放送局: NBC

プレミア放送日: 11/20/2005 (Sun) 20:00-23:00

製作: ホールマーク・エンタテインメント、シルヴァースター・リミテッド、ラリー・レヴィンソン・プロダクションズ

製作総指揮: ロバート・ハルミJr.、ラリー・レヴィンソン

共同製作総指揮: デイヴィッド・ウィクト

製作: メアリ・チャーチ

監督: ジョン・パッチ

脚本: ブライス・ゼイベル

撮影: ロス・ベリーマン

美術: ジョナサン・カリソン

編集: ジェニファー・カカヴァス

音楽: ジョー・クリーマー

出演: アダム・ボールドウィン (マイク・ロゴ)、ピーター・バトラー (カシム・バドール)、スティーヴ・ガッテンバーグ (リチャード・クラーク)、アレクサ・ハミルトン (レイチェル・クラーク)、ティナリー・ヴァン・ウィク (エイミー・アンダーソン)、ナタリー・ボルト (ショシャーナ)、ブライアン・ブラウン (ジェフリー・アンダーソン)、ルトガー・ハウアー (シュミット神父)、C. トーマス・ハウエル (バラード博士)


物語: ケープタウンを出航した大型豪華客船ポセイドン号は、一路進路を東に向ける。しかしその中には、乗組員に扮したテロリストたちの姿があった。大晦日の夜、テロリストは行動を開始し、船内に仕掛けられた爆弾によってポセイドン号は転覆、多くの乗客は船内に閉じ込められる。そのままの場所で救助の手を待つべきか、それとも少しでも助かるチャンスを求めて船内を移動すべきか、乗客の意見は分かれるが‥‥


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近年、アメリカTV界は、TV映画、ミニシリーズ等の、2時間を超えるいわゆるロング・フォームと呼ばれる番組形態が著しい不振に陥っていた。それ以前に大量に製作して放送した粗製濫造番組に視聴者が愛想を尽かしたことが直接の原因だが、それ以外にも、ライヴァルのケーブル番組の台頭だとかヴィデオ・ゲームの勃興だとか、端的に視聴者がTVを見る時間が減ってきているとか、要因は色々ある。


そうなると、こういう、金のかかるわりには成功率がそれほど高いわけでもなく、一発勝負となりやすいロング・フォームは廃りやすい。実際、近年、その衰退は目を覆わざるを得ないほどのものがあった。それが昨年、NBCが放送したミニシリーズ「10.5」によって事態はやっと好転の兆しを見せた。「10.5」は、米西海岸をマグニチュード10.5の大型地震が直撃するというもので、カリフォルニアを海没させてしまうというアイディアが受けてかなりの視聴率を獲得した。因みに主演していたのは、元「NYPDブルー」のキム・ディレイニーだ。


さらに、今度はCBSが大型の嵐がシカゴを壊滅状態に陥れるという、これまたパニック型のミニシリーズ「カテゴリー6」で話題を提供する。もちろん、先ほど放送された「カテゴリー7」の前編に当たる。「カテゴリー7」は、「6」ほどではないにしてもほどほどの成績を収め、さらに、実は「10.5」続編の「10.5: アポカリプス (Apocalypse)」も既に撮影は終了済みで、本当はこの11月に放送予定だった。つまり、この11月は当初、2回に分けて放送されるミニシリーズの「カテゴリー7」と「10.5: アポカリプス」、および3時間TV映画の「ザ・ポセイドン・アドヴェンチャー」の3本の3時間以上のロング・フォーム番組が、毎日曜編成される予定になっていた。


しかし、ちょっと頭をめぐらせれば、これはあまり好ましい状態ではないことはすぐにわかる。こんな感じで、ネコも杓子もミニシリーズやTV映画をこれでもかとばかりに製作して投入したことが、このジャンルが視聴者から飽きられて廃れることになった最大の要因だったというのに、これではまた元の木阿弥だ。こんなんじゃ学習能力がないと言われても反論できまい。


まあ、それくらいはやっぱりネットワークの人間でも考えるわけで、あまりにも詰まりすぎになったこの状態を見て、「アポカリプス」と「ポセイドン・アドヴェンチャー」の2本を編成しようと考えていたNBCが折れた。NBCは結局「アポカリプス」を来春まで放送延期して、まず今回は「ポセイドン・アドヴェンチャー」だけを放送することにした。この選択は、当然、来夏公開予定のハリウッド大作の「ポセイドン」とNBCの「ポセイドン・アドヴェンチャー」の放送日が近くなりすぎることを嫌ったためだろうというのは、これまた誰の目にも明らかだ。いずれにしてもそのため、結局いまだに放送日未定の「アポカリプス」が最も貧乏くじを引いてしまったことになる。


さて、その「ポセイドン・アドヴェンチャー」であるが、もちろん、1972年の同名パニック・アクション大作のリメイクである。来夏にはウォルフガング・ペーターゼン演出で、本命のハリウッド・リメイクが公開されようという時に、TVとしては巨費を投じているとはいえ、わざわざその半年前に3時間ドラマを製作放送する意味はあるのかと思う。とはいえネットワークの人間が何考えているかなんてネットワークの内部の人間ですらわかってない場合が多いから、結局、たまたまこういう風に物事が進んでしまったに違いない。大組織の常として、どんなに理屈の合わないことで、誰の目から見ても金を回収できないことがわかりきっている場合でも、いったん歯車が回りだしたら、もう誰にも止めようがなかったりする。


