放送局: ABC
プレミア放送日: 3/27/2000 (Mon) 20:00-23:00
製作: エンデモル・エンタテインメント、ロバート・グリーンウォルド・プロダクションズ
製作総指揮: キンバリー・ルービン、ロバート・グリーンウォルド
共同製作総指揮: ジェニファー・ラヴ・ヒューイット
製作: スティーヴ・ロブマン、ケイ・ホフマン
監督: スティーヴ・ロブマン
脚本: マーシャ・ノーマン
撮影: ピエール・ルタルテ
編集: ピーター・エリス
音楽: ローレンス・シュラジ
美術: ジャン-バプティスト・タード
衣装: レネ・エイプリル
出演: ジェニファー・ラヴ・ヒューイット(オードリー・ヘップバーン)、エミー・ラオサム(オードリー14歳)、サラ・ハイランド(オードリー6歳)、フランシス・フィッシャー(エラ・ヘップバーン)、キア・デュレア(ジョゼフ・ヘップバーン)、エリック・マコーマック(メル・ファーラー)、ゲイブリエル・マクト(ウィリアム・ホールデン)、スウィード・スヴェンソン(グレゴリー・ペック)、マイケル・バーグ(トルーマン・カポーティ)
物語: 5番街、ティファニーの前では「ティファニーで朝食を」の撮影が始まった。原作のトルーマン・カポーティも見守る中、撮影は進む。渋い顔のカポーティを前にオードリーは自分の来し方そして行く末に思いを巡らせるのだった。幼い頃、オードリーはあまり仲のよくない両親が言い合いしている間中、テーブルの下に潜って隠れていたものだった。10代になってイギリスのケントの女学校に入れられ、そこでバレエを覚えた。ドイツ軍の進攻を前にオランダのアーネムに住む叔父の元に非難するが、しかしそこも戦火に捲かれ、食料の調達にすら事欠く始末で、戦争は終わったもののオードリーは病に臥せってしまう。
やがて回復したオードリーはまたイギリスに引っ越し、バレエに打ち込み始めるが、先生から見込みはないと言われ、それならと受けた舞台のオーディションで見事ジェローム・ロビンスに見初められ、端役を手にする。それから徐々に舞台での仕事を増やしていったオードリーは、ある日、「ジジ」を準備中だったコレットのお眼鏡にかない、初めて主役の座を手にする。その舞台稽古はオードリーにとって苦難の連続で楽しいものとは言えなかったが、何とかやり通す。その舞台の評判を聞いて、彼女のスクリーン・テストをしたいと思ったのがウィリアム・ワイラーだった。そしてオードリーは「ローマの休日」の主演の座を獲得、世界的人気女優となり、オードリーの時代が幕を開ける‥‥
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オードリー・ヘップバーンの半生を描く3時間のドキュドラマ。ヘップバーンを演じるのは、「サンフランシスコの空の下」、「ラストサマー」シリーズのジェニファー・ラヴ・ヒューイット。最初この番組の話を聞いた時は、首を傾げざるを得なかった。だってそうでしょう、「ラストサマー」シリーズを見たものならわかると思うが、ヒューイットは線の細さ以外どう見てもヘップバーンには似ていない。その印象はヘップバーンに扮したヒューイットの写真を見た時に決定的なものとなった。何というか、ヘップバーンのワードローブは真似しても、元々顔を似せようなんて考えていないように見える。それでヘップバーンのドキュドラマをやろうなんて考える方が無理なんではないか。
オードリー・ヘップバーンの人気は死後10年近く経つ現在でもいまだ衰えるところを知らない。しかしその人気は、マリリン・モンローが死後数10年経っても話題に上るようなゴシップ/覗き見趣味的なものとは質が違う。どちらかと言うと、ヘップバーンに対するそれは、ジャッキー・ケネディ、ダイアナ妃のような王室/皇室に対する畏敬の感情と似ている。実際、ヘップバーンのファンはヘップバーンが好きというより崇拝するというのに近い感情を持っており、ほとんど神格化されている。そのため、ヘップバーンにまつわる話はほとんど聖域となっており、これまでほとんど誰もヘップバーンに関するドラマを製作しようなどと試みたものはいなかった。
ヘップバーンがどれほど人々から畏れ愛されていたかというのは、95年にヘップバーン主演の「麗しのサブリナ」のリメイクに主演したジュリア・オーモンが、ヘップバーンが演じた役を演じたというただそれだけのために人々から徹底的な攻撃にあったという事実からも知れる。ハンフリー・ボガートと同じ役を演じたハリソン・フォードは誰からも何も言われなかったのに、決してヘップバーンと較べて演技力の上で劣るわけではないオーモンは、ヘップバーンほど愛らしくない、ヘップバーンほど知的でない、ヘップバーンほどカリスマ的でない、ヘップバーンほど育ちのよさが感じられない、ヘップバーンほど‥‥と、とかくあることないこと言われまくった挙げ句、ほとんどハリウッドから抹殺された形となり、いまだにその時の衝撃から立ち直れていない(一応「スミラの雪の感覚 (陰謀のシナリオ)」という主演作があることはあるがヒットしなかった。ただしオーモンは昨年TV映画の「動物農場」に声だけの出演をしており、この番組は秀逸の出来だった。)
