The Winner Is...   ザ・ウィナー・イズ‥‥

放送局: NBC 

プレミア放送日: 6/10/2013 (Mon) 22:00-23:00 

製作: タルパ・メディア 

製作総指揮: ジョン・デ・モル、クレイグ・プレスティス 

ホスト: ニック・ラシェイ 

  

内容: 参加者を一 (組) 対一 (組) で歌わせ、スタジオ内の業界関係者の投票によって勝者を決めて勝ち抜いていく勝ち抜きシンギング・リアリティ・ショウ。各々のラウンドには賞金がかかっており、参加者は自分が負けたと思った時には賞金をとって勝負を降りてもいいが、その結果負けていたことが判明した場合は賞金は与えられない。最後まで残って優勝した時の賞金は100万ドル。


_______________________________________________________________

The Winner Is...


ザ・ウィナー・イズ‥‥   ★★1/2

歌番組においてFOXの「アメリカン・アイドル (American Idol)」が一人勝ちしていた時代は終焉を告げたと言ってしまってもいいだろう。いまだに視聴者数でこそなんとかNBCの「ザ・ヴォイス (The Voice)」より僅かに上回っているが、若い視聴者では既に「アイドル」より「ヴォイス」の方が人気がある。 
 
私はこれまでずっと見てきたことだし、まだ「アイドル」も見ているが、昨シーズン、面白くなくなってきたと感じているのに、他にヒット番組のないFOXが最後の足掻きとばかりに1時間で充分の番組を2時間番組として編成してきた時には、さすがに愛想を尽かした。おかげで使えないニッキ・ミナージとマライア・ キャリーの見たくもないキャット・ファイトばかりを見せられ、毎回多めに歌わせられる参加者は練習不足で声も疲れている。これじゃあますます視聴者を減らすばかりだろうに。DVRを使って不要な部分を飛ばして見てなかったら、既に番組自体を見るのを辞めているところだ。 
 
「ヴォイス」はそういう、いい加減「アイドル」飽きたと思っている視聴者にもうまくアピールした。さらにNBCは、
「ザ・シング-オフ (The Sing-Off)」等、「ヴォイス」以外にも歌番組発掘に余念がない。夏の「アメリカズ・ガット・タレント (America's Got Talent)」だって4分の1程度の参加者は歌を歌うシンガーだ。そしてその列に連なる最新のシンガー発掘リアリティが、「ザ・ウィナー・イズ‥‥」だ。 
 
「ウィナー・イズ」は、「シング-オフ」同様、ニック・ラシェイがホストを担当している。「シング-オフ」は今秋に新シーズンが始まるのが決まっているから、NBC/ラシェイはあわよくば夏に「ウィナー・イズ」、冬に「シング-オフ」という年間を通しての歌番組路線構築を考えているようだ。因みにABCの
「ワイプアウト (Wipeout)」でフィールド・レポーターを担当しているヴァネッサ・ラシェイは奥さんで、このほど二人の子を出産したそうだ。それまではヴァネッサ・ミニロという名だったのに、いつの間にかいきなりラシェイという名字になっていた。一方ラシェイの前妻のジェシカ・シンプソンも、先頃二人目の子を出産したとしてニューズになっていた。MTVの「ニューリーウェズ (Newlyweds)」の時からだいぶ遠いところに来てしまった。 
 
さて話を元に戻して「ウィナー・イズ」も、勝ち抜きのシンギング・コンペティション・リアリティだ。もちろん単純に歌のうまさだけを競う勝ち抜きリアリティだと「アイドル」の上に行けないのはわかりきっているので、新しいギミックが必要だ。「ヴォイス」ではそれがブラインド・オーディションだったりバトル・ラウンドだったり、「シング-オフ」ではグループ・アカペラだったり、ABCの
「デュエッツ (Duets)」ではデュエットだったりと、それぞれが創意工夫を凝らしている。 
 
