放送局: FOX

プレミア放送日: 6/8/2005 (Wed) 21:00-22:00

製作: イマジンTV、20世紀FOXTV

製作総指揮: ブライアン・グレイザー、デイヴィッド・ネヴィンス、ティム・ミニアー

共同製作総指揮: ジェイン・エスペンソン

製作: ギャレス・デイヴィーズ

監督: ティム・ミニアー

脚本: ティム・ミニアー

ストーリー: ティム・ミニアー、ハワード・ゴードン

撮影: ロス・ベリーマン

美術: ヴィクトリア・ポール

衣装: ミミ・メルガード

編集: ケヴィン・ロス

音楽: ロバート・クロール

出演: レイチェル・ニコルズ (レベッカ・ロック)、アダム・ボールドウィン (デニー・ラヴ)、ケイティ・フィネラン (メロディ・シム)、ネルサン・エリス (カーター・ハワード)、ジェイ・ハリントン (ポール・ライアン)、ピーター・コヨーテ (ヴァージル・ウェブスター)


物語: 廃屋で惨殺された死体が発見される。連続殺人犯の新しい被害者となったその女性は、犯人を追っているFBIの凶悪犯罪ユニット (Violent Crime Unit: VCU) のエージェントの一人、アルヴァレスだった。彼女の代わりとして、VCUにレベッカがプロファイラーとして配属される。しかし彼女の過去の記録は、FBIのファイルから抹消されていた。レベッカは着任早々アルヴァレスの死体を検分し、犯人がアルヴァレスの顔の皮膚を剥いだのではなく、アルヴァレス自身がそれをやったことを見抜く。犯人は躁鬱のアルヴァレスに薬を与えないことで、人格を破壊したのだ。レベッカとポールは、犯人が次の獲物を手中にしている可能性が高いことを憂えるが、その悪い予感は的中していた‥‥


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「X-ファイルズ」以来、FOXはかなり高い頻度で超常現象、異常犯罪者を扱う、SFテイストの横溢する番組を放送している。今春の「ポイント・プレザント (Point Pleasant)」もそうだったし、2003-04年シーズンの「トゥルー・コーリング (Tru Calling)」等、一時これでもかとばかりにSF番組ばかりを編成していたUPNと共に、超常ドラマならFOXという印象はかなり強い。「ワンダーフォールズ (Wonderfalls)」のような超常コメディすらあった。


というわけで私は、「ジ・インサイド」も当然その系列の番組だろうとばかり思っていた。FOXのドラマだし、5月いっぱいよく見た番宣では、ダークな雰囲気で、いかにも「X-ファイルズ」的な印象を受けたのだが、実際番組を見てみると、別に超常現象が絡むわけではない、ごくシリアスなFBIものであった。流行りの残酷なシリアル・キラーとかそういうのはもちろん登場するが、異界からの使者だとかエイリアンだとか超能力が登場するわけではない。どちらかというとCBSの「CSI」に近いと言えるかもしれない。


とはいえ「インサイド」が「CSI」や「コールド・ケース」等のCBS番組と異なっているのは、まずなんといっても主人公が若いということにある。本当にこういう若いねーちゃんがFBIのエージェントだったりしたら、なめられて仕事にならないだろうと思うが、そこはフィクションだし、若い視聴者の多いFOXのこと、主人公のレベッカはFBIのトレーニングを終えたばかりという設定にして、若いことに理由をつけている。


レベッカは才能のあるプロファイラーであり、経験のなさをその直感と洞察力でカヴァーしている。ヴェテランの同僚が見逃していた些細な事柄を彼女だけが気づくというのはいくらなんでもありえないと思うのだが、番組を見ている時はとんとん拍子に話が進んでいくため、あまりそういう違和感を感じる暇もなかった。むしろレベッカが死体を一と目見て見逃されていた事実を指摘するのが、うーん、まるで笠井潔の描くヤブキ・カケルみたいな奴だな、これが直感を重視する現象学的推理というやつかと、それなりに楽しめる。


実はレベッカは、彼女自身、幼い時に誘拐されて長いこと行方が知れなかったという過去を持っており、それがどうやら彼女の現在の特殊な能力の獲得に関係しているらしい。そういう環境では、一瞬一瞬の自分の立場を正確に把握することが生死を分けるだろうから、そういう子供時代がプロファイラーに必要な直感と推理力を養ったのだろう。それにしてもこいつがいたら、ほとんどCSIなんていらないな。


レベッカを演じるのが、「ジ・アミティヴィル・ホラー (The Amityville Horror)」のレイチェル・ニコルズ。アングルによってはちょっと下ぶくれに見える顔で、特に美人だとは思わないが、なんか「ポイント・プレザント」に主演していたエリザベス・ハーノイスに印象が似ている。要するにこの手の顔が最近の流行りの顔ということなんだろう。


そのレベッカをリクルートしてきたのVCUのチーフ、ヴァージルを演じるのが、ピーター・コヨーテ。彼は昨年、ケーブルで最もヒットしたUSAの「4400」でも同様の、非情なタイプのボスを演じていた。今年のシーズン2ではいきなりいなくなったなと思っていたら、要するに「インサイド」出演が決まっていたから「4400」のシーズン2には出られなかったんだな。いずれにしてもこの手のボス役というのが最近定着している。


別にとりたてて貶す理由もなく、実際、ある程度面白いとさえ言える「インサイド」であるが、これまた「トゥルー・コーリング」や「ポイント・プレザント」同様、視聴率は特に芳しいわけでもなく、どちらかというと苦戦している。実は私は、「トゥルー」や「プレザント」もなかなか面白いと思っていたのだが、ヒットしなかった。特に「プレザント」の方は、惨敗に近い成績ですぐにキャンセルされた。これでFOXが編成するこの手のドラマは、それなりに見所がないわけではないのにもかかわらず、あまり視聴者がつかないという点で連続している。「X-ファイルズ」の呪いだろうか。


既に発表になったFOXの今秋の編成を見ると、やはり「ボーンズ (Bones)」とか「リユニオン (Reunion)」なんて、この系統の番組がちゃんと入っている。ま、「リユニオン」の方はいつものFOX系というよりも、登場人物の過去が謎をはらんでいる群像劇というところが、どちらかというとABCの「ロスト」や「デスパレイト・ハウスワイヴズ」の方に近いという印象を受けるが、今秋の新番組は、昨年の大ヒットであるこの2番組の影響を受けていない番組はほとんどないから、その辺はしょうがあるまい。果たして今度こそFOXが「X-ファイルズ」の後釜を構築することができるだろうか。






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ジ・インサイド   ★★1/2

 
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