The River   ザ・リヴァー

放送局: ABC

プレミア放送日: 2/7/2012 (Tue) 21:00-23:00

製作: ホーンテッド・ムーヴィーズ、J. A. グリーン・コンストラクション、アンブリンTV、ABCステュディオス

製作総指揮: オーレン・ペリ、スティーヴン・スピルバーグ

クリエイター: マイケル・ペリー、オーレン・ペリ

出演: ブルース・グリーンウッド (エメット・コール)、ジョー・アンダーソン (リンカーン・コール)、テス・コール (レスリー・ホープ)、エロイーズ・マムフォード (リナ・ランドリー)、ポール・ブラックソーン (クラーク・クワイエットリー)、トマス・クレッチマン (カート・ブライニルドソン)、ダニエル・ザカパ (エミリオ・ヴァレンズエラ)、ショーン・パークス (アンドレアス・ポーレイン)、ポーリーナ・ガイタン (ハヘル・ヴァレンズエラ)、スコット・フォスター (ジョナス・ベケット)


物語: 冒険家エメット・コールがドキュメンタリー・クルーと共にマガス号に乗ってアマゾンの奥地へと川を遡行する旅に出、そして消息を絶ってから半年が経った。誰もが生還を絶望視し始めていた、エメットが携行していた非常用の発信機からの信号が受信される。エメットは生きているかもしれない。TVプロデューサーのクラークは、救助へと向かう一行の行動をヴィデオカメラに収め番組として提供することを条件にTV局から費用をせしめる。エメットの妻のテス、息子のリンカーン、クラーク、TVクルーのA. J.、船のクルーのエミリオ、ハヘル、リナ、警護のカートの一行は、エメットの足取りを追い、彼らもまたアマゾンの奥地へと出航する。彼らを待ち受けているものが何かをまったく知らずに‥‥


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The River


ザ・リヴァー   ★★★

ホラーというジャンルは、TVという媒体にはあまり向かないと思う。一つの番組として恐怖を持続させることは、かなり難しいことだろうからだ。映画ではよくホラーのヒット作が出るが、TVではたまさかのTV映画やミニシリーズとして編成され、それなりに話題になることはあっても、シリーズとして成功した例はほとんどない。連続した話としてホラーを製作することの難しさを証明している。


そのほとんど唯一の例外が、一昨年に編成され、このほど第2シーズンで視聴率記録を作ったばかりの、AMCの「ザ・ウォーキング・デッド (The Walking Dead)」だ。「ウォーキング・デッド」はゾンビ・ホラーに人間のパワー・ゲームを持ち込むことで、シリーズとしてのホラーに新しい息吹きを吹き込んだ。とはいえ、私はやはりホラーというジャンルが最も成功するのは、TV映画かミニシリーズの短期決戦に限ると思う。


今回、このジャンルに挑戦するのが、ABCの「ザ・リヴァー」だ。製作オーレン・ペリとスティーヴン・スピルバーグという名前が示す通り、「パラノーマル・アクティビティ (Paranormal Activity)」の監督-製作コンビが、今度はTVに場を移してホラーが通用するかを試す。スピルバーグは、先週レポートしたNBCのミュージカル「スマッシュ (Smash)」もプロデュースしている他、夏にはTNTでSFドラマ「フォーリング・スカイ (Falling Sky)」の第2シーズン放送が始まるなど、とにかく節操がないというくらいTV番組をプロデュースしている。映画だって昨年末2本立て続けに演出作品が公開されたし、かなり忙しいに違いない。


「リヴァー」は、アマゾンの奥地に探検に行って消息を絶った冒険家の足取りを追う救助隊の行動を描く番組だ。その、まだ文明とはほとんど無縁のアマゾンの奥地で、救援の一行が遭遇する想像を絶する体験を描く。


