放送局: ABC
プレミア放送日: 3/14/2001 (Wed) 21:30-22:00
製作: アポストル、クラウドランド・カンパニー、ドリームワークス・ドラマティック・テレヴィジョン、タッチストーン・テレヴィジョン・プロダクションズ
製作総指揮: デニス・リアリー、ピーター・トラン、ロレーン・コラオ、ジム・セルピコ
製作: ダフネ・ポロン
監督: ディーン・パリゾット
脚本: デニス・リアリー、ピーター・トラン
撮影: ジョン・トーマス
音楽: クリストファー・ティング
美術: マイケル・ショウ
出演: デニス・リアリー (マイク・マクニール)、レニー・クラーク (フランク・ハリガン)、ダイアン・ファー (ジャン・フェンドリク)、アダム・フェラーラ (トミー・マネッティ)、ビル・ナン (テレンス“ピップ”フィリップス)、ジョン・オルティス (ルーベン・ソマリバ)、ジュリアン・アコスタ (アル)、キース・デイヴィッド (ウィリアムス警部)、ウェンディ・マッケナ (カレン・マクニール)、キャリン・パーソンズ (トニ)、エリザベス・ハーリー (本人)、ドナルド・トランプ (本人)
物語: NYPD (ニューヨーク市警) で働くマクニールの元に、女優のエリザベス・ハーリーから彼女の部屋の前に血まみれになった人形が置かれていたという通報が入る。マクニールは何かの脅迫ではないかと心配するハーリー宅におっとり刀で駆けつけるが、そこには既にマクニールの同僚がハーリーを一目見ようと先に到着しており、我こそは担当の刑事ですと先を争って自己紹介している真っ最中であった。その後署に戻ったマクニールにハーリーから電話が入り、ディナーを誘われる。
翌朝、食事の後、帰りがけにハーリーがマクニールにキスをしたシーンがデイリー・ニューズにすっぱ抜かれ、マクニールは新聞を隠そうとするが、既に妻のカレンは知っていた。自分の夫がハーリーとつき合える器ではないと思っているカレンは、親類知人の分を含めてマクニールにハーリーのサインを頼むが、マクニールが結構本気であることを知った途端逆上する。マクニールの不倫相手のトニも同様で、その上ハーリーは、人形の嫌がらせをしたのがボーイ・フレンドの女友達だとわかった途端、相手がわかったことで安心してマイクにつれなくなり、マクニールは家庭でも浮気先でも居場所を失った挙げ句、署内の簡易ベッドで一夜を明かす羽目になるのだった。
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「ザ・ジョブ」は最近僅かずつではあるが確実に製作されるようになってきた、シングル・カメラ撮影の - つまりスタジオ収録でなく、観客の笑い声 (ラフ・トラック) が入らない - シットコムである。私はあの観客の笑い声は、なんか笑いを強制されているようでまったく好きになれないので、それほどシットコムは見ない。スタジオにいる観客と一緒になって楽しむというのがラフ・トラックを入れる理由だとしたら、深夜のトーク・ショウみたいに番組中に観客を撮ったシーンも入れるのが筋というものだ。それをしないでただラフ・トラックを入れるだけの安易としか見えない製作態度には、私はまったく賛同できない。
それが一昨年の「アクション」、昨年の「マルコム・イン・ザ・ミドル」あたりから、事情が少しずつ変わりつつある。「アクション」、「マルコム」、共にシングル・カメラ撮影、ラフ・トラックなしのシットコムであり、「アクション」は残念ながら既にキャンセルされてしまったが、「マルコム」は、現在最もティーンエイジャーに人気のあるシットコムとなっている。そして今、この「ザ・ジョブ」だ。
「ザ・ジョブ」はNY市警 (NYPD) に勤める、自分だけがまともだと思っている刑事、マクニールが主人公である。NYPDと聞くと誰もが思い浮かべる「NYPDブルー」も同じABCで放送されているということもあり、「NYPDブルー」の専売特許となった揺れるカメラやズーム・イン、ズーム・アウトの撮影手法を、そのまま真似ているのがまずおかしい。あのシリアスな技法を用いて、マジな顔でシットコムを撮るわけだ。所々やり過ぎに見えるところもないではないのだが、結構効果的に使われている。