当然、口さがない批評家たちは番組に対して辛辣だ。誰が見てもなぜ今これを製作しなければならないか疑問としか思えない「ポセイドン・アドヴェンチャー」は、最近放送された全TV番組で、たぶん1、2位を争うんじゃないかと思われるくらい貶されている。とはいえ、だから見たくないかと訊かれると、うーん、実はちょっと見てみたいかもと思ってしまうのが、こういうギルティ・プレジャー的パニック・アクション番組の常だったりする。見てしまうと、たぶん後悔してしまうだろうというのはわかりきってはいるのだが、ほとんど怖いもの見たさのような感覚だ。


もちろん私の場合、オリジナルの「ポセイドン・アドベンチャー」を見たのはまだ小学生の時分であり、既に記憶もおぼろで、比較対照しながら見るというようなことはできない。シェリー・ウィンターズ演じる太ったおばさんが息も絶え絶えに水の中を潜っていくというシーンだけは、私自身もほとんど窒息してしまいそうになるくらい息をつめて見ていたために今でも鮮明に覚えているが、それ以外はジーン・ハックマン演じる神父がかすかに記憶に引っかかっているくらいだ。


今回のリメイクでは、オリジナルでは確か大波かなんかで転覆したポセイドン号が、テロリストの仕掛けた爆弾により転覆するという筋書きになっている。確かに現代では無理のない設定と言え、充分説得力はある。つまり、オリジナルに登場した刑事は、今回はテロリストを追って乗船しているというわけだ。ウィンターズ演じたおばさんもハックマン演じた神父もちゃんといる。要するに強烈に印象を残したこれらの主要なキャラクターをまた使わない手はないということだろう。あるいはほとんど主人公という印象に近いこれらのキャラクターを再度登場させなければ、リメイクする意味がないと考える視聴者も多いに違いない。


因みに今回、その神父の役を演じるのはルトガー・ハウアーで、たぶん、悪くはないんだろうが、やはりハックマンの印象が強すぎてあまりぴんとこない。最近丸くなってきた印象のあるハウアーだと、ちょっと柔らかすぎるという感じがする。一方、ウィンターズと同じおばさん役を演じるのはシルヴィア・シムズで、ヴェテランの俳優ではあるが、これはもう、誰が演じても分が悪いとしか言いようがないだろう。


これだけオリジナルの印象が強かった大作をよりにもよってTVでリメイクしようとすると、ほとんど見る方に先入観があるため、かなり不利だ。私だってとりたてて期待なぞしていなかった。特に最大のネックは一目でCGとわかるポセイドン号の全景で、せめて「タイタニック」並みとは言わないまでも、実物の縮小模型を作ってくれないかと思う。


こりゃあやっぱりあまり期待できないなと思いながら見ていたのだが、しかしかなり頑張っているところもある。特に船が傾き始め、床を人が転がり、ベッドから転げ落ち、テーブルが横転し、食器が棚から滑り落ちる、などのシーンが実写で挟まると、これがやはり結構興奮させてくれるのだ。要するに、「タイタニック」だって最も面白かったのは船が沈没する時に物や人々がどんどん海中に投げ出されるシーンであったわけだが、それはここでも同じなのだ。船が転覆し、床が頭上にあり、足元に天井があるという転倒は、かなり人を興奮させる。


惜しむらくは、この部分にばかり金をかけるわけにもいかず、また、話のクライマックスはその後の船内の道行きにあるため、この部分の描写は比較的短時間で終わってしまう。しかも船の外観は完全なCGであり、あっという間に転覆する。これだけでかい船なら転覆するのにかなり時間がかかるはずで、再度「タイタニック」を例に出すなら、傾きかけた船が沈没するまでどれだけの時間と特撮と興奮があったかを考えれば、「ポセイドン」のこのあっという間の転覆はいかにも惜しい。


また、転覆した船の船内で、正気に返り始めた乗客の一人が娘がいないことに気づくと、その娘は、床に据え付けられたテーブルの裏に避難したため、そのまま頭上高くに持ち上げられてしまっていた。しかし、たかだか床に簡単にボルトで止められているだけのテーブルは、女の子二人の体重をいつまでも支えきれるわけがない。そこで男たちがテーブル・クロスを広げてそこへ飛び降りさせようとする。


ここんところの演出がまた凡庸で、ここで女の子たちはいとも簡単に怪我もなく飛び降りることに成功してしまうのだ。これじゃあ下手くそと罵られてもしょうがあるまい。普通なら、ここで女の子たちの乗るテーブルのボルトの一本くらい飛ばして危機感を煽るのがセオリーというものだろう。あるいはそのセオリーの裏をかき、いざ飛び降りるという段階で女の子をテーブルごと落下させてしまう、くらいの描写は見せてもらいたかった。なんでここで簡単に女の子たちは生き残ってしまうんだ。ちょっとこれじゃあなあと思ってしまうのはどうしようもない。


まあ、ところどころ頑張ってはいるんだが、CGが入るとどうしてもちゃちくなるのは、資金の問題でハリウッドの一線級のところを使っていないからか、それともやはり演出家の問題かと思ってしまう。「10.5」や「カテゴリー6」等が、こちらも時にちゃちいとは思ってもそれなりに見れたのは、前例のないオリジナルの番組だったからであり、やはり比較対照できるオリジナルのあるリメイクでオリジナルより安いものを作ってしまったのでは、擁護しようという気になれない。面白くないこともなかったんだが、やはり本命の来夏の「ポセイドン」の方が楽しみだ。






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ザ・ポセイドン・アドヴェンチャー   ★★1/2

 
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