放送局: CBS
プレミア放送日: 11/20/2002 (Wed) 20:00-21:00
製作: トライアングル・プロダクションズ、
製作総指揮: エドワード・ラゼク、モニカ・ミトロ、ストゥ・シュライバーグ、マリリン・シーベリー
監督: ブルース・ゴーワーズ
ホスト: ハイディ・クラム、マーク・マグラス
内容: ランジェリー・メイカー、ヴィクトリアズ・シークレット主催のファッション・ショウ中継。
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ヴィクトリアズ・シークレットはアメリカ最大手のランジェリー・メイカーである。一流モデルを起用して華々しくマーケティングを展開しており、郊外の大型ショッピング・モールに行くとたいていは必ず入っているチェーン店だ。通販にも力を入れており (というか、本当はこちらの方がメインだ)、アメリカの女性でヴィクトリアズ・シークレット製のランジェリーを一つも持っていないという者はいないのではないかと思えるほど浸透している。ただし、やはりアメリカ製だから、日本人の体格には向かない (要するに着れない) 製品が多いとは私の女房の弁。
そのヴィクトリアズ・シークレットのファッション・ショウは、当然の如くというかなんというか、女性より男性の方に人気が高かったりする。一昨年、ヴィクトリアズ・シークレットがその最新ランジェリーのお披露目ファッション・ショウを自社ホーム・ページでストリーミング公開したところ、ページがパンクするほどのアクセスが殺到した。それに目をつけたのがABCで、昨年11月、このランジェリー・ショウをプライムタイムに中継したのだが、これまた意外な好視聴率を獲得した。
そして今年、多分またABCが中継するんだろうなと思っていたこのファッション・ショウの中継権を、CBSがしゃしゃり出て横取りしてしまったのだ。「サバイバー」で多少視聴者が若返ったとはいえ、いまだに視聴者の平均年齢ではダントツに高いCBS、若い視聴者を獲得できる番組が本当に咽喉から手が出るほど欲しかったようだ。
実はこの番組、昨年放送された時は、天下のネットワークがプライムタイムの、それもまだ子供がTVを見ている時間帯にこういう番組を放送するのはけしからんと、結構激昂していた市民団体があったりした。そらまあ下着ショウだから下着しかつけていないのは当然の話なのだが、それでもおっぱい丸出しやヘアが見えるというわけでもなく、なぜこのくらいで怒る人間がいるのかというのは、「時間ですよ」を見て育った世代にはまるで理解不能だったりした。どこの国にも心の狭い人間はいる。
というわけで、昨年このショウが中継された時は、別にいくらスーパーモデル満載とはいえ、すっぽんぽんのヌードになるわけでもない番組を見る気にもなれず、ほっておいたのだが、驚きの好視聴率や市民団体の抗議等でわりと話題を提供していた上、さらには結構有名どころの音楽パフォーマンスもあることなどもあり、今年は何とはなしに見てみたわけだ。やっぱり今年もどこぞの市民団体が抗議し、アメリカの放送業界を司る政府機構のFCC (連邦通信委員会) に番組放送差し止めを求めたりしていた。そんなことやる暇があるなら、もっと他に建設的なことがやれるだろうに。
さらに今回のショウでは、番組収録時にいわゆる過激派的野生動物保護団体のPETAの一群が花道になだれ込み、毛皮をとるための野生動物の虐殺に反対を叫ぶアジテーションを行ったそうだ。これは究極の薄着のランジェリー・ショウであって、防寒用の毛皮とはまるで対極にあるファッション・ショウなのだが、まあ、いずれにしてもどちらもファッションの一部ということには変わりはないし、お披露目には似たようなファッション・ショウをやるし、それなのにそのくせこちらの方が注目度がかなり高く、TVに映れば露出度が違うということで、番組の意図はともかく、こっちの方に白羽の矢が立ったのだろう。ただし、この番組は生放送ではないので、PETAのメンバーを会場から追い出した後、ショウはまた同じところを撮り直したそうで、結局PETAのPの字も放送時には画面に映らなかった。どうせやるなら他の生放送番組を選ぶとか、もちっと考えればよかったのに。
番組としてはショウ自体を延々と撮っていては芸がないので、途中で音楽パフォーマンスが入ったり、ショウの準備や裏方の様子を間に挟んでいたりするのだが、実は私はそちらの方に興味を惹かれた。ショウに出演するモデルは、下着モデルだから通常のモデルにも増して抜群のプロポーションが要求されるのは当然であるが、その上ネイム・ヴァリュウ抜群のヴィクトリアズ・シークレット主催のファッション・ショウであり、しかも滅多にないネットワークでプライムタイムに放送されるショウである。つまりこのショウはモデルにとってもハードルの高いショウであって、このショウのモデルに選ばれて花道を闊歩することは、ひとえに世界の一流モデルとして認められたことを意味する。オーディションに来るモデルたちはさすがに皆それぞれモデル然としているのだが、他のところでは活躍しているだろうモデルでも、緊張の色が隠せなかったりする。そりゃそうだろう、その大半は落とされてしまうのだ。モデル業界だって甘くない。
