This Morning   ディス・モーニング

放送局: CBS

プレミア放送日: 1/9/2012 (Mon) 7:00-9:00

製作: CBS

製作総指揮: クリス・リクト

ホスト: チャーリー・ローズ、ゲイル・キング、エリカ・ヒル


内容: 朝のニューズ/トーク・ショウ。


Person to Person   パーソン・トゥ・パーソン

放送局: CBS

プレミア放送日: 2/8/2012 (Wed) 20:00-21:00

製作: CBS

製作総指揮: スーザン・ジリンスキー、ジュディ・タイガード

ホスト: チャーリー・ローズ、ララ・ローガン


内容: セレブリティの自宅やオフィスにお邪魔してインタヴュウする。


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今、米ネットワークの朝のニューズ/トーク・ショウの時間帯が面白い。別に現在に限らず、特に安定しないCBSを中心に、ここ数年、番組のホストが代わったり番組自体が替わったりするなど微震は続いていたのだが、ここへ来て一気に本格的な激震が起こりそうな気配を漂わせている。


CBSの「ジ・アーリー・ショウ (The Early Show)」は、3大ネットワークが全米ネットのトークで勝負する朝の時間帯で、ここ数年、いや、ここ数十年、NBCの「トゥデイ (Today)」、ABCの「グッド・モーニング・アメリカ (Good Morning America: GMA)」の後塵を拝し、万年最下位の地位に甘んじていた。

これまでにもなんとかしようとホストを代えたり番組構成を代えたりしており、昨年同時期にも思い切ってホストを刷新してみたりしたのだが、どうもうまく行かない。何をやっても焼け石に水という感じだった。もうこれ以上手ぬるい改革をやっている暇なぞないということになったのだろう、今回、本当に思い切った改革に着手してきた。それが「ディス・モーニング」だ。


「アーリー・ショウ」改め「ディス・モーニング」になったとはいえ、「ディス・モーニング」はそもそも新番組というわけではない。基本的にこの時間帯の番組は、番組名称は替わっても内容自体はあまり大差ないニューズ・トークということには変わりはないし、そもそも「ディス・モーニング」という番組名自体、1987年から1999年まで、つまり1999年に「アーリー・ショウ」になるまで用いられていた。その時にホストを担当していたのが、先頃までCBSで遊軍的ポストにいながら、長年いた古巣を去ってNBCに移籍したハリー・スミスだ。


「アーリー・ショウ」が「ディス・モーニング」に先祖返りしたということは、ややヴァラエティ・ショウ的な色のあった番組が、もっと硬派路線に転換することを意味している。そのことを端的に表しているのが、番組ホストに抜擢されたチャーリー・ローズだ。


ローズは公共放送のPBSで、長年、時事インタヴュウ番組の「チャーリー・ローズ (Charlie Rose)」のホストを担当してきたヴェテランだ。要するに、本気で「ディス・モーニング」を「トゥデイ」や「GMA」に伍す番組にしたいのなら、もはやCBS内部からホストを抜擢することにこだわる必要はないという決心の表れだ。果たして英断なのか破れかぶれなのか、なんとも言いかねる。


「チャーリー・ローズ」はまったくと言っていいほど衒いのない、ど真ん中直球という感じのオーソドックスなインタヴュウ番組で、ほとんどの場合、1時間全部を使ってローズとゲストが1対1でおしゃべり、というかゲストがローズのインタヴュウに答える。正直言ってゲストが自分の興味ある対象でない場合は、眠気を催すことの方が多く、私はほとんど見ていない。「チャーリー・ローズ」に較べれば、CNNの「ラリー・キング・ライヴ (Larry King Live)」はエンタテインメント番組だったとすら言える。


一方ローズはCBSと無縁ではなく、これまで1980年代には時事ニューズ番組「ナイトウォッチ (Nightwatch)」のアンカーであり、1991年に「チャーリー・ローズ」が始まってからも、CBSの「60ミニッツ (60 Minutes)」で特派員的な仕事をしていた。だからローズにとっては古巣に帰ってきたというところかもしれない。一方で今でもPBSで「チャーリー・ローズ」も続けている。


