The Snowman


ザ・スノウマン  (2017年11月)

近年、「ミレニアム (Millennium)」三部作やTVの「刑事ヴァランダー (Wallander)」、英米でリメイクが作られた「ブリッジ (The Bridge)」のオリジナル番組等で、北欧のミステリ・ドラマは面白いという評価が定着している。


むろん北欧だって多くのミステリ・ドラマが製作されており、その中にはつまらない作品だってそれなりにあるだろう。とはいえ、やはりミステリは寒いと映えるという印象はある。アメリカ製でも最近の「ウインド・リヴァー (Wind River)」は、やはり寒かった。背景が雪ってのも視覚的に大きい。真っ白な雪の上に真っ赤な血というのは、定番の効果だ。


というわけで、「スノウマン」にはそこそこ期待する。知らなかったがジョー・ネスボの原作はどうやらわりと売れたようだし、主演はマイケル・ファスベンダー、演出は「裏切りのサーカス (Tinker Tailor Soldier Spy)」のトマス・アルフレッドソンだ。


ファスベンダーが扮するのは、華々しい経歴を持っているが今ではほとんどアル中の刑事ハリーで、彼がまだ新米の女性刑事カトリーネと組んで連続殺人犯を追うという話だ。「裏切りのサーカス」同様、進行はかなりゆったりで、雰囲気醸成を重視している。一応連続殺人事件ではあるが、間隔が間遠で、人が何人も死んでいるという感じがあまりしない。それでも、こういう雰囲気重視型は嫌いじゃない。雨しとしととか陰々滅々とか止まない雪嵐とか、そういうのはやはりそそる。そういうとこで謎が謎を呼ぶ猟奇殺人事件、うーん、醍醐味だなと思うのだった。


他にも嬉しいのが女優陣の人選で、レベッカ・ファーガソン、シャルロット・ゲンズブール、クロイ・セヴィニーという癖のある美女が危ない目に遭ってくれると、これまた嗜虐的な気分を刺激してくれて嬉しくなるのだった。ラース・フォン・トリアー作品を見逃し続けていたので近年ほとんど目にしていなかったゲンズブールは、今秋新しいアルバムを出したとかで記事になっていて、おお、久し振りシャルロット、と思っていたらスクリーンでも見れて満足。大人になった。


それに較べると、なぜだか主人公ハリーを演じるファスベンダーが、伝説的刑事という設定にもかかわらず特に冴えが見られない。自分のすぐ近くまでスノウマン来てるじゃないか、気づけよ、と思う。それよりもさらに冴えないのが、やたらと爺くさくなった、これ、本当に彼かと思わされるヴァル・キルマーだ。ベルゲンのラフト刑事で、カトリーネがベルゲン出身で引きずってきているものがあるから、ラフトも出る意味が少しはある‥‥ ようにはまったく見えない。ほぼ捨てキャラで、しかもよぼよぼという印象だけは残る。原作では彼も描き込まれて味があるんだろうなと思うだけだ。


実は「スノウマン」は、アメリカでは結構ダメ出しされている。興行成績も芳しくなく、これは今週中に見とかないと来週はもうないな、と慌てて見に行った。実際の話、舞台が北欧であることを除けば、筋立てとしては特に目新しいものがあるわけではなく、クリシェばかりと評されるのもわからないではない。舞台をそのままアメリカの冬のニュー・イングランド地方に持ってきても充分通用するだろう。


さらに急がず雰囲気を醸成するアルフレッドソンの演出が、そういう印象をさらに強めた。「スノウマン」には、「ミレニアム」のリスベットのような強力な主人公、歴史を遡る謎、ユニークな狂言回しの語り手という斬新な視点や展開があるわけではない。それでも、私としては雰囲気を出せる演出家は、それだけで擁護しようという気にさせる。










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ノルウェイ、オスロ。初雪の降ったその日、家庭のある一人の女性が行方不明になる。伝説的な刑事でありながら自棄的な性格で誰からも持て余されていたハリー・ホーレ (マイケル・ファスベンダー) と、ベルゲンから来たまだ新米のカトリーネ・ブラット (レベッカ・ファーガソン) 刑事が事件を担当する。オスロではスノウマンと呼ばれる者による散発的な女性の連続殺人事件が起きており、新たの事件の始まりを予兆させた。さらにまた一人と女性が行方不明となる。その現場には雪だるま、スノウマンが残されていた。一見なんの関係もないように見える女性たちは偶然選ばれたのかそれとも理由があるのか、ハリーとカトリーネは地道に調査を進めていく‥‥


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