放送局: HBO

プレミア放送日: 4/27/2002 (Sat) 20:00-22:00

製作: スコット・フリー・プロダクション

製作総指揮: リドリー・スコット、トニー・スコット

共同製作総指揮: ジュリー・ペイン、リサ・エルジー

製作: フランク・ドールガー、デイヴィッド・トンプソン

共同製作: スー・バーガー

監督: リチャード・ロンクレイン

脚本: ヒュー・ホワイトモア

撮影: ピーター・ハナン

編集: ジム・クラーク

音楽: ハワード・グッドオール

美術: ルチアナ・アレジ

出演: アルバート・フィニー (ウィンストン・チャーチル)、ヴァネッサ・レッドグレイヴ (クレメンタイン・チャーチル)、ジム・ブロードベント (デズモンド・モートン)、ライナス・ローチ (レイフ・ウィグラム)、リナ・ヘッディ (エヴァ・ボールドウィン)、デレク・ジャコビ (スタンリー・ボールドウィン)、トム・ウィルキンソン (ロバート・ヴァンシッタート)、ロニー・バーカー (デイヴィッド・インチス)、トム・ヒデルストン (ランドルフ)


物語: 1930年代、ヨーロッパは台頭するナチス・ドイツに戦々恐々としたものを感じながらも、平和を信じる気持ちと嫌なものから目を背ける気持ちのために、それを半ば見て見ぬ振りをしていた。イギリスにおいてもそれは同じであり、時の首相ボールドウィンは平和外交の道を進んでいた。一方、既に政治家としては下り坂で、引退の道も遠からずと見られていたチャーチルは、外務省にレイフという知己を得、外部秘の国外情報を手にする機会を得る。平和ボケしている議会を相手に、チャーチルはドイツが軍備を増強していることを事ある毎に唱え、徐々に議会と人民の注目を集めるようになる。一方、癖の強いチャーチルは私生活に戻っても傍若無人に振る舞うため、長年連れ添ってきた妻のクレミーをこよなく愛してはいるが、二人の間には小さな諍いが絶えることはなかった。そういう時、チャーチルの情報元であったレイフが周りのプレッシャーに押し潰され、死亡するという事件が起きる‥‥


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実は正直言って、私はチャーチルがあまり好きではない。なんとなればいまだにいざこざが絶えないイスラエル/パレスチナの中東紛争の、そもそもの、とは言わないが、少なくとも戦後、問題をこじらせた元凶は彼にあると思うからだ。チャーチルが二枚舌外交を使ってパレスチナにもイスラエルにもおいしいえさをちらつかせ、ヘンに手出しをしなければいいものを勝手にかの地にイスラエルなんて国を建国させちまったがために、今のこの、血で血を洗う流血沙汰はどうだ。


もちろん私はユダヤ人にかの地を去れと言っているのではなく、他人の家の争い事に首を突っ込んでしまったがために、よけい事態をこじらせる必要なぞなかったと言いたいのである。現在アメリカが世界中の発展途上国でやっていることも似たようなものだとは思うが、有史上最も根の深いいがみ合いであるパレスチナ紛争を、さらにこじらせる必要なぞどこにもなかった。戦後半世紀が経つのに、事態はいっこうによくならないばかりか、さらにこじれる傾向を見せている。私は、その責任の少なくとも半分はチャーチルにあると思っている。


そのチャーチルのドキュドラマなぞ、普通ならば絶対に見ない。それなのに今回チャンネルを合わせた理由は、そのチャーチルを演じるのがアルバート・フィニーであるからに他ならない。しかもその妻クレミーを演じるのがヴァネッサ・レッドグレイヴ、さらに今年、アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされたトム・ウィルキンソン (「イン・ザ・ベッドルーム」) に、助演男優賞を受賞したジム・ブロードベント (「アイリス」) まで出演しているとなれば、これはもう見ないわけには行かない。チャーチルは嫌いだがチャーチルを演じるフィニーは見たい。この際その実物が好きか嫌いかは棚に上げておこう。


