Thirteen Ghosts

13ゴースト  (2001年10月)

本当はケヴィン・スペイシーが宇宙人の役をやるという「K-PAX」を見に行こうとしたんだが、上映時間のお知らせサーヴィスである777-FILMに電話をして、12時15分だということでそれに合わせて劇場に行ったら、実は始まるのは12時50分だった。フィフティとフィフティーンを聞き間違えてしまったわけだが、30分以上も何もせずにぼうっと待っているのも芸がない。それで、12時30分という時間に始まる「13ゴースト」で手を打った。本当ならこれを見るくらいなら、ジョニー・デップ主演の「フロム・ヘル」を見たかったのが、そのマルチプレックスではやっていなかった。まあ、こんなこともある。


「13ゴースト」は、B級ホラーの大御所として知られるウィリアム・キャッスルの1960年の同名作品のリメイクである。キャッスル作品は内容そのものよりも、彼の作品を上映する劇場に骸骨を吊るしたりする、上映方法の奇抜さの方で知られている。観客を怖がらせる (楽しませる?) ためには手段を選ばなかった人なのだ。つい最近も、「地獄へつゞく部屋 (House on Haunted Hill)」のリメイク、「TATARI」が公開されるなど、本人の名は出ないリヴァイヴァル・ブームが続いている。


火事で妻を亡くし、家を失ったアーサーは、その後娘のキャシーとまだ幼い息子ボビーを育てるのに精一杯の生活を送っていた。そこへ、これまでほとんど連絡をとっていなかったおじサイラスの遺産として、郊外の豪勢な一軒家が譲られるという知らせを受ける。生涯をゴーストの研究に捧げた変人であるサイラスが郊外に建てた一軒家は、ガラス張りで、建築の粋を極めた瀟洒な作りの、アーサーらにとってそれこそドリーム・ハウスだった。しかし、この家にはアーサーらの知らない隠された秘密があった‥‥


オリジナルを見ていないから比較できないのだが、今回はセットといい、特撮といい、結構な金がかかっている。しかし、だからといって特に印象に残るというものでもなく、見た後で映画館を出たら、もう何も覚えていないというタイプの作品である。ホラーであるが、怖いというシーンは一つもなかった。ショッカーでぎょっとさせる、みたいなシーンはないこともないが、怖かないなあ。ホラーというよりはアクション映画で、登場人物が大声で叫び、勢いよく走り回り過ぎるので、たとえ血しぶきが飛ぼうとも、怖いというよりは変に爽快な感じを受けてしまう。よくも悪くもカップル向きのデート映画だ。


作品内では、登場人物が特殊眼鏡をかけるとゴーストを見ることができるという設定になっている。因みにオリジナル版ではその特殊眼鏡をかけるとゴーストを見ることができたのは観客の方で、「イリュージョン-O (Illusion-O)」という、なんでもチープな特殊上映法がとられていたそうだ。特殊な3-Dの変型ヴァージョンのようなものなのだろうが、とにかく一作ごとに新しいギミックを考案したキャッスルらしいアイディアである。もちろんイリュージョン-Oはそれ一作限りで姿を消した。


主演のトニー・シャロウブはアメリカのTVファンには長年続いたシットコム「ウィングス (Wings)」によってよく知られているが、はっきり言って主演向きではなく、「マーシャル・ロー (The Siege)」や「メン・イン・ブラック」、「シェフとギャルソン、リストランテの夜 (Big Night)」等、印象的だったのは何人かのアンサンブル・キャストによる作品か、重要な脇という作品に限られる。一昨年、TVのシットコムでニール・パトリック・ハリスと共に主演した「スターク・レイヴィング・マッド (Stark Raving Mad)」は、一応1年は続いたが、それが限界で早々とキャンセルされた。


霊能者ラフキンに扮するのは、「スクリーム」のマシュー・リラード。ここでも「スクリーム」同様のやり過ぎの、おまえうざったいぞ演技で、早くやられてくれないかと思わせる。アーサーの娘キャシーを演じるシャノン・エリザベスは、「最終絶叫計画」、「アメリカン・パイ」シリーズ等に主演、ティーンエイジャーでは知らぬ者のない人気者。「ジェイ・アンド・サイレント・ボブ・ストライク・バック」でも、おつむの空っぽな宝石泥棒役で、いい味出していた。他にサイラス役で、「アマデウス」のオスカー俳優F. マーレイ・エイブラムが出演している。


アーサーの息子ボビーに扮するアレック・ロバーツは、昨年、キューバから船に乗ってアメリカに密航し、その船が沈没、唯一の生き残りとなって世界的有名人となったエリアン・ゴンザレスのドキュドラマ「エリアン・ゴンザレス・ストーリー」で、そのゴンザレスを演じた。IMDBで見ると、これまでに3本の出演作しかないにもかかわらず、あの幼さで既に主演作があるというのが凄い。因みにソダーバーグの「トラフィック」にも出てるようだが、どこに出てたかはまるっきり記憶にない。


実は「13ゴースト」の様なホラーが公開されるのも、もうすぐハロウィーンというせいなのだが、そのせいでTVでもホラー映画の放送が盛んだ。特に編成の自由度が高いケーブルでは、毎年ホラー映画のオン・パレードになる。私は特にクラシックや珍品をノーカットで放送してくれるインディ映画専門のIFCやサンダンス、クラシック映画専門のAMCやTCMがひいきで、今年もデイヴィッド・クローネンバーグの「ザ・ブルード」、ダリオ・アルジェントの「インフェルノ」、「シャドー」、ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」から「オーメン」まで、ホラーの醍醐味を味わわせてくれる作品を続け様に見ていたので、「サーティーン・ゴースツ」くらいでは欲求不満だ。 せめてキャシー役のエリザベスの怯えた顔のアップとかがもっと見れればなあと思ったが、彼女は捕らわれの身となって途中からいなくなってしまう。最後にまた出てくるのだが、あれくらいしか出番がないんではしょうがない。アルジェントやクローネンバーグならきっとねちねちと彼女をいたぶってくれただろうに。どこかのチャンネルがウィリアム・キャッスル特集でも組んでくれないかなあ。








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