The Chew   ザ・チュウ

放送局: ABC

プレミア放送日: 9/26/2011 (Mon) 13:00-14:00

製作: チュウ・プロダクションズ

製作総指揮: ゴードン・エリオット

ホスト: カーラ・ホール、クリントン・ケリー、ダフネ・オズ、マリオ・バタリ、マイケル・サイモン


内容: 食テーマの日中トーク・ショウ。


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The Chew


ザ・チュウ   ★★1/2

ここ数年、アメリカの深夜トーク界には激震が走ったが、いつの間にやら日中の番組にもその余波は及んでいる。というか、深夜トークに関係なく、日中トークや日中ソープもそろそろ時代の波による改革改編が必須になってきているということかもしれない。


その最近の最も大きな動きが、今夏のオプラ・ウィンフリーの最強トーク「オプラ (Oprah)」の最終回にあったのは誰もが認めるところだろう。「オプラ」の最終回は、時代は変わりつつある、今何かしないと時代に置いていかれるという危機感を業界関係者のすべてに与えた。


アメリカのネットワークの日中の時間は、ニューズ関係を除くと、ソープ・オペラ、トーク・ショウ (含む芸能ニューズ)、ゲーム・ショウ、疑似法廷番組が4本柱だ。夕方になるとそれに過去の人気番組 (コメディ) の再放送も加わるが、基本的にネットワークで放送されている番組はすべてこの範疇に入る。


どれも歴史の長い番組が揃っているが、ソープに限ると、一昨年、放送70年を数える最長寿番組だったCBSの「ガイディング・ライト (Guiding Light)」が最終回を迎えた。そしてその1年後に編成されたのが、トーク・ショウの「ザ・トーク (The Talk)」だ。


そして今回、ABCのソープ「オール・マイ・チルドレン (All My Children: AMC)」も最終回を迎え、その後に編成されたのが、やはりトーク・ショウの「ザ・チュウ」だ。要するに、ソープ・ドラマは時代遅れのものとなりつつあり、人が見なくなっている。私に言わせてもらえれば、あんな粗製乱造の粗悪番組、すべてなくなっても痛くも痒くもないが、昔からのソープ・ファンには寂しいものがあるかもしれない。


私の場合、ソープというと反射的に思い出すのは、現代ソープの顔スーザン・ルッチ、および彼女が主演している「AMC」だ。彼女以外にソープに出ている人間で顔を知っているのは、現在NBCが放送している勝ち抜き減量リアリティ「ザ・ビギスト・ルーザー (The Biggest Loser)」でホストを担当している、「デイズ・オブ・アウア・ライヴズ (Days of Our Lives)」のアリソン・スウィーニーしかいない。


いずれにしても私にとってソープというジャンルはルッチとほとんどイコールだったので、彼女の「AMC」が終わるというのは、ソープというジャンルがなくなるというくらいの印象があった。そしてその「AMC」後の枠に、やはりトーク・ショウが編成される。


その「チュウ」のタイトル命名は、もちろん先達のABCの多重ホスト・トーク「ザ・ヴュウ (The View)」の轍を踏んでいる。「ヴュウ」は5人の女性ホストおよびホストがしゃべり倒すなんでもネタ・トークだ。「チュウ」もやはり複数ホストのトーク・ショウだ。そしてこちらのポイントは、番組が食ネタに特化していることがある。


もちろん食ネタ中心の日中トークはこれまでにもあり、セレブリティ・シェフ、レイチェル・レイの「レイチェル・レイ (Rachael Ray)」は、その代表だろう。現在ホールマーク・チャンネルを中心に展開している元祖カリスマ主婦マーサ・スチュワートの「ザ・マーサ・スチュワート・ショウ (The Martha Stewart Show)」もある。医師のオズ・メーメットの「ドクター・オズ (Dr. Oz)」はヘルス志向の番組でもあり、食関係の話題は切っても切り離せない。フード・ネットワークやクッキング・チャンネルだって、最近の番組は単にクッキング・ショウというよりも、トーク・ショウ的に多角化している番組も多い。


要するに食テーマのトーク・ショウというジャンルは、特に新しいものではない。「チュウ」が新しいのは、ホストを複数にして、よりおしゃべりやヴァラエティ・ショウ的な要素を増やした点にある。5人いるホストも、カーラ・ホール、マリオ・バタリ、マイケル・サイモンの3人の本職はシェフだ。


シェフとしては、まずバタリの知名度は断トツだろう。フード・ネットワークのアメリカ版「料理の鉄人」こと「アイアン・シェフ・アメリカ (Iron Chef America)」でアイアン・シェフ・イタリアンを務めるバタリは、その他にも自分のクッキング・ショウを持っている。一見クマさん風の容貌やそれでいて柔和な話し方等、一見してなかなか忘れ難いキャラクターだ。なんとなく似顔絵を描いてみたくなる容貌であり、浦沢直樹の「20世紀少年」のマルオは、バタリをモデルにしていると私は信じて疑わない。


バタリがマンハッタンで営業している「バボ (Babbo)」は非常に人気が高く、実は私たち夫婦はここで食事しようと5、6年前間から計画していてまだ果たせないでいる。特に年末は週末に予約を入れようと電話しても繋がらず、ようやく繋がった時にはすべて予約で一杯だ。早い時間なら予約なしでも大丈夫という向こうの言葉を信じ、6時半にレストランに着いたら2時間待ちと言われ断念したことが2回ばかりある。いつかここでメシを食ってみたい。