マクニールに扮するデニス・リアリーは、オフ・ブロードウェイのスタンダップ・コメディ「ノー・キュア・フォー・キャンサー (No Cure for Cancer)」で名を売ったコメディアンである。「ノー・キュア・フォー・キャンサー」はその後TV番組としてHBOで放送され、CDになり、本になってミュージック・ヴィデオ化されるなどのヒットとなった。リアリーはその後「サイレントナイト」で一躍人気を決定づけ、「トゥルー・クライム」、「トーマス・クラウン・アフェアー」、「ワグ・ザ・ドッグ」にも出演、「バグズ・ライフ」では声優も担当するなど、幅広く活躍している。製作のアポストルはリアリーと、パートナーのテッド・デミが共同で興した番組製作会社であり、つい先日、デミが監督したジョニー・デップ主演の映画「ブロウ (Blow)」が公開されたばかりである。
マクニールはいかにもニューヨークの刑事らしく? 妻以外に囲っている女性もあり、職場、家庭、愛人の元を忙しく往復する毎日である。いつ事件を解決してんだか。妻のカレンに扮するのはウェンディ・マッケナ。昔の可愛らしい女性といった印象から、最近では「ハピネス」を経て、今回は皮肉っぽいニューヨーカーに様変わりしているが、なかなか様になっている。わりと得難いバイ・プレイヤーに成長したようで、この先が楽しみだ。
マクニールのパートナー、ピップに扮するのは、「ドゥ・ザ・ライト・シング」のビル・ナン。同僚のフランクに扮するのは「ジョン・ラロクエット・ショウ (John Larroquette Show)」のレニー・クラーク。職場での紅一点、ジャンに扮するのが、ダイアン・ファー。どこかで見た顔だと思っていたら、MTVのセックス相談番組「ラヴライン (Loveline)」のホストをしていた女性だった。また、リアリーの人脈を活かしたニューヨークらしいゲストが多数出演するのも番組の特徴で、私が見た回ではエリザベス・ハーリーと、なんと不動産王ドナルド・トランプが共に本人として出演していた。
実は私は最近ほとんどシットコムを見てなく、今回久し振りに見たのであるが、結構笑ってしまった。1時間のオフ・ビート・コメディと題されているFOXの「ザ・ローン・ガンメン」よりも、こちらの方が断然笑える。特に間の取り方が絶妙である。つまり、爆笑というよりは思わずにやり、とかムフフ、とかいう感じの笑いなのだが、それでも久し振りにTVを見て続け様に笑ってしまった。「NYPDブルー」真っ青の罵声語が飛び出すところなんて、もうちょっと派手にやったらネットワークでは放送不可能だったと思われる。
これはアメリカのシットコムでなく、日本のヴァラエティ・ショウを見ている時に気づいたことだが、異なった回を見ている時でも、同じ人間の笑い声が聞こえてくることがある。多分スタッフの誰かか笑い屋さんとでもいうようなやつが、タイミングを見計らって笑い声を入れているのだろう。真っ先に同じ人の笑い声が聞こえるし、それもまったく楽しそうな笑い声じゃなく、義務で笑っているというのがありありの声なのだ。そういうのを聞くと、本当にやめてくれと思う。アメリカ製のシットコムでも時々あるが、ここは絶対に誰も笑ってないに違いないと賭けてもいいとすら思えるつまらない場面で笑い声が聞こえたりすると、逆に思いっきり引いてしまう。
だから私はラフ・トラックは嫌いだが、あれはあれで存在価値があるというのもわからないではない。一昔前の「コスビー・ショウ (The Cosby Show)」とか「ホーム・インプルーヴメント (Home Improvement)」、「ロザンヌ (Roseanne)」等の家族を対象にした人気シットコムでは、確かにラフ・トラックの派手な爆笑のおかげで、ただでさえおかしなシーンがもっと笑えるものになったような気がする。だから将来のシットコムがすべてラフ・トラックなしになるということはまずないだろう。
しかし、現代の、とりわけ若い層を対象にしたようなシットコムでは、もうラフ・トラックに固執する必要はないのではないか。「となりのサインフェルド」のあの意味なしユーモアは、ラフ・トラックなしでも全然問題ない、というか、ラフ・トラックなしの方がずっと効果的だったと思う。要は適材適所、両者共存が将来の理想だ。しかし、とにかく今はシングル・カメラ撮影のシットコム (それはもうシットコムではなくてコメディだが) の数をどんどん増やしていってもらいたいと、切に願う次第。
