The Mechanic


ザ・メカニック  (2011年2月)

アーサー (ジェイソン・ステイサム) は完璧に仕事をこなすことで知られる暗殺者だったが、その彼に入った次の仕事の依頼は、よりにもよってアーサーに仕事のいろはを教え、彼が親代わりに慕っているハリー (ドナルド・サザーランド) を消せというものだった。ハリーは実は裏で組織を裏切っていたのだ。組織には逆らえずハリーを葬ったアーサーは、ハリーの息子スティーヴ (ベン・フォスター) に接近する。アーサーは今度はスティーヴの親代わりになってスティーヴに仕事のいろはを教え始める。そして実は組織は、邪魔に感じていたハリーを消すために、アーサーにハリーを殺させたことが知れる‥‥


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「ザ・メカニック」はTVでも映画でも最近よく目にするリメイクということで、もう、リメイクと聞くだけでちょっと身構えてしまう。私としてはできのいいリメイクよりも、いいか悪いか判断不能のオリジナルの方を優先したい。


とまあ思っていたのだが、実は「メカニック」、予告編を見ただけでは、このオリジナルを見たかどうかがよくわからない。この手の映画は一時期浴びるように見ていたので、「メカニック」も見たことがあるような気もするし、見てないような気もする。とにかくこういうアクションは手当たり次第で、選んで見ていたわけではないからタイトルもいちいち覚えていない。はて、これ、見てんだろうか。


そこで記憶を探ったりIMDBでチェックして見たかどうかを確認するよりも、ええい、ままよと見に行くことにする。もし見てんのなら途中で思い出すだろうし、見てないならそれはそれでいい。


「メカニック」は、プロの暗殺請け負い人アーサーが組織の要求で自分の恩人を殺さざるを得なくなり、代わりといってはなんだが自分が殺した人間の息子に仕事のやり方を教えていくという話だ。主人公アーサーを演じるのがジェイソン・ステイサム、恩人のハリーを演じるのがドナルド・サザーランドで、このキャスティング、思わずリメイクはリメイクでも「ミニミニ大作戦 (The Italian Job)」のリメイクかと思ってしまう。


「ミニミニ大作戦」ではステイサムは主人公ではなかったが、しかしそれでも長老格の役どころでサザーランドが登場し、すぐに殺されて他の者たちがそのかたき討ちを決心する。似ている。その「ミニミニ大作戦」ですらリメイクであったわけだし、今回はさらにリメイクのリメイクという印象だ。


組織の要請でハリーを殺さざるを得なかったアーサーだったが、やはり居心地はよくない。そのハリーの心配の種だった息子のスティーヴは、決してできのいい息子というわけではなかったがそれでもハリーを慕っており、ハリーの死を知って自暴自棄の生活を送っていた。そのスティーヴに、今度はアーサーが親代わりとなってビジネスのいろはを教え込み始める。意外に筋のいいスティーヴは腕を上げていき、一方で実はハリーの暗殺は、彼を邪魔に感じ始めた組織がハリーを消すために仕組んだことが明らかになる。アーサーとスティーヴは組織のボスに報復を計画するが‥‥


サザーランドはサザーランドらしく、ステイサムもいつも通りのステイサムで、彼が出ているシーンだけを見ると、これが「トランスポーター (The Transporter)」「エクスペンダブルズ (The Expendables)」か、判断に迷うところだ。一方いい感じを出しているのが、スティーヴに扮するベン・フォスター。「3時10分、決断のとき (3:10 to Yuma)」の、ラッセル・クロウに心酔するガン・マン、「X-Men ファイナル ディシジョン (X-Men: The Last Stand)」の一人ぽっちのエンジェル、「ホステージ (Hostage)」のカリスマ・ワル等、孤独な青年を演じさせると、今、一番の印象を残す。彼こそ「トワイライト (Twilight)」で主演すべきだったと思う。そしたらティーンエイジャーの女の子から絶大な人気を勝ち得ただろうに。


演出は「ララ・クロフト: トゥームレイダー (Lara Croft: Tomb Raider)」のサイモン・ウエストで、最近は昨年、FOXの「ヒューマン・ターゲット (Human Target)」、および今年1月のNBCの「ザ・ケイプ (The Cape)」と、とにかくマンガ (グラフィック・ノヴェル) やヴィデオ・ゲームが絡む話ばかり撮っている。それを考えるとオリジナルが映画である「メカニック」は、彼のヴォキャブラリーから見ると異色と言えるかもしれない。


で、結局この作品、見終わるまでオリジナルを見ているかどうか思い出せなかった。正直言ってこういうストーリー・ラインって腐るほど見ているし、展開も途中から読めた。読めなかったのは最後のアクションをどう持ってくるかだが、大まかなストーリーは、正直この手のジャンルのファンならだいたい予測できるだろう。


てなわけで、結局、映画が終わっても、このオリジナルを見たかどうかが判然としない。見たような気もするし見てないような気もする。ジャンル・ムーヴィというのはこういうのがありがちだ。それでIMDBでチェックしてみた。1972年のオリジナルの主演がチャールズ・ブロンソンというのを見た瞬間、あ、これ、見たとやっと思い出した。見てるなんてもんじゃない。これ、一時TVのゴールデン洋画劇場かなんかで何度も放送されていた。それもカウントすると3回は見てるはず。なんてこった。なのに中身は記憶からほとんどすっぽり抜け落ちていた。


要するにクラシックという名に値するオリジナルなので、似たような展開の作品がそれこそ山のように製作されている。だから単純にシーンを見せられただけではオリジナルに記憶が及ばないし、連想もしづらい。しかもオリジナル自体の記憶は既に曖昧だ。そんなわけで思い出せなかったわけだ。それで楽しめたからよしとするべきか。今回の最後の展開がすんなり読めたのもかすかに記憶の片隅に引っかかっていたせいもあったろう。しかし覚えてなくて得したのか損したのか、よくわからない。まあ、損得の問題ではないということにしておこう。たぶんあと20年くらい経ってまた「メカニック」のリメイクが製作されたら、これ、なんか見たことがあるような気がするなあと思いながら、また見に行くに違いない。








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