ザ・レイト・レイト・ショウ・ウィズ・クレイグ・ファーガソン   The Late Late Show With Craig Ferguson

放送局: CBS

プレミア放送日: 1/4/2005 (Tue) 0:35-1:35

最終回放送日: 12/20/2014 (Sat) 0:35-1:35

製作: ワールドワイド・パンツ

ホスト: クレイグ・ファーガソン

出演: ジョシュ・ロバート・トンプソン (ジオフ)


内容: クレイグ・ファーガソンがホストの深夜トーク・ショウ「レイト・レイト・ショウ」の最終回。


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The Late Late Show With Craig Ferguson


ザ・レイト・レイト・ショウ・ウィズ・クレイグ・ファーガソン  ★★1/2

デイヴィッド・レターマンが去り、新しくスティーヴン・コルベアがホストに就任する「レイト・ショウ (Late Show)」の話題の陰に隠れてスポット・ライトがあまり当たらないが、その「レイト・ショウ」直後に編成されている深々夜トークの「ザ・レイト・レイト・ショウ」も、このほど、正確にはコルベアがホストのコメディ・セントラルの「コルベア・レポート (Colbert Report)」が最終回を迎えた翌日、現ホストのクレイグ・ファーガソンが担当する最後のエピソードが放送された。


深夜トーク日中トークを含め、アメリカのトーク界でファーガソンの「レイト・レイト・ショウ」ほど癖のあるトークはない。主立った特徴はここに書いたので参照してもらうとして、おかげで「レイト・レイト・ショウ」は、深々夜という時間帯のディスアドヴァンテイジを抜きにしても、これまで特に注目されることはなかった。とはいえその独特のテイストがカルト的なファンを生み出していたのもまた事実で、だからこそ9年もの間、キャンセルされずに番組はずっと続いていた。つまりファーガソンの「レイト・レイト・ショウ」は、深夜トークに独特の位置を占める鬼子的な番組だったと言える。


今気づいたのだが、「コルベア・レポート」も始まったのは「レイト・レイト・ショウ」同様2005年だ。正確には放送が始まった時期は「レイト・レイト・ショウ」が1月、「コルベア・レポート」が10月とほぼ1シーズンのずれはあるが、共に2014年暮れの同じ時期に最終回を迎えた。両番組が裏番組同士だったことはないが、共に結果的に「レイト・ショウ」というアメリカを代表する深夜トークと浅からぬ関係があった、もしくは、なった。単純に見るとコルベアは勝ち組、ファーガソンは負け組と色分けできなくもないが、しかしもちろん事態はそう単純ではない。ファーガソンは、「レイト・レイト・ショウ」をまだ続けようと思えばできたろうからだ。しかしファーガソンは、番組を去る道を選んだ。


その「レイト・レイト・ショウ」の、最後の週のゲストは以下の通り。


12/16 (火): ジョン・ハム、ティム・メドウズ

12/17 (水): ラリー・キング、アンジェラ・キンジー

12/18 (木): ベティ・ホワイト、トマス・レノン

12/19 (金): ジム・パーソンズ

12/20 (土): ジェイ・レノ


トマス・レノンなんてよく知らない業界人の名も見えるが、しかし白眉はやはり最終回に登場するジェイ・レノだ。数年前に多くの深夜トーク・ショウを巻き込んだごたごたで業界で悪役視され、最後までその汚名を挽回することなく「トゥナイト」を去ったレノ、「レイト・ショウ」の最大のライヴァルであった「トゥナイト」のレノが、よりにもよってその「レイト・ショウ」のすぐ後に編成されている「レイト・レイト・ショウ」の最終回のゲストだ。同じ煮え湯を飲まされた者同士の痛み分けジョークというにはあまりにも痛々し過ぎる。ああ、やっぱりファーガソンも心中穏やかじゃなかったんだな。


