放送局: FOX

プレミア放送日: 1/22/2007 (Mon) 9:00-10:00

製作: 20世紀FOX TV

製作総指揮: トム・マツァレリ

監督: ロブ・ジョージ

ホスト: マイク・ジェリック、ジュリエット・ハディ


内容: 朝のトーク/ヴァラエティ・ショウ。


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現在、基本的にアメリカの朝のニューズ/トーク/ヴァラエティ・ショウといえば、人々が真っ先に思い出す、最も人気のある番組がNBCの「トゥデイ」で、次いでABCの「グッド・モーニング・アメリカ (GMA)」、そして視聴率という点ではだいぶ間が開いて、CBSの「ジ・アーリー・ショウ」と続く。


「トゥデイ」と「GMA」は、昨年、主要ホストが入れ替わるというかなり大きな変化を経験したが、そこをうまく乗り切り、つつがなくホスト交替を終えている。両番組共ホストが代わったことで視聴率が落ち込むこともなかった代わりに、大きく上向きに転じるということもなかった。だいたい、視聴者が起きて朝一に見る番組というのは習慣づいているものであり、もちろん番組ホストの持つ影響力は小さくはないが、それよりも番組そのものの訴求力の方が大きかったりする。


そんなわけで、99年にCBSが番組梃入れを図ってそれまでの「モーニング・ニューズ」を「アーリー・ショウ」と改名し、新ホストのブライアント・ガンベルを起用して再出発をしてからというもの、ネットワークの朝のニューズ/トーク界にとり立てて大きな動きはなかった。だから昨年の「GMA」と「トゥデイ」のホスト交代は、久しぶりの大きな事件だったと言える。


朝のニューズ/トークはそういう風に安定しており、番組自体がいつもなんらかのニューズを提供するわけではない。一方、ネットワーク側から見ると、だいぶ先まで安定した視聴率が予測でき、それに見合ったスポンサー獲得とコマーシャル収入が期待できる、結構な金のなる木だ。だからこそ最も高い人気を誇る「トゥデイ」が、2時間番組から3時間番組となり、今秋には4時間番組になることが噂されていたりする。


一方、この朝7時から9時まで (「トゥデイ」のみ10時まで) の時間帯において、全国版ニューズ/トーク番組を編成しているのは、ABC、CBS、NBCの3大ネットのみだ。FOXとCWは、共にこの時間帯にニューズ/トークを編成してはいるが、ローカル版であり、全米向けの「トゥデイ」や「GMA」とは規模が違う。因みにニューヨークでは、FOXが7時から9時まで編成しているのは「グッド・デイ・ニューヨーク (Good Day New York)」、CWが「モーニング・ニューズ」というまんまの番組だ。


基本的にニューズというのはローカル色の濃い番組であり、だからそういう意味では全米向けの3大ネットの番組と比して、ローカルのネットワーク・ニューズの存在理由は確かにありはする。天気予報や交通情報に代表されるローカルのニューズの価値は決して低くはないし、というか、全米規模の大きなニューズももちろんだが、ニューズ番組はローカルに徹すれば徹するほど視聴者が興味を持つ身近な話題となり、価値は上がるとすら言える。だからこそ夕方や深夜のニューズ番組は、それがたとえネットワークの番組でも、ワールド・ニューズ番組の時間帯を除き、すべてローカルのニューズ番組となる。全米向け番組の「GMA」、「トゥデイ」、「アーリー・ショウ」においても、それぞれが一方においてはニューヨークのローカル番組であると共に、同時に全米に目配せするというスタイルになっている。


他方、ローカル毎に異なる番組を製作するのは、ムダが多いのはもちろんだ。なんてったって製作費と人件費が嵩む。もしある程度の視聴率が稼げる目算があるのなら、最初から全米向けの番組を製作した方が効率がいい。第4のネットワーク、FOXがそう考えているのは明らかであり、まず手始めにFOXは、昨年、ニューヨーク局の「グッド・デイ」の梃入れを図って、ABCの深夜ワールド・ニューズ番組である「ワールド・ニューズ・ナウ」からホストのロン・コーニングを引き抜いてきてジョニ・アップルゲイトとタッグを組ませ、ホストに仕立て上げた。基本的に深夜のワールド・ニューズを見ている視聴者と朝のトーク/ニューズを見ている視聴者は別ものだが、少なくともコーニングを持ってきた重みというものはある。たぶん、様子を見て「グッド・デイ」を他のネットワーク同様ローカルではなく、全米向け番組として放送する可能性を模索しているのではないかと思う。


