The Mummy Returns

ハムナプトラ2 黄金のピラミッド  (2001年5月)

メモリアル・デイから始まる夏の大作シーズンにはちと早いのだが、「ハムナプトラ2 黄金のピラミッド」が既に始まったので、いそいそと見に出かけた。そしたら、郊外のマルチプレックスに出向いたのに既に長蛇の列ができており、チケットを買う列が劇場の外まで続いているという滅多にない現象が起きている。その上、列に並んでいる時に、チケットが売り切れだというアナウンスがある。いつ行ってもがらがらの時の方が多いこのマルチプレックスで、売り切れ (Sold Out) という単語を初めて聞いた。おかげで約1時間待って、目指す次の次の回のチケットがやっと手に入る。それでも1時間待ちで見れるというのは、12館のうち3館でやっているマルチプレックスならではである。こんなとこでこんなに人が入ってるなら、マンハッタンでは劇場の周りを列が2周くらいしているんじゃなかろうか。


「ハムナプトラ2」は、スティーヴン・ソマーズが前作の「ハムナプトラ」に引き続き脚本/演出を手がけてる。前回出てきたキャラクターがほぼ全員顔を揃えているが、最も大きなキャラクター・チェンジは、主人公のブレンダン・フレイザー演じるリックと、今は結婚しているレイチェル・ワイズ演じるイヴリンとの間に、一粒種の長男アレックスが生まれているというところ。当然アレックスは父親譲りの向こう見ずな冒険好きの性格を受け継いでおり、主人公並みの活躍をすることになる。ジョン・ハナー演じる兄のジョナサンもちゃんと前回同様のコミック・リリーフを受け持っているだけでなく、イムホテップ (アーノルド・ヴォスルー) や、その恋人アンク-スー-ナム (パトリシア・ヴェラスケス)、謎の一族の長アーデス・ベイ (オデッド・フェール)、おまけに前回飛行機を操縦して砂の化け物に呑み込まれた彼までちゃんと出番がある。


アレックスに次ぐ今回の最も大きなキャラクター・チェンジは、プロレスラーのザ・ロック扮する戦士スコーピオン・キングの追加である。スコーピオンは悪魔? に魂を売り渡した挙げ句、人外魔境のピラミッドに眠っている。しかし世界征服を企む男たちと、イムホテップと共に殺されたアンク-スー-ナムの生まれ変わりが、そのスコーピオン・キングの眠りを覚まして野望を達せんものと虎視眈々と機会を窺っているというのが、今回のメイン・プロットである。


私は基本的にヒット作の続編というのには懐疑的であり、あまり信用していない。オリジナルよりできのいい続編というのには滅多にお目にかかれないからだ。スティーヴン・スピルバーグの「インディ・ジョーンズ」やジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」シリーズのように、それなりに全部見所があるというシリーズもないことはないが、だいたいは続編を見るとがっかりすることになる。「エイリアン」だって見られるのはジェイムズ・キャメロンが演出した「2」までだった。スピルバーグでも「ジュラシック・パーク」では「ロスト・ワールド」みたいな本編には及びもつかない続編を作っているし、ルーカスだって結局「ファントム・メナス」みたいなのを作ってファンをがっかりさせた。


だから「ハムナプトラ2」だって、ま、見ようかなとは思っていたが、それほど期待していたわけではない。結局ソマーズはいかにもB級然とした「ザ・グリード」の監督でもあり、「ハムナプトラ」はそれなりに楽しんだが、まだまだ海のものとも山のものともわからない監督だと思っていた。しかし「ハムナプトラ」は製作スタジオのユニバーサルですら驚くほどのヒットとなり、直ちに続編が企画された。しかし、通常続編がオリジナルを超えることはないというルールを最もよく知っているのは、誰あろう監督のソマーズである。結局ソマーズは、オリジナルと同じ役者を揃えること、やるなら人々がまだ次を見たいと思っている時期を逃さないよう、できるだけ速やかに製作にとりかかることを条件に製作に同意した。


そしてでき上がった「ハムナプトラ2」は、続編の方がオリジナルよりも面白いという滅多にない例の一つになった。前作もアクションを詰め込んだ楽しめる映画だったが、今回はそれをさらにヴァージョン・アップしたアクション巨篇である。オリジナルと同等の面白さを持つ続編というのは、少ないがないこともない。しかし、オリジナルよりも面白い続編というのは、私が今思い出せる限りでは、ジョージ・E・ロメロが撮った「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」の続編、「ゾンビ」くらいしかない。「ハムナプトラ2」は、続編が前作を凌いだ本当に稀有の例である。肩の凝らない娯楽作品を求めている人には、文句なしにお薦めの一本だ。


見所はいっぱいあるが、特に印象に残ったのが、ロンドンの街中をダブル・デッカーに乗ってマミーの追撃から逃れるシーンのアクション。ビルの壁をすたすたすたと這いながら追いかけるマミーは、「グリーン・デスティニー」のワイヤー・アクションのCG版という感じで、すごく興奮させてくれた。こういう全編にちりばめられているCG描写も大したものだが、忘れてならないのが、それを最大限に利用するための身体を張ったアクションもまた手を抜いてないということである。最も感心したのが、イヴリンとアンク-スー-ナムの決闘シーンで、特にワイズはそれほど運動神経が達者というふうには見えないが、女性同士の決闘シーンでこれだけスピード感のあるアクションを初めて見た。


今回のみに登場する最も重要な人物、スコーピオン・キングに扮するザ・ロックは、現在、アメリカを代表するプロレスラーである。彼が所属するWWF (World Wrestling Federation) の試合を中継する「WWFスマックダウン!」というTV番組は、UPNという弱小ネットワークで最も高い視聴率を獲得している番組で、WWFで最も知名度のあるザ・ロックは、ティーンエイジャーで知らないものはないという人気レスラーだ。昨年の大統領選にも応援演説に担ぎ出されるなど、政界にも足場を築いている。どっかの州選出の議員になってしまった元レスラーのジェシ・ヴェンチュラのように、彼もあと10年も経てば政界入りするかも知れない。


実はこのザ・ロックを起用して、既に「ハムナプトラ3」の製作が決まっている。というか、「3」はザ・ロック演じるスコーピオン・キングを主人公とした、番外編のようなものになるそうである。タイトルも「スコーピオン・キング」になるらしい。1930年代じゃなくて、紀元前3000年が舞台となる。だから多分フレイザーもワイズも次回は出てこないだろう。ソマーズもメガホンはとらず、「イレイサー」のチャック・ラッセルが監督する。多分前2作とは異なった雰囲気を持つ作品になるだろうから、別の人間に演出を任せるのは正しい選択だろう。でも、なぜだか次回はほとんど失敗作になるような気が今からするんですけど‥‥







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