ジ・エクソシスト   The Exorcist

放送局: FOX

プレミア放送日: 9/23/2016 (Fri) 21:00-22:00

製作: モーガン・クリーク・プロダクションズ、20世紀FOX TV

製作総指揮: ジェレミー・スレイター、ロリン・ジョーンズ、ルパート・ワイアット、バーバラ・ウォール

出演: アルフォンソ・へレラ (トマス・オルテガ神父)、ベン・ダニエルズ (マーカス・キーン神父)、ジーナ・デイヴィス (アンジェラ・ランス)、ブリアン・ハウイ (キャサリン・ランス)、ハンナ・カスルカ (ケイシー・ランス)


物語: シカゴ郊外の教会のオルテガ神父に、信者のアンジェラが相談を持ちかける。最近、長女の様子がおかしく、家の中に何か異様なものが存在している気配がするというのだ。一方オルテガ神父自身も、最近悪夢をよく見ていた。その夢では、中米の町で悪魔に憑かれた一人の少年をある神父が祓おうとしていた。調べたところそのマーカス神父は実在しており、オルテガ神父はアメリカに戻っていたマーカス神父の元を訪れ、協力を依頼する‥‥


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The Exorcist


ジ・エクソシスト  ★★★

かつて人気のあったTV番組、あるいはヒットした映画のTVリメイクや続編、スピンオフ製作は、特に珍しいものではない。今シーズンだけでもCBSで「マクガイバー (MacGyver)」、FOXで「リーサル・ウェポン (Lethal Weapon)」が放送されている。もうすぐショウタイムでは「ツイン・ピークス (Twin Peaks)」も始まる。もう慣れっこになっている。


しかし今回FOXが編成した「ジ・エクソシスト」だけは、首を捻る、というか、驚かざるを得なかった。「エクソシスト」、あの、ホラー映画史上燦然と輝く記念碑的作品を、TVでシリーズとしてリメイクするってか。


確かに根幹となるリーガンの話自体こそあれで完結しているという印象が強いが、悪魔憑きの話であり、話自体はいかようにも膨らませようがありそうだ。実際に映画作品としてはスピンオフが何作か製作されている。基本的に同じ話のはずのTVリメイクも、作ろうと思えばできない相談でもなかろうと思う。しかし、できそうだからといって実際にやるかどうかは話が別だ。とにかく、オリジナルの印象があまりにも強烈過ぎる。


最初に公開された時、私はまだ中学生で、その時の映画館は大混雑で、立ち見の盛況だった。今は立ち見で映画を見るなんて環境は、到底考えられない。同じ学校に通っていたうちの女房も同じ映画館で「エクソシスト」を学友と共に見ているが、その友人、目が悪かったのかそれとも活字に不慣れだったのか、字幕が追えずにいちいち女房に、今なんて言ったの、と聞いてくるので、映画の内容よりもそのことの方が記憶に残っていると言っていた。たぶん傍でそのやり取りと逐一聞かされていたはずの観客の方が一番迷惑だったろうと思う。


いずれにしても、40年以上も前に観賞した状況を誰もが覚えているという映画も、そうはあるまい。「エクソシスト」は、そういう、誰もが見ていて誰もが覚えているという、数少ない作品のうちの一つだ。因みに女房は、後日TVで見直して、改めてよくできている怖い作品だと思ったそうだ。


私の場合は、2000年にディレクターズ・カットが公開された時にもう一度見ている。やはりその時も面白いと思った。例えば、リーガンを演じたリンダ・ブレアの、首180度回転、グリーンピースのゲロ吐き、クライマックスの階段落ち、マイク・オールドフィールドのテーマ音楽等、記憶に残るシーンは目白押しだ。これをスピンオフではなくリメイクとして製作するのは、かなりハードル高そうに思う。


なんて疑心暗鬼で今回のシリーズを見始めたのだが、これが実は結構よくできている。シリーズだから時間を充分に使えることを利用して、CGやショッカーやスプラッタに頼ることなく、じわじわと雰囲気を盛り上げている。完全に木々の葉が落ちていることからして真冬の撮影だろう。木は完全に丸裸になっているところを見ると、冬枯れになって久しいと思えるのに、感じを出すために路上は枯れ葉で埋まっている。しかし遠くを見ると、路上に枯れ葉なんかない。スタッフ総出で道に枯れ葉撒いたんだろうなと、なんか微笑ましい。それともこれこそCGか。


場所がワシントンD.C.からシカゴ郊外に変わり、リーガン一人だった娘が二人の姉妹になっているなどマイナー・チェンジが施されているが、わりと効果を上げている。事故を起こして引きこもりになってしまった長女の近辺で、異様なことが立て続けに起こり始める。異変を察知した母は神父に相談して、神父が現況を見分しにくる。そして屋根裏で何か不穏な気配を発していたのは、実はそれまで姉のことを親身に心配していた妹だったという展開は、予想を裏切ってなかなかうまい。私は完全に騙された。


さすがにこれは許可がとれなかったか、無理もないと思っていたオールドフィールドのあのテーマも、ここでも使用されている。オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ (Tubular Bells)」は、「エクソシスト」のテーマとしてというよりも、単体アルバムとしても非常にいいできで、後年「エクソシスト」と関係なく、大学に入ってから改めて全アルバム聴いてこりゃすごいと思ったものだ。オールドフィールド自身も、ホラー映画のテーマとして聴かれるのは心外、みたいなことを言っていたので、今回は使われてないだろうと思っていた。それが番組第1回の最後で、ちゃんとあの、タンタンタタン、タン、タン、タン、タン、タン、タン、タン、タタン、というメロディが流れてきた途端、思わず背筋がぞくぞくとした。なかなかやってくれる。


出演者の中で最も知名度があるのは、アンジェラ役のジーナ・デイヴィスだろう。ちょっと見ない間になんか印象が変わった。顔が作りものくさくなっちゃって、ボートックスやり過ぎじゃないの? マーカス神父に扮するベン・ダニエルズは、昨年スターズのバレエ・ドラマ「フレッシュ・アンド・ボーン (Flesh and Bone)」に出てたから、まだよく覚えている。


わりとよくできていると感心した今回のTV化だが、実は成績の方はあまりよくない。この分だとキャンセルにはならなくても、第2シーズンはあるまい。たぶん私が最初思ったように、なんでまたこの作品のTV化を今頃、と思って見てない視聴者が多いからだと思う。実際私もDVRに録画はしたものの、長い間見ずにほっといてた。先に見た女房が、結構面白かったと推薦しなければ、そのまま見ずに消していただろうと思う。見ればかなりの者が面白いと感じるに違いないと思うんだけれども。










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