The Get Down   ゲットダウン

提供: ネットフリックス   Netflix

プレミア提供日: 8/12/2016 (Fri)

製作: バズマーク・フィルムズ、ソニー・ピクチャーズTV

製作総指揮、脚本、監督: バズ・ラーマン

出演: ジャスティス・スミス (エゼキエル (ズィーク))、シャミーク・ムーア (シャオリン・ファンタスティック)、ヘリゼン・グアルディオラ (マイリーン・クルス)、スカイラン・ブルックス (ラ-ラ・キプリング)、トレメイン・ブラウンJr. (ブー-ブー・キプリング)、ジミー・スミッツ (パパ・フィエンテ)、ジェイデン・スミス (ディジー・キプリング)、ジャンカルロ・エスポジト (ラモン・クルス)


物語: 1977年ニューヨーク、ブロンクス。シャイなティーンエイジャーのズィークは、クラスメイトのマイリーンに恋していた。マイリーンは歌がうまく、将来シンガーになることを夢見ていたが、教会の牧師の娘であるマイリーンに、父のラモンは厳しかった。マイリーンと彼女の友人たちはある夜、家を抜け出してナイトクラブに行く計画を立てていた。マイリーンによい印象を与えようと考えたズィークは、彼女の好きな歌のレアなレコードを手に入れようとする。しかし地元では知られたグラフィック・アーティストのシャオリンも、そのレコードを狙っていた。間一髪でレコードを手に入れたズィークだが、その夜クラブに入れず悶々としていたところ、シャオリンが現れ、後でレコードを渡すことを条件に、顔利きでクラブに入れてくれる。しかしその夜クラブはギャング団に襲撃され、命からがらマイリーンと共に逃げだしたズィークはマイリーンに告白するものの、結局想いは叶うことはなかった。泣き崩れるズィークをシャオリンはパーティに連れて行き、そこでレコードを使った新テクニックのゲットダウンを見せられる。シャオリンのダンスとズィークのラップは周りを驚嘆させ、二人はチームを組む‥‥


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The Get Down


ゲットダウン  ★★1/2

「ザ・ゲットダウン」は、ストリーミング・サーヴィスのネットフリックスによるオリジナル・コンテンツだ。ネットフリックスは日本にも進出を果たし、オリジナル・コンテンツはだいたいほぼ世界同時配信となる。「ゲットダウン」も同様で、アメリカと同時に日本でも配信が始まった。


このサイトのTV関係は、たぶん日本にいるとわからないだろうと思われる番組について書くことを主眼にしている。それで日本でもアメリカと同時に視聴できる番組/コンテンツについてわざわざ書くのは躊躇われたが、しかし、「ゲットダウン」は、バズ・ラーマン作品なのだ。ラーマンが、1970年代ニューヨークのブロンクスを舞台に、ヒップ・ホップ音楽の黎明期を描くミュージック・ドラマが、「ゲットダウン」なのだ。これはそそられる。というわけで、ここは自分の嗜好を優先して、「ゲットダウン」だ。


ラーマンは、「オーストラリア (Australia)」をほぼ唯一の例外として、基本的に音楽と密接に関係する作品を撮り続けている。「華麗なるギャツビー (The Great Gatsby)」も、いかにもラーマン的な音楽の使い方をしていたし、ブロードウェイで「ラ・ボエーム (La Boheme)」を演出したこともある。ラーマン作品から音楽を切りとってしまったら、やっぱりなんかもの足りないと思うのは必至だ。


一方で、実は「ゲットダウン」は、期待したほど音楽が前面に出ているわけではない。番組のテーマそのものがヒップ・ホップなんだから、もっと思い切り音楽を使えばいいと思うのに、実は音楽が使われる頻度は、「華麗なるギャツビー」にちょっと毛が生えたくらいという印象だ。ただし、これは番組第一回を見ただけで書いているので、今度主人公のズィークとシャオリンが業界に旋風を巻き起こす展開になると、もっと音楽が絡んでくるんだろう。


実は「ゲットダウン」で最も印象的なのは、音楽の使い方ではなく、その製作規模にある。バック・グラウンドを描く、その念の入れ方だ。時代は1970年代後半のサウス・ブロンクス。これからちょっと下がった1981年は、ニューヨークで最も凶悪な事件が多かった、「ア・モスト・ヴァイオレント・イヤー (A Most Violent Year)」(「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」) になる。あるいは、やはり1981年公開の「アパッチ砦・ブロンクス(Fort Apache, The Bronx)」なんてのもあった。


要するにニューヨークが最も荒れていた時代の、最も荒涼とした雰囲気を持つ町だったブロンクスが舞台だ。それを忠実に再現しようとしている。ブロンクスの一ブロックがいかにもという感じで描かれ、ロング・ショットや俯瞰も多い。さすがにこれだけの規模で撮影しようとなると、現地ロケも大変だろうし、CGでごまかすにも限界があるだろう。とするとたぶん、どこかのスタジオで多くはセットを組んで撮影していると思うが、素人目でも、この撮影は金がかかっているというのがありありだ。たぶんそこらのSF作品なんかよりよほど金を注ぎ込んでいると思う。金に糸目をつけずに製作しているネットフリックスだからこそできることだ。


実際、こないだ業界関連のウェブ・サイトを見ていたら、「ゲットダウン」の製作費は一エピソード1,000万ドルという記事が出ていた。日本の大作映画の製作費並みだ。「ゲットダウン」の視聴者数がどれくらいいるのかは、ネットフリックスは視聴者数を公表しないので想像のしようもないが、巷で話題になっている頻度の皮膚感覚から察するに、これがネットワークで放送されていたらすぐさまキャンセルを示唆されたであろう程度であるのは、ほぼ間違いなかろうと思う。


「ゲットダウン」は、もちろんネットフリックス得意の一括全話提供で、一度に全話見るヴィンジ視聴の機会を与えられている。とはいえ、さすがに私は12話一挙に見る気にならずにプレミア・エピソードだけ見たわけだが、それでも1時間半だ。もうちっと話が進むペースを速めてもいいぞ。











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