放送局: TNT
プレミア放送日: 7/15/2001 (Sun), 7/16/2001 (Mon) 20:00-22:00
製作: ウォルパー・オーガニゼイション、コンスタンティン・フィルム
製作総指揮: デイヴィッド・ウォルパー、マーク・ウォルパー、ジェイムス・コバーン
製作: リサ・アレクサンダー
監督: ウーリ・エデル
原作: マリオン・ジマー・ブラッドリー
脚本: ギャヴィン・スコット
撮影: ヴィルモス・ジグモンド
編集: マイケル・フリードランダー、ベンジャミン・ワイズマン
音楽: リー・ホールドリッジ、ロリーナ・マッケニット
美術: ジェイムス・エイクソン、ロジャー・モウス
出演: ジュリアナ・マルグリース (モーゲイン)、アンジェリカ・ヒューストン (ヴィヴァン)、ジョーン・アレン (モルゴース)、サマンサ・マシス (グウェンフィファル)、キャロライン・グッドオール (イグレイン)、エドワード・アタートン (アーサー)、マイケル・ヴァータン (ランスロット)、マイケル・バーン (マーリン)、ハンス・マシソン (モードレッド)
物語: 紀元数世紀。女性のみが住む霧に包まれた謎の島アヴァロンでは、「湖の貴婦人」と呼ばれるヴィヴィアンが神に仕える司祭として君臨していた。ヴィヴィアンは内外の勢力によってブリテン島が崩壊の危機に瀕しているのを危惧しており、妹イグレインの息子アーサーを将来の王にするためには何ものをも辞さない覚悟をしていた。
一方、アーサーの異父姉モーゲインはその才能を見込まれ、ヴィヴィアンの後を継ぐ司祭となるべく、仲のよいアーサーと袂を分かってアヴァロン島に赴く。数年後、結婚の秘儀によって仮面をつけたまま男を迎え入れ、処女を捨てたモーゲインは、後にその相手だった男がアーサーだったことを知る。モーゲインはアーサーには相手が自分だったことを教えず、ひっそりと男の子モードレッドを産む。しかし陣痛の苦しみに熱に浮かされて思わず父親がアーサーであることを喋ってしまったのを聞いた叔母のモルゴースは、その事実が将来自分に有利に働くことを知って、何食わぬ顔でモードレッドの里親となる。
成長して無事ブリテン島の統一に成功したアーサーだったが、妃にと迎えたグウェンフィファルはなぜだかアーサーの子を身ごもることができず、苦悩していた。臣下のランスロットが秘かにグウェンフィファルに惹かれていることを知っていたアーサーは、むしろランスロットとグウェンフィファルが同衾することを勧める。成長したモードレッドが身分を隠してアーサーに取り入ったのはまさにそういう時だった。モードレッドはランスロットとグウェンフィファルが密会している現場に押し入り、不義密通の咎め立てをして二人を更迭しようと企む‥‥
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近年SFやファンタジーものから遠去かっていたせいもあって、マリオン・ジマー・ブラッドリーの書いた「The Mists of Avalon」という作品を私はまったく知らなかった。今回TNTが放送したこの原作の映像化も、原作のことをまったく知らなかったために、魔法を使う巫女たちの視点から見たアーサー王伝説というTNTの宣伝文句くらいしか前知識がなく、円卓の騎士って本当に欧米人にアピールするんだな、くらいにしか思っていなかった。
原作が82年に書かれ、当時のベストセラーで、今では新しい古典としてSF/ファンタジー界では知らぬもののない有名な作品だということは、下調べして初めて知った。ネットで「The Mists of Avalon」とオリジナル・タイトルを入れて検索すると、出てくる出てくる、そうか、そんなに有名な作品だったか。もしかしたら日本でも既に知られているかもと日本語のサイトでも検索したら、ちゃんと邦訳が早川書房から出ている。既に日本にも熱狂的ファンがいるようだ。それにしてもハヤカワ文庫のFTって、私にとっては未踏の処女地だなあ。
「アヴァロンの霧」は一応アーサー王伝説の物語であるわけだが、主人公はアーサーでもランスロットでもマーリンでもなく、エクスカリバーの話は出てきてもホーリー・グレイル探しの旅に出るわけではないなど、大幅な読み替えが行われている。あくまでも主人公のアーサーの異父姉のモーゲインを中心とする女性の視点を軸に据えており、そのため当時はフェミニズムの時代を先取りするものとしてとらえられていたようだ。
今回の映像化でもその視点は変わらない。また、原作は900ページにもなんなんとする長大なものであるため、たとえ4時間のミニシリーズとはいえども幾つかのキャラクターや重要な場面の省略は避けられなかった。そのため、結局、番組の方はモーゲインを主人公とし、それに彼女の二人の伯母、ヴィヴィアンとモルゴースや、母イグレイン、アーサーの妃グウェンフィファルが、主要な登場人物として絡んでくるという体裁をとっている。もちろんアーサーやランスロット、マーリンの出番も少なくはないのだが、やはり視点は女性の立場だ。