構造としての「リヴァー」は、「パラノーマル・アクティビティ」、および先日見た青春ホラーの「クロニクル (Chronicle)」同様、近年流行りの、登場人物がヴィデオカメラを持って、周囲に起こった出来事を記録するという体裁を踏襲している。この構造はよほどホラーという媒体と相性がいいらしい。「リヴァー」では、行方不明となった冒険家を探しに出発した一行の行動の一部始終をカメラ・クルーが撮影しているという設定になっている。後でそのフッテージを編集してTV番組にすることを条件に、TV局が金を出したのだ。


登場人物手持ちカメラ撮影の最大の特色は、映っているものが撮影者と同じ視点ということから来る臨場感の高さというのが、まず挙げられる。その場にいる気分でどきどきさせるわけで、確かにホラー向きと言える。「リヴァー」においては、撮影クルーが持っているヴィデオカメラ以外にも、アマゾン川を遡航する船のあちこちにカメラが据えつけられており、それに映ったもの、あるいは映らなかったものがよけい想像力を刺激して見る者を怖がらせるというのは、もちろん「パラノーマル・アクティビティ」と同じ構造だ。


そういう構造面以外にも、ありとあらゆる考えられるホラー・ネタを総動員している。リアルに行くのかと思えば平気で超常ネタにも飛び火し、超自然、細菌、カニバリズム、ゾンビ等、とにかく考えられる限りすべてのネタを注ぎ込んだと思える。「ウォーキング・デッド」は、正直言ってあれはホラーの体裁をまとったパワー・ゲームを描く人間ドラマだが、「リヴァー」は本当にホラーとしてシリーズを全うしようとしている。それはそれで感心する。


ただしホラーという特質上、番組を通して見た全体の印象というよりも、散見する一瞬の怖がらせネタの方が印象に残るのは致し方ない。私の場合、番組第2回の、人間のお面を被ったサルというのが一番怖かった。しかし一つでも背筋がぞぞぞとするショットがあると、その印象はかなり持続する。つまり、予想以上に番組は頑張っているというのが率直な感想だ。


行方不明という設定上、シリーズの最後の方までほとんど登場しない不在の主人公エメット・コールに扮しているのが、ブルース・グリーンウッド。グリーンウッドはHBOの「ジョン・フロム・シンシナティ (John from Cincinnati)」では、空中に浮かぶサーファーというとんでもない役を真面目に演じていた。今考えると、「クロニクル」の前触れだったのかもしれない。人間が空を飛ぶ素地は既にグリーンウッドによってできていた。


今回は何もないところから火をとり出したり、繭の中で冬眠状態になったりと、やはりなんか種を超越している。グリーンウッドって、なにかそういう超自然界的な印象を与えるのだろうか。番組としては曲がりなりにもそれまではホラーだったものが、後半になってグリーンウッドが登場し始めると、ほとんど「地獄の黙示録 (Apocalypse Now)」か「蠅の王」みたいな別番組の様相を帯びる。それにしてもグリーンウッドという名前は、今回はあまりにも役柄にはまっている。


エメットの妻テスに扮するのが、FOXの「24」のレスリー・ホープ。息子リンカーンにジョー・アンダーソンが扮している。アンダーソンは「ザ・グレイ (The Grey)」でもわりと重要な役を演じているのだが、役柄が異なることもあり、「リヴァー」の最後の方になるまで、これが「グレイ」の彼だと気づかなかった。


「リヴァー」は、既に所定の8回の放送を終えている。思わせぶりな終わり方で、これって第2シーズン製作を本気で念頭に置いていたんだろうか。正直言ってこの終わらせ方は2流だが、またアマゾンを舞台として第2シーズンを作るつもりだったら、これしか方法はなかったろうなとは言える。それに、視聴者を騙したとしか思えなかったAMCの「ザ・キリング (The Killing)」に較べれば、数段マシだ。しかしやはり、ホラーは短期決戦が最も適している。これで終わりとした方がいいように思う。









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