The Doctors

放送局: シンジケーション (ニューヨーク地域ではCBS)

プレミア放送日: 9/8/2008 (Mon) 9:00-10:00

製作: ステージ29プロダクションズ、CBS TVディストリビューション

製作総指揮: ジェイ・マグロウ、カーラ・ペニントン、フィル・マグロウ

共同製作総指揮: アンドリュウ・シェール

ホスト: トラヴィス・ストック、リサ・マスターソン、アンドリュウ・オードン、ジム・シアーズ


内容: 4人の医者が様々な現代医学の状況を紹介する。


_______________________________________________________________


「ザ・ドクターズ」は、米ネットワークの日中や夜間の空いた時間を間借りして放送される、いわゆるシンジケーション番組と呼ばれる番組だ。特に日中に放送される番組の場合、多くがトーク・ヴァラエティで、次にアメリカ特有で根強い人気のある擬似法廷番組、それに芸能情報関係番組を加えれば、平日編成シンジケーション番組のほぼ90%を網羅できると言ってもいいだろう。


客を入れたスタジオ収録で、ホストが壇上に立って様々なトピックを紹介、議論するという構成だけを見ると、「ドクターズ」はトーク/ヴァラエティ番組と言えないこともない。ただ、「ドクターズ」の場合、そのトピックが医学関係だけに特化しているという点が、それまでの一般的トーク・ショウと異なる点だ。


とはいえ、このような番組がこれまでになかったわけではない。だいたいトーク・ショウの場合、一コーナーとして健康・医学関係を設けて、今、人々が気になる話題を採り上げるのはざらにあることだし、特に日中TVを見ている婦女子が主要視聴者層のトーク・ショウの場合、いかに痩せるかといかに若く美しく見せるかというテーマは避けては通れない。


こういう一コーナーを巧みに番組に盛り込んで成功したのが、シンジケーションの人気番組「オプラ・ウィンフリー・ショウ」、通称「オプラ」であり、そのコーナーを担当したドクター・フィルことフィル・マグロウは視聴者、観客の様々な質問や悩みに答えて信頼を得、その後番組から独立、健康、医学問題を中心に据えた自分の番組「ドクター・フィル」を立ち上げてそのホストの座に就いた。現在シンジケーションのトーク・ショウでは、「オプラ」が視聴率1位、次に「ドクター・フィル」という構図は、この数年間まったく変動がない。


だから医学関係のトーク・ショウといっても特に違和感があったわけではない。しかしそれでも、医者というよりはカウンセラーという印象の方が強いドクター・フィルが番組内で様々な悩みを持つ者の話を聞くことと、まるっきり畑の違う専門医が4人集まって、それは体重の増減の話もあるだろうが、それ以外にも現代医学の最新医療技術を紹介するという番組の内容に、果たして需要があるのだろうかと思ったことは事実だ。


番組が始まり、最初に救急医兼メイン・ホストのトラヴィス・ストックが登場する。ストックは額に途切れない波打つ3本皺がくっきりと刻み込まれているのが印象的で、ハンサムだがサル顔と言えなくもないが、体格はよく、女性からはもて、患者からは信頼されそうだ。好感度の高いタイプで、よくこういうのを探してきたなと思ったら、彼は実際に医者でもあることはあるが、なんとABCの「ザ・バチェラー」の第7シーズンで、そのバチェラーとなってパリで女性たちと浮き名を流したことのある男なのであった。「バチェラー」なんて、くだらないと思って第1シーズン以降まともに見たことないからまったく知らなかった。因みに彼はその時選んだ女性とは既に別れているそうだ。ま、それも当然だろう。


トラヴィスによって紹介されてスタジオに現れたのは、美容整形医のアンドリュウ・オードン、小児科医のジム・シアーズ、そして産婦人科医のリサ・マスターソンの3人。これにトラヴィスを加えた4人が討論したり専門の話を展開したりしながら番組は進む。各自の仕事着ということで、緊急医のトラヴィスが着ているのは、TVの「ER」で登場人物が着ているのと同じ青いユニフォームだ。マスターソンとシアーズはいかにも医者らしい白衣で、オードンだけがスーツ着用というのが、手術を執刀する医者というよりもビジネスマンという印象の強い、整形外科医という立場をよく表している。また他人事ではあるが、どうもマスターソンの顔は整形くさい。


この日の議題は、子供用の薬全般に対してといったことから、男性に対してヴァイアグラが医薬品と認可されて保険対象となりつつあるのに、女性の避妊ピルに保険が利かないのはバカらしいという話、妊娠中の女性の体重の増減について、そしてメインが女性の皺とりの新手術法というもので、手術を受けた女性の術前術後を報告する。もちろん現在の本人をスタジオに呼んでおり、以前の写真やヴィデオと比較すると共に話も聞く。そして当然その手術を行ったのはオードンだ。