主人公兼語り部のモーゲインに扮するのが、「ER」を降りて初めての重要な役となるジュリアナ・マルグリース。とりたてて美人というわけではないが、私にとって彼女のいいところは顔よりも声、特に泣き声にある。すすり泣きとかではなく、声を出してわあと泣く時の低い声はとても魅力的だと思うのだが。モーゲインは家系の血によって幼い頃から予知的な力を持っており、神に仕えるものとして、幼い頃に伯母のヴィヴィアンによってその能力を磨くために、アヴァロンへと連れていかれ育てられる。
ヴィヴィアンに扮するのがアンジェリカ・ヒューストン。毎度の如く貫録で、なるほどと思わせる配役。しかし演技という点から言うと、ヒューストンより出番が少ない、モルゴースに扮するジョーン・アレンの方が印象に残った。今年、「ザ・コンテンダー」でアカデミー賞の主演女優賞にもノミネートされていたが、ここではそれほど出番もないくせに、さり気なく俯いた顔での上目使いで腹に一物ある曲者として印象を残すところなんて流石である。
モーゲインの母イグレインに扮するのが、「シンドラーのリスト」のキャロライン・グッドオール。グウェンフィファルに扮するのがサマンサ・マシス。マシスは一時「若草物語」、「キルトに綴る愛」、「ブロークン・アロー」と話題作に立て続けに出て将来の最注目株の一人であったはずなのだが、活躍の場をTVに移してから、FOXの「ハーシュ・レルム (Harsh Realm)」、今春のNBCの「ファースト・イヤーズ (First Years)」と、数話しか持たなかった番組に出て失敗している。
男性陣では、アーサーに扮するのがエドワード・アタートン。なんでも日本語がぺらぺらだそうで、「いちげんさん」という邦画出演作がある。アーサーの忠臣ランスロットに扮するのがマイケル・ヴァータン。エドワード・バーンズ似の二枚目で、今秋からABCで放送されるアクション・ドラマの「エイリアス (Alias)」に出演が決まっている。アーサーの息子モードレッドを演じるのはハンス・マシソン。わりといい顔をしていたが、よくは知らない。
演出はウーリ・エデルで、一昨年、同じTNTで「ゴースト・アウトローズ」という奇想天外な超常西部劇を撮っていた。HBOでも「ラスプーチン」という史劇をものにしているので、その辺の経験が買われたのだろう。まあ、演出という点では可もなく不可もなくといった印象しか受けなかったが、それよりも驚いたのが撮影にクレジットされているヴィルモス・ジグモンドである。ヴィルモス・ジグモンド! 「天国の門」の、「ディア・ハンター」の、「ザ・リバー」の、あのジグモンドですか! 最近、去年はなんとヴィットリオ・ストラーロがSci-Fiでやはりミニシリーズの「デューン」を撮っていたが、今度はジグモンドがTVか。この分だと来年辺りゴードン・ウィリスもTVを撮るかも知れない。
しかし、映像にも期待して見た「アヴァロンの霧」だったが、どこがジグモンドかよくわからない普通の映像で、結構肩透かしである。こんなのハリウッドの撮影監督なら誰でも撮れる。いったいこの映像のどこが「ザ・リバー」を撮った人間の映像なのか、よくわからない。画面が小さいせいか。しかしストラーロはそれでも流石と思わせてくれたぞ。CGシーンが多過ぎて力の発揮しようがなかったか。それともヨーロッパのプラハでの撮影は、アメリカの光の具合とは勝手が違ったか。しかしあんたは元々ハンガリーの出身だろうが。
ジグモンドは90年代からあまりよい仕事をしてなく、「マーヴェリック」でも「硝子の塔」でも「ゴースト&ダークネス」でも、あまり印象に残らなかった。特に 「マーヴェリック」、「ゴースト&ダークネス」辺りは屋外撮影の荒野が広がる得意中の得意と思える題材だったのだが、力が衰えたのか、まるでしゃっきりしなかった。もしかしたら雪が降っていなかったからか。ジグモンドの屋外撮影で印象に残っているのは、「ギャンブラー」や「ディア・ハンター」等、雪山を背景としたものが多い。でも、しかし、「ザ・リバー」はそうでもなかったなあ。組んだ監督のせいもあるか。確かにジグモンドの絶頂期の作品は、ロバート・アルトマン、マイケル・チミノ、スティーヴン・スピルバーグ、マーティン・スコセッシ、ブライアン・デ・パルマと、一流の監督と続け様に仕事をしている。それに較べれば最近一緒に仕事をした監督は確かに少し弱い。それでもなあ。これでは力が落ちたと言われてもしようがない。
この番組、実は原作が発表された時に、俳優のジェイムス・コバーンが映像化権を買い取って、以来ずっとキープしていたそうである。製作総指揮の一人にコバーンの名前があるのはそのためだが、実質上製作を仕切っていたのはデイヴィッド・ウォルパーとマーク・ウォルパーの親子であることは間違いない。父のデイヴィッドの方は、ミニシリーズの代名詞である「ルーツ」製作で知られており、息子のマークの方は、ケヴィン・ベーコンとクリスチャン・スレイターが主演した「告発」で知られている。音楽がエンヤではなくロリーナ・マッケニットが用いられているのは、エンヤだとあまりにメジャー過ぎるとの判断だろうか。
