンのタイニー・ハウスを物色している者にとっては大きな問題だ。 

 

それで色々なアイディアを投入して、収納場所を確保しながら一から作ったりリ ノヴェイトする。「ビフォー・アフター」でも狭小住宅の魔術師みたいな匠が色々知恵を絞るが、同様のことをアメリカのタイニー・ハウスでもやる。日中はベッドは収納してリヴィング・ルーム、もしくはホーム・オフィスになる。そこまでしてマンハッタンに住みたいかと思うが、住みたいんだろう。それでハーフ・ミリオン・ダラーズだ。やっぱ狭小過ぎるのは嫌かなと思うのだった。 












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