ヘップバーン本人に扮したわけではなく、ヘップバーンが演じた役をやったというだけでもこれである。これがもしヘップバーンのドキュドラマで、ヘップバーン本人を誰かが演じることになったら‥‥と思うと、考えるだにぞっとする。その難関にジェニファー・ラヴ・ヒューイットが挑むのである。7歳の時に「ティファニーで朝食を」を見た時以来の念願だったとはいえ、無謀といえばあまりにも無謀。オーモンのようにキャリアを左右する事態にすらなりかねない。マジですか。
番組は「ティファニーで朝食を」の、あのあまりにも有名な明け方の5番街のシーン、イエロー・キャブから降り立ったヘップバーンが、紙コップに入ったコーヒーとドーナツを持ってティファニーのショウ・ウインドウを覗き込むというシーンを撮影中というシーンから始まり、雨の中「猫」を探し回る映画のエンディングが、そのまま番組のエンディングともなっている。「ティファニーで朝食を」撮影中のヘップバーンが、その合間合間に自分の過去を回想するという形で番組は進行していく。
番組の最初の1時間弱は、6歳のヘップバーン、14歳のヘップバーンを別の女優が演じているわけだが、あまり出番のない6歳のヘップバーンはともかく、 14歳のヘップバーンを演じるエミー・ラオサムが結構悪くない。特にオランダに帰ってドイツ軍侵攻の下、レジスタンスの手伝いをして自転車に乗って秘密の指令を配って回るところなんて、ちゃんと戦争ドラマになっていた。そして戦後またイギリスに戻り、いよいよヒューイットの登場となるのだが、結論から言うと、実はそれが別に悪くないのだ。最初からほとんど期待していなかったので逆にいい面の方が先に眼についたのか、とにかく意外な好演である。何よりも自分のベストを尽くしているという感じがひしひしと伝わってくるのがいい。自分はこの役がやりたかった、今は今後のキャリアのことなんて関係ない、ヘップバーンを演じることに全力を尽くす、みたいな潔さが感じられ、結構感心してしまった。全然ヘップバーン本人には似てないんですけどね。
似てないと言えば、この番組に出てくる人物はほぼ全員オリジナルの人物とは似てない。ヘップバーンの最初の夫であるメル・ファーラーの顔は本人の顔がうろ覚えなのではっきりしたことは言えないのだが(演じているのはシットコム「ウィル&グレイス」のエリック・マコーマック)、「サブリナ」で共演したウィリアム・ホールデン役のゲイブリエル・マクト(現在NBCの「ジ・アザース」に出演中)とか、「ティファニーで朝食を」監督のブレイク・エドワーズなんか、事実としてこれが誰かということを最初から知っていなかったら全然気がつかないと思う。
極めつけは「ローマの休日」で共演するグレゴリー・ペックで、どなたか存じませんが、ローマの街をバイクのタンデムで乗り回すというあの有名なシーンの撮影中という場面であるのにもかかわらず、一瞬、この男は誰?と思ってしまった。それほど似てない。ここまで似てなくていいのか、それとも似せようとする努力を最初から放棄しているのか。うん、それはあり得るかもしれない。だって、誰が見ても主演のヒューイットがヘップバーンに似てないし、他の誰かだけが特に本人にそっくりなんていうのはちょっと困るだろう。たった一つの例外が、トルーマン・カポーティに扮するマイケル・バーグ。彼だけは気難しそうな本人の特徴をうまく伝えていたように思う。あと、実際に本人に似ていたかどうかは知らないが、ヘップバーンの母エラに扮するフランシス・フィッシャーは「タイタニック」で演じたケイト・ウィンスレットの母と同じような、いかなる時も威厳(世間体?)を崩さない毅然とした母という役どころをここでも演じている。
監督/製作のスティーヴ・ロブマンはTV畑出身で、実は過去に「サンフランシスコの空の下」でヒューイットを指導した経験もある。脚本は1983年に「Night Mother」でピュリッツァ賞受賞のマーシャ・ノーマン。番組内ではヘップバーンがジヴァンシーの店で衣装を揃えるシーンが挿入されているが、それらはすべて本物のジヴァンシーではなく、少しずつ変更がされている。その理由は明らかにされていないが、多分ジヴァンシーが自分の衣装を番組に使うのを拒否したのではないか。まかり間違えば失敗作となってありとあらゆるところから叩かれかねない番組である。その時に自分の名前に傷がつく可能性が高いことを考えれば尻込みもしよう。そういうわけで、番組内でヒューイットが着る衣装はすべてジヴァンシーもどきであって、いちいちすべて新しくデザインされている。その難しい問題を担当したのは、「ミセス・パーカー」のレネ・エイプリル。
ヘップバーンのドキュドラマであるが、結局この番組はヒューイットがヘップバーンにオマージュを捧げた作品であり、ヘップバーンに関する新しく発見された事実を見せるとか、いままでに見たことのなかったヘップバーンの魅力を再発見するような番組ではない。あくまでも画面に映っているのはヘップバーンをアイドルとして崇めている一人の女優であり、我々が見るのはヘップバーンでなくてその女優、ヒューイットなのである。そのため、ヘップバーンのファンが見ると大層がっかりするかも知れないが、ヒューイットの熱演を見る分には充分楽しめる番組となっている。しかし最後に苦情を一つ。番組内でヒューイットは「ティファニーで朝食を」の主題歌、「ムーン・リヴァー」を歌うのだが、彼女ってこんなに歌下手だっけ?ヒューイットって確かCDも出してたはずだが?それとも別に歌はうまくなかったヘップバーンをできるだけ真似してるのか?この辺だけちょっと気になった。