従来の技術がどうだったのかはよく知らないが、オードンによる新手術法は耳の付け根あたりにメスを入れ、そこから細胞が伸びている方向に向かって皺を伸ばすという方法をとるため、皺の伸び (消え) 方が自然で手術痕も残りにくいというメリットがあるそうだ。確かに、流行りのボートックス注射で皺を伸ばしたいかにも人工的に見える顔に較べ、今回登場した女性はナチュラルに若返ったような印象を受けた。いずれにしても結局、やはり最も需要があるというか注目されるのは、女性の美容整形、外見の向上に関するテーマみたいだ。


番組第2回以降もそういう視点は変わらないが、この回で最も印象的だったのは、いざという時のために男性も女性の出産を助けることができないとということで、スタジオに女性が妊娠中のカップルを呼び、精巧な人形を使って出産シーンを再現、男性がどうやって生まれてくる子をとり上げるかをレクチャーしたものだ。


もちろん人形ではあるのだが、状況を本物そっくりに再現しないと予行演習にはならない。そのため女性器から赤ん坊が頭を出してくるところなんか、皮膚に弾力感があってわりとリアルで、しかも無事生まれた赤ん坊の口が半開きになっているところなんか気味悪いくらいだった。出産を手伝った黒人カップルの男性も、正直、薄気味悪そうにしていた。この赤ん坊にはへその緒までついていて、その後どうやってそれを処理するかまでちゃんと教えていた。私もへその緒ってどうするのか知らなかったので、この部分は参考になった。が、しかし、事前に学習が必要というのはわかるし、本当に自分が子を持つという立場になったら是非知りたいと思う内容だと思うが、少なくとも今はやはりあまり率先して見たいという内容じゃないなあ。


因みに第2回でフィーチャーされた話題は新式のレーザー (のように見えた) ニキビとり技術で、これもオードンが担当した。これも確かに効果抜群のようだったが、スタジオの観客から選ばれてこの治療を受けた女性は、オードンが、だいたいこれを1年続けるというと、「What!?」と声を上げていた。私もだいたいそういう処置を2、3回すればOKかなと思っていたので、そんなに長期間かかるというのは意外だった。だいたいニキビが気になる年頃の女性というのはティーンエイジャーが多いだろうが、たぶん彼女らの環境は1年も経てば大きく変わる。今現在ニキビを治したいはずで、治療に1年かかると言われてがっかりしない子の方が少ないだろう。医者として1年かけて完全に治療したいと考えるのはわかるが。


しかしこれまで見た中で最も印象に残ったのは、Gショットが果たして効果があるのかを実験したものだ。Gショットとは女性器内のいわゆるGスポットと呼ばれる性感帯に注射を施して女性を感じやすくするというもので、オーガニズムを得にくいという、一人はたぶんラテン系、もう一人はアジア系の女性二人が登場、実地にGショットを受ける。本人の下半身には白いカヴァーがかけらているとはいえ、ちゃんとカメラは術室まで入って彼女らが注射を受けているシーンもとらえる。


そして彼女らが術後どうなったかというと、実際に思い切り感じやすくなるようだった。セックスでオーガズムを得やすくなっただけでなく、道を歩いていても車を運転していても、ありとあらゆる刺激に感じてしまうらしい。あまり感じすぎると日常生活に差し障りが出てしまうのではと他人事ながら気になるが、彼女らはそれをエンジョイしているようで、アジア系の子はすべての女性がGショットを受けるべきという過激な発言をしていた。製薬企業からの回し者じゃないだろうな。


なるほどと思ったのだが、この手の番組はこのような硬軟を混ぜ合わせることで、まだまだ様々な切り口がありそうだ。最初は本当に需要と供給がマッチするのと思っていたが、実は「ドクターズ」はこの秋のシンジケーションの新番組では最も成績がいい。要するに、女性が最も気になる健康、医学ネタをきっちりと把握した上で俎上に乗せているからだろう。それは体重や美容整形ネタばかりじゃないし、時には硬い話でも、それが時流に合えば人は見る。


番組プロデューサーは上にも書いたドクター・フィルことフィル・マグロウ、およびその息子のジェイ・マグロウで、要するに彼らは、そういうこれまではあまり顧みられることのなかった需要を掬い上げることがうまいというように感じた。だからこれまでのところ番組はうまく行っているのだろう。そう言えば父による「ドクター・フィル」だけでなく、ジェイの方も一時FOXでメイクオーヴァー番組の「リノヴェイト・マイ・ファミリー」なんて番組のホストをしていた。今世間を騒がせている、妊娠した男性 (元々は女性だが性転換した後も子宮はとっていなかったため妊娠が可能だった) が番組に姿を現すのもそう遠くない話だと思われる。それとも私がチェック・ミスしているだけで既に登場した後だとか。機を見るに敏なアメリカの番組のことだから、それも充分ありそうな話に思える。







< previous                                    HOME

 

The Doctors


ザ・ドクターズ   ★★1/2

 
inserted by FC2 system