The Secret Life of the American Teenager

放送局: ABCファミリー

プレミア放送日: 7/1/2008 (Tue) 20:00-21:00

製作: ブレンダヴイジョン、プロドコ

製作総指揮/クリエイター/脚本: ブレンダ・ハンプトン

製作: リンジー・パーソンズ

出演: シャイリーン・ウッドリー (エイミー・ジャーゲンス)、モリー・リングウォルド (アン・ジャーゲンス)、マーク・ダーウィン (ジョージ・ジャーゲンス)、インディア・アイスリー (アシュリー・ジャーゲンス)、フランシア・アルメンダレス (エイドリアン・リー)、ケニー・バウマン (ベン・ボイケウィッチ)、ダレン・カガソフ (リッキー・アンダーウッド)


物語: 高校でバンド部に所属、フレンチ・ホルンを担当しているエイミーは、バンド部の合宿でひょんなことから女たらしとして知られているドラムスのリッキーとセックスしてしまい、しかも妊娠したことを知る。学校のトイレで親友のマディソンらに自分が妊娠したことを告白するエイミーだったが、保守的な自分の親に知らせる勇気はまだなかった。一方、学校ではベンがエイミーに好意を持ち、バンド部に入部を希望してくるが、もちろんベンはエイミーが妊娠していることなどまったく知らなかった‥‥


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なぜだか今、アメリカではティーンエイジャーの女の子の妊娠が流行りだ。今春、エレン・ペイジが「ジュノ」でほとんどはずみで妊娠してしまい、日に日に膨れてくるお腹を抱えながら前向きに生きるティーンエイジャーの女の子を演じて以来、現実でもジェシカ・シンプソンの妹、アシュリー・シンプソンブリトニー・スピアーズの妹ジェイミー・リン・スピアーズと続け様に妊娠が発覚した。


といってもアシュリーの場合は既に20代だし、正式に結婚もしているが、ジェイミー・リンの場合は1991年生まれのばりばりのティーンエイジャーだ。最近、ちょっとけばくなり始めたとは思っていたが、それでもこっちとしてはまだ「ゾーイ101」の印象を引きずっているし、身長も伸びている途中じゃないかと思っていたら、背丈じゃなくてお腹が横に伸びてきた。これはびっくりした。


ティーンの流行り廃りに風潮に敏感なTV界が、こういう風潮を見逃すはずがない。というわけで製作されてきたのが、この「ザ・シークレット・ライフ・オブ・ジ・アメリカン・ティーンエイジャー」だ。どこにでもいるようなごく普通の女子高生が妊娠、その事実が発覚したことが周囲に巻き起こす波紋を描く。


実際問題として、アメリカでは10代で結婚出産を経験する女性はかなりの数に上る。しかしそのほとんどは白人の中上流家庭ではなく、黒人やヒスパニックの裕福ではない家庭の子女が大多数を占める。現在私が住んでいるところはヒスパニック系が多いのだが、30代くらいの女性ならまずかなりの確率で10代の子供がいる。


こないだうちのオフィスにDSLラインを設置しに来たヒスパニック系の女性テクニシャンは、まだ30代だが、既に成人した息子がいると言っていた。やはり10代で子供を産んでいる。ついでに言うと、彼女の旦那は飲んだくれでドラッグをやめなかったため、愛想を尽かして別れ、30代からITの勉強をしてヴェライゾンに就職し、再婚して今2歳の娘がいるという。父親違いで20も歳の離れた兄妹だ。こんな話が身近にごろごろしている (こんな世間話ばかりして仕事してなかったわけではない。色々とインストールやダウンロードしている間どうしても暇な時間ができるため、なんとはなしに時間つぶしに世間話していただけである。念のため。)


一方でアメリカには大勢のカトリック教徒がいる。根底でこの国を支えているのは、そういう信心深い人たちであったりするのだ。カトリックは基本的に中絶を認めないし、婚前交渉すら否定的だったりする。ティーンエイジャーの未婚の母が増える一方で、頑なに結婚するまではセックスはダメと主張するティーンエイジャーの女の子が結構いるのもまた事実なのだ。一般的に言って白人の多い地域では、セックスをしても避妊もするからヒスパニック系ほどティーンエイジャーの妊娠が目立つわけではないが、それでもジェイミー・リンのように妊娠する者は妊娠する。


番組の主人公エイミーは、アメリカの郊外の町のどこにでもいるような普通の女の子だ。学校では吹奏楽部に属しており、フレンチ・ホルンを担当している。そのエイミーがある日家に帰ってきて、市販のキットを使って調べてみて、自分は妊娠していることを知るというのが番組の導入部だ。エイミーの名字はジャーゲンスという、いかにもゲルマン民族的な名であり、この名字だと、彼女はたぶんプロテスタントだろうと自然に人が考えるよう選ばれたのだと思う。


エイミーはどこにでもいる普通の女の子という設定だろうが、実物はやはり可愛い部類に入る。本当にあんまり普通すぎて華がなくなり過ぎるとTV番組としてつまらなくなるから、このあたりの人選が要だ。そうやって選ばれたシャイリーン・ウッドリーは、FOXの「The O.C.」に準レギュラーで出ていたそうだが、こちらの方はほとんど真面目に見ていなかったのでよくわからない。私が一と目見て連想したのは、かつてNBCの「ブロッサム (Blossom)」で主人公ブロッサムを演じていたメイム・ビアリクで、かなり印象が近い。「ブロッサム」も番組内でブロッサムがデート・レイプの被害に遭うなどという、「シークレット・ライフ‥‥」に近い展開があったのも、なんとはなしに思い出した理由の一つだ。


