放送局: FOX
プレミア放送日: 2/16, 2/23/2004 (Mons) 20:00-21:00
製作: LMNOプロダクションズ
製作総指揮: エリック・ショッツ、ビル・パオラントニオ
共同製作総指揮: トレイシー・グリーン
製作: ゾーイ・ヘラー、ジョン・ペパー
監督: スコット・メシック
ホスト: デニ・ベール
出演: グレン・フォスター
内容: 身長133cmの小人グレンの恋人の座を争う勝ち抜きリアリティ・ショウ。
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さすがFOX、やっぱりやってくれたぜと思ったのが、この「ザ・リトルスト・グルーム」だ。元々、下劣愚劣破廉恥系のリアリティ・ショウ製作に関して、FOXの右に出るものはいない。落ち目のセレブリティを戦わせる「セレブリティ・ボクシング」だとか、大食い競争の「グラットン・ボウル」なんて番組を放送しようと考えるのは、少なくともネットワークではFOXだけだ。
しかし、それくらいだと、ただ単に趣味悪いで済むが、昨年放送した「マン vs ビースト」や「バンザイ」あたりになると、ちょっと、これ、やばいんじゃないかというところまで片足突っ込んだりしていた。「マン vs ビースト」では、人間対動物の戦いに侏儒を持ってきて象と勝負させたり、「バンザイ」では老人や身障者が笑いの対象になってたりしていた。たとえ他意はなく、そこで彼らを健常者と区別することこそ差別である、というような正論を持ってこられようとも、この趣味の悪さは特筆ものだ。
そして今、「リトルスト・グルーム」だ。この番組、体裁だけを見れば、流行りの勝ち抜き系の恋人獲得リアリティ・ショウとなんら変わるところがない。それがここまで悪趣味になってしまうのは、主人公の男性が身長4フィート5インチ (133cm) しかないいわゆる侏儒で、その彼に、やはり同様の小人の女性たちが群がって、恋人の座を争うという構図にある。
さすがにこの体裁で番組が成功するのか、FOXも心配だったのだろう、通常ならこの種の番組は最低でも6回連続のシリーズとして編成されることが多いが、「グルーム」は前後篇の2回こっきりで終わる。もし失敗して視聴者から無視された場合や、世論で非難された場合のことを怖れたんだろう。しかし、ここまでやる奴が逃げ腰になってどうする。
とまあ、えれえ悪趣味、マジですか、と思いながら見始めた「グルーム」であるが、最初、なんとなく見てはならないものを見ている罪悪感のようなものを感じていたのだが、実際に番組が始まると、登場人物がわりと明るく前向きなので、そういう気分もそのうち消え去ってしまった。主人公のグレンは4'5"しかないのだが、実は顔だけを見ると、結構ハンサムである。スーツ姿なんて、ごく一般的な日本人よりも様になってるんじゃないか。しかも、一度しかない人生を精一杯楽しもうという気概に溢れた快活な性格で、自分に身長のハンディキャップがあることはわかってはいても、だからといってまるで悲観的ではない。
そのグレンの恋人に立候補するのは、やはり小人の12人の女性たち。こちらも見かけが小さいことをのぞけば、女性同士の間で交わされる会話は、グレンが可愛いのクールだの剽軽だのと、この種の番組にありきたりのもので、特に面白いわけでも、面白くないわけでもない。結局、一瞬、見かけの上でぎょっとするところもないではないが、内容はやっぱりごく普通の、恋人獲得リアリティ・ショウなのだ。彼/彼女らだって当然恋愛もすれば、恋の鞘当てだって演じたりする。なんか、ちょっとまずいんじゃないか、これ、って思ってたりなんかしたこちらの方が、知らず知らずのうちに先入観にとらわれてたんだろう。ちょっと反省する。
とはいえ、こういう人たちをネタにリアリティ・ショウなんか作っちゃってもいいのという考えは、普通のアメリカ人ならやはり持っていたようだ。番組を放送した時に、とあるところの掲示板でこの番組関係の書き込みを読んでいたら、「Midgetなんて呼んじゃいけなくて、Little peopleと言わないといけないんだよね?」なんて発言があったりして、やっぱりこの番組に対する戸惑いは隠せないようであった。なんか、腫れ物に触るような雰囲気があった。
「小人」と一括りにされてしまうけれども、よく見ると彼女らの間にだって身長差はあり、最も高いミカと、最も低いその他の参加者の間では、頭一つ分くらい差があったりする。130cmと100cmの違いは、180cmと150cmの違いより大きな差であるという気がする。それともそうでもないのだろうか。自分の住んでいるのと違う世界というものはよくわからない。しかしリアンはロージー・オドネルそっくりだなあ、ミカはなんだかアイス・スケーターのミシェル・クヮンを思い起こさせる、と、見ているうちにこちらも慣れてきて、段々余裕を持って番組を見ていられるようになってきた。
