The Arsenio Hall Show   ジ・アルセニオ・ホール・ショウ 

放送局: CW (シンジケーション) 

プレミア放送日: 9/9/2013 (Mon) 23:00-0:00 

製作: オクタゴン・エンタテインメント、アルセニオ・ホール・コミュニケイションズ 

製作総指揮: ニール・ケンドール、アルセニオ・ホール 

ホスト: アルセニオ・ホール 

  

内容: アルセニオ・ホールがホストの深夜トーク・ショウ。


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The Arsenio Hall Show


ジ・アルセニオ・ホール・ショウ   ★★1/2

アルセニオ・ホールがホストを担当する深夜トーク・ショウは、これが初めてではない。なんとなればホールは1990年代初期、今回と同タイトルの深夜トークのホストを務めており、そこそこ人気があった。ホールは数少ない黒人パーソナリティの深夜トークのホストであり、当時も注目度は高かった。 

  

目を昼間に移せば、日中トークの黒人ホストは、かつての女王ことオプラ・ウィンフリーを筆頭に、現時点ではウェンディ・ウィリアムズやスティーヴ・ハー ヴィ、クイーン・ラティファ等、特に珍しいものではない。しかし黒人ホストによる地上波で放送される深夜トーク・ショウというのは、当時も今もかなり稀だ。私の記憶する限り、近年地上波で深夜トークのホストを務めたことがある黒人パーソナリティは、ホール以外には数年前にFOXが土曜夜に放送していた、「ザ・ワンダ・サイクス・ショウ (The Wanda Sykes Show)」のワンダ・サイクスくらいしか思いつかない。 

  

初代「アルセニオ・ホール・ショウ」で特に記憶に残っているのは、何はともあれ観客が拳を振り上げて「ウォウ、ウォウ、ウォウ、ウォウ」と唸るように声援を 送るスタジオの盛り上げ方と、大統領になる前のビル・クリントンがブルース・ブラザーズのようなサングラス姿で現れ、バンドと共にサックスをプレイしたエピソードだ。特に後者は、大統領候補とはいえ当時政治家としてはまだ無名に近い存在だったクリントンが一躍全国区に躍り出る契機になった出来事として、今でもよく引き合いに出される。私もたまたまそのエピソードが放送された時に見ており、印象に残った。アメリカの政治家ってなかなかやるなあと思ったことを 今でも覚えている。その後クリントンはあれよあれよという間に知名度を上げ、大統領になった。 

  

「アルセニオ・ホール・ショウ」以外でホールが最もよく知られているのは、当時飛ぶ鳥を落とす勢いのあったエディ・マーフィと共演した、「星の王子ニューヨークへ行く (Coming to America)」でだろう。マーフィ演じるどこぞの国の王子の側近を演じ、映画は大ヒットした。その後すぐ放送の始まった「アルセニオ・ホール・ショウ」は、その勢いを駆って成功したという印象が強い。 

  

初代「アルセニオ・ホール・ショウ」は1989年から94年まで放送された後、キャンセルされた。1993年、当時NBCで「レイト・ナイト (Late Night)」ホストだったデイヴィッド・レターマンは、直前に放送されているNBCのジョニー・カーソンの「トゥナイト (Tonight)」の後を継いで新「トゥナイト」ホストに就くことができず、その座をレノに奪われたためにNBCに嫌気が差してCBSに移り、同じ時間帯で「レイト・ショウ (Late Show)」を始めた。実はこの割りを最も食ったのが初代「アルセニオ・ホール」だった。 

  

それまでは「アルセニオ・ホール」のライヴァル番組は「トゥナイト」ただ一つだけだったが、同時間帯に「レイト・ショウ」ができたことにより、視聴率争いが激化した。「アルセニオ・ホール」はその争いに勝ち抜くことができなかった。その後ホールは短命のシットコムやその他の番組にいくつか出演していたが、近年はほとんど名前を聞かなかった。そして今回、再度新生「アルセニオ・ホール・ショウ」とし復活してきたものだ。 

 

その晴れの第1回の番組冒頭ではカウチの上に寝そべり、長らく続いたブランクの後、番組を再開することに多少の不安を持つホールが、たぶんカウンセラー相手に切々と心情を訴えている。と、カメラが引いて映し出したその相手はなんと「トゥナイト」のジェイ・レノで、カウンセラーが相手をリラックスさせるために寝かせるカウチだと思っていたのは、「トゥナイト」でゲストを座らせるためのスタジオのカウチだった。さすがにちゃんと初っ端から笑わせてくれる。数年前、業界を震撼させたごたごたの後、いったん辞めさせ られたレノが「トゥナイト」に復帰する時、ベッドで、夢を見ていたんだと言いながら目を覚ました番組第1回が記憶に甦る。レノも人の番組でギャグ・ネタになって、太っ腹なところを見せる。 

 

その後のモノローグでは、当然ホール自身、近年あまり目立った活動をしていないのを本人も自覚しており、この19年間、何をしていたんだとよく訊かれると前置きして、こんなことをしていたという刑務所ドラマやフード・トラック・ビジネスの様子を見せる。A&Eの人気リアリティ・ショウ「ストレージ・ウォーズ (Storage Wars)」で、掘り出し物狙いのバイヤーが忘れ去られたストレージ・ルームのシャッターを開けると、そこにホームレス化したホールがいたり、今夏話題になったチープSF TV映画の代表、空からサメが降ってくるというSyFyの「シャークネード (Sharknade)」をパロった、空からツナが降ってくるという「ツナフーン (Tunaphoon)」に出演してたりする。 

 

その後ステージ上にタイム・カプセルを持ち出し、19年前はこんなのがあったと取り出したのは、かなり懐かしい大型の携帯電話。確かに大昔あんなのがあった。次に出てきたのは今はなきAOLの一か月無料お試し版のインストールCD-ROM。当時は電話回線を使ってモデムでインターネットに接続していたのだった。しかもCD-ROMだ。一世代どころか100年くらい昔のような気がする。特に新しいテクノロジーの進歩のスピードは速い。 

 

そして取り出したのは、当時ポーラ・アブドゥルが使っていたというおケツの張り型。そこに現れたのは誰あろうアブドゥルで、アブドゥルは、実は初代「アルセニオ・ホール」によく登場したホールとは昵懇の間柄なのだった。この日の番組の最初の正式なゲストはクリス・タッカー、音楽ゲストはスヌープ・ドッグ。第2回のゲストはアイス・キューブとリサ・クドロウ、音楽ゲストはマック・ミラー。既にもう音楽ゲストは知らない人選だ。ヒップ・ホップ系だって裾野は広いから、ヒット曲のあるごく一部のアーティストじゃない限り、まず聞いたことがない。 

 

これまで黒人がホストの深夜トークに目立って成功した番組がなかったのは、なによりも継続性、持久力が求められる深夜トークのホストという職業と、黒人パーソナリティの親和性、および黒人視聴者の嗜好の問題かと思われる。人気のある黒人コメディアン自体は、掃いて捨てるほどいるのだ。曲がりなりにもかつてホールが一時成功したのは、ホール自身「レイト・ナイト」等でちゃんと修行し、経験を積んで深夜トークという仕事に慣れていたからに他ならない。どんなに今売れっ子のコメディアンだからといって、深夜トークで成功するとは限らないのだ。それを考えると、ツボを押さえることのできるホールが再度、大成功とは言わないまでもそこそこの人気を獲得するのは、かなり可能性高そうな気がする。 











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