放送局: FOX

プレミア放送日: 1/23/2008 (Wed) 21:00-22:00

製作: ライトハーティド・エンタテインメント

製作総指揮: マイク・ダーネル、ハワード・シュルツ

ホスト: マーク・L・ウォールバーグ


内容: 参加者を嘘発見器に繋いで、答えにくい個人的な質問に答えさせることで賞金を獲得していくリアリティ・ショウ。


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過去の倣いで言うと、毎年年頭にFOXがかなり非常識なリアリティ・ショウを編成する確率は非常に高い。この印象を決定づけた2000年の「フー・ウォンツ・トゥ・メアリ・ア・マルチミリオネア (Who Wants to Marry a Multimillionaire?)」以降、「誘惑の島 (Temptation Island)」「セレブリティ・ボクシング」「マンvsビースト」「ジョー・ミリオネア」「ザ・リトルスト・グルーム」「フーズ・ユア・ダディ?」等、この手の番組は枚挙に暇がない。年頭ではなく春先に放送が始まった「ザ・スワン」だってこの範疇に入れてもいいだろう。


これらの俗悪非道言語道断、低劣愚劣なリアリティ・ショウの羅列は、ネットワークではFOX以外到底どこも真似できるものではなく、アメリカ・ネットワークの恥部FOXの名を遺憾なく発揮せしめた。これくらい恥知らずな番組が定期的に編成されると、一方でそれはそれで価値があると認めざるを得ないのも事実で、時に道徳や質の善し悪しという価値観を超えたとすら感ぜられるこれらのリアリティ・ショウは、ある種の中毒性すら獲得した。毎年、年頭になると今年はいったいFOXはどんなリアリティ・ショウを編成してくれるのかと、期待すら抱かせてくれたのだ。


ただしここ数年はこれらの俗悪リアリティ・ショウも一通りアイディアは出尽くしたのか、鳴りを潜めた感があった。一昨年の「スケーティング・ウィズ・セレブリティーズ (Skating with Celebrities)」とかは、ただのできの悪い似非スポーツ・リアリティ・ショウに過ぎず、昨年に至ってはついにこれといったリアリティ・ショウは現れなかった。年初から今か今か、今年はいったいFOXはどんな愚劣なリアリティ・ショウを編成してくれるのかと期待して待っていた挙げ句、ようやくFOXが編成したのは子供と一緒になって答えるごく常識的クイズ・ショウの「アー・ユー・スマーター・ザン・ア・フィフス・グレイダー (Are You Smarter Than a 5th Grader?)」だったことに、期待を裏切られたとがっかりした視聴者は私だけではないと思う。


私見ではFOXリアリティ・ショウのここんところの低空飛行の要因は、近年でこの種の番組では最高最大最低の番組となるはずだった一昨年末のO. J. シンプソン告白番組、「イフ・アイ・ディド・イット、ヒアズ・ハウ・イット・ハップンド (If I Did It, Here's How It Happened)」が放送できなかったことにあるという気がする。これが放送できていたら、今後数年はアメリカどころか世界最大の恥知らずネットワークとして君臨できていたことは間違いない。しかし、さすがに一縷の常識を残していたニューズ・コープの総帥ルパート・マードックの鶴の一声により番組は白紙撤回され、陽の目を見ることはなかった。あれでFOXの非常識リアリティ・ショウ路線が躓いた感がある。あそこがFOXが一線を越えるかそれともすれすれで常識の側に踏み止まれるかの分岐点だったような気がしてしょうがない。むろん越えていたら大変なことになっていただろうと予測するが、しかし、それを見たかったという怖いもの見たさもやはり同じくらいあるのだ。


さて、そういうわけで今回FOXが編成した「ザ・モーメント・オブ・トゥルース」は、どちらかというとこれまでのトンデモ系FOXリアリティ・ショウの中では小粒だ。要するに愚劣さを極めきっていない。番組がオリジナルではなく、コロンビアで放送されたヒット・リアリティ・ショウのリメイクであることも関係しているかもしれない。言語道断なまでに下劣であるために逆に目を反らすことができないという、これまでのFOXリアリティの最上のレヴェルには残念ながら到達していない。


番組は回答者に答えにくいプライヴェイトな質問を投げかけ、それに嘘をつかずに本当のことを答え続けていくことで賞金を獲得するというシステムだ。むろん当人が嘘をついているかどうかは外部からは知りようがないから、まず本番に先駆けて回答者は別室でポリグラフ (嘘発見器) にかけられて既に質問され、それに答えている。つまりその結果をTV局側は既に知っている。本番ではその中から選ばれた質問が、今度はステュディオの観客の前で出題される。