その最終回、オープニングで初めて、これまでの「レイト・レイト・ショウ」にはなかったバンドが入って、スコットランド (ファーガソンの故郷だ) のバンド、デッド・マン・フォールの「バング・ユア・ドラム」を披露、ファーガソンはデスクの上に立ってヴォーカルをとる。ゴスペル・コーラス隊までいる。さらにそのモンタージュで出てきたセレブリティの数々は「コルベア・レポート」の最終回のそれに匹敵せんとするもので、リージス・フィルビン、クリスティン・ベル、クエンティン・タランティーノ、ジェフ・ダニエルズ、スティーヴ・キャレル、リサ・クドロウ、ジャック・ブラック、ピアース・ブロスナン、ウィリアム・シャトナー、テッド・ダンソン、シャイリーン・ウッドリー、ドン・チードル、レイ・ロマノ、ミラ・クニス、ジミー・キメル、ジュリア・ルイス-ドレイファス、サミュエル・L・ジャクソン、マシュウ・マコノヒーといった面々が曲に合わせてドラムを叩く。それにしても乗りのいい曲なのは確かだが、それでも、たぶん番組視聴者の99%は初めて聴く曲に違いない。こういう本人のオフ・ビートさ加減が最終回まで横溢している。


ゲストとして登場してきたレノは、むろん自分のショウではないからラフな格好で、ファーガソンと二人して、これでいい歳した男が揃って何もやることがないなと不貞腐れてステュディオの観客の笑いを誘う。ちょっと懐古的なレノの話は特に面白いものではなかったが、最後にファーガソンに対して、ゲスト出演を承諾した理由として、あんたはあの時フェアで口撃に加わらなかったから、と正直に言っていた。やはりあの時の針のむしろの経験の痛みは、簡単には癒えないようだ。


そしてラスト、ファーガソンは相棒の骸骨のジオフに対し、最終回でもあるし、いつもいるウマの着ぐるみでダンスしているのが誰か知りたいよなと洩らす。そしてウマの男が頭の部分を脱ぐとその下から現れたのは、ボブ・ニューハートだ。ニューハートはファーガソンに、これは全部夢なんだと告げる。そしてベッドで夢から覚めたファーガソンは、隣りに寝ていたドリュウ・キャリーを起こし、ヘンな夢を見た、10年間も深夜トークのホストをしていた、あんたも痩せてゲーム・ショウのホストをしていたと告げるのだった。キャリーはファーガソンに、あんたは食い放題でカニを食い過ぎたんだよと言い、二人はまたベッドに潜り込んで番組は幕となる。


キャリーとファーガソンは、シットコムの「ザ・ドリュウ・キャリー・ショウ (The Drew Carey Show)」で共演した仲だ。実際にキャリーは今では肥満体型から激痩せしてゲーム・ショウの「プライス・イズ・ライト (Price Is Right)」ホストを担当している。また、このスキット自体は、ニューハート主演で1972年から6シーズン続いたシットコム「ザ・ボブ・ニューハート・ショウ (The Bob Newhart Show)」の最終回、それまで6年間かけてやってきたことがすべて夢だったという、奇想天外言語道断の夢オチを拝借したものだ。「ニューハート・ショウ」のシリーズ夢オチはクラシック・エピソードとしてアメリカのTV好きなら誰でも知っており、今でも最も印象に残ったTVフィナーレみたいな企画があると、必ず上位に入る。


この項は最終回が放送されて年が明けてから書いており、「レイト・レイト・ショウ」は3月に新正ホストのジェイムズ・コーデンが就任するまで、現在は臨時ホストが入れ替わり立ち替わりで凌いでいる。いずれにしてもこれで今年は「レイト・ショウ」のホスト交代以外は特に大きなドラマはあるまいと思っていた矢先、ジョン・スチュワートがコメディ・セントラルの「ザ・デイリー・ショウ (The Daily Show)」を今季限りで去ると発表した。


こいつはこれまたびっくりした。コルベアの「コルベア・レポート」の生みの親である「デイリー・ショウ」のスチュワートまで辞めるか。もしかしたらスチュワートまで「レイト・ショウ」の後釜を狙っていて、それが叶わなかったから嫌気が差したとか下衆の勘ぐりをしたくもなるが、スチュワートはコルベアの「レイト・ショウ」ホスト就任を本気で喜んでいるように見えたから、そういうこともあるまい。一昨年は映画初監督作の演出のために一と月ほど休業してもいる。ここは新たなキャリアの道を模索していると見るのが本当だろう。本当だとは思うが、しかし、深夜トーク界って何が起こっても不思議じゃないなと思うのだった。











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