ザ・ジェイン・ポーリー・ショウ

放送局: シンジケーション (ニューヨークではNBC)

プレミア放送日: 8/30/2004 (Mon) 11:00-12:00

製作: NBCステュディオス

製作総指揮: マイケル・ワイスマン

監督: アンディ・バーシュ

ホスト: ジェイン・ポーリー


ザ・トニー・ダンザ・ショウ

放送局: シンジケーション (ニューヨークではABC)

プレミア放送日: 9/13/2004 (Mon) 10:00-11:00

製作: レッドマン・プロダクションズ、ケイティ・フェイス・プロダクションズ、ブエナ・ヴィスタTV

製作総指揮: ジョン・レッドマン

監督: バリー・グレイザー

ホスト: トニー・ダンザ

アナウンサー: エリカ・ヴィトリーニ


内容: 日中の新トーク・ショウ2種。


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日中、あるいは深夜のネットワークの空き時間帯に編成されるシンジケーション番組には、クイズ番組、擬似法廷番組、SFドラマ、再放送シットコム等の定番番組があるが、なんといってもその筆頭に挙げられるのはトーク・ショウだ。視聴率だけで言えば、「ジェパディ」、「ホイール・オブ・フォーチュン」に代表されるクイズ番組の方が高い成績を収めているのだが、数から言えば、やはりトーク・ショウに勝る番組はない。


そのためこの時期になると、毎年毎年新しいトーク・ショウが大量に投入される。昨年も「エレン・デジェネレス・ショウ」、「シャロン・オズボーン・ショウ」等のなかなか注目される番組が現れ、残念ながら「シャロン」の方は既にキャンセルされてしまったが、「エレン」は今では日中のトーク・ショウを代表する番組の一つに成長した。


もちろん話をトークに限れば、アメリカを代表するトーク・ショウと言えば、誰でも即座に思い浮かべるのはオプラ・ウィンフリーがホストの「オプラ」、そして、その「オプラ」出身のドクター・フィルがホストの「ドクター・フィル」が双璧だ。あとのトーク・ショウは、視聴率ではすべてこの2本の半分にも及ばない。


そういった状況下で今年新しく登場したシンジケーションのトーク・ショウには、ラジオ・パーソナリティのラリー・エルダーがホストの「ラリー・エルダー」、ニューヨークでは日中ではなく深夜に編成されている、複数の女性ホストによる女性視聴者層専門の「ライフ&スタイル」、あるいは、スタジオに観客を集める従来のトーク・ショウとは異なるけれども、元スポーツ・セラピストで起業家というパット・クロスが出張人生相談みたいなことを行う「パット・クロス・ムーヴィング・イン」等がある。


これらの番組が実際に始まるまでは、私の印象では、元NBCのパーソナリティ、ジェイン・ポーリーがホストを務める「ザ・ジェイン・ポーリー・ショウ」が最も成功しそうなトーク・ショウに思えた。アメリカで朝のトーク/ヴァラエティとして最大の人気を誇る「トゥデイ」、そしてニューズ・マガジンとして定評のあるプライムタイムの「デイトライン」のアンカーを歴任し、知名度だけでなく好感度でも抜群のポーリーによる「ポーリー」は、実際、マスコミの注目度も高かった。


ところが実際に番組が始まると、「ポーリー」の様子は、どうもあまり芳しくない。番組はポーリーが、一市民という視点から様々な話題を俎上に乗せ、追跡し、話を訊き、討論するというごく一般的なトークのスタイルを踏襲しており、視聴者がポーリーに対して抱いているイメージそのままの、気どらない、気さくなポーリーの姿を見せ、その点では別に文句をつける筋合いはない。問題は、そういう番組の作り方が、既にオプラ・ウィンフリーが「オプラ」でやっていることとなんら変わるところがないということにある。しかも、だったら、やはり番組としては「オプラ」の方が面白いのだ。


アメリカ一稼ぐ人気パーソナリティのオプラであるが、その「オプラ」の人気の秘密は、こういっちゃなんだが、まるっきり芸能界の人間には見えない、ただのふつーのデブ (近年努力して痩せたがまた元に戻りつつあるみたいだ) の黒人おばさんであるオプラが、完全に一般視聴者やスタジオの一般参加者と同化して泣いたり怒ったりするところにある。実際には我々の何万倍も金持ちであろうとも、オプラの目線は我々視聴者と同じであり、だから彼女の意見は通常、我々の意見と同じであり、そこには押しつけがましさはなく、視聴者は素直にオプラの言うことに耳を傾ける。オプラの人気の理由はそこにあるのだ。


一方、ポーリーは昔から懐の深いキャラクターという感じで、人の話に耳を傾けようとする姿勢は確かに悪くなく、育ちのよさが窺えるが、しかし、話に耳を傾けるのではなく、ほとんど話し手に同化して涙を流すオプラの方が、たぶん視聴者にはもっとアピールするだろう。それが番組の人気の差となって現れるのだ。また、かなり年季の入ったジャーナリスト/インタヴュアーとしての自負もあるであろうポーリーの場合、たぶん話題や内容が「ジェリー・スプリンガー」並みに下世話になって、ただ受けに走るのにも耐えられまい。そんなこんなで、現在「ポーリー」は特にいい視聴率を獲得しているわけではない。「ポーリー」の事前の注目度を考えれば、それよりも新トーク・ショウとしては、「トニー・ダンザ・ショウ」の方がよほど健闘していると言える。