最初は比較的答えやすい6つの質問が出され、回答者がそれに嘘をつかず正しく答えているとポリグラフが判断した場合、賞金1万ドルを獲得する。次に5つの質問があり、これにも嘘をついてないと認められると2万5千ドル。第3ステージは4つの質問で10万ドル。第4ステージは3つの質問で20万ドル。第5ステージは2つの質問で35万ドル。最終第6ステージの最も答えにくい最後の質問にも嘘をつかずに正直に答えることができたら、晴れて50万ドルを獲得する。回答者は各ステージの賞金を獲得した段階で降りてもいいが、いったん質問されるとそれに答えるまで降りることは許されず、途中でもしその答えがポリグラフによって嘘と判断された場合、それまでに獲得した賞金の一切を失う。


壇上には回答者以外に、その配偶者、ボーイ・フレンド/ガール・フレンド、友人、親兄弟等の近親者が正面に3人座っている。それらの者を前に、回答者は答えにくい質問に答えていくわけだ。そりゃあ自分の妻や夫を前にして、あなたはこれまで浮気したことがありますか、などと訊かれて、したことがあるやつが素直にはいと言えるわけがないのは言うまでもない。しかし嘘をつくとそこでゲーム・オーヴァーとなってしまう。回答者は、あとで家に帰って喧嘩になることがわかってもここは正直に言うか、それともポリグラフにそれは嘘だと断罪されようとも、ここは白を切り通すかのどちらかの選択を迫られる。要するに見所はこの辺の回答者、および壇上の近親者の内面の葛藤にある。


因みに番組第1回では、元NFLプレイヤーというなかなかハンサムで当然ガタイもいい男タイが登場する。対面のカウチに座っているのは妻のカーティア、女性の友人エイプリル、男性の友人マルテスの3人だ。スポーツ選手がもてるのは洋の東西を問わず、カーティアもかなりの美人でモデル並みの容姿をしている。FOXの夜のニューズのアンカー、ロザンナ・スコトーをもうちょっと細身にしたという感じだ。その隣りに座っているエイプリルもなかなかの美人、そしてたぶん彼はNFL仲間であったに違いない大柄な黒人のマルテスの3人が、タイの一挙手一投足を見守る。


タイに対する一番最初の質問は、「あなたは仮病を使ってクライアントとの約束をキャンセルしたことがありますか」というもの。当然タイの答えはイエスでポリグラフも本当のことを言っているという判定。次の質問は「シャワーの後に鏡に自分自身を映して惚れ惚れしたことがありますか」というもの。これまた答えはイエスで、ポリグラフも嘘ではないとのお達し。次が「人の車に自分の車をぶつけて知らん振りをしたことがあるか」で、これもイエス。ポリグラフもパス。次が「大学にいた時、フットボール・チームにいたというだけで落第を免れたことがあるか」。意外にもタイの答えはノーで、真実という判定。そうですか。


ここで私は、これらの質問はごく一般的なものではなく、回答者に合わせて調整された質問だということに気づいた。さもなければ当然のように「あなたが大学のフットボール・チームにいた時‥‥」なんて質問が出るわけはなかろう。事前に近親者に、彼に対して訊きたいが面と向かっては言いにくい質問なんてのを訊いているのだと思われる。因みにカーティアは、あまりにもプライヴェイトな質問でタイの答えを聞きたくないという時は、一度限りその質問をパスする権利を有している。ただし、その質問の代わりの新たな質問が、それに輪をかけてきわどい質問ではないという保証はない。


さて出題は進み、次の質問は「自分の知人の中で自分が最もハンサムだと思うか」で、答えはイエス、判定も真実と出た。次は元NFLプレイヤーのロドニー・ピートが出てきて出題、「フットボール時代、シャワーを浴びている時に他のプレイヤーの大事な部分を覗いたことがあるか」で、答えはイエス、判定も真実と認められ、タイは無事第1ステージを終了、1万ドルを獲得する。


第2ステージになると段々問題はきわどく、個人的なものになる。第7問目は「もしカーティアのおなかがたるんできたら、脂肪吸引手術を勧めるか」。タイはイエスと答え、設問をパスする。次の質問は「知人の誰かがカーティアに気があると疑惑を持ったことがあるか」で、イエスと答え、これもパス。次は「誰かと初めて会ったその日にセックスしたことがあるか」これもイエス、そしてパス。次は「これまでにカーティアがあなたに対する信用を失うようなことをしたことがあるか」イエス、そしてパス。次が「結婚後にインターネットで他の女性と楽しんだことがあるか」で、ノー、そしてパス。これでタイは無事第2ステージを終了、2万5千ドルを獲得する。


