The Aquabats! Super Show!   ジ・アクアバッツ! スーパー・ショウ!

放送局: HUB

プレミア放送日: 3/3/2012 (Sat) 11:00-11:30

製作: フリーマントルメディア、ザ・マジック・ストア

製作総指揮: クリスチャン・ジェイコブス、スコット・シュルツ

出演: クリスチャン・ジェイコブス (ザ・MC・バット・コマンダー)、リチャード・ファロミール (リッキー・フィットネス)、ジェイムズ・ブリッグス (ジミー・ザ・ロボット)、イアン・ファルズ (イーグルボーンズ・ファルコンホウク)、チャド・ラーソン (クラッシュ・マクラーソン)


内容: 子供向け番組。


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The Aquabats! Super Show!


ジ・アクアバッツ! スーパー・ショウ!   ★★1/2

子供向け番組は、時々、何気に見過ごせない、人をあっと言わせるようなヴィジュアルや発想の番組があったりして唸らされることがある。近年 (といっても既に10年以上前だが) の番組で真っ先に思い浮かぶのは、まず何はともあれPBSの「テレタビーズ (Teletubbies)」、同じくPBSの「ブーバー (BoohBah)」、ニコロデオンの「ザ・バックヤーディガンズ (The Backyardigans)」、「ワンダー・ペッツ! (Wonder Pets!)」、「ヨー・ガッバ・ガッバ (Yo Gabba Gabba)」辺りだろうか。


これらの番組は特に低学年、幼児を対象としており、理解というより情動に訴える部分が大きいから、そういう内容になるのもわかる。これがもう少し年齢が上がると、ストーリーが重要になってくる。それでも、ヴィジュアルが重要であることは言うまでもない。


こういう、教育的側面やストーリーを重視しながら、さらにキッチュな絵作り、音楽も楽しめる番組には、PBSの「レイジータウン (LazyTown)」や、「ジ・エレクトリック・カンパニー (The Electric Company)」、ディズニーの「イマジネーション・ムーヴァーズ (Imagination Movers)」等がある。これらの番組は、実は大人が見てもそれなりに楽しめる。今回、子供向け番組専門チャンネルのHUBが編成した「ジ・アクアバッツ! スーパー・ショウ!」も、その列に連なる新番組だ。


アメリカで幼児向け番組を編成しているのは、ディズニー、ニコロデオン、公共放送のPBS、それに土曜朝のネットワークといったところだ。そこに一昨年、ディスカバリー系列のディスカバリー・キッドが、トーイ・メイカーのハスブロと共同で始めたHUBが新しく加わった。とはいえ放送を始めた当時のHUBには、ホラーの「R. L. スタインズ・ザ・ホーンティング (R. L. Stein's The Haunting)」くらいしか目ぼしい番組はなかった。それが今では番組も拡充して、昔の番組の再放送や海外番組の輸入放送ばかりでもなくなってきている。


「アクアバッツ!」は、上述の「ヨー・ガッバ・ガッバ」において既出のキャラクター、ザ・バット・コマンダーをリーダーとする世界の平和を守るスーパーヒーロー・グループ、アクアバッツの活躍を描く番組だ。バット・コマンダー以下、エレキ・ギター光線銃を持つイーグルボーンズ・ファルコンホウク、興奮すると巨大化するクラッシュ・マクラーソン、ロボットのジミー・ザ・ロボット、筋肉マンのリッキー・フィットネスの総勢5人から構成される。


アクアバッツは普段はバンドとして活動しており、子供の誕生パーティで演奏していたりする。しかし悪者や怪物が暴れて町の治安を乱すと、スーパーヒーローとして悪漢どもを退治するのだ。それにしてもバンドとしてもスーパーヒーローとしても同じコスチュームだ。それよりもそのコスチュームが短パンというのがなんともいえない。脛毛丸出しのスーパーヒーローか。


一方で「アクアバッツ」が視覚的に馴染み深い気がするのは、番組に登場する怪獣や悪漢どもが、昔懐かしい「ウルトラマン」や「仮面ライダー」で見たようなチープな着ぐるみ怪獣を彷彿とさせるからだ。おかげでなんともいえず番組にキッチュな味わいを加えている。


因みに番組第1回に登場する悪者マンアントは、読んで字の如くアリ (アント) が突然変異したもので、頭はアリ、胴体は人間だ。どうやらクラッシュに私怨を持っているようで、実はクラッシュが幼かった時、砂遊びをしていて魔法のランプを発見、現れた魔人に、自分がスーパーヒーローとして活躍するには悪役が必要だからアリを巨大化してくれと頼んだはいいものの、それっきり忘れていたことが判明する。巨大化したはいいものの何もやることのないマンアントは、以来クラッシュに恨みを持っていた。しかし、だからといってなんでマンアントがネクタイをしてスーツを着ているのかはよくわからない。身だしなみに気を使っているんだろう。


さらに途中でなぜだか番組がいきなり理由もなく突然アニメ化する。なんの脈絡もなくアクアバッツの面々がアニメーションとなるのだが、これまた絵柄として思い出すのは「巨人の星」や「タイガー・マスク」で、60-70年代に日本で育った者にはなにやら懐かしいのだった。


日本人好みのキッチュなテイスト満載の「アクアバッツ」であるが、これはアメリカだなと思うのが番組に出てくる食材の扱い方だ。番組第1回では町のハンバーガー・ショップが襲われるが、ハンバーガーやケチャップ、マスタードをまき散らしてのアクションは、食べ物を粗末に扱ってはいけませんと教えられて育った世代としてはイマイチ馴染めない。しかしパイ投げが遊びの基本の一つであるアメリカ人にとっては、それが当たり前なんだろう。


「アクアバッツ!」は上述の他の教育的番組とは異なり、あくまでもエンタテインメントとして機能している。果たして番組内でアクアバッツが演奏するオリジナル曲が、ビルボードにチャート・インするかどうかは疑問だが、バンドとして成功しないならスーパーヒーローになればいいので、それはそれで構わないのかもしれない。スーパーヒーローには潰しで成る時代で、現代はバンドとして成功する方が難しい。








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