エイミーの母アンを演じているのは、かつての反体制派の自然体女優という印象が強かったモリー・リングウォルドで、今では全体的に肉がつき、いかにも普通の母親然としていることに驚かされる。「プリティ・イン・ピンク」等のジョン・ヒューズ作品でのきゃぴきゃぴガールは、もう既に20年も前のことなのだ。時が時ならこの番組や、「ジュノ」における妊娠するティーンエイジャーという役をあてがわれる女優こそリングウォルドだったろうに。


一方、「ジュノ」も「シークレット・ライフ‥‥」もティーンエイジャーの妊娠というテーマを扱っているわけだが、その肌触りはかなり異なる。実は「ジュノ」は実際に見ているわけではないのだが、それでも作品の持つポジティヴな姿勢というのは色んなところからよく伝わってきた。他方「シークレット・ライフ‥‥」の方は、番組から受ける印象は後ろ向きとは言わないまでも、非常に保守的だ。


エイミーが友人になぜ妊娠したかを学校のトイレで告白する時、あっという間で、全然よくなかったというようなことを口走るだけで、全然具体的な話にならない。エイミーの友人も、たぶんそこが一番知りたいところだろうにそれ以上突っ込まない。親友の気持ちを慮ってというよりも、番組の作り手が描きたいのはそこではなく、その後の展開であるからだが、視聴者が一番興味あるのはそこなんじゃないかなと思う。


むろんエイミーのヌードとかセックス・シーンとかもない。番組が放送されているのが健全な家族向け番組専門のABCファミリーで、放送時間帯が午後8時台であることを考えると、今後もそのような展開にはならないだろう。また、エイミーを妊娠させたプレイボーイのリッキーは重要の役のはずだが、少なくとも番組第1回を見た限りでは、彼よりもエイミーとはほとんど関係のない超保守派で、結婚するまではヴァージンを守ると宣言するグレイスを描く時間の方が多い。現代ならこういうものの考え方をする子は普通ならコミック・リリーフ的色付けをされるだろうに (実際そうなっているのだが)、なんか、ほとんどマジで、茶化すのがためらわれる。


グレイスのボーイ・フレンドのジャックは、学校のアメリカン・フットボール・チームのスター・プレイヤーなのだが、当然リビドーばりばりなのにグレイスはキス以上ゆるしてくれない。思いあまってではオーラル・セックスはどうかと提案するジャックに対し、グレイスはそれもセックスだからダメと却下する。当然ジャックは他の女の子に目移りし始め‥‥という展開だが、ギャグというよりもマジにそう考えているような姿勢が感じとれる。現実に周りに未婚の母がごろごろいる中でそういうセリフを聞くと、かなり違和感を感じてしまう。


しかし、内陸部ではそういう人たちの方が多いだろうということは、旅行してみるとわかる。むしろニューヨークやLAみたいにさばけていることの方が少ないのだ。この番組が「セヴンス・ヘヴン」同様、それなりの視聴率を稼いでいるのは、そのような人々が多く見ているからだろう。しかし私は見ていてすごく風通しのよくない窮屈さを感じた。田舎に住んでなくてよかったと思うのであった。ここはリングウォルドに昔の自分のことを思い出させて、革新派に転じてもらうしか方法はないのではないかと思う。当然番組製作者もリングウォルドの経歴はよく知っているだろうから、エイミーの妊娠が公になった後、リングウォルドがエイミーの擁護に回るのは確実だろう。


番組クリエイター/製作総指揮は、WB/CWの「セヴンス・ヘヴン (Seventh Heaven)」のブレンダ・ハンプトンで、「シークレット・ライフ‥‥」が内容はともかく受ける印象はかなり保守的なのも、それでなるほどと納得する。清く正しく生きるカムデン家を描いた「セヴンス・ヘヴン」は、アメリカ中流家庭のお手本として根強い人気があった。そういえば「セヴンス・ヘヴン」には、かのアシュリー・シンプソンも出ていた。


「シークレット・ライフ‥‥」とほとんど時を同じくして、NBCは「ザ・ベイビー・ボロワーズ (The Baby Borrowers)」という、こちらはリアリティ・ショウの放送を始めている。まだ実際の子供を持っているわけではない5組のティーンエイジャーのカップルに、子育ての大変さを身をもって知ってもらおうという主旨の番組で、実際に生まれたばかりの赤ん坊の世話をさせる。


この赤ん坊は応募してきた者の中から選ばれたわけだが、ティーンエイジャーの妊娠どころか、一足飛びにもう生まれてきた赤ん坊をどう育てるかという話になっていて、こちらの方が進んでいると思わせる。ただし、ほとんど乳飲み子を本当の親から離してTVのリアリティ・ショウに出して、まだ自分たちこそ世話の焼けるティーンエイジャーに預けるという番組が、各種団体から批難されたのも事実だ。特に「シークレット・ライフ‥‥」を真面目に見ているような視聴者は、「ベイビー・ボロワーズ」を苦々しく思うんじゃないかと思う。どうやらフィクションより現実の方が先を行っているようだ。







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ザ・シークレット・ライフ・オブ・ジ・アメリカン・ティーンエイジャー   ★★

 
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