The Mummy


ザ・マミー/呪われた砂漠の王女  (2017年6月)

好き嫌いは分かれると思うが、アクション・スターとしてのトム・クルーズは悪くない。50代に入って、ほぼ私と同じ年齢だが、それでも未だに現役でアクションをほとんどスタント・ダブルなしでこなし、全力で走る。高い所から吊るされたり飛んだり跳ねたり落ちたり泳いだり溺れたり、最近では出演する映画で一度は仮死状態になったり、あるいは正式に死んでいるのにまた復活して活躍したりする。ある意味アクション・スターの王道を行っていると言える。


それでクルーズの出るアクションは大抵見ているのだが、昨秋の「ジャック・リーチャー: ネバー・ゴー・バック(Jack Reacher: Never Go Back)」は見逃した。ちょうど公開時期が私たち夫婦のヴァケイションと重なってしまったためで、評的には散々で、しかも客の入りもよくなかった「ネバー・ゴー・バック」は、あっという間に劇場から消えて、見逃してしまった。少なくともシリーズ前作の「アウトロー (Jack Reacher)」は、やはりアクション、特にカー・チェイスは面白かったので、「ネバー・ゴー・バック」も見るつもりでいたんだが。演出の「ラスト・サムライ (The Last Samurai)」のエドワード・ズウィックの力をもってしても、下向きの螺旋運動を止めるまでにはいかなかったようだ。


スターとしてのクルーズに一時ほどの神通力がなくなっているのは確かだ。かつては出る作品のほぼすべてが興行的には大きな成功を収めていたことを思うと、近年はちょっと寂しい感は否めない。SFやらアクションやら幅を広げて色々開拓しようともしているが、結局よくも悪くも全部クルーズ・カラーに染まるクルーズ作品として括られてしまう。スターというのは多かれ少なかれそのようなものだが、特にアクション・スターにその傾向が強い。それを考えるとむしろクルーズは頑張っていると思う。


ミーイズム充満のクルーズ作品ではあるが、共演女優を見る楽しさもある。「ナイト&デイ (Knight and Day)」のキャメロン・ディアズ、「オール・ユー・ニード・イズ・キル (Edge of Tomorrow)」のエミリー・ブラントみたいに既に名の確立した女優が出ている場合は別だが、「オブリビオン (Oblivion)」のオルガ・キュリレンコ、「ミッション・インポッシブル: ローグ・ネイション (Mission Impossible: Rogue Nation)」のレベッカ・ファーガソン、「アウトロー」のロザムンド・パイク、「ワルキューレ (Valkyrie)」のカリス・ファン・ハウテン等、それまではあまり知らなかった女優の青田買いができる。その後パイクが「ゴーン・ガール (Gone Girl)」で大ブレイクしたことや、ファン・ハウテンがHBOの「ゲーム・オブ・スローンズ (Game of Thrones)」で不動の人気を獲得したことを思えば、女優を見る目は確かだ。考えたら、パイクやキュリレンコは、元々は007のボンド・ガールとして既に抜擢されていたわけだが、それでもクルーズ作品に出たことが彼女らの大きな転機になったことは確かだろう。


「マミー」に出ているのはソフィア・ブテラとアナベル・ウォーリスで、ブテラは今夏公開のシャーリーズ・セロン主演のアクション「アトミック・ブロンド (Atomic Blonde)」に出ているのを、既に何度も予告編で見ている。ウォーリスも今後が期待できるが、ジュリー・デルピーに似過ぎててちょっと損してるか。


上でも書いたが、最近のクルーズは出演作品で死ぬ場合が多い。もとい、死んで復活する場合が多い。「ローグ・ネイション」では仮死状態に陥るし、今回も死んで復活する。「オール・ユー・ニード・イズ・キル」では、何度死んだか数えきれないほど死ぬ。その度にまた生き返ってくるのだ。常人の生命力ではない。「オブリビオン」ではクローン化して事実上普遍化する。さらに「マミー」では、ついに人間ではなくなっている。ほぼ不死の力を得たと言ってもいいだろう。お前は人間かと突っ込みたくなる冗談が、既に冗談ではなくなっている。


この分だと次の「ミッション・インポッシブル」の新作でも、最低でも死ぬ直前まで行くのは確実、もしくは死ぬのは確実と断言してもいいくらいだ。さらに最近発表されて話題になっている「トップ・ガン (Top Gun)」の新作がある。これはもう、クルーズがまた「マミー」同様飛行機もろとも墜落していくのは火を見るよりも明らかだ。ポイントは果たしてパラシュートを使うかどうか、使わずに落ちてそれでも生還してくるかという辺りにある。果たして不死身のクルーズをどのように見せるのか? ちょっと期待してしまう。










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不良軍人のニック (トム・クルーズ) と相棒のクリス (ジェイク・ジョンソン) は、中近東の戦場で古代遺跡から貴重な遺物を掠めとって横流しして利益を得ていた。ある時二人は、戦闘のどさくさで地中から姿を現した大規模な過去の遺跡に遭遇する。それはかつて女王となる力を持ちつつも、裏切りによってミイラと化していたアマネット (ソフィア・ブテラ) を祀っていた墓所だった。考古学者のジェニー (アナベル・ウォーリス) の指示によってニックとクリスは調査を始めるが、その時彼らはアマネットの呪いを解き放ってしまったことに気づかなかった。アマネットのミイラとニックらを乗せた貨物機はロンドンに向かう途中、クリスが呪いにとり憑かれ、鳥の集団に巻き込まれて墜落、ジェニーにパラシュートを担がせたニックは機と運命を共にする。しかしその夜、死んだはずのニックは息を吹き返す。一方、復活したアマネットは、完全に蘇るべく行動を開始する‥‥ 


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