FOXの朝のニューズ/トークは、「グッド・デイ」の終わる9時をもって一応終了し、その後はシンジケーション番組が編成される。因みに今回「マイク・アンド・ジュリエット」が編成されるまで9時からニューヨークのFOX系列で放送されていたのは、「アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル」ホストのタイラ・バンクスがホストのトーク・ショウ、「ザ・タイラ・バンクス・ショウ (The Tyra Banks Show)」だった。因みにニューヨークのABC系列はこの時間、「ライヴ・ウィズ・リージス・アンド・ケリー (Live with Regis and Kelly)」という人気トーク・ショウを放送しており、CBSは芸能ニューズの「ジ・インサイダー (The Insider)」および「エンタテインメント・トゥナイト (Entertainment Tonight)」を編成する。


以上の番組はネットワーク色が濃くともシンジケーション番組として区別される。私は最初、ニューヨークのABCのステュディオから全米の系列局向けに生中継される「リージス・アンド・ケリー」は、ABC番組として判別されると思っていたのだが、そうではなく、シンジケーション番組なのだ。それなのに、飛び石で11時から放送されるトーク・ショウの「ザ・ヴュウ」は、れっきとしたネットワーク番組としてABCのホーム・ページにも載っている。一方で実際にはABCが製作放送していても、シンジケーション番組の「リージス・アンド・ケリー」は、ABCのサイトには載っていない。この辺は色々細かい事情というものがあるのだろうが、そういうものだとして納得するしかない。いずれにしても、つまり、ネットワークではNBCのみが、9時台も「トゥデイ」という全国区番組を放送していることになる。


今回FOX系列局で放送される「ザ・モーニング・ショウ・ウィズ・マイク・アンド・ジュリエット」は、その内容も構造も体裁も、ABC系列の「リージス・アンド・ケリー」と瓜二つである。というか、完全に真似ている。ニューヨークのステュディオから放送されるトーク・ショウで、ひたすらネットワーク番組に見えるシンジケーション番組という外枠もそっくりなら、男女二人がホストの、ステュディオ内に観客を入れての生中継番組という番組そのものの構成までそっくりだ。要するにFOXが、またまた恥も外聞もなく、朝の長寿トーク・ショウとして人気を誇る「リージス・アンド・ケリー」の物真似に出たのだろうというのは容易にわかる。それで同じ時間帯に裏番組として持ってくるのもいかにもFOXらしい。


番組ホストのマイク・ジェリックとジュリエット・ハディは、FOXニューズ・チャンネル (FNC) で5年ほど前から「デイサイド (DaySide)」や「FOXアンド・フレンズ (Fox and Friends)」で共同ホストを担当しており、既に手慣れたしゃべり手として定評がある。とはいえ「フェア・アンド・バランスド (Fair and Balanced)」というネットワークのキャッチ・フレイズがまったく嘘八百にしか聞こえない完全に右寄りのFNCの番組なんて、私はせいぜいエンタテインメント番組としてごくたまに「オライリー・ファクター (O'Reilly Factor)」を見る以外はまず見ない。あまりにも「フェア・アンド・バランスド」がうそ臭いといたるところでバカにされるので、最近ではFNCもこのキャッチ・フレイズを使用するのを諦め、新しく「ウイ・レポート、ユー・ディサイド (We report, you decide)」なんてのを使い始めたが、もちろんあんたらのニューズは頭ごなしには信じないという点で私は心を決めている。


そのため、実はジェリックとハディの名前も私にとっては今回が初耳だった。ジェリックは既に成長した娘が二人もいる50歳前後のおっさんで、ハディの方は番組内で本人が37と言っていた。ジェリックは離婚しており、ハディは未婚だそうだが、二人はつき合ってはいないと公言している。そのわりには二人ともやたらとくっついて司会しており、ほとんどジェリックはハディの肩に腕を回さんばかりにぴったりくっついていたシーンが一度や二度じゃなかった。男女二人でホストを担当する番組で、ホストの二人がここまでべったりとくっつきながら番組が進行していくのは、この番組くらいのもんだろう。ま、仲がいいのは確かだと言える。