ローズの相方を務めるのが、「アーリー・ショウ」のエリカ・ヒルと、これまでOWNで「ザ・ゲイル・キング・ショウ (The Gayle King show)」のホストだったゲイル・キングだ。OWNはキングの盟友オプラ・ウィンフリーが主宰するケーブル・ネットワークであり、今青息吐息でチャンネルのリブランディングの真っ最中であるOWNから離脱することは、実はタイミングとしてはあまりよくはないが、ウィンフリーはキングのこのキャリア・アップを喜んでくれたという。ヒルが社会派系のやや硬め、キングが文化芸能系の柔らかめのコーナーを担当する。その他、当然ではあるが、CBSの主要なニューズ・アンカーの面々であるボブ・シーファーやスコット・ペリー、ララ・ローガン等も随時登場してコメントを加える。


新生「ディス・モーニング」第1回は、これまでとはがらりとイメージが変わった新しいステュディオ・セットからの放送で、これまでのどんなニューズ/トーク・ショウとも印象が異なるものとなっている。CBSの番組に期待する意気込みが伝わってくる。レンガ積みの壁を模した背景等、イメージとしてはインテリの書斎だ。


最も目立つのが中央に据えられた、透明なアクリル製と思われる、大型の、花瓶を横にしたような形のデスクで、番組オープニングではこのデスクを取り囲んでローズ、ヒル、キングが座っていた。ホスト同士が対面する形になるため、最初に登場した時、ゲイルは後ろ姿という、たぶんどんな番組であろうと、プレミア・エピソードで史上初、後ろ向きで顔を見せずに登場したパーソナリティとなった。


このデスク、私の印象では必要以上に大きい。ホスト同士やゲストを呼んでおしゃべりする時、デスクのこっち側と向こう側では遠過ぎてしゃべりに適さないという印象を受ける。前かがみになって気持ち大声にならないと、声が向こうに届かないという感じなのだ。


また、時々ステュディオに来れないコメンテイターが、バナーのようなスクリーンに映し出され、そのバナーがデスクそばに吊り下げられることで、さもそこにいるような印象を与えようと工夫している。これがまた、バナーに映し出された人物の顔が実際にデスクについている者たちより大きな比率なので、いきなり巨人がそこに座っているような錯覚を与える。最初にこれを見た時はとてもびっくりした。最新テクノロジーの進歩はすごいが、使い方を誤ると逆効果だ。最近これを見なくなったのは、製作側もそう思ったからに違いない。


番組は前半がローズ主導の硬派路線で、キングはオープニングに姿を見せるとすぐいなくなる。後半になると逆にローズが引っ込み、キングが前面に出てきて柔らかいテーマ主体となる。番組はこれまでのところ、思惑通りに視聴者を増やすまでには行ってない。しかしいずれにしてもそれまでの「アーリー・ショウ」のままでは視聴率がジリ貧だったのは確かなので、CBSにとってはこの改革は必要だったろう。実際、「トゥデイ」、「AMC」に対抗するにはこれしかなかったような気は確かにする。


ローズは「ディス・モーニング」だけでなく、CBSの同僚のララ・ローガンと組んで、翌月からセレブリティ・インタヴュウ番組の「パーソン・トゥ・パーソン」のホストも担当している。元々は1950年代に、CBSの伝説的パーソナリティ、エドワード・R・マーロウが始めたインタヴュウ番組のリメイクだ。セレブリティの自宅にお邪魔して生中継でインタヴュウするという番組で、当時は綺羅星のような有名人が大挙して番組に登場している。


今回のリメイクではローズとローガンはステュディオから衛星中継で自宅にいるセレブリティにインタヴュウするのだが、放送自体は生中継ではない。正直言うとこれはだいぶオリジナルのエッセンスを消失させているような気がしないでもない。わざわざセレブリティが自宅を開放してくれているのに、これでは生の臨場感を損なってしまう。ただし一発撮りで撮り直しなしという最低限のラインは守っているようで、例えば画面に一瞬スタッフの影が落ちても、そのまま撮影を続けている。あるいはただ撮り直しの煩を避けただけか。