で、やっぱりというか何というか、フィニーの演じるチャーチルって、やはり魅力的なんだよねえ。チャーチルは権力志向で淋しがり屋で甘ったれの、要するにガキがそのまま大きくなったような人間として造型されており、多分本当にそうだったのだろう、そういう人間ってのは欠陥も多いのだが、こういう風に映像化してしまうと、やはりドラマになるのだ。しかもフィニーってのは元々そういう役をさせると抜群にうまい、というかぴたりと役柄にはまると来ているから、これはもう文句の言い様がない。こういうお爺ちゃんが親戚にいたら楽しいだろうなあとついつい思ってしまう。その妻クレミーを演じるレッドグレイヴは、重要な役とはいえ今回はフィニーの引き立て役ということで、まあ、あんなもんか。ウィルキンソンやブロードベントに至っては数シーンしか出番がないから、はっきり言って誰がやってもよかった役ではある。


つまり、この作品はほとんどフィニー一人のものであるわけだ。最初から最後までほとんど出ずっぱりで、私がははっきり言って大して好きでもない人間に扮しているのにもかかわらず飽きさせずに見せてくれるのは、フィニーの熱演と、演出のリチャード・ロンクレインの功績だろう。まあ、実際ドラマティックという点では、チャーチルの人生は確かに人並み以上のものであったわけだし。それでもフィニーのこの演技は、今年のエミー賞のTV映画部門で主演男優賞にノミネートされるのはまず間違いあるまい。


フィニーとレッドグレイヴ以外では、チャーチルに機密情報を流し、結局その責任の重さに耐えかね、自殺 (?) したレイフを演じるライナス・ローチが印象的 (レイフの死は自然死とも自殺ともとれ、番組の中では理由は特定されない)。「ゴスフォード・パーク」では召使いを演じていたデレク・ジャコビが、ここでは首相役であるというのも面白い。製作はリドリー・スコットとトニー・スコットのスコット兄弟が所有しているスコット・フリー・プロダクションで、3年前、やはりHBOが放送したオーソン・ウエルズのドキュドラマ「ザ・ディレクター (RKO 281)」も製作しているところを見ると、歴史物が好きなようだ。


撮影に関しては、チャーチルが実際に住んでいたチャートウェルの豪邸で撮影する許可を得たことで、抜群の臨場感を得ている。紅葉で色づくチャートウェルはとても美しく絵になり、チャーチルはその豪邸に18人もの召使いを抱えていた。しかし株式市場の崩壊やチャーチル自身の乱費、息子の事業の失敗の建て替え等で、チャーチル家の経済状態は逼塞しており、実は召使いなど雇っている余裕はなかった。むしろその状況をしっかりと把握していたのは妻のクレミーの方で、デザートのケーキをなくすなどしてやりくりする。それなのに暴君極まりないチャーチルは自分のことは棚に上げてクレミーを非難したりするのでついにクレミーの方が切れ、夫婦喧嘩になったりする。結局後で謝りに行くのはチャーチルの方なのだが。


そういう、家庭では威張り散らしているだけでむしろクレミーがいないとほとんど役に立たず、クレミーが旅行に行ってしまうと旅先で浮気していないか気になってしょうがないという、実に情けない男がチャーチルなのだ。しかしそのチャーチルが歴史の表舞台ではイギリスを率いてナチス・ドイツに徹底的に抵抗し、連合軍を勝利に導いた立役者であるという、その辺が歴史の面白いところである。番組はチャーチルがイギリス海軍総督となって、これからいよいよ本格的な戦争となるという時点で終わる。歴史はこれからチャーチルに一世一代の檜舞台を用意してくれているのだ。


番組として私が最も辛かったのは、多分チャーチル本人の喋り方を真似ているのだろう、癖のあるフィニーのイギリス英語である。アメリカ英語ですら完璧でないのに、ただでさえ慣れてなく聞き取りにくいイギリス英語、しかもやたらと語尾が上がるさらに癖のある言い回しで、私は早々に聞き取りを諦め、キャプションをオンにしてほとんどのセリフは字幕として読んだ。しかしこういう時、キャプションがあるTV番組は有り難い。これが劇場で見る映画だと、昨年の「セクシー・ビースト」なんて、何言っているかわからなくても字幕に頼るなんて方法が使えなく、結構辛い思いをしたのを思い出した。








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The Gathering Storm

ザ・ギャザリング・ストーム   ★★★

 
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