いずれにしてもこの辺りから答える側だけでなく、それを見つめる側も段々微妙に居心地の悪いものになってくる。第3ステージの最初の質問は、「まだ子供を設けないのはカーティアが生涯のパートナーであることを確信していないから」で、イエス、パス。「パーソナル・トレーナーとして、必要以上に女性クライアントの身体にタッチしたことがあるか」。ノー。そしてポリグラフはここで答えを嘘と判断、タイはここで落ちた。さて、このカップルの今夜は取っ組み合いか、という寸法であった。


一部面白く思える時もないこともないのだが、番組に特に熱中もできないのは、まず第一にポリグラフというシステムに対する信用度の問題がある。いくらその道のプロがポリグラフを使用して嘘真の判断をしていようとも、ポリグラフはその判断を100%正当化するものではない。だからこそ本物の裁判ではポリグラフによる判断はあくまでも参考程度に留め、それを証拠としては採用しないことが定められているのだ。つまり、本物の嘘つきはポリグラフに察知されないように嘘をつくことができる。自分自身に私は嘘をついてないと思い込ませることのできる自己暗示能力の強い者に対しては、ポリグラフは役に立たないのだ。


そのため、番組において回答者の答えていることが嘘か真実かは、最終的には本人以外誰もわからない。少なくとも壇上の近親者の反応は本物だと思うが、とはいえ真実とは限らないものに翻弄されているだけかもしれない。こういう疑惑が常について回る。そういう事実かどうか最終的に客観的に確認できない問題に対して一喜一憂する気になぞなれない。それに、自分は間違いなく絶対に本当のことを言っているのに、嘘の判定を下された時はどうすればいいのか。あり得ない話ではないだろう。当然ポリグラフの判定に異を唱えないこと、なんて契約にサインして番組に出ているのだとは思うが、しかしその場合はただ恥をかいただけで泣き寝入りか。


次に番組が特に面白くもない理由として、これは私自身の嗜好によるものだが、畢竟赤の他人のプライヴァシーなんて、どうでもいいことが挙げられる。別にあんたが浮気していようが夫や妻を騙していようが、私にとってどうでもいいことでしかない。好きにやってくれとしか思えない。それを公衆の面前でばらして赤恥かいて金をもらう。ま、本人がそれでいいと思っているなら別にいいんじゃないですか。これがブリトニー・スピアーズやリンジー・ローハンやパリス・ヒルトンがやってきて、アメリカ中の誰もが疑問に思っている事柄について答えてくれるというなら私も喜んで見るが、別にセレブリティでもないごく一般的な中流アメリカ人のプライヴェイト・ライフに首を突っ込んであれこれ詮索する趣味は私にはない。


番組に出ている回答者は、最初の回答者のタイは元NFLプレイヤーで、近親者も美男美女揃い、もしかしたら3流くらいのセレブリティというカテゴリーには入るかもしれないが、その後からは本当に普通の人になった。というか、その後に出てきた男は、いかにもでしゃばりの目立ちたがり屋というタイプで、正直言うと、そういういけ好かない野郎の私生活なんて、頼まれても覗いてみる気になんかなれない。そのガール・フレンドがまた、なんかどこかでデッサン狂っているとしか思えない顔立ちで、そういうカップルの痴話喧嘩なんか、頼まれても見たかないのだ。このカップルを見て私が連想したのは、近年ではFOXリアリティ・ショウよりも愚劣なMTVの「マイ・スーパー・スウィート・シックスティーン」で、要するに、ただただ悪趣味で低劣だ。


これまでのFOXリアリティは、徹底して下品で愚劣なあまり、善悪の判断や質の優劣を超えたまったく別の価値観を生み出すところにその存在意義があった。しかし「モーメント・オブ・トゥルース」はただの悪趣味で品性下劣な番組という枠を超え切れておらず、視聴者に対して扇情的に煽り立てるだけで、見ていてほとんど不愉快ですらある。こんな番組が現在アメリカで人気ナンバー・ワンの番組「アメリカン・アイドル」の直後に編成され、それなりに視聴率を稼いでいるのを見るのはかなり納得いかないと思ってしまう。







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The Moment of Truth


ザ・モーメント・オブ・トゥルース   ★1/2

 
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