因みにプレミア・エピソードでインタヴュウするのは、ジョージ・クルーニー、世界最大級のお金持ちの一人だが、そのほとんどを寄付しているウォレン・ビュッフェ、そしてジョン・ボン・ジョヴィの3人。クルーニーが最初のゲストというのは、彼がマーロウのキャリアを回顧した「グッドナイト&グッドラック (Good Night, and Good Luck)」を製作したこと繋がりだろうと思う。番組は今シーズン中に第2回を放送予定で、それらの成績がよければシリーズ化する予定だそうだ。しかし上にも言ったように、ライヴで放送するというオリジナルの「パーソン・トゥ・パーソン」の極意の部分が踏襲できなければ、番組を製作する意味はないと思う。


上述したように、「ディス・モーニング」は今のところCBSの意気込みもむなしく、「トゥデイ」と「GMA」にまったく及ばず、差をつけられたままだ。そして4月上旬、その「トゥデイ」と「GMA」間で激しい視聴者獲得のつばぜり合いが繰り広げられた。


「トゥデイ」元ホストのケイティ・コーリックがCBSの夕方のワールド・ニューズ番組の「イヴニング・ニューズ (Evening News)」に就任し、そして意叶わず去って行ったのは、近年のネットワークでの大きな事件の一つだった。そのコーリック、今秋からABCに移籍して日中のトーク・ショウのホストに就くことが決まっている。


ABCの「GMA」は、視聴率で常に「トゥデイ」の下に甘んじていたが、近年、その差は縮まっている。そして今回、「GMA」はそのコーリックを臨時ホストに起用した。コーリックにとっては、自分が1位に押し上げた、いまだに愛着もあるだろう「トゥデイ」相手に喧嘩を挑むようなもので、なんというか、アメリカ・ネットワーク界の仁義なき戦いをまざまざと見せつけられたような気がした。それとも、コーリックにとっては「トゥデイ」は既に過去のものなのだろうか。


一方の「トゥデイ」は、ゲスト・ホストとして元共和党の副大統領候補サラ・ペイリンを起用、こちらも話題を煽った。共同ホストのマット・ラウアーも契約更改の時期で番組の去就が注目されており、さらに「ディス・モーニング」もキングの盟友オプラ・ウィンフリーをゲストとして迎えるなど、俄かに朝のトーク・ショウに全米の眼が集まった。結局「GMA」はいかにコーリックを持ってこようとも視聴率で「トゥデイ」を逆転するに至らず (1週間のうち1日だけは「トゥデイ」を抑えてはいる)、形勢逆転とはならなかった。


現在、ABCでは日中編成しているソープ・オペラに引導を渡し、続々とトーク・ショウもしくはニューズ化する改編が進んでいる。昨秋から食専門のトーク「ザ・チュウ (The Chew)」、ライフ・スタイル専門の「ザ・レヴォリューション (The Revolution)」を投入しているが、しかし後者の方は視聴率不振を理由に既に番組打ち切りが発表になっている。


そのため、今春から番組が編成されていた午後2時台が空くのだが、ABCはそこに新たにトークやソープの新番組を投入することをせず、「GMA」を分割拡張して、そこに「GMA・イン・ジ・アフタヌーン (GMA in the Afternoon)」を編成すると発表した。「トゥデイ」もじりじりと番組を拡張して今では午前7時から11時までの4時間番組なのだが、「GMA」の場合は、間に間を置いての飛び石編成の1日3時間番組になる。


今のところ秋にコーリックがホストのトーク・ショウ「ケイティ (Katie)」が始まるまでの暫定的処置らしいのだが、もし好評なら、現在残っている最後のソープ「ジェネラル・ホスピタル (General Hospital)」をキャンセルして、そこに「GMAイン・ジ・アフタヌーン」を据えてもいいというのが本音だろう。ジャンルとしてのソープ・オペラは既に死に体になっているが、完全にこの世から消えるのも時間の問題になってきた。









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Person to Person

パーソン・トゥ・パーソン   ★★

 
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