ザ・デイリー・ショウ・ウィズ・トレヴァー・ノア   The Daily Show with Trevor Noah

放送局: コメディ・セントラル

プレミア放送日: 9/28/2015 (Mon) 23:00-23:30

製作: コメディ・セントラル

製作総指揮: スティーヴ・ボドウ、トレヴァー・ノア

ホスト: トレヴァー・ノア


内容: 新ホストに交代した深夜トーク・ショウ。


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The Daily Show with Trevor Noah


ザ・デイリー・ショウ・ウィズ・トレヴァー・ノア  ★★1/2

今夏、長らく人気を誇っていたジョン・スチュワートがホストの「ザ・デイリー・ショウ」が最終回を迎え、このほどその後任としてトレヴァー・ノアが就任した。この一年半ほどの間にいくつもの深夜トークがホスト交代を経験しており、新ホストが誕生するというそのこと自体は、特に珍しいことでもなんでもない。


とはいえ、今回のノアの就任劇は、他の新ホスト誕生とは些か趣きを異にした。トーク・ショウのホストが交代する場合、次に誰がホストに就任するかはかなり注目され、話題になる。特に「デイリー・ショウ」のような長寿人気番組であればなおさらだ。さらに「デイリー・ショウ」は、深夜トークにポリティカルな視点を持ち込んだパイオニアであり、その方向性を次期ホストも継ぐのか、だとすると人材はかなり限られてくるはず、などと外野がかまびすしかった。


さらに今回は、かなり信憑性がある情報として、チェルシー・ハンドラーによるE!の「チェルシー・レイトリー (Chelsea Lately)」以来の女性の深夜トークのホスト誕生の気配があると噂され、その候補の筆頭として、エイミー・シューマーが挙げられていた。近年のシューマーの人気振りは飛ぶ鳥を落とす勢いがあったので、それはあり得るという感触は確かにあった。シューマー以外にも、エイミー・ポーラー、ティナ・フェイといった名前も挙げられた。確かに、彼女らでも悪くないという気はした。


しかしこの話は、シューマー自身が興味がないと一蹴、ポーラーやフェイもホスト業よりは映画の方に関心があるようでボツ。さて、では誰かとマスコミは自由気ままに推測、その中には、スキャンダルの渦中で社内で干されていた元NBCのアンカー、ブライアン・ウィリアムズの名まであった。こういう時のマスコミの非情さ、無責任さは怖いくらいだが、確かにニューズ業界の中枢にいたウィリアムズがホストになったらという妄想は、痛く想像力を刺激するものがあった。


しかし、やはり結局はこれまでの「デイリー・ショウ」コレスポンデントから選ばれるのかと思われていた矢先、新ホストとしてトレヴァー・ノアの発表があった。これは別に私に限らず、業界全体が、えっ、とキツネにつままれたように反応せざるを得なかった。なんとなれば、ほとんどの者がノアの名前なんてこれまで聞いたことがなかったからだ。


もっとも、ノアが完全に無名だったかというと、そういうわけでもない。昨年からコレスポンデントとして、「デイリー・ショウ」に何度か登場しているのは確かだ。とはいえ「デイリー・ショウ」には、ノア以外にジェシカ・ウィリアムズやアーシフ・マンドヴィ、サマンサ・ビーのような、もっと知られているコレスポンデントは大勢いる。ノアは南アフリカのコメディアンで、自国ではそこそこ知られているらしいが、それだけで「デイリー・ショウ」ホストに指名されるとは、まさか本人ですら考えていなかったのではないか。


そのためノアの名が発表されると、すわ、こいつ何者という情報が飛び交い、その中にはあまり芳しくないものもあった。なんとなればノアは、南アフリカ出身の黒人ホストだ。ギャグに人種差別ネタが多いのは、これはもう火を見るよりも明らかで、ノアのこれまでの発言には、TVという大衆向けのメディアにはそぐわない人種ギャグも多々あったらしい。


実際番組が始まって一番最初のジョークが、この番組をホストするに当たって、室内トイレを使えるようになるとは夢にも思っていなかったという自虐ネタで、既にかなり南アフリカの黒人差別ギャグが下敷きになっている。さらにオープニングのモノローグで、なんで自分にホストが決まったかについて述べる。多くの視聴者が考えたように、コメディ・セントラルは最初、女性ホストを打診したが断られた。次にアメリカ人ホストを探したが、これもダメだった。回り回って、移民がホストをすることになった、と、これまたかなり自虐的。


最初の時事ネタはシリア‥‥と見せかけて、実はローマ法王のニューヨーク訪問関連。次はそのローマ法王に触発され、電撃辞任を発表した共和党の下院議長ジョン・ベイナーを揶揄する。ベイナーは日頃から感激屋を自認し、ところ構わず泣きまくる癖があるという人物で、いじり甲斐がある。彼がいなくなるのは、アメリカ深夜トーク界の大きな損失と言える。火星に水が発見されたニューズに関しても一くさり。


30分番組だが、ゲストもいる。第1週のゲストは以下の通り。


9/28 (Mon): ケヴィン・ハート

9/29 (Tue): ホイットニー・ウルフ

9/30 (Wed): クリス・クリスティ

10/1 (Thu): ライアン・アダムズ


初日のコメディアンのハート、木曜のミュージシャンのアダムズは有名だから特に説明の要はないだろう。2日目のウルフはIT起業家で、SNSの出会い系アプリTinderの共同創始者。3日目のクリスティは私の地元ニュージャージー選出の共和党議員。歯に衣着せない肥満の政治家で、地元ではそこそこ人気があるため大統領選に打って出たが、はっきり言って勝ち目はなさそうだ。彼は権力を笠に着たいくつかのスキャンダルを起こしており、なんでまだ辞めてないのか、あるいは辞めさせられないのか不思議。日本でもアメリカでも、一度甘い汁を吸うことに慣れた政治家は簡単には辞めないようだ。


これでこれまではジョン・スチュワート-スティーヴン・コルベアの「デイリー・ショウ」-「ザ・コルベア・レポート (The Colbert Report)」と白人ホスト二人でやってきたコメディ・セントラルの深夜トークは、トレヴァー・ノアの「デイリー・ショウ」-ラリー・ウィルモアの「ザ・ナイトリー・ショウ・ウィズ・ラリー・ウィルモア (The Nightly Show with Larry Wilmore)」という、黒人ホスト番組に取って代わられることになった。コメディ・セントラルが政治や人種差別ネタをこれまで通り、というかこれまで以上にプッシュするのは間違いないだろう。現在アメリカ深夜トーク界には、ほとんど黒人ホストの番組はない。それを考慮しての今回のノアの抜擢だったに違いない。案外いいところに目をつけているような気がする。










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