で、その基準なのだが、モデルを選ぶ奴らが第一に挙げる条件が、とにかく背が高いこと、というのが印象に残った。結局、一流モデルになると、たいていの場合誰が見ても美人ではあるが、しかし、最終的な美の基準というのは人それぞれ皆違う。それよりも特に下着ショウの場合、スタイルが重視され、しかもより格好よく見せるために、特に背が高いことが重要視されるのである。つまり、ある程度に達しているモデルならば、この種のショウでは顔はそれほどオーディションでの判断を左右する材料にはならないのだ。うーん、そうだったか。モデルというと、なんとなく美しい顔と短絡しがちだが、それよりもボディなのだ。
このファッション・ショウは、モデルたちが天使の羽をまとって現れるところがクライマックスとなっている。この天使もどきの下着モデルたちの写真は、カタログやポスターだけでなく、色んなところでお目にかかる。最近では下着と天使の羽が同じ文脈であったりすると、ほとんど瞬間的にヴィクトリアズ・シークレットを思い浮かべるようになった。多分私以外のほとんどの者だってそうだろう。マーケティング効果というのはバカにできない。登場するモデルが身につけているその天使の羽、当然のことながら一人一人皆異なるデザインの、手作りの特注品である。小さな羽の一つ一つをいちいち接着剤を用いて入念に貼りつけ、こしらえていくのを見ると、気が遠くなりそうだ。そこまでして製作して、多分その羽を使用するのは一回こっきりである。
ショウの合い間合い間に挟まる音楽パフォーマンスは、マーク・アンソニーとデスティニーズ・チャイルド、それにフィル・コリンズがそれぞれ曲を披露した。マーク・アンソニーやデスティニーズ・チャイルドはなんとなくショウと合いそうでわからんではないが、フィル・コリンズというのは‥‥曲をただ使用するというのではなく、本人がちゃんと出てきて歌うのである。これがアンソニーなら、モデルたちと寸芸をかましても、なんかさもありなんという感じでむしろ微笑ましいのだが、最近なんとなくにやけた中年のおっさんになってきたなあと思っていたコリンズが、ランジェリー・ショウで咽喉を披露しようとは‥‥ちょっとなんとなく困った気分になってしまった。しかし、きっと本人は楽しかったに違いない。
ショウ自体で最もおかしかったのが、多分視聴者が飽きるだろうことを予測してあれこれとカメラ・アングルを工夫したりしているのだが、花道をこちらまで歩いてきたモデルが振り返って今きた道を戻って行く時に、多くの場合でカメラがズーム・インしてそのおしりをアップでとらえることである。プロポーション抜群の彼女たち、当然と言っていいほどパンティはハイ・レッグで食い込んでいたりするのだが、後ろに振り返った途端、その食い込み具合をはっきりととらえようと、カメラが寄る寄る。あまりにもその意図があからさまなので、呆気にとられるくらいだ。私としてはケツだけのアップを見せられるよりも、もうちょっと引いて全体のバランスの中で見せてもらう方がより好もしいのだが、多くの男性にアピールするためには、これが最も簡単かつ効果的な手段であるというのは、まあ、わからないではない。
そういういくらかの興味ある点はあったのだが、結局、やはりというかなんというか、基本としての番組自体は、美しいモデルが下着だけで闊歩する様を見るだけのランジェリー・ショウであって、やっぱり、要はそれだけのことである。もちろん彼女たちはプロポーション抜群だからして幾分か眼の保養になることは事実だが、でも、これは会場で生で見るならそれなりに楽しいだろうとは思うが、それほど臨場感のないTVで見る分には飽きる。どんなにお洒落な下着であろうとも、どうせならその下着もない方がもっといいと思ったのは私だけではあるまい。多分、昨年見て既にそう思った者も大勢いたのだろう、今年のこのショウは昨年ほど話題になることもなく、視聴率も大した成績を上げられなかった。せっかく今回わざわざチャンネルを合わせたのに、これなら番組が旬の昨年の放送時に見ておけばよかった。
おっと、言い忘れていたが、ホストのハイディ・クラムはアメリカでは知らぬ者のないスポーツ雑誌「スポーツ・イラストレイテッド」誌で、毎年超注目される水着特集号 (Swimsuit Issue) の98年版で表紙を飾り、彼女自身ほぼ無名モデルから一夜にしてスーパーモデルの仲間入りを果たしている。因みに「スポーツ・イラストレイテッド」は私も購読していたことがあるが、本当にスイムスーツ特集号しか見ないため、金の無駄だと思って購読を止めた。でも、この号のためだけに年間契約を惜しまない者も結構いる。もう一人のマーク・マグラスは、この名を言っただけで誰だかわかる者はわりと洋楽通。しかしシュガー・レイのヴォーカルと言えば、ある程度はああ、あいつかとわかるのではないか。
追記 (2003年2月):
先日、ABCの報道番組「20/20」を見ていたら、上で述べた過激派動物愛護団体のPETAの活動が報告されており、彼らがヴィクトリアズ・ファッション・ショウの花道になだれ込んだというシーンがちゃんと紹介された。ほう、本当にその時の録画テープは残っていたんだな。おかしかったのが、花道の上でプラカード片手にデモンストレートを行うPETAのすぐそばで、スーパーモデルはさも何事もないかのように平気で花道を往復していったことで、内心、このくそったれ野郎どもがと思ったのは間違いないのだが、少なくとも表面上は気持ちを外に表さないスーパーモデルの、プロ根性を見たような気がした。