そして最初の選抜が行われ、12人の侏儒の女性の中から7人が振るい落とされ、5人が残る。なんか中途半端な人数だなあ、12人いるなら、普通12→6→3→2→1といった感じで足切りしていかないか、と思ったら、そこへ新しく3人の女性を足し、計8人となったところで、また新しく恋の鞘当てが演じられるのだ。そしてここでのツイストは、新しく加えられた3人の女性が、身長160cm程度の、小人ではない、ごく一般的な女性であるということだ。いや、もとい、そのボディを見るからに、一般的以上のボディの持ち主が、新たにゲームに加えられたのだ。
やっと番組に慣れてきたと思ったら、いきなり主人公のグレンより頭一つ高いグラマーな女性が3人も出てきて、グレンと一緒にビキニ姿となってジャグジーに浸かっている。にやけるグレン。その光景を見て口を歪める小人の女性たち。なんか、どきどきしてきた。これって、ほとんど犯罪じゃないのか? 危ない、やっぱり危ないよ、この番組。しかし、グラマーたちはやらせじゃなく、本気でグレンのハートを射止めようなんて考えているのか。もしグレンがあんたに向かって結婚してくれなんて言ったら、マジで受ける気あるのか。
こういう展開は、NBCが昨年暮れに編成して人気を博した「アヴェレージ・ジョー (Average Joe)」でもあった。「アヴェレージ・ジョー」は、一人の美女に十何人もの平均以下の容姿の男性が求愛するリアリティ・ショウだ。しかし、番組の最後、たった一人勝ち残った男アダムの前に現れた最後の難関は、どこから見てもいい男がいきなり登場し、その女性がアダムとハンサムな男を較べ、どちらになびくかというものだった。
結局その女性ミレイナは、新顔のハンサム野郎の元に走り、アダムはそこまで勝ち残ってきてとんびに油揚げさらわれるという、本人にとっては泣くに泣けない幕切れで終わった。因みに、哀れだがキャラクターはよかったアダムが可哀想、私ならアダムをほっておかないとする全米の女性からのメイルが、番組終了後NBCに殺到した。これはと見たNBCが、現在、今度はアダムを主人公に、彼の恋人の座を射止める勝ち抜きリアリティ・ショウを放送中である。
とまあ、結局、人は男だろうが女だろうが、やはり見てくれに弱いのだ。中味はともかく、160cmCカップのグラマーと120cmの小人じゃあ、客観的に見て小人の方が分が悪いのは当然だろう。一般的な男性なら、常識的に普通の上背のある3人の女性を選んで、それで終わりに決まっている。しかし選ぶのはやはり小人のグレンであり、もしかしたらそこに常人の思い及ばぬ葛藤や試練、戦術や秘策があるのやも知れぬという思いも頭をよぎる。結局、グレンが何をどう考えて誰を選ぶのかなんて、はっきり言ってまったく予想もできないのだ。
そしてまず、その8人が半分の4人に絞られる。その中に入っていたのは、普通の女性からはゾーイ一人と、小人からはミカ、マキシー、リアンの3人。4人ともグレンが好感を持っているのがはっきりわかったから、ここまではまあ、大した問題もなくスムーズに決まったようだ。普通の女性の中では、最も明るく、性格もよさそうに見えたゾーイを選んだのも、まずは妥当と言える。普通の子一人と小人3人。主人公も小人であることを考えれば、バランスもとれていると言えるだろう。
ここまではいい。ここからが問題だ。今度は、その4人を半分の二人に絞る。果たしてその中にゾーイが入るのか。あるいは結局、小人同士で最後の座を争うことになるのか。そしてグレンの選択は‥‥ミカとゾーイだった。小人と普通の女性との最終対決。これでますます勝負は面白くなってきた。グレンは二人をそれぞれデートに誘う。ゾーイと一緒にヘリコプタに搭乗しての空中飛行。ミカと一緒のオーシャン・クルーズ。さて、グレンのハートはどちらに傾いたか。
しかし考えるに、最後の一人を選ぶクライマックスで、グレンがゾーイを選び、そしてゾーイがノーなんて言っちゃったらどうなるのか。やはり差別なんて言葉が噴出するのだろうか。あるいはゾーイも本気でイエスなんて言っちゃったら、究極のノミの夫婦 (こうなるとこの言葉も差別用語だな) が誕生することになってしまうのか。それで二人はその後幸せに暮らしましたとさ、ハッピリー・エヴァー・アフターなんてお伽噺のような事態が本当に出来するのか。
なんて思っていたのだが、しかし、最後、思わせぶりのグレンが選んだのは、自分より背の低いミカだった (とはいえ、それでもミカは小人の中では最も背が高かったのだが。) 結局、それでめでたしめでたしみたいな感じで終わってしまい、私としてはなんとなく肩透かし。いや、せっかくここまでどきどきさせてくれたんだから、やはりグレンにはゾーイを選んでもらい、ゾーイがなんと答えるかが見たかった。なんて思う私も結構危ない。
