The Two Faces of January


ギリシャに消えた嘘 (ザ・トゥ・フェイスズ・オブ・ジャヌアリー)  (2014年10月)

単純に、お、しばらくヴィゴ・モーテンセン見てないな、ジョン・ヒルコートの「ザ・ロード (The Road)」も、デイヴィッド・クローネンバーグの「危険なメソッド (A Dangerous Method)」も見逃したからなと思って出かけたのだが、「ザ・トゥ・フェイスズ・オブ・ジャヌアリー」は、なんとも不思議な映画だ。


ちょっと時代がかっているなと思ったら、舞台は今ではなく1960年代ギリシアで、主人公はアメリカ人夫婦にギリシア系アメリカ人の若者の3人だ。アメリカ人の夫は投資家で、投機に失敗して追われていた。その取り立て屋をはずみで殺してしまったことから、思いがけなくも3人が一緒に逃避行することになる。


とにかくやりたかったことは、この時代を背景にしたフィルム・ノワール系の犯罪ドラマだったようだ。舞台は地中海沿岸のギリシア、時は人が屋外で寝ても風邪を引かない夏、そして男は白いスーツを着ていなければならない。


白いスーツは、地中海地方の夏によく似合う。とまあ、あの辺りに夏行ったことがない者が言うのもなんだが。できればそれが恋愛ものではなく犯罪スリラーで、主人公が追い詰められて、白いスーツが段々汗と埃で薄汚れていくというシチュエイションであれば完璧だ。たぶん実際にあの辺りでは男は白いスーツを着るのだと思うが、やはり白黒時代の映画から綿々と描かれている、ヨーロッパの男の白いスーツという印象が固まっており、どうしてもそういうキザな男の登場を期待してしまう。


この舞台設定で最も私の記憶に残っているのは、ベルナルド・ベルトリッチの「シェルタリング・スカイ (The Sheltering Sky)」でのジョン・マルコヴィッチのスーツ姿だけれども、フェリーニのマルチェロ・マストロヤンニ、あるいはちょっと北上してゴダールのジャン・ポール・ベルモンドでも構わない。しかし、できればやはり最後にはよれよれくたくたになって、みすぼらしく死んでいってくれれば言うことない。シロッコの吹く地方で白いスーツを着る男には、そういうことを期待してしまう。


そしてやはり、モーテンセンは期待を裏切らない。彼はファンタジー映画の正義の戦士なんかより、陽の当たらない世界でのやさぐれ者の方がよほど似合う。演出のホセイン・アミニもやはりそう思って、モーテンセンにこういう役をやらせて白いスーツを着させるためだけにこの映画を作ったという気配が濃厚だ。


おかげで映画を見て家に帰ってきてからも、思い出すのはモーテンセンばかりで、共演のカースティン・ダンストやオスカー・アイザックがほとんど霞んでいる。アイザックなんて事実上彼が主人公なんだが、実の父親が死んだばかりという設定で、モーテンセンに亡き父親の面影を投影するという設定のため、やたらとモーテンセンに振り回される。あ、そうか、これは父と子のエディプス・コンプレックスを描こうとしていたのか、だからそもそもの話の発端がギリシアの神殿だったのかと今気づいた。しかも原作はパトリシア・ハイスミスで、さらに「太陽がいっぱい (Purple Noon)」まで入っていたか。それにしてもアイザックって、見る度にフィギュア・スケーターのハビエル・フェルナンデスを思い出してしょうがない。


監督のアミニはイラン人だが、子供の時に英国に移住して映画作りを学んだ由。今回が長編第1作だが元々脚本家で、書いた作品がヴァラエティに富んでおり、近年の作品は「ドライヴ (Drive)」「スノーホワイト (Snow White and the Huntsman)」、「47 Ronin」、そして「トゥ・フェイスズ・オブ・ジャヌアリー」となると、間口が広いというよりも節操がないと言えなくもない。四十七士の話を、英国在住のイラン人が書いてたのか。











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1962年ギリシア。ギリシア系アメリカ人のライダル (オスカー・アイザック) は、ギリシア語がしゃべれることを生かして、アテネで英語圏からの観光客相手のガイドをしていた。ライダルはある時、神殿の前で出会ったアメリカ人のチェスター (ヴィゴ・モーテンセン) とコレット (カースティン・ダンスト) のマクファーランド夫妻に強く興味を惹かれる。3人は意気投合し、遅くまで飲み語らう。チェスターとコレットをタクシーでホテルまで送った後、ライダルは座席にコレットがバザーで買ったブレスレットを忘れていることに気づき、ホテルに戻る。実はチェスターはアメリカで投機に失敗して多額の負債を抱えており、その取り立て屋がホテルまで押しかけてきていた。格闘になった挙げ句チェスターは取り立て屋をはずみで殺してしまう。ちょうどホテルに戻ってきたライダルはその場をを目撃するが、チェスターはライダルをうまく言いくるめて助けを求める。ライダルには旅券を偽造する知人がいたが、でき上がるまで数日かかる。それまで3人は田舎村を旅して回ることにするが‥‥


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