マイケル・サイモンは、プロ中のプロを集めて勝ち抜きで次の「アイアン・シェフ」を決める「ザ・ネクスト・アイアン・シェフ (The Next Iron Chef)」で、見事初代チャンピオンとなってボビー・フレイらと共にアイアン・シェフ・アメリカンとして名を連ねることになったシェフだ。禿げ頭で愛嬌があるが怒らせると怖そうで、これまた忘れ難いキャラクターだ。因みに「ネクスト・アイアン・シェフ」は現在第4シーズンを放送中で、サイモンはここでもジャッジを務めている。


忘れ難いキャラクターといえば、ぎょろ目のホールこそ忘れ難いキャラクターと言える。ブラヴォーの勝ち抜きクッキング・リアリティ「トップ・シェフ (Top Chef)」の第5シーズンで惜しくも敗れたものの、準優勝した。その印象の強さで第8シーズンのオールスターにも選ばれて出場している。プレミア・エピソードではホールの母もステュディオに来ていたが、まったく同じ顔だったので笑った。


ホールはペイストリー・シェフで、私の印象ではペイストリー・シェフは、通常のシェフとは資質が違う。ペイストリーはクッキングよりも科学に近いということをいつかどこかで有名なペイストリー・シェフが言っていたことを覚えているが、要するに、インスピレーションよりも計算を基にする経験の方が重要というところが、ペイストリー・シェフの傾向を形作るのだと思う。なんとなくペイストリーは科学というよりイマジネーションという気がするのだが、まったくそうではないというのが面白い。しかし確かにケーキを膨らませるのは、どの粉をどれだけ使って何度で何十分、なんて厳密なレシピがあり、その根本は動かせなかったりする。材料をすべて目分量で図る天才肌シェフがまずなれないのが、実はペイストリー・シェフだ。


私の経験から言ってもペイストリー・シェフというのは確かにそうで、意外にも女性じゃなく、頑固な職人気質の男性が多い。かつてマンハッタンでベストの生クリームを作ると言われたアッパー・イーストのボンテ (Bonte) 経営者は、ある時もう充分といって、惜しむ声が多いのにもかかわらずさっさと店をたたんで引退してしまったし、今現在私が最もうまいと思うシュー・クリームを作るヴィレッジのクローズ (Claud’s) のシェフは、一度シュー・クリームを買いに行ったら、今日は暑いから早くクリームが傷むからシュー・クリームは作らなかったと、まったく客商売では考えられないことを平気でのたまっていた。


最近は元ウォルドーフ・アストリアのペイストリー・シェフがクイーンズにオープンしたという店でバゲットを買ったのだが、これまた正直言って近くにサブウェイも走ってない、辺鄙な地元住民しか利用しないモールの中で、なんでこんなところに店を出すのかわからない、すごくわかりにくい場所だった。どいつもこいつもあんた、本当に商売する気ある? と疑いたくなる言動ばかしだ。ホールも「トップ・シェフ」時代から周りの癖のあるシェフたちに引けをとらないキャラクターだったわけだが、 やはりペイストリー・シェフというのは癖がある。


残る二人のうち、クリントン・ケリーは私は番組が始まるまでまったく知らなかった。元々は雑誌「マドモアゼル」の編集をしていて、TLCの「ホワット・ナット・トゥ・ウェア (What not to Wear)」にファッション・アドヴァイザーとして抜擢された。私は「ホワット・ナット・トゥ・ウェア」は第1シーズンの最初の数エピソード以来見てないので、その後番組に加わったケリーのことは知らなかった。職業柄、かなりグルメと思えるが、「チュウ」で本職が直接的に食に関係していないのはケリーだけだ。


たぶんケリーは、そのキャラクターを生かしてのホスティングの部分で起用されているという印象が強い。実際番組が始まると、ケリーはほとんど話をまとめる本当の意味でのホストとして機能している。一応食専門番組なので、ケリーもオードブルを作ったりしているが、その演出の仕方が主体で、シェフという感じはまったくしない。身長が高く、たぶん190cmはあるんじゃないかと思う。他の者たちより頭一つくらい背が高い。


最後のダフネ・オズは、「ドクター・オズ」ホストのオズ・メーメットの娘だ。プレミアではドクター・オズも出てきて娘を祝福していた。本職のシェフというわけではないがヘルス・フード研究家で、関連した本も何冊か出している。


番組プレミアでは、第1回というのにバタリがステュディオに現れず、近くのニュージャージーの、一昨年のザ・バークレイズの舞台となったゴルフ場のリバティ・ナショナルから中継で現れた。どうしても譲れない、自身が主催するチャリティ・トーナメントがあったようだ。


それでゴルフ場に即席の窯を置いてピザを焼いていたのだが、付け焼き刃のようなセッティングにしては、やはりバタリの作るピザってめちゃ美味しそうに見えるのだ。簡単に屋外でも最も手軽にできるものということでピザにしたと思うのだが、それでもうちでよく買ってきてオーヴンに突っ込んで作るだけの冷凍のピザとは、一見して雲泥の差だ。


バタリは450度Fのオープンで焼くと言ってたが、実はうちのキッチンのアラームは敏感過ぎて、425度Fの設定で10分くらいオーヴンに火を入れただけでビービー超うるさく鳴り始める。この25度の差がもしかしたら味に大きく影響しているのかもしれない。かといって450度Fなんかでオーヴンを使ったら、ピザが焼けないうちからアラームが鳴り始めるのは目に見えている。美味いピザを焼くためには、まずアラームをなんとかすることが先決か、しかし何個かあるアラームのキッチンにあるやつだけ黙らせるなんてことができるのか、今度ビルのオーナーに訊いてみないと、なんて思いながら番組を見ていた。








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