「ウィナー・ イズ」は二組のシンガーを歌わせて、どちらがいいかをスタジオ内の101人の業界関係者に投票させる。その結果はすぐに表示されるが、数値は得票数を示しはしても、ではどっちが何票獲得したかは伏せられている。パフォーマンスを終えたばかりのシンガーはどちらがいいと思われたかを判断し、もし自分が負けていると感じたら、その時の賞金を手にして勝負から降りることができる。両方とも勝負を降りなければ当然票を多く獲得した方が次のラウンドに進み、獲得票の少なかった者はそこで失格となり、その場にかかっていた賞金ももらえない。ラウンドが進むほど賞金は増え、最後まで勝ち残った者の賞金は100万ドルだ。 
 
もちろんこのギミックの面白さは、自分の方が評価されているのに自信がなくて自分から降りてしまって、後で自分が勝っていたことを知って愕然とする参加者や、逆に負けているのに強気で勝負に行って、負けて一文無しで帰る参加者など、ギャンブル性によって一喜一憂する参加者を見ることにある。 
 
最初のラウンドの賞金は1万ドルで、むろんそれだって決して小さな額ではないが、後の方になると賞金は倍々ででかくなる。二組が歌い終わった後、その現ナマが二組の間にするすると上がってくる。それを見ながら参加者は果たして自分が勝ったか負けたかを3秒で判断して、勝負に出るか降りるかを決めなければならない。自分が勝ったと絶対の自信を持っているなら決断も楽だが、自信のない時はプライドと客観的判断の狭間で揺れる。果たして自分は勝ったか、それとも負けたか? 勝負も最後の段階になると、その一瞬の決断で数十万ドルを手にできるかどうかが決まる。思案のしどころだが、それに時間をかけている余裕はない。 
 
という参加者のジレンマを見るのが、番組の面白さであることは言うまでもない。少なくとも最初の方では、誰もが勝負に出るのだが、それでもスタジオの観客の拍手や受けが明らかに向こうの方がよかったりすると、当然考える。向こうの方が評価されたかもしれない。自分の方がうまいと思うが、それをどう評価するかは評価する者次第だ。降りた方が得策か? 

 

番組第1回では、そう考えた女性シンガーが、子供の女の子相手のバトルで自ら降りた。私の意見では年上の彼女の方が断然よかったのだが、洋の東西を問わず子供と動物には甘いのは人の常だ。さらに得点差も圧倒的で、明らかにスタジオの一般客の拍手は子供の方が大きかった。評者もそう思わない保証はない。スタジオには彼女の父も応援に来ていて、もちろん自分の娘を応援してはいるが、人が子供に甘いのを見越して、ここは現金をとって勝負を降りた方が得だろうと助言、娘はその勧めに従って勝負を降りたが、その後発表された各々の得票数では、実は彼女が大差で勝っていた。この父、昔から何をやってもうまく行かなくて、娘がなんとか父を楽にしてやりたいと番組に参加してきた旨のことを言っていたが、こういういざという時の判断を常に間違うような父だからずっと負け組だったんだろうなという感強し。 

 

番組ではこんな感じで毎回6組のシンガーが登場する。1回戦は3勝負あり、勝った者は第2ラウンドに進む。第2ラウンドの賞金は25,000ドル。3組ある勝者のうち、最も大差で相手を下した者は第2ラウンドを飛ばして第3ラウンドに進み、第2ラウンドを 勝ち抜いてきた者と対戦する。第3ラウンドの賞金は50,000ドル。この第3ラウンドまでを一つのエピソードに収めている。勝者はフィナーレに進み、最終賞金100万ドルをかけた最後の勝負に挑む。 
  

単純に、出てくる参加者を見ると、アメリカって、普通以上に歌うまい奴がゴロゴロいるよなという感じだ。むろんそれは「アイドル」だろうと「ヴォイス」だろうとそうではあるが、しかし、「アイドル」は一応予選を勝ち抜いてきた者たちだからうまいのは当然だし、「ヴォイス」は最初からセミ・プロを集めている。そういうのから漏れたごく普通の、働いているサラリーマンたちでも、プロ並みなのがごろごろいる。層の厚みを感じる。


ただしお国柄、カントリー系のシンガーに対して採点が甘くなったり人気が偏るという傾向はどうしてもあるようだ。まだまだ参加者は出尽くしてないが、その点を鑑みて、プレミア・エピソードを勝ち抜いたケイティ・オーが最後までいい線行く可能性はかなり高いと思う。










< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system