ダンザはそれほど日本人には馴染みのある名前ではないかもしれないが、アメリカでは、クラシック・シットコムの「タクシー (Taxi)」、およびアリッサ・ミラノをスターダムに押し上げた「フーズ・ザ・ボス (Who's the Boss)」という過去人気のあった2本のシットコムによって、広く知られている俳優だ。というか、実は私はこの2本以外ではほとんどダンザを見たことはない。IMDBをチェックすると、他にもこんなにいっぱい出ていたのかとびっくりするくらい出演作があるのだが、それでも、たぶんアメリカ人ですら、「タクシー」と「フーズ・ザ・ボス」以外ではほとんどダンザは知らないと思う。


ダンザは両シットコムにおいて気のいい人間といった役どころを演じているのだが、当然、その印象がアメリカ人がダンザに対して持っている印象でもある。元々ニューヨークのブルックリンの下町で育ったというダンザは、気軽にいつも相談にのってくれる隣りの気のいい兄貴みたいな印象を濃厚に持っている。その上彼は、1951年生まれだから既に53歳なのだが、非常に若く見える。童顔というのとちょっと違い、万年青年といった感じなのだが、そりゃあ昔に較べれば多少は歳をとったとはいえ、20年以上も前の番組である「タクシー」の頃から驚くくらい印象が変わっていない。


その、俳優とはいえ、ちょいとシャイな感じで、特に喋りが得意なようにも見えないダンザがわざわざトーク・ショウのホストに起用されたのは、つまり、喋りのテクニックというよりも、そういう、彼が持っている雰囲気、イメージが買われたためだろう。特にプレミア・エピソードでは、実際に番組が始まると、いつもとは勝手が違う、しかも生放送の番組ということで、緊張しているのがはっきりと見てとれる (「ポーリー」の方は、スタジオに客を入れての公開番組ではあるが、生放送ではない。) その導入部は、最初、ストリート上でゴミ収集車に同乗した (というよりは、ゴミ収集員が車の横でステップの上に立ち、バーにつかまったまま移動するという、あのいわゆる名物的なスタイルで) ダンザがスタジオの裏口に乗りつけるというオープニングで、これは実際にダンザの父がニューヨーク・シティのゴミ収集員であったという、よく世間に流布している事実を踏まえている。


そして裏口からスタジオ入りしたダンザを観客が迎え、アナウンサーとしてダンザを紹介する彼女は、なんとまあエリカじゃないか。途中でクビになった (番組から追放された) とはいえ、今年最大の人気となったNBCの仕事獲得勝ち抜きリアリティ・ショウ「ジ・アプレンティス (The Apprentice)」で、最も可愛く性格もいいと評判だったあのエリカ・ヴィトリーニが、アナウンサーという役どころで「ダンザ」で新しい職を得ている。彼女は実際顔と性格だけでなく仕事もできそうだったから、番組から追放されたとはいえ絶対どこかから口がかかるに違いないとは思っていたが、こんなところで職を見つけたか。ちょっと印象が元五輪水泳選手のサマー・サンダースに似ている。彼女も可愛い上に性格がよさそうだった。


因みにダンザは、初対面同士でもファースト・ネイムで呼び合うのがほとんど慣例となっているアメリカにおいて、こっちの方がいいと、ファミリー・ネイムのヴィトリーニでエリカのことを呼んでいる。「アプレンティス」ではエリカとしか呼ばれておらず、こちらもそれに慣れきっていたから、最初、すごく違和感を覚えてしまった。ダンザとヴィトリーニというファミリー・ネイムは両方共イタリア系という感じがするが、あの辺では一般的にファミリー・ネイムを使って呼び合うのだろうか。それとも慣れ合いを嫌ったか。


どちらかというと時事/社会テーマが主流の「ポーリー」に較べ、「ダンザ」はゲストをスタジオに招いておしゃべりする、本当の意味でのトーク・ショウに体裁が近い。そのため、毎回セレブリティ的なゲストが登場する。プレミア・エピソードでゲストとして招かれたのは、既に日中トークのホストとしては重鎮のリージス・フィルビンと、ダンザの旧友ライザ・ミネリだ。特にライザは、昨年、デイヴィッド・ゲストとの結婚離婚痴話喧嘩から訴訟まで、また性懲りもなく一通りおさらいしてしまい、あんなにメディアに私生活を暴露されて普通なら心労から痩せそうなものを、彼女、ストレスが溜まると食べてしまうタイプのようで、また一層横幅に迫力が出てきた。「ライフ・ウィズ・ジュディ・ガーランド」を見る限りお母さんもそうだったようだから、本人もどうしようもないのだろう。


おかげでライザ、全米生放送の番組だというのに、着ているものは普段着っぽいTシャツをパンツの上に垂らしただけで、やっぱりあんなにぶくぶくになっちまうと着るものにお洒落する気にもならないんだろう。最後には得意の「ニューヨーク・ニューヨーク」を歌ったのだが、自分の今の状況が本意ではないのは身に染みて感じているようで、歌い終わった後に感極まってダンザの胸にもたれて泣き出してしまった。彼女もいろいろと大変だよなあ。いずれにしても、おかげで彼女の印象の方が強烈で、ダンザのトーク・ショウのプレミア・エピソードだというのに、番組を見た後覚えているのはライザの方ばかりだ。


さて、現時点ではこういう話題を提供している「トニー・ダンザ」と「ジェイン・ポーリー」が、今年始まったシンジケーションのトーク・ショウでは頭一つ抜け出た存在だ。とはいえ飽きっぽい視聴者のことである、つまらないと思ったらすぐに見なくなるに違いない。現段階では「ポーリー」と「ダンザ」では「ポーリー」がまだリードしているが、油断はできまい。第一その「ポーリー」ですら、「オプラ」と較べたら全然まだまだ足元にも及ばないのだ。とはいえ私の意見では、地力のある「ポーリー」がこのままの次元に甘んじているわけがなく、じりじりと成績は上向きになっていくのではと思うのだが、それも番組がキャンセルされなければの話である。番組ホストも楽じゃない。






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