「マイク・アンド・ジュリエット」はFOXがマンハッタンの6番街/48丁目に持っているステュディオから生中継されており、その番組第1回は、まずお決まりとして二人のこれまでの経歴や家族の紹介をした後、人気番組「プリズン・ブレイク」から主演のウェントワース・ミラーとサラ・ウェイン・キャリーズに衛星中継で結んでのインタヴュウ、その後、自分の子供でも叩くと犯罪として逮捕されるということの法制化の是非に対して、シンジケーションの擬似法廷番組「ジャッジ・アレックス (Judge Alex)」で裁判官に扮しているアレックス・フェラーをステュディオにゲストに迎えて話を聞く。音楽ゲストは「アメリカン・アイドル」出身のクリス・ドウトリーだ。


ちょっと聞いただけではどこにでもあるいかにもトーク・ショウ然とした内容のように聞こえるだろうが、ポイントは、上記番組がすべてFOX製作ということにある。「アメリカン・アイドル」と「プリズン・ブレイク」はFOXで最も人気のあるドル箱番組であるし、その出演者、過去の出場者は、FOXから他の番組へのゲスト出演を頼まれたら嫌とは言えないだろう。「ジャッジ・アレックス」もシンジケーション番組でこそあるがもちろんFOX TV製作で、「マイク・アンド・ジュリエット」はこれらの既に確立している人気番組から力を借りているわけだ。それはともかく、この日のニューヨークは27Fという氷点下の寒さであることが、ちゃんと屋外の電光掲示板に表示されている。その中をクリスは屋外ステージで歌うわけで、それまで屋外でじっと待っていたに違いない。寒いのだろう、深めに被っていたニット帽が歌っている時に段々下がってきて、完全に目をおおってしまってもどうしようもなくてそのまま歌っていたのが笑えた。


因みに翌日の第2回は、アカデミー賞ノミネーションの発表直後ということもあって、マスコミ関係者を招いての受賞予測が主要なテーマだ。年に一度のお祭りである。こればかりはどこのチャンネルのどんな番組であろうとも、アカデミー賞絡みで番組を構成せざるを得まい。それ以外のゲストは、今度はやはり「アイドル」からジャッジのポーラ・アブドゥルを招いていた。もう一人のゲストはカーメン・エレクトラで、どういう経緯で彼女が番組に出ていたかは知らないが、やはりFOX絡みなのはほぼ間違いなかろう。番組ではその後も、特に「アイドル」出身のゲストが引きも切らずに出演している。


「マイク・アンド・ジュリエット」がお手本としている「リージス・アンド・ケリー」は、フィルビンと、初代女性ホストのシンディ・ガーヴィがホストを担当していた時代から数えると既に4半世紀、25年もの間放送されている長寿番組である。ついでに言うと、1983年に始まったその時のそもそもの番組名こそが、「ザ・モーニング・ショウ」だった。つまり、「ザ・モーニング・ショウ・ウィズ・マイク・アンド・ジュリエット」は、本当の本当にこれまでフィルビンがホストを務めてきたトーク・ショウを真似ている。私は知らなかったとはいえ、ジェリックもハディもそれなりに既にヴェテランのパーソナリティであるわけだから、こういういかにも人真似みたいなことなんかせず、オリジナリティを前面に打ち出して番組を製作してみても‥‥と思ったが、ほとんどどこからどう見てもフィルビンの真似ばかりしているのだ、いまさら番組名だけオリジナルにしても意味あるまい。


「マイク・アンド・ジュリエット」と「リージス・アンド・ケリー」で最も違う点といえば、やはりジェリックとフィルビンの歳の差から来る印象の違いという点が最も大きいと思う。例えば、「マイク・アンド・ジュリエット」では、ジェリックがまだ壮年期程度であるために、充分ジェリックとジュリエットができているのではないかという噂が立つ可能性がある。本人たちもそれをわかっているからこそ、番組内で二人はよき友人であって恋人ではないと何度も強調していたりする。


しかし76歳のフィルビンを相手にしては、フィルビンとリパの浮気話なんてまず起こりようがないのだ。しかし「リージス・アンド・ケリー」では、そのことが逆に安定した朝のトーク・ショウとして確立することに貢献している。「マイク・アンド・ジュリエット」が今後どのようにオリジナリティを身につけるのかはまだわからないが、しかし、二人ともしゃべることには確かに充分慣れているようだった。簡単には「リージス・アンド・ケリー」に追いつけるとは思えないが、しかしフィルビンとリパも安心してばかりもいられないだろう。







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The Morning Show with Mike and Juliet

ザ・モーニング・ショウ・ウィズ・マイク・アンド・ジュリエット   ★★1/2

 
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